IT導入補助金2024のインボイス枠とは?PCやレジなどの対象経費も解説
2024/08/14
2024/8/14
IT導入補助金2024における公募要領では、デジタル基盤導入枠が廃止され、インボイス枠が新設されました。インボイス制度への対応を見据えたシステム導入の支援という目的は変わりませんが、補助対象や補助率などにいくつかの変更点があります。
枠の変更にともない類型も変更されているため、IT導入補助金の最新の変更点が知りたい人は「IT導入補助金2024の変更点を解説」を確認してください。
当記事では、IT導入補助金2024のインボイス枠の概要を解説します。IT導入補助金のインボイス枠の対象経費や申請要件などを知りたい人は参考にしてみてください。
なお、当記事はIT導入補助金2024公式サイトの「資料ダウンロード」にある「インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)の公募要領」を参考に作成しています。
目次
インボイス枠はインボイス制度への対応に向けたITツールの導入を支援する枠
IT導入補助金のインボイス枠は、インボイス制度を見据えた、企業間取引のデジタル化に向けた取り組みの支援を目的とした枠です。インボイス対応類型と通常枠は、補助対象となるソフトウェアの機能の種類や補助額などが異なります。
インボイス制度は、所定の記載要件を満たした請求書を発行、保管する「適格請求書保存方式」のことです。適用される2023年10月からは、消費税の控除を受けるために、決まった形式の請求書が必要になります。
インボイス枠は、企業間取引でインボイス制度に対応するためのITツールの補助が可能です。会計や受発注などの機能をもつソフトウェアのほか、パソコンやレジなどのハードウェアも補助対象となります。
なお、インボイス枠には、申請できる類型が2種類あります。それぞれ対象となる事業者が異なるため、インボイス枠への申請を検討している人は、2種類の類型を確認しておきましょう。
インボイス枠には2種類の類型がある
インボイス枠には、申請要件や補助額の異なる「インボイス対応類型」「電子取引類型」の2種類があります。
インボイス枠の2つの類型の違いの1つとして、申請の対象者があげられます。インボイス対応類型は、中小企業や小規模事業者が対象であるのに対し、電子取引類型は、中小企業と取引している大企業も対象となります。
【インボイス枠の2つの類型の違い】
類型 | 類型の違い |
インボイス対応類型 | 【概要】 インボイス制度への対応や企業間取引のデジタル化を支援する類型 【対象者】 中小企業や小規模事業者 【導入できるツール】 ソフトウェアと、ソフトウェアに関連するハードウェア |
電子取引類型 | 【概要】 インボイス制度に対応した受発注システムの導入を支援する類型 【対象者】 中小企業や小規模事業者、大企業 【導入できるツール】 受発注にかかわるソフトウェアのみ |
参考:「資料ダウンロード」にある各類型の公募要領|IT導入補助金2024
たとえば、インボイス対応類型はデジタル化の促進も目的であるため、インボイス制度に対応したソフトウェアだけでなく、ハードウェアも導入できます。一方、電子取引類型は、インボイス制度に対応した受発注システムに限り導入が可能です。
インボイス枠は「インボイス対応類型」と「電子取引類型」の2つの類型があります。インボイス枠へ申請する際は、対象者や導入できるツールの種類が異なることに留意して類型を選択しましょう。
なお、当記事では、インボイス対応類型を中心に解説します。電子取引類型の申請を検討している人は、IT導入補助金2024の公式サイトから、資料ダウンロードにある「電子取引類型の公募要領」を確認してください。
インボイス枠の対象になるソフトウェアの機能は3種類ある
インボイス枠の対象になるソフトウェアの機能は3種類あります。インボイス枠では、公募要領で定められた機能を保有するソフトウェアを導入する必要があります。
【対象ソフトウェアの機能】
インボイス対応類型 | 電子取引類型 |
|
|
たとえば、インボイス対応類型に申請する場合は、会計や受発注など2種類の機能をもつソフトウェアを導入できます。一方、電子取引類型で導入できる機能は、クラウド型の受発注ソフトウェアのみとなっています。
インボイス対応類型の対象になるソフトウェアの機能は「会計」「受発注」「決済」の3種類です。電子取引類型に申請する場合は、受発注のみの導入となるため、複数の機能を導入したい人は、インボイス対応類型または通常枠の活用を検討してみてください。
なお、「会計」「受発注」「決済」以外の機能を保有するソフトウェアの導入を検討している事業者は、通常枠で対象になる可能性があるため「IT導入補助金の通常枠とは?対象となる要件も解説」の記事を確認してみてください。
インボイス対応類型のITツールは4つに分類されている
【ITツールの大分類】
分類 | カテゴリー |
大分類Ⅰ(ソフトウェア) | カテゴリー1「ソフトウェア」 |
大分類Ⅱ(オプション) | カテゴリー2「拡張機能」 カテゴリー3「データ連携ツール」 カテゴリー4「セキュリティ」 |
大分類Ⅲ(役務) | カテゴリー5「導入コンサルティング」 カテゴリー6「導入設定・マニュアル作成・導入研修」 カテゴリー7「保守サポート」 |
大分類Ⅳ(ハードウェア) |
カテゴリー8「PC・タブレット・プリンター・スキャナーおよびそれらの複合機器」
カテゴリー9「POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機」 |
参考:「インボイス枠(インボイス対応類型)の公募要領」|IT導入補助金2024
インボイス対応類型の申請は、大分類ⅠのカテゴリーⅠ「ソフトウェア」を1つ以上導入することが要件です。大分類Ⅱから大分類Ⅳは、導入する大分類Ⅰの「ソフトウェア」に関するものが補助対象経費です。
たとえば、「会計」機能をもつソフトウェアを導入する場合、導入するソフトウェアに関する拡張機能やソフトウェアの保守サポート、ソフトウェアを使用するために必要なPCなどを申請できます。
インボイス対応類型で申請する際は「ソフトウェア」の申請が必須となり、「オプション」「役務」「ハードウェア」は、申請をするソフトウェアに関するものが対象となります。
なお、すでに購入済みのソフトウェアの費用や拡張機能の追加、バージョンアップなどに関する費用は補助対象外です。インボイス対応類型の活用を検討している人は、新しく導入するソフトウェアに関する費用が補助対象になることを留意しておきましょう。
ハードウェア購入費は補助事業に必要なものが認められる
インボイス対応類型のハードウェア購入費は、導入するソフトウェアの使用に必要な場合のみ経費として認められます。その際、ハードウェアの価格は、市場価格を逸脱していないことが条件のひとつです。
たとえば、受発注に関するソフトウェアを導入する場合に、必要なPCが補助対象経費として認められます。また、決済に関するソフトウェアを導入する場合、ソフトウェア使用に必要なPOSレジとして活用するタブレットなどが補助対象経費として認められます。
ハードウェア購入費の補助は、導入するソフトウェアに必要な場合にのみ「PC」「POSレジの機器」などが補助対象として認められます。また、導入するハードウェアは、ソフトウェア購入先のIT導入支援事業者から購入する必要があります。
なお、ソフトウェア購入先のIT導入支援事業者がハードウェアを取り扱っているかについては、IT導入補助金2024の公式サイト「ITツール・IT導入支援事業者検索」から確認できるので、ハードウェア購入を検討している人は活用してみましょう。
インボイス対応類型で受け取れる補助金は最大で380万円
インボイス対応類型で受け取れる補助金の上限額は380万円です。「ソフトウェア」「PC・タブレット等」「レジ・券売機」でそれぞれ上限額が設定されており、合計した金額が最大で380万円になります。
【対象経費ごとの補助額と補助率】
対象経費 | 補助額 | 補助率 | |
ソフトウェア
|
1機能以上 | 下限なし~50万円 |
3/4以内(小規模事業者は4/5) |
2機能以上 | 50万円超~350万円 | 2/3以内 | |
PC・タブレット等 | ~10万円 | 1/2以内 | |
レジ・券売機 | ~20万円 | 1/2以内 |
参考:「インボイス枠(インボイス対応類型)の公募要領」|IT導入補助金2024
たとえば、ソフトウェアの導入で50万円を超えた補助額で申請する場合「会計・受発注・決済」のうち、2機能以上を有している必要があります。「会計」と「受発注」のソフトウェア2機能を導入する場合であれば、最大350万円まで補助申請が可能です。
また、PCを導入する場合は「会計・受発注・決済」いずれかのソフトウェアを導入することで最大10万円の補助申請が可能です。レジを導入する場合は、「決済」のソフトウェアを導入することで最大20万円補助金が受け取れます。
インボイス枠で受け取れる最大補助額は「ソフトウェアは2機能以上で350万円」「PC・タブレット等は10万円」「レジ・券売機は20万円」です。
なお、導入するソフトウェアの機能が重複している場合は、機能の数は1つとしてカウントされます。複数のソフトウェアを導入して補助金を50万円以上申請する人は、ソフトウェアの機能が重複していないか確認しておきましょう。
ソフトウェア購入の補助額が50万円を超える場合の計算方法
インボイス対応類型のソフトウェア購入に関わる費用(補助対象経費)の補助額が50万円を超える場合、適用される補助率が2つになります。ソフトウェアの補助額が「50万円までは3/4(小規模事業者は4/5)」「補助額が50万円を超える部分は2/3」の補助率が適用されます。
たとえば、ソフトウェアの導入に関わる費用が100万かかる場合、インボイス対応類型を活用して交付申請できる金額は約72万円です。
【計算例】
① (50万円まで)補助対象経費666,667 円×補助率 3/4 = 500,000円 ② (50万円以降)補助対象経費33,3333円 ×補助率 2/3 = 222,222円 ③ 合計 722,222円 |
ソフトウェアに関わる購入費用が、666,667円を境に補助率が変わり「666,667円以下の場合は補助率3/4」「666,667円を超えたら補助率2/3」となります。またソフトウェアが1機能のみの場合は、補助率3/4で補助金の上限額が50万円なので、機能数も確認しましょう。
なお、インボイス対応類型の補助額は、IT導入補助金2024の公式サイト「補助金シミュレーター」で計算のシミュレーションを行えます。デジタル化基盤導入類型の申請を検討している人は活用してみましょう。
インボイス対応類型の審査項目
インボイス対応類型の審査項目は、事業面と政策面にわかれています。申請した内容をもとに、関係分野の専門家で構成された外部審査委員会が審査を行います。
【インボイス対応類型の審査項目】
審査項目 | 審査事項 |
事業面からの審査項目 |
|
政策面からの審査項目 |
|
参考:「インボイス枠(インボイス対応類型)の公募要領」|IT導入補助金2024
たとえば、事業面では自社がインボイスにも対応したソフトウェアを導入し、生産性向上につながる計画を立てているかが審査されます。政策面では、導入するソフトウェアのオプションとして国の推進するセキュリティサービスを選定しているかも審査対象です。
審査項目は、2項目からなり「事業面は2つの審査事項」「政策面は3つの審査事項」と計5つの審査事項から審査が行われます。
なお、IT導入補助金の審査は、原則として申請した内容で行われます。そのため、事業者は、申請内容に相違や不足などがないか、申請前に確認しておく必要があります。申請内容を誤った場合でも、原則として補助金事務局から要請がない限り修正を行えないので留意しておきましょう。
加点項目
インボイス対応類型の審査項目には、加点項目があります。加点項目は、公募要領に記載のある関連事業や取組を行う事業者へ交付申請の審査で加点する項目です。加点項目への取組は、申請の必須条件ではないため事業者の任意で行えます。
【インボイス対応類型の加点項目】
項目 | 加点事項 |
加点対象の取り組み | (1)地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得していること (2)交付申請時点で地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を 経済産業省に提出していること (3)次の要件をすべて満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明していること ・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加 ・事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上 (4)導入するITツールとして「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選定していること (5)令和 5年度に「健康経営優良法人2024」に認定された事業者であること (6)「地域 DX 促進活動支援事業」における支援コミュニティ・コンソーシアムから支援を受けた事業者であること (7)介護保険法に基づくサービスを提供する事業所で、介護職員等特定処遇改善加算を取得しているものを運営している法人 (8) 応募申請時点で、以下のいずれかに該当すること ・女性活躍推進法に基づく認定(えるぼし)を受けている者 ・次世代法に基づく認定(くるみん)を受けている者 (9)中小機構が運営するデジタル化支援ポータルサイトにおいて「みらデジ経営チェック」を交付申請前に行っていること |
参考:「インボイス枠(インボイス対応類型)の公募要領」|IT導入補助金2024
たとえば、地域経済牽引事業計画の承認を取得する場合は、事業を行う都道府県で申請します。また、サイバーセキュリティお助け隊サービスの加点項目を利用する場合は、「商工会議所サイバーセキュリティお助け隊サービス」や「防検サイバー」などのサービスを導入します。
加点項目は、申請の必須項目ではありませんが、加点されることにより審査で有利になるため、申請前に「加点対象の取り組み」を実施できないかを確認してから申請してください。
なお、地域経済牽引事業や「サイバーセキュリティお助け隊サービス」などについて詳しく知りたい人は、IT導入補助金の公式サイトからインボイス対応類型の公募要領を確認してみましょう。
減点措置
インボイス対応類型には、審査上の減点措置が3項目あります。申請者が減点措置の条件に該当した場合、項目ごとに審査上の減点措置が適用されるため、事業者は減点措置に当てはまるものがないか確認する必要があります。
【インボイス対応類型の審査における減点措置】
項目 | 減点事項 |
減点措置 | (1) IT導入補助金2021において交付決定を受けた事業者 (2)IT導入補助金2022および2023において通常枠(A・B類型)、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型および複数社連携IT導入類型)で交付決定を受けた事業者 (3)IT導入補助金2024において、通常枠で申請を行っているもしくは交付決定を受けた事業者 (4) IT導入補助金2024以降において賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった事業者(※) (5) 中小企業庁が所管する他補助金において、賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった事業者(※) |
※(4)(5)は、やむを得ない理由によるものを除く |
参考:「インボイス枠(インボイス対応類型)の公募要領」|IT導入補助金2024
たとえば、すでに2024年の「通常枠」で申請をしたもしくは、交付決定を受けた場合は、減点の対象となります。また、過去にIT導入補助金の交付決定を受けた場合も減点措置が科される場合があるので、減点事項の確認は必ずしましょう。
減点措置に該当する場合は、減点措置に該当しない事業者と比べて採択結果に影響を与える可能性があります。事業者は、申請前に減点措置に該当する申請内容になっていないかを確認しておきましょう。
この記事のまとめ
IT導入補助金2024のインボイス枠は、インボイスへの対応や企業間取引のデジタル化に向けた取り組みの支援を目的とした枠です。インボイス枠は「インボイス対応類型」と「電子取引類型」の2つの類型があり、それぞれ対象者や申請できるITツールが異なります。
インボイス対応類型では、最大380万円の補助金を受け取れます。IT導入補助金には審査があるため、申請の際は枠ごとの審査項目に加えて加点項目と減点項目も意識してみてください。
なお、インボイス対応類型ではハードウェアも補助対象ですが、導入するソフトウェアの利用に必要な場合のみ経費として認められます。PCやレジなどのハードウェアの導入を検討している人は、導入するソフトウェアに必要なハードウェアか確認しておきましょう。