ブリーダーは小規模事業者持続化補助金を利用できる?補助金の活用例も解説
2024/04/08
2023/7/11
ペットとの生活を望む人々の「家族」となる元気な動物の命を送り出すブリーダーとして活躍する人たちがいます。その中には、近年の法改正や変化する環境にも対応しながら、経営を持続していくため、新たな取り組みや利用できる補助金の申請を検討する人もいるでしょう。
当記事では、犬や猫のほかにも鳥類、爬虫類などの様々な命を扱うブリーダーに向けて、小規模事業者持続化補助金を利用できるかどうかを解説します。補助金の概要や活用例についても説明するので、小規模事業者持続化補助金を調べている人は参考にしてみてください。
なお、当記事は小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領をもとに作成しています。
Contents
小規模事業者持続化補助金はブリーダーの販路開拓に利用できる補助金
小規模事業者持続化補助金は、ブリーダーが取り組む販路開拓や生産性向上に繋がる事業に利用できる補助金です。小規模事業者持続化補助金が、小規模事業者の販路開拓や生産性向上を目的とした取り組みにかかる費用の一部を支援する制度であるためです。
たとえば、ブリーダー業を営む個人事業主や小規模事業者が、チラシやウェブサイトを制作し、集客に繋げることは販路開拓に相当します。また、従業員の労務管理や動物の飼育状況などを管理するためのIT導入で、経営の効率化に繋げることは生産性向上に相当します。
ブリーダーは、事業の販路開拓や生産性向上に繋がる取り組みの経費として小規模事業者持続化補助金を利用できます。その際、ブリーダー業が小規模事業者持続化補助金に申請する場合の要件として、従業員数が20名以下の小規模事業者である必要があります。
また、小規模事業者持続化補助金の申請者は、税務署に開業届を提出済みで、すでに事業を開始していることが必須です。そのため、これからブリーダーを始めようとしている人の開業資金として補助金を申請することはできないため、開業後に申請を検討しましょう。
ブリーダーで小規模事業者持続化補助金を申請する際は、対象となる要件を確認する必要があります。申請を検討している人は無料診断で自社が対象となるか確認してみてください。
無料診断販路開拓や生産性向上に活用できる対象経費は10種類
事業の販路開拓や生産性向上を目指すために活用できる小規模事業者持続化補助金の対象経費は、全部で10種類あります。小規模事業者持続化補助金の申請を検討する人は、用意されている「補助対象経費」の種類や、補助対象経費の「活用事例」を確認してみましょう。
補助対象経費科目 |
活用事例 |
①機械装置等費 |
補助事業の遂行に必要な製造装置の購入などの経費 ※ブリーダーがトリミングのサービスを開始する際にトリミングテーブルやドッグバスを導入する費用にも利用可 |
②広報費 |
新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置などの経費 ※販促用のチラシ作成や、デザイン性・視認性に優れた看板作製にも利用可 |
③ウェブサイト関連費 |
ウェブサイトやECサイトなどの構築、更新、改修、開発、運用に係る経費 ※個体管理・繁殖情報・定期報告などを一括管理できるソフト導入費にも利用可 |
④展示会等出展費 |
展示会・商談会の出展料に係る経費 ※爬虫類や昆虫、熱帯魚などのブリーダーがイベントに出展する際の費用にも利用可 |
⑤旅費 |
販路開拓(展示会などの会場との往復を含む)を行うための旅費 ※イベントや買い付けなどに出向いた際の交通費にも利用可 |
⑥開発費 |
新商品の試作品開発に伴う経費 ※顧客の悩みや要望を取り入れたGPS付商品やペットフードなどの試作品開発にも利用可 |
⑦資料購入費 |
補助事業に関連する資料・図書にかかる経費 |
⑧借料 |
機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
⑨設備処分費 |
新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分に係る経費 |
⑩委託・外注費 |
店舗改装など自社では実施困難な業務を第3者に依頼する経費(契約必須) ※ドッグランの施工を業者に依頼する際の費用にも利用可 |
※小規模事業者持続化補助金<一般型>第15回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成
たとえば、インコや文鳥のブリーダーが、販売店舗を目立たせるためにデザイン性に優れた看板を作製するための経費には「広報費」を使えます。また、ECサイトの制作やウェブ広告で販売層を広げ、受注に繋げるための経費には「ウェブサイト関連費」を使えます。
小規模事業者持続化補助金を申請する場合、申請者は、補助金の使い道や事業計画、推定される効果などを記載した「補助事業計画書」を作成することになります。10種類の対象経費の中から必要な経費を組み合わせ、根拠と説得力のある補助事業計画を立てましょう。
ウェブサイト関連費のみでの申請はできない
小規模事業者持続化補助金は、ECサイト制作費やソフトウェア導入費などが対象となるウェブサイト関連費のみでの申請は出来ません。そのため、ウェブサイト関連費を申請する際は、必ず広報費や機材装置費などの他の対象経費と組み合わせて申請することになります。
たとえば、ブログやECサイトの制作と並行し、サイトのURLやQRコードを載せた販促用チラシを広報費で作成する工夫ができます。また、個体管理や繁殖情報などを一括管理できるソフトの導入と、飼育スペースの改装にかかる委託・外注費を合わせた申請も可能です。
小規模事業者持続化補助金は、ウェブサイト関連費のみの申請ができないため、他の経費項目と合わせた事業計画を立てる必要があります。その際、パソコンや、動物の写真を撮るためのカメラなど汎用性の高いものは補助金の対象外となるので留意しておきましょう。
小規模事業者持続化補助金の対象とならない経費例の詳細は「第15回公募要領」で確認できます。
小規模事業者持続化補助金の補助金額は最大で250万円
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、最高で250万円です。小規模事業者持続化補助金を申請する際の申請枠には、「通常枠」と「特別枠」があります。通常枠と、4種類の特別枠ごとに、補助金額を計算するための「補助率」や「補助上限額」が定められています。
一般型 |
通常枠 |
特別枠 |
|
申請枠 |
通常枠 |
賃金引上げ枠 |
卒業枠 後継者支援枠 創業枠 |
補助率 |
2/3 |
2/3 赤字事業者は3/4 |
2/3 |
補助上限額 |
50万円 |
200万円
|
|
インボイス特例が適用された場合 |
100万円 |
250万円 |
※小規模事業者持続化補助金<一般型>第15回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成
たとえば、創業枠で機材装置費と広報費、開発費を合わせて330万円を申請した場合、補助率2/3を掛けると補助金額は220万円と算出されます。しかし、インボイス特例の適用外であれば、定められた補助上限額は200万円のため、受けられる補助金額は200万円となります。
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠の場合は50万円、特別枠の場合は200万円です。さらに、「免税事業者」であった人が「適格請求書発行事業者」になることで「インボイス特例」が適用された場合は50万円が上乗せされ、最大で250万円が支給されます。
なお、補助対象経費の中の「ウェブサイト関連費」を活用する場合は、補助金額の計算方法が変わります。ウェブサイト関連費の上限額は、算出された補助金額の全体の1/4までの金額と定められているため、計算の工程が増えることになります。
ウェブサイト関連費を含めた補助金の計算方法が気になる人は、「いくら受け取れる?小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金額の関係性を解説」も参考にしてみてください。
必要書類は地域の商工会や商工会議所の支援を受けながら準備する
小規模事業者持続化補助金の必要書類は、商工会や商工会議所の支援を受けながら準備を進めることになります。そのため、補助金の申請を決めたらまず、自分が事業を行う地域の商工会または商工会議所を確認しておきましょう。
① 電子申請の際に必要なGビズIDプライムアカウントの申請・取得 ② 「経営計画書兼補助事業計画書」と「補助事業計画書」を作成 ③ 作成した書類の写しを商工会または商工会議所に提出し、「事業支援計画書」の作成を依頼する ④ その他の書類(小規模持続化補助金事業にかかる申請書、補助金交付申請書、宣誓・同意書、その他申請枠や申請条件によって必要な書類)を記入 ⑤ 後日作成の終わった事業支援計画書を受け取り、②④の必要書類と共に提出する |
たとえば、提出書類の1つである「事業支援計画書」は、商工会または商工会議所に作成を依頼する書類です。申請者はまず、「経営計画書」や「補助事業計画書」を作成し、商工会または商工会議所へ提出した際に「事業支援計画書」の発行を依頼するという流れです。
また、「経営計画書」や「補助事業計画書」は、補助金の採択審査において観点となる書類であり、根拠と説得力のある内容を作成する必要があります。申請者が書類の作成に慣れていない場合は、地域の商工会に相談もできるため、支援を受けてみましょう。
なお、「事業支援計画書」は、依頼してから発行までに約1週間かかります。電子申請に必要なGビズIDプライムアカウントは、申請してから取得までに約3~4週間かかります。申請してから受け取るまでに時間を要するものは、早めに準備しておきましょう。
当メディアを運営する株式会社SoLaboは小規模事業者持続化補助金の申請サポートを行っています。事業計画書やGビズIDの取得など、スムーズに申請したいという人は無料診断よりお問い合わせください。
無料診断電気代やえさ代の高騰による環境変化は加点に繋がる可能性がある
ブリーダーが現在直面している電気代やえさ代の高騰による環境変化は、小規模事業者持続化補助金の採択審査において加点に繋がる可能性があります。
小規模事業者持続化補助金は、「書面審査」と「政策加点審査」による加点方式の採択審査が行われます。書面審査では、経営計画書や補助事業計画書の内容が審査され、政策加点審査では、申請者の取り組む事業内容や、置かれた事業環境に対して加点されます。
重点政策加点 |
|
加点項目 |
概要 |
赤字賃上げ加点 |
賃金引上げ枠に申請する事業者のうち、赤字である事業者に対して加点 |
事業環境変化加点 |
ウクライナ情勢や原油価格、LPガス価格などの高騰による影響を受けている事業者に対して加点、 |
東日本大震災加点 |
福島第一原子力発電所の影響を受け、避難指示の対象となった地域の事業者および |
くるみん・えるぼし加点 |
次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく「くるみん認定」を受けている事業者、 |
政策加点 |
|
加点項目 |
概要 |
パワーアップ型加点 |
・地域資源型 ・地域コミュニティ型 |
経営力向上計画加点 |
中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業者に対して加点 |
事業承継加点 |
代表者の年齢が満60歳以上の事業者かつ、 |
過疎地域加点 |
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に定める過疎地域に所在し、 |
一般事業主行動計画策定加点 |
①従業員100人以下の事業者 |
※小規模事業者持続化補助金の「ガイドブック」を参考に株式会社SoLaboが作成
ウクライナ情勢によるガソリンやLPガスの価格高騰の影響で、電気・ガス代や物流価格が上昇し、食品価格の値上がりも続いています。動物の温度管理に不可欠なエアコン代や、ペットフード、ミルク代の高騰に影響を受けるブリーダーの環境は、事業環境変化加点の対象になります。
また、加点項目を申請する際は、「重点政策加点」と「政策加点」の項目の中から該当するものを1つずつ申請することができます。加点が増えればその分、採択審査を有利に進められる可能性もあるため、該当する項目があれば積極的に申請しましょう。
なお、第11回公募までは加点の対象となっていた「電子申請加点」はなくなり、第12回公募以降は、郵送での申請が減点対象へと改訂されました。そのため、補助金の申請はできる限り電子申請で行いましょう。
この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や生産性向上に繋がる事業にかかった経費の一部が支援される制度です。ブリーダーが小規模事業者持続化補助金に申請する場合、20名以下の従業員数で事業を行っている小規模事業者である必要があります。
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠の場合は50万円、特別枠の場合は200万円であり、インボイス特例が適用されると50万円が上乗せされます。申請の際は、11種類の補助対象経費から必要な経費を組み合わせ、補助事業計画を立てる必要があります。
小規模事業者持続化補助金を申請する際は、地域の商工会や商工会議所の支援を受けながら必要書類の準備を進めます。採択審査は、書類と政策加点による加点方式で行われるため、根拠と説得力のある書類を提出し、政策加点の該当する項目には積極的に申請しましょう。