補助金ガイド

IT導入補助金2024の通常枠とは?対象となる要件も解説

2024/04/19

2022/6/29

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

IT導入補助金の申請を検討している人の中には、通常枠の対象となる事業者の要件や、対象になるソフトウェアが気になる人もいるでしょう。

当記事では、IT導入補助金2024の通常枠の概要を解説します。通常枠の対象となる要件や対象になるソフトウェアも解説するので参考にしてみてください。

なお、当記事はIT導入補助金2024公式サイトの「資料ダウンロード」にある通常枠の公募要領を参考に作成しています。

通常枠は生産性向上のためのITツール導入を補助するためのもの

IT導入補助金の通常枠は、生産性向上のために導入するITツールの費用の補助を目的とした申請の枠です。IT導入補助金のITツールは、ソフトウェアやオプション、サービスのことを指します。

たとえば、勤怠管理システムを導入することで、従業員が打刻すると直接システムに反映されるため、Excelでの勤怠情報の入力管理の業務が削減できます。また、販売管理システムを導入すると、売上や請求に関するデータをシステム上で一元管理できるため、売上の計算ミスや集計時間を削減できます。

ITツールの導入時に、通常枠に申請することでITツールの補助が受けられ、導入費用を安く抑えることが可能になります。ITツールの導入により業務工数が削減や、システムの一元管理なども期待できるため、生産性の向上も見込めます。

申請には通常枠の申請要件を満たす必要がある

IT導入補助金の通常枠へ申請するためには、通常枠の申請要件を満たす必要があります。通常枠の申請要件は「インボイス枠」や「セキュリティ対策推進枠」と共通の項目も含めて20項目程度あります。

今回の記事では、申請要件の中でも通常枠で特有の3項目を解説していきます。

【通常枠の特有の要件】

  • プロセス(機能)数によって補助額が異なる
  • 申請には労働生産性に関する数値目標を示す
  • 賃金引上げに関する事業計画を示す(補助金の申請額150万円以下の事業者は任意)

IT導入補助金の「通常枠」「インボイス枠」「セキュリティ対策推進枠」に共通する申請要件は、IT導入補助金2024公式サイトの「資料ダウンロード」にある各枠の公募要領を参考にしてみましょう。

プロセス数によって補助額が異なる

IT導入補助金の通常枠は、プロセス(機能)数によって補助額が異なります。プロセス数とは「顧客対応や販売支援」「会計や財務、経営」など、通常枠で導入できるソフトウェアの7つの機能をさします。

【導入するソフトウェアのプロセス(機能)数ごとの補助額と補助率】

項目 1プロセス以上 4プロセス以上
補助額 5万円~150万未満 150万円超~450万円以下
補助率 1/2以内
・通常枠で導入できるソフトウェアのプロセス
【業務プロセス】
①顧客対応や販売支援システム
②決済や債権債務、資金回収システム
③供給や在庫、物流システム
④会計や財務、経営システム
⑤総務や人事、給与や労務などの機能をもつシステム
⑥業種固有の機能をもつシステム
【汎用プロセス】
⑦汎用や自動化、分析ツール

参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト

たとえば、1プロセス以上のソフトウェアを導入したい場合は「会計や財務、経営」の機能をもつ、弥生会計を選びます。「会計や財務、経営」の機能をもつITツールを導入することで、1プロセス以上という機能数の条件を満たします。

4プロセス以上のソフトウェアを導入したい場合は「顧客対応や販売支援」と「業務固有のシステム」をもつREVIEW-Ⅲや「会計や財務、経営」をもつfreee会計、「汎用ツール」であるZoomの3種類のITツールを選択できます。

通常枠は、プロセス数によって補助額が異なります。補助額の範囲内であれば、対象となるITツールの1/2以内が補助されますが、上限額を超えた場合「1プロセス以上150万円未満」「4プロセス以上450万円」までしか補助されないことに留意してITツールを検討しましょう。

なお、ZoomやDropboxなどの「汎用プロセス」にあてはまるツールのみの導入は不可となります。業務効率化のための「汎用プロセス」のツールを導入したい人は、他のソフトウェアとあわせて申請しましょう。

導入するソフトウェアに合わせて他のITツールも申請できる

通常枠の申請では、大分類「ソフトウェア」を1つ以上導入することが必須です。ITツールの「オプション」や「役務」を申請するには、導入する大分類のソフトウェアに関連するものを選ぶ必要があります。

IT導入補助金の通常枠で補助の対象になるITツールは、大分類「ソフトウェア」大分類「オプション」大分類「役務」の3つに分類されています。

【ITツールの分類】

大分類 カテゴリー
大分類Ⅰ(ソフトウェア) カテゴリー1 ソフトウェア
大分類Ⅱ(オプション) カテゴリー2 拡張機能
カテゴリー3 データ連携ツール
カテゴリー4 セキュリティ
大分類Ⅲ(役務) カテゴリー5 導入コンサルティング
カテゴリー6 導入設定・マニュアル作成・導入研修
カテゴリー7 保守サポート

参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト

たとえば、給与計算のソフトウェアを導入する場合、オプションとして給与計算のソフトウェアの拡張機能を申請できます。また、役務として給与計算のソフトウェアの保守サポートにかかる費用を申請できます。 

通常枠は、ソフトウェアに利用する「オプション」と「役務」も同時に申請し、補助金を受けとることが可能です。また、ソフトウェアを導入せずに、オプションや役務のみでの申請はできないので注意してください。 

なお、通常枠ではPCやレジなどのハードウェアは補助の対象外ですが、デジタル化基盤導入枠で補助の対象となる可能性があります。ハードウェアの購入を検討している人は、「IT導入補助金のインボイス枠とは?PCやレジなどの対象経費も解説」で詳細を確認してみましょう。 

労働生産性に関する数値目標を示す必要がある

通常枠へ申請する要件の1つとして、労働生産性に関する数値目標があります。IT導入補助金で定義されている労働生産性は、「売上」「原価」「従業員数」「年間の平均労働時間」から計算できます。 

【労働生産性の計算式】

労働生産性 = 粗利(売上売上原価) ÷ 従業員数 × 年間の勤務時間平均(一人あたり)

労働生産性に関する数値目標は、1年後の労働生産性の伸び率が3%以上、3年の事業期間に年平均成長率3%以上になるように設定します。IT導入補助金に採択された場合、3年度目まで数値目標の報告を行います。

申請の際、基準となる労働生産性を入力するため、IT導入補助金2024に申請する人は、前年度の4月から3月までの「売上」「原価」「従業員数」「年間の平均労働時間」を用意しておく必要があります。

労働生産性の数値目標は、前年度の労働生産性を計算し「1年後は3%以上」「3年の事業期間に年平均成長率3%以上」になるように目標を立てます。また、事業実施効果報告の際に労働生産性の数値目標を達成していない場合、補助金の返還を求められる可能性もあることを留意しておきましょう。

賃金引上げに関する事業計画を示す必要がある

通常枠には、賃金引上げに関する要件が2つあります。通常枠に補助金額を150万円以上で申請する人は、賃金引上げに関する2つの要件を満たす事業計画を策定して、従業員へ表明する必要があります。150万円未満で申請する人の賃金引上げに関する要件は、必須の要件ではなく加点項目として扱われます。

【賃金引上げに関する要件】

  • 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

通常枠に150万円以上で申請する人は、賃金引上げの事業計画を示すだけではなく、事業終了後に設定した目標を達成する必要があります。事業計画で示した賃金引上げ目標が達成できなかった場合、補助金の返還を求められます。

通常枠に150万円以上で申請する人は「賃金引上げの計画を従業員に表明すること」と「賃金引上げ関する要件の2つを達成すること」で補助金が受け取れることを留意しておきましょう。

ただし、小規模事業者や学校など一定の要件を満たす事業者は、150万円以上で申請する際、賃金引上げに関する事業計画の策定が必要ありません。賃金引上げに関する事業計画の策定の対象外になる事業者は「通常枠の公募要領」に記載されています。

通常枠の審査項目

通常枠の審査項目は、申請した内容をもとに行う審査に使用される項目です。審査項目は公募要領で公開されているため、申請前に確認して申請する内容に反映することで採択結果に影響を与えられる可能性があります。

【通常枠の審査項目】

審査項目 審査事項
事業面からの審査項目
  • 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識
  • 自社の状況や課題分析および将来計画に対し、改善すべきプロセスが、導入する「ITツール」の機能により期待される導入効果とマッチしているか
  • 内部プロセスの高度化、効率化及びデータ連携による社内横断的なデータ共有・分析等を取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか
計画目標値の審査
  • 労働生産性の向上率
政策面からの審査項目
  • 生産性の向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか
  • 国の推進するセキュリティサービスを選定しているか
  • 賃上げに取り組んでいるか

参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト

たとえば、導入するITツールの機能が、自社の状況を分析して作成した改善内容に対して、効果のあるものかが審査されます。また、労働生産性の向上の計画値も審査の対象になっています。 

通常枠の審査事項は「事業面が3つ」「計画目標値が1つ」「政策面が3つ」と計7つの審査事項が設定されています。

なお、IT導入補助金は、原則申請した内容で審査されます。申請内容は、補助金事務局から再提出を指示される場合を除き修正ができません。そのため、事業者は、申請する内容に相違や不足がないか提出前に確認を行うようにしましょう。   

加点項目

通常枠の加点項目は、事業者の審査時に加点するための制度です。加点項目の関連事業や取組は、申請に必須ではないため、事業者が任意で取組むかどうかを決められます。 

【通常枠の加点項目】

審査項目 審査事項
加点対象となる取り組み (1)地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得していること。
(2)交付申請時点で地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること。
(3)導入するITツールとしてクラウド製品を選定していること。
(4)導入するITツールとして「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選定していること
(5)導入するITツールとしてインボイス制度対応製品を選定していること
(6)補助金申請額150万円未満の申請者であって、事業計画期間において、以下の要件をすべて満たす3年の事業計画を策定し、実行していること
・事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。
・事業計画期間において、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上向上させること
(7) 補助金申請額150万円以上の申請者であって、事業計画期間におい
て事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にしていること
(8)令和 5年度に「健康経営優良法人2024」に認定された事業者であること
(9)「地域 DX 促進活動支援事業」における支援コミュニティ・コンソーシアムから支援を受けた事 業者であること
(10)介護保険法に基づくサービスを提供する事業所で、介護職員等特定処遇改善加算を取得している ものを運営している法人
(11)応募申請時点で、以下のいずれかに該当すること
・女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定を受けている者
・次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定を受けた者

参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト

たとえば、インボイス制度に対応するために、請求書の明細を発行できるソフトウェアを導入している場合は加点項目に該当します。また、地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画を都道府県知事から承認されている場合も加点項目の対象です。 

加点項目は、必須項目ではありませんが審査時に有利になる審査項目になるので、申請前に実施できるかどうかを確認しましょう。

なお、インボイス対応の製品やクラウド製品は、IT導入補助金2024公式サイト「ITツール・IT導入支援事業検索」から検索できるため、加点項目の要件を満たすソフトウェアの導入を検討している事業者は活用してみましょう。

減点措置

通常枠には、審査上の減点措置が4項目あります。申請する内容が減点措置の条件に該当する場合、項目ごとに審査上の減点措置が適用されます。そのため、事業者は申請する内容が減点措置にあてはまるか確認する必要があります。

【通常枠の減点項目】

審査項目 審査事項
減点措置 (1) IT導入補助金2022および2023において、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)で交付決定を受けた事業者
(2) IT導入補助金2024において、インボイス枠(インボイス対応類型および電子取引類型)で申請を行っているもしくは交付決定を受けた事業者
(3)IT 導入補助金2024以降において賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった事業者(※)
(4)中小企業庁が所管する他補助金において、賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった事業者(※)
※やむを得ない理由によるものを除く

参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト

たとえば、通常枠を申請する時点で、インボイス枠へ交付申請をしている事業者は、減点措置の条件に該当します。また、通常枠で導入するソフトウェアが「会計・受発注・決済」の機能を保有していて、インボイス枠で申請している機能が重複する場合は、減点措置が講じられます。

減点措置に該当する場合は、減点措置に該当しない事業者と比べて採択結果に影響を与える可能性があります。すでにインボイス枠へ申請している事業者が通常枠へ申請する場合は、2つの申請内容が重複しないように注意しましょう。

この記事のまとめ

IT導入補助金2024の通常枠は、事業者が自社の強みや弱みを分析して生産性向上のために導入するITツールに関する費用の一部を補助することを目的とした事業です。通常枠は、導入するソフトウェアのプロセス数によって補助額が異なります。

IT導入補助金では、申請要件の1つ労働生産性の向上を「売上」「原価」「従業員数」「年間の平均労働時間」から判断します。そのため、事業者は、あらかじめ2023年4月~2024年3月までの「売上」「原価」「従業員数」「年間の平均労働時間」を用意しておきましょう。

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