小規模事業者持続化補助金をホームページ制作に活用する方法を解説
2024/08/08
2024/6/12
小規模事業者や個人事業主の中には、自社の商品の知名度を上げることや新たな顧客を増やすことを目的にホームページの制作を検討している人もいますよね。小規模事業者持続化補助金は、ホームページ制作費にも活用できる小規模事業者や個人事業主向けの制度です。
当記事では、小規模事業者持続化補助金をホームページ制作に活用する方法を解説します。ホームページ制作にかかる費用を申請した場合の計算例も紹介するので、自社のホームページ制作に補助金の利用を検討している人は参考にしてみてください。
Contents
販路開拓につながるホームページ制作に活用できる
小規模事業者持続化補助金は販路開拓等につながるホームページ制作に活用できます。小規模事業者持続化補助金は販路開拓や業務効率化の取り組みを支援する制度のため、販路開拓につながるホームページ制作は小規模事業者持続化補助金において補助対象となる可能性があります。
たとえば、新規顧客の獲得に向けて商品販売のホームページを新たに立ち上げることは販路開拓の取り組みにつながります。パソコンやスマートフォン等から商品の閲覧ができるようになることから、商品を新規顧客に知ってもらうきっかけをつくることが可能です。
また、予約システム機能を備えたホームページの制作は業務効率化の取り組みにつながります。ホームページからの予約を受け付けることにより予約に関する電話対応の手間が削減され、予約対応以外の業務にあてる時間を増やせる可能性があります。
ただし、小規模事業者持続化補助金は販路開拓や業務効率化を目的とした制度であることから、単に会社紹介として活用するホームページの制作は補助対象外です。ホームページの用途は申請の際に提出する事業計画書によって判断されるため、販路開拓や業務効率化につながる計画を立てましょう。
なお、下記より小規模事業者持続化補助金に申請した際に、いくら補助金を受け取れそうかを無料で診断できます。ホームページ制作にかかる費用をどのくらい軽減できるか、補助金の対象となるかを知りたい人はお試しください。
無料診断ホームページ制作に活用した事例
小規模事業者持続化補助金をホームページ制作に活用した採択事例をみてみましょう。小規模事業者持続化補助金に申請するには補助金の目的に合った事業計画をたてる必要があるため、過去にどのような事業が採択されたのかを知ることにより、事業計画をたてる際の参考にすることができます。
業種 |
事例 |
商業・サービス業 |
【取り組み内容】
【効果】
|
宿泊業・娯楽業 |
【取り組み内容】
【効果】
|
製造業その他 |
【取り組み内容】
【効果】
|
たとえば、製造業において、自社製造の商品の販路開拓を目的にホームページ制作やチラシの配布、大型看板の設置を行った事例があります。ホームページの開設や看板の設置により一般消費者からの認知度が上がり、問い合わせが増え受注率の向上につながりました。
また、製造業において、新商品製造用の業務用ガスオーブンの導入とあわせてホームページ制作をおこなった事例があります。業務用ガスオーブンの導入により商品の生産体制を整えたことに加え、スマートフォンに対応したホームページの開設により新商品をPRできたことで顧客の増加を実現しました。
小規模事業者持続化補助金を活用した例は、補助金制度の公式サイト内にある採択者一覧や経済産業省の公式サイト「ミラサポplus」で閲覧が可能です。採択事例を確認して、ホームページ制作と組み合わせている経費や事業内容を確認してみましょう。
ホームページ制作はウェブサイト関連費に該当する
小規模事業者持続化補助金の補助対象経費には、10種類の項目が設けられています。ホームページ制作は10種類の対象経費の中のウェブサイト関連費に該当します。
補助対象経費 |
活用例 |
①機械装置等費 |
補助事業の実施に必要な店舗のショーケースや製造機械の購入等 |
②広報費 |
新サービスを紹介するチラシやパンフレット、ポスター作成・配布、看板の設置等 |
③ウェブサイト関連費 |
商品販売のホームページ制作、インターネット広告、ECサイト等の開発、構築、改修、運用にかかる経費等 |
④展示会等出展費 |
オンラインを含む展示会・商談会の出展や参加にかかる経費等 |
⑤旅費 |
補助事業に必要な原材料調達の調査等にかかる宿泊代、展示会等の会場の交通費等 |
⑥新商品開発費 |
新商品の試作品開発等に伴う原材料やデザイン費用等 |
⑦資料購入費 |
補助事業に関連する資料や書籍の購入費用等 |
⑧借料 |
機器・設備等のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)等 |
⑨設備処分費 |
新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備機器等を廃棄・処分等 |
⑩委託・外注費 |
自社が実施できない補助事業の一部を外部に依頼する費用(契約は必須) |
ウェブサイト関連費は、ホームページ制作以外にもWEB関連の費用やECサイト・システム開発費等が対象となります。たとえば、「メルマガ・メールによる DM、チラシ作成」や「商品販売のための動画作成」はウェブサイト関連費として申請可能です。
ただし、ホームページを50万円(税抜き)以上の費用で制作・更新する場合、サイトは「処分制限財産」に該当します。処分制限財産は一定の期間においてホームページの処分等はできない場合があり、期間内に処分する際は補助金事務局等の承認が必要です。
なお、ホームページ制作を外部の制作業者に依頼する費用は「委託・外注費」ではなくウェブサイト関連費に該当します。小規模事業者持続化補助金を活用してホームページ制作する際は、対象経費の申請項目に誤りがないよう注意しましょう。
ウェブサイト関連費のみの申請はできない
小規模事業者持続化補助金では、2022年の第8回公募からウェブサイト関連費のみの申請ができなくなりました。補助金をウェブサイト関連費に活用する場合、広報費や展示会等出展費などの他の経費項目とあわせて申請する必要があります。
経費項目 |
組み合わせ例 |
ウェブサイト関連費+広報費+新商品開発費 |
ホームページ制作+チラシ作成・配布+新商品の開発 |
ウェブサイト関連費+機械装置等費+広報費 |
ランディング広告掲載を行うホームページの制作+業務用グリル購入+パンフレット作成 |
ウェブサイト関連費+機械装置等費 |
ホームページ制作+業務用真空機を購入 |
採択事例によると「ウェブサイト関連費+広報費」や「ウェブサイト関連費+機械装置等費」などを組み合わせた事例があります。
「ウェブサイト関連費+機械装置等費」を組み合わせた事例では、新たに機械設備を利用した商品体験コーナーの設置とホームページのリニューアルを実施した事業がありました。また、「ウェブサイト関連費+広報費」を組み合わせた例では、ホームページとSNSの開設に加えチラシ作成を行った事業がありました。
小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費で申請する際は、他の対象経費と合わせて選ぶ必要があります。ホームページ制作費に補助金を活用する場合は、対象経費の項目の中からウェブサイト関連費と組み合わせられる経費を検討しましょう。
ホームページ制作に活用できる金額は申請額の1/4まで
小規模事業者持続化補助金をホームページ制作に活用できる金額は、申請した経費の総額の1/4まで(最大50万円)です。小規模事業者持続化補助金には通常枠と4つの特別枠があり、通常枠と特別枠ではホームページ制作に活用できる金額が異なります。
申請枠 |
通常枠 |
特別枠(賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠) |
補助率 |
2/3 |
2/3(賃金引上げ枠へ申請する赤字事業者のみ3/4) |
補助上限額 |
50万円 |
200万円 |
補助上限額(インボイス特例適用時) |
100万円 |
250万円 |
ウェブサイト関連費の補助上限額 |
12.5万円
25万円 |
50万円 (※インボイス特例適用時も同額) |
通常枠の上限額50万円まで申請する場合、「50万円×1/4=12.5万円」となるため、12.5万円までがウェブサイト関連費で申請可能です。通常枠でインボイス特例が適用する場合、通常枠の上限額に50万円追加され「100万円×1/4=25万円」になり、25万円がウェブサイト関連費で申請できます。
また、特別枠の上限額200万円まで申請する場合、「200万円×1/4=50万円」となり、50万円までがウェブサイト関連費で申請可能です。特別枠ではインボイス特例が適用されても、ウェブサイト関連費として申請できるのは50万円までとなります。
なお、インボイス特例の対象になるには、免税事業者から適格請求書(インボイス)発行事業者に転換する必要があります。インボイス特例について詳しく知りたい人は「小規模事業者持続化補助金のインボイス特例を解説」の記事を参考にしてみてください。
ホームページ制作費を申請する場合の計算方法
小規模事業者持続化補助金でホームページ制作費を申請する場合の計算方法を把握しておきましょう。計算方法を確認することで、受給できるウェブサイト関連費の金額の目安とすることができます。
手順 |
詳細 |
①各経費の申請額を計算する |
経費× 補助率 = 申請額 |
②申請額の総額を計算する |
ウェブサイト関連費の申請額+その他の経費の申請額=申請額の総額 |
➂申請額の総額と補助上限額を比較する |
算出した申請額の総額と申請枠の補助上限額を比較して金額が低い方を申請する |
通常枠(インボイス特例適用外)において、ウェブサイト関連費12万円と機械装置費60万円を申請した場合の計算方法を解説します。
まずは、申請する経費に該当の補助率を掛けて各経費の申請額を計算します。ウェブサイト関連費は「12万円×2/3=8万円」、機械装置費は「60万円×2/3=40万円」となりますが、その際ウェブサイト関連費の定められた上限額の範囲内であることを確認します。
つぎに、補助金額の総額を計算します。ウェブサイト関連費とその他の経費の申請額を合計した金額を求めるため「8万円+40万円=48万円」となり、48万円が申請経費の総額となります。
最後に、申請経費の総額として算出した金額と該当する申請枠に定められている補助上限額を比較します。算出した申請経費の総額が48万円、補助上限額が50万円のため、金額の低い48万円が申請額となります。
なお、実際に受け取る補助金は減額される場合があるため、申請した金額すべてを受給できるわけではありません。小規模事業者持続化補助金の補助金額や補助率を詳しく知りたい人は、「いくらもらえる?小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金額の関係性を解説」の記事を確認してみましょう。
申請するには要件を満たす必要がある
小規模事業者持続化補助金を申請するには、申請要件を満たす必要があります。公募要領において定められている要件すべてを満たさなければ、申請ができないまたは不採択になるからです。
【申請者が満たすべき要件】
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対象者の要件
-
対象事業の要件
-
対象経費の要件
対象者の要件は、申請者が実施している既存事業に関するする要件です。既存事業における事業規模や資本金、所得額に関する内容が要件に含まれています。
対象事業の要件は、補助金を利用して実施する事業の要件です。補助金を利用して実施する「補助事業」の目的や実施期間に関する内容が要件に含まれています。
対象経費の要件は、補助金の対象として申請する経費の要件です。経費の使用目的や支払いに関する内容が要件に含まれています。
なお、小規模事業者持続化補助金の特別枠では、基本要件に加えて各申請枠の要件が追加されます。小規模事業者持続化補助金の特別枠を申請する場合は、申請を検討している枠の要件も確認しておきましょう。
対象者の要件
小規模事業者持続化補助金には、補助対象者となるための要件があります。小規模事業者持続化補助金の対象者の要件を満たしていない事業者は、小規模事業者持続化補助金を利用することができません。
【小規模事業者持続化補助金の対象者の要件】
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小規模事業者であること
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資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接的に100%の株式を保有されていないこと
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確定している直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
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商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
小規模事業者持続化補助金の対象者は、常時使用する従業員の数が20人以下の小規模事業者や個人事業主等です。業種別に定めている常時使用する従業員数が、商業・サービス業では5人以下、宿泊業・娯楽業や製造業その他は20人以下であれば要件を満たしています。
申請者が法人の場合、資本金または出資金が5億円以上の法人に直接100%の株式を保有されていないことが要件に追加されます。また、確定している直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えてはなりません。
なお、開業届に記載している開業日が申請日よりも後などの創業予定者は小規模事業者持続化補助金に申請できません。小規模事業者持続化補助金に申請する際は、対象者の要件や対象外になる事業者について記載されているため、公募要項をかならず確認しておきましょう。
補助事業の要件
小規模事業者持続化補助金の補助対象となる要件は販路開拓などにつながる事業に取り組むことです。ホームページ制作費に補助金制度を活用する予定の人は、補助対象事業の要件を満たしているか確認してみましょう。
【小規模事業者持続化補助金の補助事業の要件】
-
販路開拓のための取組または販路開拓の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)につながる取組
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商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
-
補助事業実施期間内に補助事業を遂行する
補助事業の要件の1つ目は、事業者自らが作成した「経営計画」に基づいた販路開拓等の事業に取り組むことです。補助事業を遂行するためのホームページを制作する費用が対象であり、ホームページ制作に関連するコンサルティングやアドバイス費用は補助対象外となります。
補助事業の要件の2つ目は、商工会議所が管轄している地域内で事業を運営し、商工会議所の支援を受けながら補助事業に取り組むことです。事業を運営する地域が商工会議所の管轄している地域内であれば、商工会議所の非会員でも応募することができます。
補助事業の要件の3つ目は、事業実施期間内にかならず補助事業を終了することです。そのため、ホームページ制作を外部の事業者へ依頼する場合は補助事業の実施期間内に公開できるかどうか、納期を確認しておかなければなりません。
対象経費の要件
小規模事業者持続化補助金の対象経費には、10種類の経費項目に該当する以外に申請要件があります。申請を検討している人は、対象経費となる要件をすべて満たしているか確認しましょう。
【補助対象経費の要件】
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使用目的が補助事業の実施に必要なものと明確に特定できる経費
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交付決定日以降から補助事業実施期間中に支払いが完了した経費
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証拠資料等によって支払金額が確認できる経費
補助対象経費の要件の1つ目は、補助事業のみに使われる経費であることです。そのため、通常事業にかかる経費や補助事業の目的と合わない経費、補助事業以外でもさまざまな用途に利用できるものは補助対象外となります。
補助対象経費の要件の2つ目は、交付決定日以降から補助事業実施期間内に支払いが完了した経費であることです。交付決定前に前払いを含む支払いや発注や契約等をした経費は対象外であり、補助事業実施期限を過ぎている支払いは補助対象経費として認められません。
補助対象経費の要件の3つ目は、証拠資料等によって支払い金額が確認できる経費であることです。経費内容の確認をして支給される補助金の額が決定されるため、かならず見積書・請求書・領収書などの経理書類を用意できる経費にしましょう。
ホームページ制作費に活用できる地方自治体の補助金
国が実施している小規模事業者持続化補助金以外にも地方自治体の補助金があります。事業を営む地域内に、ホームページ制作費に活用できる補助金制度はないか各自治体のホームページで確認してみましょう。
補助金制度 |
概要 |
葛飾区ホームページ作成費補助金交付事業(東京都葛飾区) |
【対象者】
【補助率】 1/2 【対象経費】
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中小企業ホームページ作成費補助金(東京都中央区) |
【対象者】
【補助率】 一般枠 1/2(限度額5万円) 創業枠 2/3(限度額6万円) 【対象経費】
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ホームページ製作経費補助事業(兵庫県西宮市) |
【対象者】
【補助率】 1/2(上限5万円) 【対象経費】
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東京都葛飾区の補助金では、新規ホームページをホームページ制作業者に委託する費用等が補助対象です。ホームページ制作業者に直接業務を依頼せずに、仲介業者に委託した場合は補助対象外となります。
また、東京都中央区の補助金では、創業予定者が対象の創業枠と区内に事業所を所有している中小企業等が対象の一般枠の2つの申請枠があります。どちらの申請枠も、過去に支援制度を受けて、ホームページを制作・変更していないことが申請要件のひとつです。
そして、兵庫県西宮市の補助金では、取引の拡大や顧客創出を目的としたホームページを外部に委託する委託費用が対象です。新たな自社ホームページ制作を業者に委託する費用が対象であり、ホームページの改修やコンテンツ追加、作り直しは補助対象にはなりません。
小規模事業者持続化補助金や地方自治体の補助金制度のほかにも、国が支援する補助金制度をホームページ制作費に使える可能性があります。小規模事業者持続化補助金に申請ができない人や制度の内容が自社の希望と異なる人は、自治体が実施する補助金制度の活用も検討してみてください。
なお、小規模事業者持続化補助金はその他の補助金制度との重複申請はできません。補助金に申請する前にはかならずそれぞれの制度の公募要項を確認して、自社に合った補助金制度を選びましょう。
この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金は、自社の商品を販売するホームページの制作費などに活用できます。小規模事業者持続化補助金では、販路開拓や販路開拓とあわせて行う業務効率化につながる事業に補助金が支給されます。
小規模事業者持続化補助金の対象経費は10種類あり、ホームページ制作費の対象経費の項目はウェブサイト関連費です。小規模事業者持続化補助金では、ウェブサイト関連費の単独での申請ができないため、他の対象経費と組み合わせて応募する必要があります。
また、ウェブサイト関連費や設備処分費は他の対象経費と違い、活用できる金額が定められ申請額の計算が複雑になります。小規模事業者持続化補助金の申請をする際は、計算例や公募要項の確認をかならず行いましょう。