補助金ガイド

小規模事業者持続化補助金を店舗改装に利用する条件と申請方法

2024/04/04

2022/1/20

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

店舗改装を行いたいと考えている事業主のなかには、小規模事業者持続化補助金の活用を検討している人もいるでしょう。また、店舗改装の資金として補助金に申請するための条件を知りたい人もいますよね。

小規模事業者持続化補助金は店舗改装に利用可能です。ただし、申請するためには必要な条件を満たし、公募要領で定められた方法で申請する必要があります。

当記事では、小規模事業者持続化補助金を店舗改装に利用する際の条件と申請方法を解説します。採択事例も紹介するので、小規模事業者持続化補助金の申請を検討している人は事業計画の参考にしてみてください。

なお、当記事は小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領をもとに作成しています。

小規模事業者持続化補助金を店舗改装費用に利用する条件

小規模事業者持続化補助金は店舗改装費用に利用できます。店舗改装費用で申請を検討している人は、以下の小規模事業者持続化補助金の申請要件を満たしているか確認しましょう。

【補助金の対象者の一例】

  •  常時使用する従業員が規定数以下の法人、個人事業主、特定非営利活動法人であること 
  •  資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
  •  補助金の申請時に開業し、事業を開始していること

※小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブックを参考に株式会社SoLabo作成

常時使用する従業員の規定は、業種によって異なり、宿泊業・娯楽業を除くサービス業は5人以下、宿泊業や娯楽業、製造業は20人以下であれば要件を満たします。飲食店や小売業であれば5人以下で対象となります。

小規模事業者持続化補助金は、要件を満たせば誰でも申請可能です。ただし、申請の際にはすでに開業している必要があるため、居ぬき物件を利用して新規開業する費用は小規模事業者持続化補助金の補助対象外です。開業までは自己資金や融資での対応を検討し、開業してから小規模事業者持続化補助金の申請をしましょう。

店舗改装のための補助金を受け取りたい人は、まず下記無料診断フォームより小規模事業者持続化補助金の対象となるか確認してみてください。

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店舗改装は委託外注費として申請する

小規模事業者持続化補助金には、10種類の補助対象経費があります。補助事業の中で「自社では実施困難な店舗改装を行う場合」は「委託・外注費」として申請することになります。

【小規模事業者持続化補助金の補助対象経費】

補助対象経費科目

活用事例

機械装置等費

補助事業の遂行に必要な製造装置の購入などの経費

※店舗のショーケースや業務用オーブンなどにも利用可

②広報費

新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置などの経費

※ポスティング用広告チラシの作成や、LED内照の看板製作・設置費用などにも利用可

③ウェブサイト関連費

ウェブサイトやECサイトなどの構築、更新、改修、開発、運用に係る経費

※集客から受注に繋がる自社サイト制作やターゲットを絞ったリスティング広告にも利用可

④展示会等出展費

展示会・商談会の出展料に係る経費 

⑤旅費

販路開拓(展示会などの会場との往復を含む)を行うための旅費

⑥開発費

新商品の試作品開発に伴う経費

⑦資料購入費

補助事業に関連する資料・図書にかかる経費

⑧借料

機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)

⑨設備処分費

新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分に係る経費

※店舗内にイートインスペースを設置するため、一部の陳列棚や古い機材などの撤去費用にも利用可

委託・外注費

店舗改装など自社では実施困難な業務を第3者に依頼する経費(契約必須)

※小規模事業者持続化補助金<一般型>第15回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成

店舗改装をリフォーム会社や工務店などの専門業者に依頼する場合は、補助金申請の際に見積書や請求書の提出が求められます。そのため、専門業者へ店舗改装の依頼する事業者は、店舗改装に関する見積書や請求書を保管しておく必要があります。

また、工事費用が100万円を超える場合には2社以上の見積を比較し、より低価格の業者へ依頼することが義務付けられています。規定を守れていない場合は、補助対象外となるため、1社の見積が100万円を超える場合には、別の業者にも見積を依頼しましょう。

委託・外注費として認められない改装費用を確認しておく

小規模事業者持続化補助金の委託・外注費として認められる経費と認められない経費を確認しておきましょう。対象にならない経費の内容を事業計画に織り込んで申請した場合、補助対象にならない経費分が受け取れなくなり、申請していた金額より減少する場合があるからです。

【委託・外注費の対象となる経費/対象とならない経費の例】
対象となる経費例

・店舗改装・バリアフリー化工事

・利用客向けトイレの改装工事 

・製造・生産強化のためのガス・水道・排気工事

・移動販売等を目的とした車の内装・改造工事

・従業員の作業導線改善のための従業員作業スペースの改装工事

(補助事業計画の「業務効率化(生産性向上)の取組内容」に記載した場合限る)

・インボイス制度対応のための取引先の維持・ 拡大に向けた専門家(税理士、公認会計士、 中小企業診断士等)への相談費用

対象とならない経費例

・補助事業で取り組む販路開拓や業務効率化に結びつかない工事

<例>

単なる店舗移転を目的とした解体・建設工事

住宅兼店舗の改装工事における住宅部分

既存の事業部門の廃止にともなう設備の解体工事(設備処分費に該当するものを除く)

・「不動産の取得」に該当する工事

・有償レンタル・有償貸与を目的としたスペースの改装に係る費用

※小規模事業者持続化補助金<一般型>第15回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成

たとえば、来客用トイレが狭くて暗い場合や和式で古いなどの理由で、「子どもや高齢者でも利用しやすいトイレに改装する場合の改装費は補助対象です。一方で、住宅兼店舗の住居部分のキッチンやトイレをリフォームするような販路開拓とは関係のない改装費は対象外です。

委託・外注費で申請する店舗改装費は、あくまでも補助金の目的である販路開拓や生産性向上に繋がる内容でなければなりません。事業計画を作成する際には、小規模事業者持続化補助金の意図を理解した経費の使い道を示しましょう。

下記無料診断フォームでは、貴社で検討している店舗改装が対象となるか、どのような店舗改装であれば対象となるかを確認できます。小規模事業者持続化補助金の申請を検討している人は診断してみてください。

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自分で改装する場合は機械装置等費で申請する

内装の備品や資材などを購入し「自分で改装を行う」場合は、小規模事業者持続化補助金の「機械装置等費」として申請できます。

たとえば、小売店が陳列改善のために販売棚や設置に必要な備品などを購入し、改装を施す場合は機械装置等費を活用できます。壁の一面に子供向けのお絵描きスペースを設置するような、業者への依頼はせずともオリジナル性のある改装に使うための資材購入費にも使えます。

自分でできる範囲の店舗改修や改装を行う場合の経費は、「機械装置等費」として申請します。また、購入した製品の見積書や領収書は申請の際に必要になるため、必ず保管しておきましょう。

小規模事業者持続化補助金を活用した店舗改装の採択事例を参考にする

小規模事業者持続化補助金の採択事例を探すと、店舗改装を取り入れた事例が見つかります。自社が検討している計画に近い取組みや、同業種の事例などを参考にしてみましょう。

【店舗改装を取り入れた採択事例と事業効果の例】

補助事業に取り組んだ企業

店舗改装を取り入れた事業内容と事業の効果

味噌製造業

事業内容:商品を生産する工場の改装と販売スペースの新設

事業効果:来店客、工場見学者の増加の増加により店舗販売は新規事業開始3ヶ月で26%増、全体売上は前年同期比16%増

理容サロン

事業内容:親子で来店できる店づくりとして内装及び店舗入り口の改装、サービス周知のためのチラシ作成、ポスティング

事業効果:宣伝効果により新規で8組の親子客の来店、落ち着いた店づくりの実現と来店客からの高評価

衣料品小売業

事業内容:店内改装と最新の陳列什器を配置したディスプレイ

事業効果:商品回転率3倍増、売上高1.5倍増、売り上げ単価の増加

果樹園

事業内容:倉庫として使っていた建物を改装し、店内にカフェを新設、商品購入による待ち時間軽減の取組み

事業効果:事業開始から3か月間で100名程度の新規顧客を獲得

食料品、総菜

小売業

事業内容:厨房施設の改装、提供メニュー増品、仕出しパンフレット作成

事業効果:作業導線改善、作業時間短縮、提供メニュー増加で今まで対応できなかった大口顧客の受注が可能となり、事業後1ヶ月で新規注文10件程度、金額で約30万円の売り上げ増

※経済産業省の公式サイトミラサポplusを参考に株式会社SoLabo作成

たとえば、以前は販売のみを行っていた果樹園が、倉庫を改装して店内にカフェを併設し、顧客が飲食しながら商品を選べる環境を整えました。これにより、課題となっていた来店客の混雑や待ち時間が解消され、飲食と販売2事業での顧客、売り上げ増へと繋がりました。

小規模事業者持続化補助の公式サイトの採択者一覧では、審査に通過した事業者の「補助事業名」を閲覧できます。また、経済産業省のミラサポplusでは、採択者が行った事例を検索できます。過去の採択例は、事業計画を立てる際の参考になるため、目を通しておきしょう。

店舗改装や販路開拓の取組みに活用できる補助金額は最高で250万円

店舗改装や販路開拓の取組みに活用できる補助金額は最高で250万円です。小規模事業者持続化補助金を申請する際は「通常枠」と4種類の「特別枠」の中から1つを選んで申請します。また、枠ごとに補助金額を計算するための「補助率」や「補助上限額」が定められています。

【小規模事業者持続化補助金の補助率と補助上限額】

一般型

通常枠

特別枠

申請枠

通常枠

賃金引上げ枠

卒業枠

後継者支援枠

創業枠

補助率

2/3

2/3

赤字事業者は3/4

2/3

補助上限額

50万円

200万円

インボイス特例が適用された場合

100万円

250万円

※小規模事業者持続化補助金<一般型>第15回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成

たとえば、卒業枠で機材装置等費と広報費、開発費を合わせて330万円を申請した場合、補助率2/3を掛けると補助金額は220万円と算出されます。しかし、インボイス特例の適用外であれば、卒業枠の上限額は200万円であるため、受けられる補助金額は200万円となります。

小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠の場合は50万円、特別枠の場合は200万円です。さらに、「免税事業者」であった人が「適格請求書発行事業者」になることで「インボイス特例」が適用された場合は50万円が上乗せされ、最大で250万円が支給されます。

補助対象経費の中の「ウェブサイト関連費」を活用する場合は、補助金額の計算方法が変わります。ウェブサイト関連費の上限額は、算出された補助金額の全体の1/4までの金額と定められているため、計算の工程が増えることになります。

ウェブサイト関連費を含めた補助金の計算方法が気になる人は、「いくら受け取れる?小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金額の関係性を解説」も参考にしてみてください。

小規模事業者持続化補助金に申請する際の注意点を確認する

小規模事業者持続化補助金に申請する際には、いくつか注意点があります。注意点を知らずに申請を進めた場合、補助対象外となり補助金を受けられなくなる可能性もあるため、確認しておく必要があります。

小規模事業者持続化補助金の申請で注意すべき点の一例】
  • 開業届を出し、事業を開始している事業者でなければ対象外となる
  • 事業拡大か事業存続のための施策でなければならない
  • 施策の費用は申請者が先払いする必要がある
  •  交付決定通知を受ける前の補助事業は対象外となる

たとえば、補助金を使って店舗改装を行う場合は、単に古くなった建物や内装のリフォーム感覚で作成した事業計画では採択審査に通りません。改装によって販路開拓や生産性向上に繋がるといった事業の狙いを示す必要があります。

また、小規模事業者持続化補助金は、補助事業を行った後に交付を受けるため事業に使用する経費は申請者が先払いすることになります。小規模事業者持続化補助金に申請する人は、申請前に事業計画と補助事業で支払う経費の資金を準備し、必要であれば融資を受けることも検討しておきましょう。

小規模事業者持続化補助金の申請に必要な書類を確認する

小規模事業者持続化補助金に申請するには、以下の書類が必要です。

  • 小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書(様式1-1)
  • 経営計画書兼補助事業計画書①(様式2-1)
  • 補助事業計画書②(様式3-1)
  • 事業支援計画書(様式4)※
  • 小規模事業者持続化補助金交付申請書(様式5)

小規模事業者持続化補助金の提出書類には、「申請者全員が提出する書類」と、申請枠や加点申請などの「申請者の条件によって提出する書類」があります。

必要な書類の準備の仕方や書き方については、「小規模事業者持続化補助金の必要書類と提出先を解説」も参考にしてみてください。

提出する書類が採択審査の観点となる

小規模事業者持続化補助金の採択審査では、提出資料を審査されます。審査の内容は、「補助事業計画の有効性」「自社の経営状況分析の妥当性」「経営方針・目標と今後のプランの適切性」「積算の透明・適切性」の4項目があります。

たとえば、「補助事業計画の有効性」では、補助事業計画は具体的で、申請者にとって実現可能性が高いものになっているか、申請者ならではの創意工夫の特徴があるかなどが審査されます。

審査の内容は、小規模事業者持続化補助金の公式サイト「公募要領」から確認できます。補助事業計画書の作成を行う人は、審査の観点を確認して経営計画書や補助事業計画書を作成しましょう

申請は地域の商工会や商工会議所の支援を受けながら進める

小規模事業者持続化補助金の申請は、自社が所在する地域の商工会や商工会議所の支援を受けながら進めましょう。小規模事業者持続化補助金の提出書類は、商工会や商工会議所を通して取り揃える必要があるためです。

【小規模事業者持続化補助金の申請手順の一例】

① 電子申請の際に必要なGビズIDプライムアカウントの申請・取得

② 「経営計画書兼補助事業計画書」と「補助事業計画書」を作成

③ 作成した書類の写しを商工会または商工会議所に提出し、「事業支援計画書」の作成を依頼する

④ その他の書類(小規模持続化補助金事業にかかる申請書、補助金交付申請

書、宣誓・同意書、その他申請枠や申請条件によって必要な書類)を記入

⑤ 後日作成の終わった事業支援計画書を受け取り、②④の必要書類と共に提出する

たとえば、提出書類の1つである「事業支援計画書」は、商工会または商工会議所に作成を依頼する書類です。申請者はまず、「経営計画書」や「補助事業計画書」を作成し、商工会または商工会議所へ提出した際に「事業支援計画書」の発行を依頼するという流れです。

また、「経営計画書」や「補助事業計画書」は、補助金の採択審査において観点となる書類であり、根拠と説得力のある内容を作成する必要があります。申請者が書類の作成に慣れていない場合は、地域の商工会に相談もできるため、支援を受けてみましょう。

なお、GビズIDプライムアカウントは、申請から取得までに約3~4週間かかり、「事業支援計画書」は、依頼から発行までに約1週間かかります。申請してから受け取るまでに時間を要するものは、早めに準備しておきましょう。

GビズIDの詳しい情報は、デジタル庁のgBizIDで確認できます。

この記事のまとめ

小規模事業者持続化補助金を店舗改装の費用として活用する場合の補助対象経費は、「委託・外注費」や「機械装置等費」として申請することが可能です。

その際、申請者が作成する事業計画の中で、単に古くなった店舗の改装や改修と見られる内容ででは、採択審査に通過することができません。必ず、補助金の目的である「販路開拓」や「生産性向上」に繋がる施策であることを経営計画書や補助事業計画書の中で示す必要があります。

また、補助金は後払いのため、申請者はあらかじめ補助事業を実施するための資金を準備しなければなりません。資金が不足している場合は融資を検討する必要もあります。申請において準備に時間を要する手続きや書類の取り寄せなどは、早めに手配しておきましょう。

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