補助金の計算方法と計算例を解説

補助金の申請を検討している人の中には、受け取れる金額がいくらなのかを知りたい人もいますよね。補助金額を知るためには、基本的な計算方法があるので、決まった値をあてはめて計算すれば、おおよその金額を確認できます。

当記事では、補助金の計算方法と計算例を解説します。補助金額を算出する際の具体例もあわせて紹介するので、補助金の計算方法を確認したい人は、参考にしてみてください。

補助金の基本的な計算方法を確認する

国や地方自治体が公募する補助金にはさまざまな種類があるものの、基本的な計算方法は共通しています。そのため、基本的な計算方法を理解しておけば、どの補助金においてもおおよその補助金額を見積もることが可能です。

【補助金額の計算方法】

補助金額=補助対象経費×補助率

補助金額とは「いくらもらえるか」の金額であり、補助対象経費とは物品の購入やサービスの契約などに「いくらかかったか」の金額です。また、補助率とは「補助対象経費の何割が補助金として支給されるか」を示す割合で、各補助金によって1/2や3/4といった割合が設定されています。

補助金額を確認したい場合は、基本的に「補助対象経費×補助率」の公式を使います。その際、補助金ごとに対象となる経費や補助率が設定されているため、各補助金に用意されている「公募要領」で概要を確認しておきましょう。

①補助金の計算に必要になる項目をおさえる

補助金の計算に必要になる項目をおさえましょう。補助金を計算する際は「補助対象経費」「補助率」「補助上限額」の3つを把握できていないと補助金額を算出できないため、各項目の概要や数値を理解しておくことが必要です。

【基本的な補助金の計算に必要な3項目】

項目 概要
補助対象経費 補助金の対象となる物品購入やサービスの契約などに支払った経費
補助率 補助対象経費に対して補助金で補助される割合
補助上限額 補助金で支給される最大の金額

補助対象経費は、各補助金によって異なる項目が設定されています。たとえば、機械購入や広告宣伝の経費が対象になる補助金やエコ投資の経費が対象になる補助金などさまざまです。使用した経費の合計額が「補助対象経費」となり、補助金額の計算に用いられます。

また、補助率や補助上限額も補助金ごとに異なる割合や金額が設定されています。補助対象経費に補助率をかけた金額が設定されている補助上限を超える場合、受け取れる金額は補助上限額までとなります。

補助金額を計算するには、補助対象経費、補助率、補助上限額の3項目を理解する必要があります。補助金を利用する際は、経費の合計と、各補助金に設定された補助率や補助上限額を正しく把握し、計算できるようにしておきましょう。 

②補助対象経費を算出する

補助金額を計算する際は、補助金を利用して購入や契約したい経費の合計を算出する必要があります。補助対象経費は、補助率や補助上限額のようにあらかじめ設定されている数値ではなく申請者によって異なるため、正確な補助金額を計算するには補助対象経費を正しく算出しておくことが重要です。

項目 活用例
機械装置等費
  • 生産性を向上させるための大型オーブン
  • 新商品開発に必要な製麺機
  • 業務効率化のための自動包装機
広報費
  • 販促用チラシの作成
  • 視認性の高い看板の制作
展示会等出展費
  • イベントや商談会の出展費

旅費

  • 地方の催事などへ出向いて販売促進を行った際の交通費や宿泊費

設備処分費

  • 事業に必要なスペースを確保するため不要なものを処分する費用

委託・外注費

  • ロゴデザインの委託費
  • 内装工事業者の委託費

ウェブサイト関連費

  • ウェブサイト制作費
  • リスティング広告掲載費
  • ECサイト改修費

クラウドサービス利用費

  • 顧客管理システム(CRM)の利用費
  • 在庫管理のためのクラウドベースのERPシステム導入費
  • 会計や請求業務を効率化するクラウドサービスの利用費

技術導入費

  • 新製品開発に必要な先進的な技術導入費
  • 自動化システムやAI技術を導入するための費用
  • 製品の品質検査装置や測定機器の導入費

専門家経費

  • 経営コンサルタントによる経営改善アドバイス費用
  • ITコンサルタントによる業務効率化の支援費用
  • 法律専門家によるコンプライアンスアドバイス

たとえば、事業の販路開拓を目的とする補助金では、新商品作成のための機械購入費や、あらたな集客を得るためのECサイト制作費などが対象経費として設定されています。近年では、窓の高断熱化を推進するための断熱材やガラス、窓枠などが対象経費になる補助金もあります。

一方で、販路開拓を目的に購入するものでも、補助対象外となる経費として設定されている場合もあるため、確認しておく必要があります。特に、車やパソコンなどの補助事業以外でも使用できるような汎用性の高いものは、対象外となる可能性が高い傾向があります。

補助金額を計算する際は、補助対象経費の合計額を算出しておく必要があります。自分が申請する補助金の経費項目の合計金額を正しく算出するためには、見積書や領収証などを用意し、正確な金額を用いて計算しましょう。

③算出した対象経費に補助率を掛ける

補助率は、補助対象経費に対して補助金で補助される割合であり、補助金額を算出する際は、対象経費の合計額に補助率を掛けて計算します。また、補助率は各補助金によって異なるため、自分が申請する補助金の補助率は公募要領にて確認しましょう。

たとえば、対象経費の金額が120万円の場合、補助率が3/4の補助金であれば、120万円×3/4=90万円なので、受け取れる補助金額は90万円となります。一方、同じ120万円の対象経費を使った場合でも、補助率が1/2の補助金ならば受け取れる補助金額は60万円となります。

補助金額を算出する際は、各補助金に設定されている補助率を用いて計算することになります。「補助対象経費の合計額×補助率」が補助金額を算出するための基本的な計算式となることを留意しておきしょう。

④算出された補助金額と補助上限額を比較する

補助対象経費の合計額に補助率を掛けて補助金額を算出したら、補助金額と補助上限額と比較しましょう。対象経費の合計×補助率で算出された金額が補助上限額を超える場合は、補助上限金額以上の金額は受け取れないためです。

たとえば、補助率が3/4で補助上限額が100万円の補助金に申請する際、申請額が160万円だった場合は、160万円×3/4=120万円という計算になります。その際、補助金に定められている補助上限額は100万円なので、実際に受け取れるのは100万円までの金額となります。

各補助金には、補助上限額が設定されています。対象経費の合計額に補助率を掛けて算出された金額が補助上限額を上回る場合、受け取れる補助金は補助上限額までの金額に制限されます。そのため、算出された補助金額が120万円だった場合でも、補助上限額が100万円であれば、申請額は100万円となることを留意しておいてください。

具体的な計算例を見て補助金の計算方法を理解する

具体的な数字や金額を用いた計算例を見て、補助金の計算方法を理解しましょう。補助率や補助上限額が異なれば、もらえる補助金額にも差が出るため、正確な数値で計算しなければなりません。

【申請枠ごとの補助率と補助上限額の例】

申請枠 A枠 B枠
補助率 2/3 2/3(赤字事業者の場合は3/4)
補助上限額 50万円 200万円

各補助金には、補助金の目的や対象事業などに応じて異なる申請枠が用意されている場合があります。表の例では、A枠とB枠のそれぞれの申請枠で、補助率や補助上限額に差があります。

たとえば、A枠で120万円の対象経費を使った場合の補助金額を計算すると、120万円に補助率2/3を掛けて約80万円が算出されます。しかし、通常枠の補助上限額は50万円であるため、実際に申請できる金額は50万円となります。(120万円×2/3=約80万円>50万円)

一方、確定申告で赤字だった事業者がB枠に申請する際の補助率は3/4です。補助対象経費の合計額が200万円だった場合、200万円に3/4を掛けて算出された150万円は補助上限額を上回らないので、そのままの金額が補助金額として受け取れることになります。(200万円×3/4=150万円<200万円)

実際に具体的な補助金の計算をする際は、補助金の申請類型や申請枠ごとに定められた割合や金額、その他の特別な条件などに沿って計算することになります。計算方法が難しい場合は、各補助金の公募要領や公式サイト内の計算例を確認してみてください。

申請する経費によって計算の工程が変わる場合もある

補助金の計算方法は、定められた補助率や補助上限額以外にも、各補助金に設定されたさまざまな条件によって異なることがあります。実際の補助金の例を用いて「申請する経費によって計算方法の工程が変わる」場合の計算例を確認してみましょう。

【補助率2/3・補助上限額50万円の補助金に申請する飲食店の計算例】

<条件>ウェブサイト関連費は、補助金額の全体の1/4までの金額が補助される
<申請する経費>業務用オーブン80万円、ウェブサイト関連費20万円
手順 計算方法
① 経費に補助率を掛ける 機械装置等費費:80万円×2/3=53万円
ウェブサイト関連費:20万円×2/3=13万円
55万円+13万円=66万円
② 算出された金額と補助上限額を比較する 申請金額:66万円>補助上限額50万円なので補助上限額の50万円を申請
③ 申請額の1/4以下の金額をウェブサイト関連費として申請する <申請する金額50万円の内訳>
機械装置等費 37.5万円
ウェブサイト関連費 12.5万円
計 50万円

たとえば、いくつかある補助対象経費の中の1つである「ウェブサイト関連費」にかかった経費のみに特別な条件が設けられた補助金があります。

この補助金では、ウェブサイト関連費として申請できる金額は全体の補助金額の1/4の金額までという条件があるため、50万円の申請額に対してウェブサイト関連費として申請できる金額は、最終的に12.5万円までとなります。

申請する補助金によっては、一部の対象経費のみ補助率が違う場合や、特定の条件が設けられている場合があります。その場合は条件を考慮しながら補助金の申請額を算出することになるため、計算工程を確認しておきましょう。

補助金を計算する際の注意点を確認する

補助金額を計算する際は、注意点を確認しておく必要があります。注意点を知らずに申請を行うと、想定よりも少ない補助金額が交付される可能性があるため、注意点を事前に確認しておきましょう。

【補助金申請に関する注意点】

  • 対象にならない経費を申請しても審査時に除外されてしまう
  • 補助金は消費税を抜いた金額で申請する
  • 経費項目ごとに補助率が異なる場合がある
  • 事業者の条件によって補助率や補助上限額が異なる場合がある

対象経費を計上する際は、補助対象にならない経費の項目を把握しておく必要があります。特に、汎用性の高いパソコンやコピー機、自転車などは補助対象外となる可能性が高いことを留意しておいてください。

また、補助金によっては経費ごとに異なる補助率が設定されている場合や、従業員数によって補助金額や補助率が異なる場合もあります。正確な補助金額を算出するためには、各補助金の申請枠に設定されている条件を確認し、計算ミスがないよう注意しましょう。

なお、補助金は消費税を抜いた金額に対して支給されます。補助金額を算出する際は、税抜きの経費で計算してください。

まとめ

補助金の計算方法は、基本的に「補助対象経費×補助率」の公式を用いて算出します。算出された金額と補助上限額を比較し、受け取れる金額を確定します。

補助金ごとに設定されている条件により、補助率や補助上限額が異なる場合や計算方法の工程が変わる場合もあるため、申請する補助金の概要を確認しておく必要があります。

注意点として、補助対象外の経費を申請した場合の金額は除外されることや、消費税が補助対象外であることを念頭に置きつつ、計算ミスを防ぐために計算方法の手順を事前に確認しましょう。

補助金におけるつなぎ融資とは?検討するときの確認事項を解説

補助金は申請してから入金されるまで時間がかかるため、その間の資金繰りを考慮しておくことになります。自己資金のみで資金繰りする方法がありますが、金融機関からのつなぎ融資により補てんする方法もあります。

当記事では、補助金におけるつなぎ融資について解説します。つなぎ融資を検討するときの確認事項も触れているため、補助金が入金されるまでの期間につなぎ融資を受けることを検討している人は参考にしてみてください。

つなぎ融資は補助金が入金されるまでの資金繰りを補てんするもの

補助金におけるつなぎ融資とは、補助金が入金されるまでの資金繰りを補てんするものです。補助金は原則として後から入金されるため、事業者は補助事業を実施するための資金を一時的に立て替える関係上、立替資金を融資により補てんする場合があります。

【補助金が入金されるまでの流れの例】

  1. 補助金を申請する
  2. 申請内容の審査が行われる
  3. 審査に通過した場合は採択通知を受け取る
  4. 補助事業を実施する
  5. 補助事業の完了を報告する
  6. 事業内容の検査が行われる
  7. 検査に通過した場合は補助金が入金される

補助金が入金されるまでの流れは、7工程に分けられます。補助金により各工程が異なる場合がありますが、原則として補助金が入金されるタイミングは、補助事業の実施後に行う検査を通過したあとになります。

補助金の支給対象は、原則として補助事業の実施期間に発生した経費のみとなります。事業者は補助金の採択を受けたあと、「設備の導入」「諸経費の支払」など、補助事業に関する経費の支払いを立替払いすることになります。

なお、補助事業が実施できない場合は、補助金を受け取ることができません。資金不足により補助事業が実施できない場合は、補助事業計画が採択されていても、補助金を受け取ることはできないため、補助金を申請する事業者は立替資金を必ず用意しましょう。

補助金によって資金繰りの補てん期間は異なる

補助金によって資金繰りを補てんする期間は異なります。補助金によって実施スケジュールが異なる関係上、自身が利用する補助金の入金時期を確認しておかなければ、資金繰りが難航するおそれがあるため、つなぎ融資を検討している人は補助金の入金時期を確認するようにしましょう。

【補助金ごとの入金時期の目安】

補助金名

入金までの期間の目安

小規模事業者持続化補助金

採択日から約9か月~10か月後

IT導入補助金

採択日から約7か月~8か月後

ものづくり補助金

採択日から約11か月~12か月後

たとえば、小規模事業者持続化補助金の入金時期の目安は「採択日から約9か月~10か月後」です。事業者は採択日以降に補助事業を開始するため、入金されるまでの約9か月~10か月の間の資金繰りを考慮することになります。

また、ものづくり補助金の入金時期の目安は「採択日から約11か月~12か月後」です。事業者は採択日以降に補助事業を開始するため、入金されるまでの約11か月~12か月の間の資金繰りを考慮することになります。

なお、入金までの期間は目安にすぎません。「補助事業の実施期間」「実施報告期限」など、補助金の公募回ごとに期限が定められているため、補助金を検討している人は公募回ごとのスケジュールを把握するようにしましょう。

つなぎ融資を受けるときの確認事項を押さえておく

つなぎ融資を検討している人は、つなぎ融資を受けるときの確認事項も押さえておきましょう。つなぎ融資は通常の融資と異なる場合があるため、補助金におけるつなぎ融資を検討している人はつなぎ融資の確認事項を把握しておきましょう。

【補助金におけるつなぎ融資の確認事項】

  • 融資の条件を確認する
  • 融資の時期を確認する

つなぎ融資を受けるときの確認事項として「融資の条件」「融資の時期」を確認することが挙げられます。融資を受ける金融機関によりますが、つなぎ融資を受けるときは融資の条件や融資の時期が通常の融資と異なる場合があるため、つなぎ融資を検討している人はそれぞれの項目を確認しておきましょう。

融資の条件を確認する

補助金におけるつなぎ融資を受けるときの確認事項のひとつは「融資の条件」です。つなぎ融資は補助金が入金されるまでの資金繰りを補てんする性質がある関係上、融資の条件が変則的となる場合があるため、つなぎ融資を検討している人は融資の条件を確認するようにしましょう。

【融資条件の例】

金融機関

融資の上限額

融資期間

返済方法

金融機関A
(つなぎ融資制度あり)

補助金の申請額まで

最大2年間

原則として一括返済

金融機関B

(つなぎ融資制度あり)

8,000万円まで

最大2年間

原則として一括返済

金融機関C

(つなぎ融資制度なし)

4,800万円まで

原則5年以内

毎月払い

たとえば、金融機関Aと金融機関Bは融資の上限額が異なります。「金融機関Aは補助金の申請額まで」「金融機関B8,000万円まで」など、融資の上限額が異なるため、つなぎ融資を検討している人は、融資の希望額と融資の上限額を考慮した上で金融機関を選ぶことになります。

また、金融機関Bと金融機関Cは返済方法が異なります。「金融機関Bは原則として一括返済」「金融機関Cは毎月払い」など、返済方法が異なるため、つなぎ融資を検討している人は、返済方法と資金繰り状況を考慮した上で金融機関を選ぶことになります。

なお、金融機関によってはつなぎ融資の制度がない場合があります。つなぎ融資の制度がなくとも、補助金のつなぎ融資として融資を受けられる場合があるため、特定の金融機関を希望している人は、金融機関に問い合わせることを検討してみましょう。

融資の時期を確認する

補助金におけるつなぎ融資を受けるときの確認事項のひとつは「融資の時期」です。つなぎ融資は補助事業を行うための資金という性質がある関係上、融資の時期が補助金に採択された時期に左右される場合があるため、つなぎ融資を検討している人は融資が実行される時期を確認するようにしましょう。

【つなぎ融資における融資時期の例】

融資の時期

融資における金融機関側の確認事項

補助金の採択後

補助金に採択されたことの証明をもとに融資を実行する

補助金の採択前

補助金に採択されたかどうかは確認せず融資を実行する

つなぎ融資の実行時期は「補助金の採択後」となる場合があります。「交付決定通知書」「採択通知書」など、補助金に採択されたことを証明することが融資条件に組み込まれている場合、補助金の採択結果が分かるまでは、融資を受けることができません。

一方、つなぎ融資の実行時期が「補助金の採択前」となる場合があります。採択の有無にかかわらず、融資を実行すると金融機関が判断した場合は、補助金の採択結果が分かる前に融資を受けられることがあります。

なお、採択結果が分かったあとに融資先を探すと、融資を受けるまで時間がかかる可能性があります。融資の審査には1か月以上かかる可能性がある関係上、採択後から融資先を探すと補助事業の実施計画に遅れが生じるおそれがあるため、つなぎ融資を希望する人は採択前から融資先を探すことを検討してみてください。

金融機関からの確認書が必要な補助金がある

補助金によっては、申請時に金融機関からの確認書が必要になる場合があります。「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」など、申請時に一部の事業者に対し、金融機関からの確認書の提出を求める補助金があるため、つなぎ融資を検討している人は留意しておきましょう。

【金融機関からの確認書における項目例】

  • 申請事業者名
  • 事業計画名
  • 補助事業の達成が見込まれると判断した理由
  • 金融機関が行う支援計画
  • 金融機関名・担当者名

金融機関からの確認書における項目例のひとつは「補助事業の達成が見込まれると判断した理由」です。「事業者のプレゼン」「事業計画書の内容」などから、金融機関が事業者に対し、補助事業が完遂できると判断した理由を金融機関に記載してもらうことになります。

金融機関からの確認書における項目例のひとつは「金融機関が行う支援計画」です。「融資を行う」「事業計画への助言を行う」など、金融機関が事業者に対し、補助事業の達成に向けて行う支援内容を金融機関に記載してもらうことになります。

なお、金融機関からの確認書はつなぎ融資を確約するものではありません。事業計画を金融機関が確認したということを証明する書類となるため、金融機関からの確認書をもってして、つなぎ融資を確実に受けられる保証にはならない点を留意しておきましょう。

まとめ

補助金におけるつなぎ融資とは、補助金が入金されるまでの資金繰りを補てんするものです。補助金は原則として後から入金されるため、事業者は補助事業を実施するための資金を一時的に立て替える関係上、立替資金を融資により補てんする場合があります。

つなぎ融資を検討している人は、つなぎ融資を受けるときの確認事項も押さえておきましょう。つなぎ融資を受けるときの確認事項として「融資の条件」「融資の時期」を確認することが挙げられるため、つなぎ融資を検討している人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

補助金によっては、申請時に金融機関からの確認書が必要になる場合があります。金融機関からの確認書は事業計画を金融機関が確認したということを証明する書類であり、つなぎ融資を確実に受けられる保証書類にはならない点を留意しておきましょう。

宿泊業における補助金の活用方法を解説

事業者を支援する制度の中には、事業者が金銭面での支援を受けられる補助金という支援制度があります。補助金は国や自治体が管轄しており、多くの種類があるため、宿泊業が活用できる補助金もさまざまです。

当記事では、宿泊業における補助金の活用方法を解説しています。宿泊業が利用できる補助金の具体例も紹介しているため、補助金の利用を検討している宿泊業の事業者は参考にしてみてください。

宿泊業における補助金の活用方法

宿泊業の事業者は、補助金をさまざまな取り組みに活用できます。補助金を利用することにより宿泊業の経営課題の解決につながるため、補助金を利用を検討している宿泊業の事業者は補助金の活用方法を確認してみましょう。

【宿泊業の補助金活用方法】

  • 宿泊客の集客
  • インバウンドの対策
  • 施設の設備投資
  • 業務のデジタル化
  • スタッフの育成
  • 周辺地域全体の活性化

宿泊業が補助金を活用することにより、宿泊施設と宿泊者の両者にとっての環境を整えることができます。補助金の利用を検討している宿泊業の事業者は、自社においてどのような取り組みを促進したいのかを明確にした上で、該当の取り組みに活用できる補助金を探しましょう。

宿泊客の集客

宿泊業における補助金の活用方法のひとつは、宿泊客の集客に活用することです。集客や販路開拓のための費用に対して支援を受けられる補助金制度もあるため、宿泊施設への集客につながる取り組みを実施する事業者は補助金を活用できる可能性があります。

【宿泊客の集客の例】

  • ホームページ制作
  • PRパンフレットの制作
  • PR動画の制作
  • web広告による宣伝

たとえば、補助金を活用した宿泊客の集客手段として、宿泊施設の宣伝や予約の受付が可能なホームページを作成することができます。インターネットの利用者に対して、宿泊施設をアピールすることにより、宿泊客の集客につなげることができるようになります。

宿泊業が補助金を利用することにより、販売促進の取り組みを行い宿泊客の集客につなげることができます。集客に取り組みたい宿泊業の事業者は、集客の取り組みを支援する補助金を探しましょう。

インバウンドの対策

宿泊業における補助金の活用方法のひとつは、インバウンドの対策に活用することです。インバウンド対策の取り組みにかかる費用に対して支援を受けられる制度もあるため、外国人旅行者に向けた環境づくりをしたい事業者は補助金を活用できる可能性があります。

【インバウンドの対策の例】

  • 多言語対応のタブレットを導入
  • 多言語対応の翻訳機を導入
  • キャッシュレス決済の導入
  • 宿泊施設内の洋式化

たとえば、補助金を活用したインバウンドの対策の手段として、外国人旅行者が自ら操作できる多言語に対応可能なタブレットを導入することができます。外国語を話せないスタッフでも多言語対応のタブレットを介すことにより、外国人旅行者への施設案内ができるようになります。

宿泊業が補助金を利用することにより、外国人旅行者に向けた宿泊施設の環境を整備することができます。インバウンドへの対策に取り組みたい宿泊業の事業者は、インバウンドの対策を支援する補助金を探しましょう。

施設の設備投資

宿泊業における補助金の活用方法のひとつは、施設の設備投資に活用することです。宿泊施設の設備投資にかかる費用に対して支援を受けられる補助金制度もあるため、宿泊施設の環境を整備したい事業者は補助金を活用できる可能性があります。

【施設の設備投資の例】

  • Wi-Fi環境整備
  • バリアフリー化
  • 省エネ設備の導入
  • 宿泊施設の改築

たとえば、補助金を活用したインバウンドの対策の手段として、外国人旅行者が自ら操作可能な多言語対応のタブレットを導入することができます。外国語を話せないスタッフでも多言語対応のタブレットを介すことにより、外国人旅行者への施設案内ができるようになります。

宿泊業が補助金を利用することにより、宿泊施設の設備を整備することができるため、宿泊客が利用しやすい環境づくりにつながります。宿泊客が利用しやすい宿泊施設の環境づくりに取り組みたい事業者は、施設の設備投資を支援する補助金を探しましょう。

業務のデジタル化

宿泊業における補助金の活用方法のひとつは、業務のデジタル化に活用することです。宿泊施設における業務のデジタル化に対して支援を受けられる補助金制度もあるため、宿泊施設の業務にITツールを導入したい事業者は補助金を活用できる可能性があります。

【業務のデジタル化の例】

  • ホテル管理システム(PMS)の導入
  • サイトコントローラーの導入
  • 無人チェックインシステムの導入
  • 宿泊予約システムの導入

たとえば、補助金を活用した業務のデジタル化として、ホテル業務におけるホテルの一連業務をまとめて管理可能なホテル管理システムを導入することができます。ホテル管理システムを導入することにより、顧客管理や予約管理などのホテル特有の業務を効率的に行えるようになります。

宿泊業が補助金を利用することにより、業務をデジタル化することができるため、宿泊施設の生産性の向上につながります。宿泊業において業務のデジタル化に取り組みたい事業者は、ITツールを導入できる補助金を探しましょう。

従業員の育成

宿泊業における補助金の活用方法のひとつは、従業員の育成に活用することです。宿泊施設の従業員を育成する際にかかる費用に対して支援を受けられる補助金制度もあるため、宿泊施設における人材の不足や定着の取り組みをしたい事業者は補助金を活用できる可能性があります。

【従業員の育成の例】

  • 従業員のキャリアアップの制度の整備
  • ITツールの導入に伴った研修
  • 地域を牽引する人材の教育
  • 就業環境の整備

たとえば、補助金を活用した従業員の育成として、非正規雇用の労働者を正社員にするための従業員の待遇改善に取り組むことができます。労働条件を整えることにより従業員のやる気を促しキャリアップができるため、人手不足の解消にもつながります。

宿泊業が補助金を利用して従業員を育成することにより、宿泊施設の人手不足の解消につながります。宿泊業における人材確保の取り組みに補助金を利用したいと考えている人は、従業員の雇用や教育に利用できる補助金を探しましょう。

なお、人材雇用に利用できる支援制度には、補助金のほかに厚生労働が実施する「助成金」もあります。従業員の雇用や教育に利用できる助成金について詳しく知りたい人は、厚生労働省の「事業主の方のための雇用関係助成金」を確認してみてください。

周辺地域全体の活性化

宿泊業における補助金の活用方法のひとつは、周辺地域全体の活性化に活用することです。周辺地域全体を活性化する取り組みにかかる費用に対して支援を受けられる補助金制度もあるため、宿泊施設を含めた周辺地域一体となって地域活性化に取り組む事業者は補助金を活用できる可能性があります。

【周辺地域全体の活性化の例】

  • 地域の複数業者の一体のキャッシュレス化
  • 地域全体のデジタルマーケティング
  • 地域全体の予約サイトを構築
  • 宿泊予約データを地域全体で共有

たとえば、補助金を活用した周辺地域全体の活性化として、周辺のお店やホテルが協力して観光地全体を盛り上げる取り組みができます。周辺地域の事業者が一体になって観光地を盛り上げる取り組みにより、お店や宿泊施設を含めた観光地全体の集客につながる可能性があります。

宿泊業が補助金を利用することにより、自社を含めた周辺地域全体を活性化することができるため、周辺地域全体の高付加価値化につながります。自社を含めた周辺地域の同業者や関わりのあるお店と共に地域全体を盛り上げたい人は、地域全体の取り組みに活用できる補助金を探しましょう。

宿泊業が申請できる補助金の具体例

宿泊業が申請できる補助金には、さまざまな種類があります。宿泊業の事業者には、宿泊業向けの補助金だけでなく、中小企業向けや対象地域の事業者向けなどのさまざまな種類の補助金が実施されています。

【宿泊業が申請できる補助金の具体例】
管轄 補助金名 特徴
国土交通省観光庁
インバウンド受入環境整備高度化事業 外国人旅行者の観光拠点施設の環境整備に活用できる
宿泊施設インバウンド対応支援事業 外国人旅行者の宿泊数向上の取り組みに活用できる
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業 宿泊施設におけるサステナビリティを配慮した設備の導入に活用できる
観光地・観光産業における人材不足対策事業 宿泊業の人手不足を解消するための設備投資やサービス導入に活用できる
経済産業省中小企業庁
IT導入補助金 業務をデジタル化するためのITツール導入に活用できる
小規模事業者持続化補助金 小規模事業者の販売促進の取り組みに活用できる
中小企業省力化投資補助金 人手不足解消につながる製品の導入に活用できる
事業承継・引継ぎ補助金 事業における経営資源の引継ぎや継承に活用できる
自治体
宿泊施設経営力向上推進事業補助金(東京都) 宿泊施設の収益力向上と従業員待遇改善の取り組みに活用できる
宿泊業生産性向上対策事業補助金(京都府) 宿泊業の人手不足解消の取り組みに活用できる
茅野市観光宿泊施設改装事業補助金(長野県茅野市) 宿泊施設の美観を維持するための改装に活用できる
北見市宿泊業環境整備支援事業支援金(北海道北見市) 宿泊施設の省エネルギー化に資する設備の導入に活用できる

たとえば、宿泊業が活用できる補助金には国の各省庁が管轄している補助金があります。国の各省庁が管轄している補助金は、国内にて事業を実施している事業者が対象となる補助金のため、日本全国の宿泊施設において利用できる可能性があります。

また、宿泊業が活用できる補助金には都道府県や市区町村ごとの各自治体が管轄している補助金があります。各自治体が管轄している補助金は、自治体の管轄地域にて事業を実施している事業者が対象となる補助金のため、地域ごとに活用できる補助金が異なります。

宿泊業が活用できる補助金は「観光庁」「中小企業庁」「各自治体」など、複数の機関において募集されています。宿泊業には国や自治体に合わせて複数種類の補助金が実施されているため、事業内容に合った補助金に申請してみましょう。

補助金を選ぶ際は募集状況を確認する

申請する補助金を選ぶ際は、公式サイトの確認や専門家への相談などを通して募集状況を確認しましょう。補助金は常に募集を受け付けているものではないため、補助金の申請をする場合は応募受付の締め切りや今後の募集スケジュールなどを確認する必要があります。

【補助金の募集状況を確認する方法】

  • 各省庁や自治体の公式サイトを確認する
  • 各補助金の公式サイトを確認する
  • 自治体の窓口に相談する
  • サポートをしてくれる専門家に相談する

たとえば、補助金の募集状況を確認したい場合は、公式サイトを確認する方法があります。国土交通省観光庁や経済産業省中小企業庁、各自治体などの公式サイトから、宿泊業の補助金を募集しているかを確認できます。

また、募集状況の確認だけでなく補助金申請におけるサポートも受けたい場合は、専門家に相談する方法があります。商工会議所や認定支援機関、よろず支援拠点、士業などの専門家に相談することにより、補助金の募集状況や申請方法などを教えてもらうことが可能です。

補助金の募集状況は公式サイトを確認する以外にも、専門家へ相談することでの確認も可能です。相談できる専門家について詳細を知りたい人は「補助金の相談は誰にする?相談できる内容に合った相談先を解説」を参考にしてみてください。

まとめ

宿泊業の事業者はさまざまな取り組みに対して補助金を活用できます。宿泊業が補助金を活用することにより、生産性向上や環境整備につながる取り組みを実施するきっかけになるため、宿泊施設と宿泊者の両者にとって環境を整えることができます。

宿泊業が活用できる補助金は「観光庁」や「中小企業庁」、「各自治体」にて募集があります。宿泊業には国や自治体に合わせて複数種類の補助金が実施されているため、事業内容に合った補助金に申請してみましょう。

補助金のメリットとデメリットを解説

補助金は、国や地方自治体が管轄する支援金のひとつです。事業者が補助対象となる事業を実施する際に、申請や審査などの手続きを行うことにより、補助金を受け取れる仕組みとなっています。

この記事では、補助金のメリットとデメリットを解説します。補助金の利用を検討している人は参考にしてみてください。

補助金のメリット

補助金は事業者に対する支援制度のひとつのため、補助金を受け取ることによってさまざまなメリットを得られます。補助金の利用を検討している人は、具体的なメリットを確認し検討材料にしてみましょう。

【補助金のメリット】

  • 経費の削減につながる
  • 返済の必要がない
  • 複数の補助金から選べる
  • 事業の成長につながる

補助金は国や地方自治体が事業者に対して用意しているため、対象事業を実施する事業者にとってメリットのある支援制度になります。補助金の利用を検討している人は、それぞれのメリットの詳細も確認してみましょう。

経費の削減につながる

補助金のメリットのひとつは、事業を実施する際にかかる経費の削減につながることです。事業を実施する際にかかった経費の一部が補助金として還元されることにより、自己負担が減るためです。

【補助金によって削減できる経費の具体例】

  • ソフトウェアやハードウェアなどのITツールの導入にかかる経費
  • チラシやWeb広告などの販路開拓にかかる経費
  • 機械設備やシステム構築などの設備投資にかかる経費
  • 経営資源の引継ぎにかかる経費

補助金の種類によって対象となる経費は異なりますが、さまざまな経費を削減できます。ソフトウェアの導入やチラシの作成などにかかる経費を削減できる補助金もあり、事業を実施する事業者の自己負担額が減らせます。

ただし、事業を実施する際にかかる経費の全額を補助金として受け取れるとは限りません。いくら補助金を受け取れるのかは補助金ごとの条件によって異なるため、いくら補助額を受け取れるか知りたい人は、各補助金の補助率や補助額を確認してみましょう。

返済の必要がない

補助金のメリットのひとつは、受け取った補助金に返済の必要がないことです。申請者が補助金に申請して受け取ったお金は、国や地方自治体の財源から補助金事務局を介して申請者へ返済不要のお金として交付されます。

補助金は、事業に対する資金の借り入れとは異なる資金調達法です。補助金は条件を満たすことにより返済不要のお金をもらえる資金調達法のため、借り入れによって起こりうる返済のリスクがありません。

ただし、補助金の規定に違反する場合は、補助金の返済を求められる可能性もあります。規定に反する具体例を知りたい人は「補助金は返済不要なのか?その他の支援制度を交えながら解説」を参考にしてみましょう。

複数の補助金から選べる

補助金のメリットのひとつは、複数の補助金から自身の用途に合ったものを選べることです。補助金は目的ごとに国や地方自治体が複数の制度を設けているため、さまざまな補助金を比較した上で自身に合った制度を選択できます。

【補助金の種類と目的の具体例】
項目 目的
IT導入補助金 ITツールを導入することによる生産性の向上
小規模事業者持続化補助金 小規模事業者の販路開拓による生産性の向上
ものづくり補助金 製品やサービス開発の設備投資による生産性の向上
事業継承・引継ぎ補助金 事業承継や事業再編による経済の活性化

たとえば、ひとつの事業が、複数の補助金の目的と合致する場合もあります。IT導入補助金と小規模事業者持続化補助金は、いずれも「販路開拓に関するITツールの導入」に利用できる補助金のため、より自身の目的や希望に合った補助金を選択できます。

ただし、補助金は年に数回の公募回が設けられている傾向にあるため、時期によっては補助金の公募を受け付けていない場合もあります。補助金の利用を検討している事業者は、申請したい補助金の公募スケジュールから募集を受け付けているか確認してみましょう。

事業の成長につながる

補助金のメリットのひとつは、補助金を利用することにより事業の成長につながる可能性があります。補助金は事業者をサポートする制度のため、申請者が事業を成長させるためのサポート体制が整っているためです。

【申請者のサポートを実施している機関】
サポートを実施している機関 特徴
商工会議所、商工会 各市区町村に設置されており、事業の発展につながるサポートを行っている
よろず支援拠点 国が設置した、経営に関するあらゆる相談を受け付けている
認定支援機関 専門知識を持つ事業者として国の認定を受け、中小企業を支援している

補助金を利用する際は、申請者と補助金事務局以外の第3者機関からのサポートを受けることが可能です。「商工会議所」や「認定支援機関」などの機関から経営課題を解決するためのアドバイスを受けることにより、事業の成長につながる可能性があります。

ただし、補助金はあくまでも申請者のサポートを実施した上で補助金を交付してくれる制度のため、必ず事業の成長につながるとは限りません。補助金を利用して事業を成長させたい事業者は、申請する補助金の公式サイトに掲載されている事例を参考にしてみましょう。

補助金のデメリット

補助金はさまざまなメリットを得られる反面、利用する人によってはデメリットに感じられることもあります。補助金のメリットを確認した人は、補助金のデメリットとなりうる点も確認しておきましょう。

【補助金のデメリット】

  • 申請後に審査がある
  • 手続きに時間がかかる
  • 課税の対象になる
  • 自己資金が必要になる

補助金は数万円や数百万円のお金を受け取れる制度のためさまざまな規定があり、利用する人の状況によってはデメリットになることが考えられます。補助金の利用を考えている人は、デメリットを確認した上で申請しましょう。

申請後に審査がある

補助金のデメリットのひとつは、申請後に審査があることです。申請者が申請した内容をもとに、補助金ごとの規定をもとに審査が行われ、審査に通過した人のみが補助金を受け取れる仕組みになっているからです。

補助金を利用する場合は、申請する補助額の大小に限らず必ず審査があります。補助金の審査は、補助金事務局や外部審査委員会から厳正に確認されるため、補助金事業に計画性や実現性のない場合は不採択になり補助金をもらえなくなります。

審査項目は各補助金の公式サイトにて公開されていますが、審査基準や審査内容は公表していません。補助金への申請を検討している人は、申請する前に審査項目を確認し備えましょう。

手続きに時間がかかる

補助金のデメリットのひとつは、手続きに時間がかかる傾向にあることです。補助金を受け取るためには、申請や報告などのさまざまな手続きを実施する必要があるため、手続きが数か月に及ぶこともあります。

【補助金の利用にあたって実施する手続き】

  • 申請
  • 実績報告
  • 入金
  • 実施後報告

たとえば、補助金の手続きは公募回ごとの「事業スケジュール」をもとに実施されます。申請内容にもとづき実施される審査はすぐに審査結果がわかるのではなく、予め定められている交付決定日に審査結果が公表されます。

補助金は公募回ごとに、交付決定日や報告期限などの「事業スケジュール」が公表されています。申請してからどれくらいの時間がかかるかを知りたい人は、各補助金の公式サイトから事業スケジュールを確認しましょう。

課税の対象になる

補助金のデメリットのひとつは、受け取った補助金が課税の対象になることです。補助金は事業者が事業を実施する際に経費を削減してくれる支援制度ですが、補助金を受け取った場合は翌年度に支払う税金の金額に影響する可能性があります。

補助金を受け取った場合は、翌年の確定申告の際に収入として扱う必要があります。補助金による収入から経費を差し引いた額が「所得」「収益」であり、補助金を受け取ったことにより得た「所得」と「収益」に税金が課されます。

課税の種類は「個人の場合は所得税」「法人の場合は法人税」として、補助金が課税対象になります。補助金に対する課税の詳細を知りたい人は、「補助金に税金はかかるのか?課税の仕組みを交えながら解説」を参考にしてみましょう。

自己資金が必要になる

補助金のデメリットのひとつは、事業を実施する際にかかる経費を支払うための自己資金が必要になることです。補助金を受け取れるのは、事業の実施にかかる経費の支払いよりも後だからです。

事業の実施にかかる経費分の自己資金がないと、補助金事業を実施する際に支払いができません。事業の実施にかかる経費の支払いは申請者が行う必要があり、支払いを終えた後に補助金事務局に報告することにより、補助金を受け取れます。

補助金の交付は後払いの形式で、補助金事務局から申請者に支払われます。申請者は受給予定の補助金分を自身で立て替える必要があるため、これから申請をしようと思っている人は申請前に事業の実施にかかる経費の自己資金を用意しておきましょう。

自分に合った補助金の探し方

メリットとデメリットを確認した上で補助金の利用を検討する人は、自身が対象となる補助金の中から利用したい補助金を見つけましょう。補助金には国や地方自治体が実施する複数の制度があるため、どのような補助金があるのかを知りたい人は自身に合った補助金の探し方を参考にしてみてください。

【自身に合った補助金の探し方】

  • 経済産業省のミラサポplusから調べる
  • 認定支援機関に相談する
  • 自治体の窓口に相談する
  • 商工会議所に相談する

たとえば、ミラサポplusのサイトを確認することにより、さまざまな補助金の情報を閲覧できます。経済産業省が管轄する各補助金の概要だけでなく、事例の掲載もあるため、自身に合った補助金を探すことが可能です。

また、自治体の窓口や商工会議所に相談することにより、地方自治体ごとの補助金の情報を得られます。各自治体によって補助金の実施の有無や実施している補助金の種類などが異なるため、自身に合った補助金の公募が行われているかを確認してみましょう。

なお、補助金の探し方には、認定支援機関や商工会議所などの専門家に相談する方法もあります。専門家に相談する場合であっても相談無料の所もあるため、補助金を利用したい人は各補助金の公式サイトを確認した上で専門家に相談してみましょう。

まとめ

補助金のメリットは、事業の実施にかかる経費をもらえることです。返済不要の補助金をもらえることにより、事業の成長につながるため、対象事業の実施をしたい人にとって大きなメリットといえます。

補助金のデメリットは、審査があることや手続きが面倒に感じられる可能性があることです。補助金を利用する場合は、事業スケジュールを確認した上で、審査を通過するために慎重に手続きを進めなければならないことがデメリットといえます。

インボイス制度への対応に使える補助金の探し方を解説

インボイス制度への対応は、相応の費用が必要になることが考えられます。会計ソフトの導入や経理担当者の増員などによる支出が見込まれる場合、補助金を活用したい人もいるでしょう。

当記事では、インボイス制度への対応に使える補助金の探し方を解説します。補助金の探し方を工程ごとに紹介するため、インボイス制度への対応に補助金を使いたい人は参考にしてみてください。 

補助金を探すときは手順を考えてみる

インボイス制度への対応に使える補助金を探したい場合は、探す手順を考えてみましょう。補助金は対象者や対象経費などの条件が定められているため、あらゆる補助金の中から、インボイス制度への対応に使える補助金を探すことになります。

【補助金を探すときの手順の例】
  1. 補助金の情報を集める
  2. 補助金の要件を確認する

    インボイス制度への対応に使える補助金を探すときの手順として「補助金の情報を集める」「補助金の要件を確認する」の工程が考えられます。補助金の探し方に決まりはありませんが、インボイス制度への対応に補助金を使いたい人は一例として各項目を確認してみましょう。 

    ①補助金の情報を集める

    インボイス制度に使える補助金を探すときの最初の工程は、補助金の情報を集めることです。補助金の情報を得るためには、いくつかの手段が考えられるため、インボイス制度への対応に補助金を使いたい人は補助金の情報を集める手段を確認してみましょう。

    【補助金の情報を集める手段の例】

    項目

    具体例

    窓口に問い合わせる

    • 自治体の窓口
    • 商工会議所や商工会の窓口

    インターネットから検索する

    たとえば、補助金の情報を集める手段のひとつは窓口に問い合わせることです。補助金は「国」「自治体」「財団」などの機関が管轄しているため、管轄機関の担当者に問い合わせることにより、インボイス制度への対応に使える補助金を把握できる可能性があります。

    また、補助金の情報を集める手段のひとつはインターネットから検索することです。経済産業省の「ミライサポート」や中小企業基盤機構の「支援情報ヘッドライン」などのサイトから検索することにより、インボイス制度への対応に使える補助金を把握できる可能性があります。

    なお、補助金は募集期間が定められています。補助金によっては募集期間が終了していることも考えられるため、補助金の情報を集めるときは最新の募集期間を確認することも覚えておきましょう。

    補助金を使う目的を明確にする

    補助金の情報を集めるときは補助金を使う目的を明確にしてみてください。インボイス制度への対応には「適格請求書の発行」「適格請求書の保存」など、あらゆる業務が考えられるため、補助金を使う目的を明確にすることにより、条件に合う補助金を探せる可能性があります。

    【補助金を使う目的の例】
    • ツールの導入
    • 人材の確保
    • 事業内容の転換

    たとえば、補助金を使う目的として「ツールの導入」が挙げられます。インボイス制度への対応に伴い、適格請求書の発行や控えの保存ができる会計ソフトを導入したい場合は会計ソフトの導入経費が補助対象となる補助金を探す方法があります。

    また、補助金を使う目的として「人材の確保」が挙げられます。インボイス制度への対応に伴い、経理担当者の増員やデジタルツールの活用ができる人材の確保をしたい場合は採用や人材育成の経費が補助対象となる補助金を探す方法があります。

    なお、補助金の検索サイトでは、キーワードを指定して検索できる場合があります。ツール名や対象経費を入力することにより、目的に合った補助金を検索できる可能性があるため、インボイス制度への対応に補助金を使いたい人はキーワードでの検索も検討してみましょう。

    ②補助金の要件を確認する

    インボイス制度に使える補助金を探すときの次の工程は、補助金の要件を確認することです。補助金は要件を満たせなければ採択されないため、インボイス制度への対応に補助金を使いたい人は補助金の要件を確認してみましょう。

    【要件の項目例】

    要件

    具体例

    対象事業

    • 革新的な「製品」「サービス」の開発や生産プロセス等の省力化を行うことにより、生産性を向上させる事業
    • ITツールの導入を行い、生産性を向上させる事業

    対象者

    • 中小企業
    • 小規模事業者

    対象経費

    • 機械装置費
    • ITツール導入費
    • 専門家経費
    • 原材料費

    たとえば、補助金の要件のひとつに「対象事業」が挙げられます。事業内容とインボイス制度の関連の有無は補助金次第ですが、「生産性向上」や「業務効率化」などの政策目標に応じた事業が対象となるため、補助金を申請するときは対象事業の要件を満たさなければなりません。

    また、補助金の要件のひとつに「対象者」が挙げられます。「中小企業」「小規模事業者」などの従業員数や資本金額によって、補助金の対象となる事業者が定められている場合があるため、補助金を申請するときは対象者の要件を満たさなければなりません。

    なお、独自の要件が定められている場合があります。「賃上げの要件を満たすこと」「特定機関の支援を受けること」など、補助金によっては独自の要件が定められている場合があるため、気になる補助金を見つけた人は要件を満たせるかどうかを確認してみましょう。 

    専門家への相談も検討する

    補助金の要件を確認するときは専門家に相談することも検討してみてください。補助金によっては要件を満たせるかどうかの判断が難しいことも考えられるため、専門家に相談することにより、申請可能な補助金を把握できる可能性があります。

    【相談先の例】

    相談先

    概要

    補助金の管轄機関

    「自治体の担当課」「委託機関の窓口」など、補助金を管轄する機関。特定の補助金に関する相談ができる。

    商工会議所

    地域の商工業者が作る団体。国の補助金や地域の補助金に関する相談ができる。

    よろず支援拠点

    国が都道府県ごとに設置した経営相談窓口。国の補助金や地域の補助金に関する相談ができる。

    認定支援機関

    中小企業支援の専門的知識や実務経験があるとして、国の認定を受けた支援機関。主に国の補助金に関する相談ができる。

    たとえば、相談先のひとつは商工会議所です。商工会議所は「税理士」「社会保険労務士」などの専門家に相談ができるため、補助金の要件を満たしているかどうかの判断やインボイス制度への対応に関する助言を受けられる可能性があります。

    また、相談先のひとつは認定支援機関です。認定支援機関は「司法書士事務所」「金融機関」などの業種があるため、認定支援機関ごとに業務内容が異なりますが、補助金の要件を満たしているかどうかの判断や申請書類の作成支援を受けられる可能性があります。

    なお、相談先によっては費用が必要となる場合もあります。無料相談窓口を設けている相談先もありますが、相談先によっては費用が必要となることも考えられるため、補助金に関する相談をしたい人は相談先の公式サイトを確認することも検討してみましょう。

    国や自治体の補助金はインボイス制度への対応に使える可能性がある

    インボイス制度への対応を行う場合、国や自治体の補助金が使える可能性があります。国や自治体では、それぞれの政策目標に応じた補助金を実施しているため、インボイス制度への対応に補助金を使いたい人は国や自治体の補助金を検討してみましょう。

    【インボイス制度への対応に使える可能性のある補助金】

    項目

    補助金

    募集期間(2024829日現在)

    国の補助金

    IT導入補助金

    未定

    小規模事業者持続化補助金

    未定

    自治体の補助金

    小規模事業者デジタル化支援推進事業費補助金(神奈川県)

    2024112917時締切

    デジタル人材マッチング支援事業補助金(千葉県)

    2025331日締切

    インボイス制度への対応に使える補助金のひとつは国の補助金です。国の補助金は「ツール導入費の補助」「特例による補助上限額引き上げ」など、インボイス制度への対応を支援する補助金制度も設けられているため、インボイス制度への対応に使える補助金の選択肢として挙げられます。

    インボイス制度への対応に使える補助金のひとつは自治体の補助金です。自治体の補助金は「地域活性化」「中小企業支援」など、都道府県や市町村ごとの政策目標に応じた補助金が設けられているため、インボイス制度への対応に使える補助金の選択肢として挙げられます。

    なお、今回紹介した補助金は一例です。国や自治体の補助金はこれらの他にもあるため、インボイス制度への対応に補助金を使いたい人は国や自治体の公式サイトから補助金の情報を集めることも検討してみましょう。 

    まとめ

    インボイス制度への対応に使える補助金を探したい場合は、探す手順を考えてみましょう。補助金を探す手順は他にも考えられますが、一例として「補助金の情報を集める」「補助金の要件を確認する」の工程が挙げられるため、補助金を探したい人は各項目を確認してみましょう。

    インボイス制度への対応に使える補助金を探すときの最初の工程は、補助金の情報を集めることです。情報を集める手段として「窓口に問い合わせる」「インターネットから検索する」の方法が考えられるため、補助金を探したい人は情報を集めることから始めてみましょう。

    インボイス制度への対応に使える補助金を探すときの次の工程は、補助金の要件を確認することです。補助金は「対象事業」「対象者」などの要件が定められているため、気になる補助金を見つけた人は要件が満たせるかどうかを確認してみましょう。

    Jグランツとは

    jGrants(Jグランツ)とは?

    国や自治体が実施する補助金の中には、申請方法としてjGrants(以下、Jグランツ)を採用している制度があります。はじめて補助金の申請をする人や、これまで書類郵送での申請をしていた人は、Jグランツがどのようなものか気になっている人もいるでしょう。

    当記事ではJグランツとは何かを解説しています。Jグランツの概要を知りたい人や、はじめてJグランツを利用する人は参考にしてみてください。

    なお、当記事は「Jグランツ」および「gBizID」の公式サイトをもとに作成しています。

    Jグランツとは補助金の電子申請システムのこと

    Jグランツとは、デジタル庁が運営する補助金の電子申請システムのことですJグランツを利用することにより、パソコンやスマホを用いて補助金の応募から採択後の手続きまでをオンラインで完結できます。

    【Jグランツを利用してできること】

    • 申請したい補助金の検索
    • 国や自治体の補助金への申請
    • 申請内容や審査結果の確認
    • 事業者情報や補助事業計画の変更手続き
    • 実績報告の提出
    • 補助金の請求手続き
    • APIを活用した補助金データの取得

    Jグランツを利用してできることのひとつとして「申請したい補助金の検索」が挙げられます。Jグランツには補助金検索機能があり、補助金名や業種、対象地域など条件を絞って自社に合う補助金を探すことが可能です。

    また、Jグランツを利用してできることのひとつとして「国や自治体の補助金への申請」が挙げられます。パソコンやスマホからJグランツ内の申請フォームに必要事項を入力して送信することにより、書類の郵送や窓口へ行くことなく補助金の申請を完了させることができます。

    そして、Jグランツを利用してできることのひとつとして「申請内容や審査結果の確認」が挙げられます。Jグランツのマイページにログインすることにより、Jグランツから申請した内容や審査における採択結果を確認することが可能です。

    ほかにも、事業者情報の変更や採択後の手続き、APIによる補助金データの取得など、補助金申請に関わるさまざまな工程をJグランツから行うことができます。2019年の運用開始以降、国が実施する補助金だけでなく地方自治体の補助金においてもJグランツによる電子申請が取り入れられています。

    Jグランツを利用するメリット

    書面による郵送申請と比較した場合、Jグランツによる補助金の電子申請には複数のメリットが挙げられます。補助金の申請において、Jグランツによる電子申請にはどのようなメリットがあるのかを確認してみましょう。

    【補助金の申請にJグランツを利用するメリット】

    • 時間や場所を問わずに申請できる
    • コスト削減につながる
    • 事業者の基本情報を保存しておける

    Jグランツを利用するメリットのひとつは「時間や場所を問わずに申請できること」です。パソコンやスマホなどの端末があれば、オンライン上で24時間365日時間や場所を選ばずに手続きができるため、申請窓口や郵便局などの営業時間を気にすることなくオフィスや自宅などから申請ができます。

    また、Jグランツを利用するメリットのひとつは「コスト削減につながること」です。補助金の申請から受給までをオンラインで完結できることから、書類の郵送にかかる金銭面のコストや申請窓口へ行くための時間面のコストを削減することにつながります。

    そして、Jグランツを利用するメリットのひとつは「事業者の基本情報を保存しておけること」です。Jグランツに基本情報を保存しておけば、複数の補助金へ申請する場合や翌年度以降に別の補助金へ申請する際などに登録した情報を反映できるため、必要事項の入力にかかる工数を削減できます。

    Jグランツを利用する主なメリットは、申請者の負担や経費の軽減につながることです。補助金によっては書面による郵送申請とJグランツによる電子申請を選べるものもあるため、Jグランツを利用するメリットをふまえて申請方法を選択してみてください。

    Jグランツを利用するデメリット

    書面による郵送申請と比較した場合、Jグランツによる補助金の電子申請にはデメリットとなり得る点もあります。メリットを確認した人は、Jグランツによる電子申請のデメリットも確認してみましょう。

    【Jグランツを利用するデメリット】

    • 操作方法の確認など手間が発生する
    • 紙の書類はデータ化して送信する必要がある
    • システムエラーが起こる可能性がある

    Jグランツを利用するデメリットのひとつは「操作方法の確認など手間が発生する可能性があること」です。はじめてJグランツを利用する人や電子端末の操作に慣れていない人にとっては、操作方法の確認や登録手続きなどが手間と感じられる可能性があります。

    また、Jグランツを利用するデメリットのひとつは「紙の書類はデータ化して送信する必要があること」です。Jグランツによる申請の場合、原則として各種補助金の必要書類もJグランツから提出することになるため、紙で発行された書類はデータ化して添付ファイルとして送信する必要があります。

    そして、Jグランツを利用するデメリットのひとつは「システムエラーが起こる可能性があること」です。推奨環境以外の端末から操作を行った場合にエラーとなることや、一定時間操作をせずに申請画面を放置した場合にはタイムオーバーとなり入力内容が消去されることがあります。

    Jグランツを利用する主なデメリットは、電子システム特有の手間やエラーが発生する可能性があることです。はじめて利用する際には登録に時間が掛かる可能性があるほか、締め切り前はシステムが混みあいエラーが発生しやすくなる恐れがあるため、Jグランツによる申請は時間に余裕をもって行いましょう。

    Jグランツを利用して補助金を申請する手順

    Jグランツによる補助金の電子申請を行う場合、申請から受け取りまでのさまざまな場面においてJグランツから手続きを行う必要があります。補助金の申請を検討している人は、Jグランツを利用して補助金を申請する際の手順を確認しておきましょう。

    【Jグランツによる補助金申請手順】

    フェーズ

    手順

    詳細

    応募

    ①申請したい補助金を探す

    Jグランツの補助金検索機能から補助金を探す

    ②gBizIDの取得・ログイン

    取得したgBizIDを使ってJグランツのマイページへログインする

    ③申請内容の入力・送信

    申請フォームの項目に沿って必要事項の入力と書類の添付を行う。

    申請内容をもとに審査が実施される

    ④採択結果の確認と交付申請

    採択された場合はフォームの項目に沿って交付申請を行う

    事業実施

    ⑤必要な手続きの実施

    補助事業期間中に事業計画等の変更がある場合はJグランツのマイページから変更手続きを行う

    受取り

    ⑥実績報告

    補助事業の終了後、Jグランツのマイページから実績報告を行う

    ⑦精算払請求

    実績報告をもとに補助金額が確定される(確定検査)。

    金額の確認後、Jグランツのマイページから精算払請求を行うことで補助金が振り込まれる

    補助金を利用する場合、まずは利用したい補助金へ応募します。Jグランツでは補助金の検索と申請に加え、申請内容をもとに行われる審査結果の確認と補助を受けるための手続きである交付申請も行うことができます。

    つぎに、申請した内容に沿って補助金の対象となる事業である「補助事業」を実施します。補助事業の実施期間において、事業計画や事業者情報など申請内容に変更が生じた場合はJグランツのマイページから変更手続きをすることが可能です。

    そして、補助事業完了後は実績報告と補助金の請求を行います。実績報告の提出や確定した補助金の請求手続きもJグランツのマイページから行うことができます。

    補助金を利用するときの流れは、原則「①補助金への応募」「②補助事業の実施」「③補助金の受取り」となっています。Jグランツによる申請手続きも、補助金申請の手順に沿ってマイページから各種手続きを行うこととなります。

    なお、各手続きにおけるJグランツの詳しい利用方法を知りたい人は「事業者クイックマニュアル」を参考にしてみてください。

    Jグランツの利用にはgBizIDの取得が必要

    Jグランツの利用には、複数の行政サービス にログインできる共通認証システム「gBizID」の取得が必要です。補助金の電子申請ではJグランツとgBizIDの両方を使用しますが、それぞれ異なるシステムであるため、各システムにおける役割の違いを確認しておきましょう。

    【JグランツとgBizIDの役割】

    システム名

    概要

    Jグランツ

    補助金の電子申請システム。

    Jグランツのマイページにある申請フォームから補助金申請を行う

    gBizID

    複数の行政サービスにログインできる共通認証システム。

    gBizIDを使ってJグランツのマイページにログインする

    gBizIDとは、Jグランツにログインするための認証システムのことです。gBizIDを取得しなければ補助金の申請を行うJグランツのマイページへのログインができないため、Jグランツを利用するために事前にgBizIDを取得しておく必要があります。

    また、gBizIDを取得することにより、複数の行政サービスを利用できるようになります。一度取得すれば有効期限なく利用できる共通認証システムであるため、翌年度以降にJグランツを通して別の補助金に申請する場合にも、同一のgBizIDを利用して申請が可能です。

    Jグランツは補助金の電子申請を行うためのシステムであり、gBizIDはJグランツを利用するために必要となるアカウントです。Jグランツを利用して補助金の申請を行う場合には、gBizIDの取得もあわせて必要となる点に留意しておきましょう。

    gBizIDの種類

    gBizIDには大きく3種類のアカウントがあります。アカウントの種類によって利用できる行政サービスが異なるため、利用したいサービスに合わせてアカウントを申請する必要があります。

    【gBizIDの種類】

    種類

    概要

    発行までの目安

    gBizIDプライム

    書類審査後に発行されるアカウント。

    Jグランツのすべてのサービスを利用できる

    オンライン:即日

    書類郵送:1~2週間程度

    gBizIDメンバー

    gBizIDプライムが発行する従業員用アカウント。

    Jグランツのすべてのサービスを利用できる

    即日

    gBizIDエントリー

    審査不要で発行できるアカウント。

    Jグランツの利用は不可

    即日

    gBizIDプライムは申請内容の確認(審査)後に発行されるアカウントであり、Jグランツのすべてのサービスを利用できます。gBizIDプライムを取得していれば、Jグランツに限らずgBizIDが対応するすべてのサービスの利用が可能です。

    また、gBizIDメンバーはgBizIDプライムから発行される従業員用のアカウントであり、Jグランツのすべてのサービスを利用できます。携帯電話からの本人確認により即日発行が可能ですが、補助金によってはgBizIDメンバーからの申請を受け付けていない制度もあります。

    そして、gBizIDエントリーは審査不要で発行できるアカウントですが、Jグランツの利用には対応していません。審査や本人確認なしで即日発行できるものの、gBizIDエントリーに対応しているのは一部の行政サービスに限られています。

    なお、gBizIDプライムの申請にはオンラインと書類郵送の2つの方法があります。オンラインの場合は最短即日のアカウント発行が可能ですが、書類郵送の場合はアカウント発行までに2週間程度を要する可能性があるため、補助金の申請を検討している人は余裕をもってgBizIDを取得しましょう。

    Jグランツを利用して申請できる補助金の具体例

    Jグランツを利用して申請できる補助金にはさまざまな種類があります。国が実施する補助金や助成金に加え、全国の自治体においてもJグランツによる電子申請に対応している補助金や助成金が実施されているため、当記事では具体例として一部の制度を紹介します。

    【Jグランツを利用して申請できる補助金一覧】

    管轄

    補助金名

    概要

    IT導入補助金

    中小企業等の生産性向上につながるITツールの導入を支援する補助金

    小規模事業者持続化補助金

    小規模事業者や個人事業主等の販路開拓につながる取組を支援する補助金

    事業再構築補助金

    ポストコロナに対応するための中小企業等の思い切った事業再構築を支援する補助金

    ものづくり補助金

    「革新的サービス開発」「試作品開発」「生産プロセスの改善」のための設備投資を支援する補助金

    雇用関連助成金

    「雇用維持」「雇用環境整備」「人材開発」など、雇用に関する条件を満たす取組を支援する助成金

    自治体

    経営展開サポート事業

    (東京都)

    既存事業の「深化」や「発展」の取組を通じて経営基盤の強化を図る事業者を支援する助成金

    奨学金返還支援事業補助金

    (埼玉県)

    従業員の奨学金返還支援を行う県内の中小企業等を支援する補助金

    中小企業止水板等設置事業費補助金

    (福岡県久留米市)

    大雨等による浸水被害の防止や軽減を図るため、浸水対策のための工事費用を支援する助成金

    国や自治体が実施するさまざまな補助金や助成金が、Jグランツによる電子申請に対応しています。Jグランツを利用して申請できる補助金をさらに詳しく知りたい人は、Jグランツの公式サイト内にある検索システム「補助金を探す」を利用してみてください。

    まとめ

    Jグランツとは、デジタル庁が運営する、補助金の電子申請システムのことです。Jグランツでは補助金の検索や申請、実績報告などが可能であり、パソコンやスマホを用いて国や自治体が実施する補助金に関する各種手続きをオンラインで完結できます。

    Jグランツのメリットは、申請者の負担やコストの軽減につながることです。パソコンやスマホから24時間申請作業を行えるほか、書類による申請の際に発生する郵送費や交通費の削減にもつながる可能性があります。

    また、Jグランツのデメリットは。電子システム特有の手間やエラーが発生する可能性があることです。電子端末の操作に慣れていない人にとっては操作が複雑に感じられることや、補助金の締切付近は回線の混雑によりシステムエラーが発生しやすくなることが考えられます。

    なお、Jグランツの利用には複数の行政サービスにログインできる共通認証システム「gBizID」の取得が必要です。gBizIDがなければJグランツのマイページへログインすることができないため、補助金の申請をする前にgBizIDを取得しましょう。

    経営展開サポート事業とは

    新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業とは?

    ポストコロナにおける事業環境の変化に対応するため、国や地方自治体においてさまざまな支援制度が実施されています。東京都の事業者が利用できる支援制度のひとつとして、2024年度から募集が開始された助成金制度が「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業(以下、経営展開サポート事業)」です。

    当記事では、経営展開サポート事業とはどのような制度なのかを、はじめて申請する人向けにわかりやすく解説します。経営展開サポート事業の概要を知りたい人や、申請を検討している人は参考にしてみてください。

    なお、当記事は経営展開サポート事業の公式サイトおよび「助成金 募集要項(一般コース)令和6年度第5回」をもとに作成しています。

    経営展開サポート事業とは経営基盤の強化につながる取組を支援する制度

    経営展開サポート事業とは、中小企業等の経営基盤の強化を図る取り組みを支援する助成金制度です。ポストコロナにおける消費者ニーズの変化や物価・エネルギー価格の高騰などに対応するため、これまで営んできた事業の「深化」や「発展」につながる事業が助成対象となります。

    【経営展開サポート事業の概要】

    項目

    詳細

    目的

    中小企業等が既存事業を深化・発展させる計画を支援することにより、都内中小事業者の経営基盤を強化すること

    対象事業

    既存事業の「深化」または「発展」につながる事業

    対象者

    東京都内で事業を行う中小企業者(個人事業主を含む)

    対象経費

    • 原材料・副資材費
    • 機械装置・工具器具費
    • 委託・外注費
    • 産業財産権出願・導入費
    • 規格等認証・登録費
    • 設備等導入費
    • システム等導入費
    • 専門家指導費
    • 不動産賃借料
    • 販売促進費
    • その他経費

    助成率

    2/3以内

    助成上限額

    800万円

    助成期間

    交付決定日から最大1年間

    経営展開サポート事業の助成対象者は、東京都内で事業を行う中小企業や個人事業主です。飲食業、サービス業、建設業、製造業など業種を問わずに利用できる助成金であり、令和6年4月から募集が行われています。

    また、経営展開サポート事業の助成対象経費は、外部専門家に対する謝金や交通費を含む「専門家指導費」や、WEBサイト構築費を含む「販売促進費」など、既存事業を深化・発展させるために直接必要な経費です。取り組む事業において必要であると認められる場合に、最大800万円が助成されます。

    経営展開サポート事業とは、新型コロナウイルスの影響やその後の物価高騰など、事業環境の激変に対応し、経営基盤の強化を図る中小企業を支援するために東京都が実施している助成事業です。経営展開サポート事業の概要は、公益財団法人東京都中小企業振興公社が公開しているチラシからも確認できます。

    対象事業

    経営展開サポート事業に申請するためには、対象事業の要件を満たす必要があります。取り組もうとする事業が対象事業の要件を満たしていない場合は申請ができないため、経営展開サポート事業への申請を検討している人はその前提を踏まえておきましょう。

    【経営展開サポート事業における対象事業】

    事業内容

    具体例

    対象可否

    既存事業の「深化」

    • 高性能な機器、設備の導入等による競争力強化の取組

    • 既存の商品やサービス等の品質向上の取組

    • 高効率機器、省エネ機器の導入等による生産性の向上の取組

    既存事業の「発展」

    • 新たな商品、サービスの開発

    • 商品、サービスの新たな提供方法の導入

    • 既存事業で得た知見等に基づく新たな取組

    その他取り組み

    • 既存の事業内容との関連性が薄い、又は全く無い取組

    ×

    • 法令改正への対応など、義務的な取組

    ×

    • 競争力や生産性の向上に寄与しない取組

    ×

    経営展開サポート事業の対象となる事業は、既存事業の「深化」または「発展」につながる事業です。

    既存事業の「深化」に該当するのは、経営基盤の強化に向けて既に営んでいる事業自体の質を高めるための取り組みです。事業内容や取り扱う商品を変更するのではなく、設備導入による業務の効率化や既存の商品やサービス等の品質向上につながる取り組みなどが当てはまります。

    既存事業の「発展」に該当するのは、経営基盤の強化に向けて既に営んでいる事業をもとに新たな事業展開を図る取り組みです。既存の商品を原料とした新たな商品の開発や、店頭販売のみだった既存商品を扱うECサイトを新たに構築する取り組みなどが当てはまります。

    既存事業の「深化」や「発展」に該当しないその他の取り組みは、経営展開サポート事業の助成対象外です。既存事業との関連性が認められない事業や単なる老朽設備の維持更新など、経営展開サポート事業の目的と異なる事業では助成金を受け取ることができないことに留意しましょう。

    対象者

    経営展開サポート事業に申請するためには、対象者の要件を満たす必要があります。申請者の事業規模や事業状況が対象者の要件を満たしていない場合は申請ができないため、経営展開サポート事業への申請を検討している人はその前提を踏まえておきましょう。

    【対象者の要件(一部抜粋)】

    • 都内の中小企業者(個人事業主含む)であること
    • 法人の場合は本店(実施場所が都内の場合は支店でも可)の登記が都内にあること
    • 個人事業者の場合は納税地が都内にあること
    • 直近決算期の売上高が既定の要件を満たしていること
    • 令和6年度の経営展開サポート事業において一度も交付決定を受けていないこと
    • 社会通念上適切でないと判断される業態を営むものではないこと
    • 同一の内容で国や自治体等のほかの助成を受けていないこと

    対象者の要件のひとつとして、都内の中小企業者であることが挙げられます。中小企業の定義にあてはまる個人事業主も対象となりますが、中小企業であっても大企業が実質的に経営に参画している場合は対象外となります。

    また、対象者の要件のひとつとして、直近決算期の売上高に関する要件が挙げられます。2019年の決算期以降のいずれかの決算期と比較して減少している、または直近決算期において損失を計上していることが条件として定められており、いずれの条件も満たしていない事業者は申請できません。

    経営展開サポート事業には複数の要件が定められていますが、ひとつでも満たせない要件がある場合は申請ができません。対象者の要件は随時変更される可能性があるため、経営展開サポート事業への申請を検討している人は、申請する募集回の募集要項から要件をすべて満たしていることを確認しましょう。

    対象経費

    経営展開サポート事業に申請するためには、対象経費の要件を満たす必要があります。申請しようとする経費が対象経費の要件を満たしていない場合は申請ができないため、経営展開サポート事業への申請を検討している人はその前提を踏まえておきましょう。

    【経営展開サポート事業の対象経費】

    項目

    概要

    対象例

    原材料・副資材費

    製品やサービスの改良等に直接使用する原材料、副資材、部品等の購入に要する経費

    • 鋼材
    • 機械部品
    • 電機部品
    • 化学薬品
    • 試験用部品

    機械装置・工具器具費

    製品・サービスの改良等に直接使用する機械や工具等を新たに購入・レンタルする際に要する経費

    • 製造機械
    • 計測・測定・検査機器
    • 試作金型
    • 治具

    委託・外注費

    自社内で直接実施することができない製品やサービス改良の一部を外部の事業者等に依頼する経費

    • 開発
    • 試験

    産業財産権出願・導入費

    • 改良等をした製品・サービスに係る権利等の出願に要する経費
    • 権利等を他の事業者から譲渡又は実施許諾を受ける場合に要する経費

    以下の出願や譲渡等に要する費用

    • 特許権
    • 実用新案権
    • 意匠権
    • 商標権

    規格等認証・登録費

    • 改良等をした製品・サービスの規格認証や登録に要する経費
    • 規格等認証・登録に係る外部専門家の指導等を受ける場合に要する経費
    • 認証・検査機関への申請手数料
    • 成績証明書発行手数料
    • 審査費用
    • 登録証発行料
    • 登録維持料(初回のみ)
    • 翻訳料
    • マニュアル整備等の指導及び作成代行
    • 外部研修の受講料
    • その他研修・教育費用
    • 外部専門家の旅費交通費

    設備等導入費

    取組に直接必要な設備・備品等の購入費及びそれらの設置工事等に直接必要な経費

    • 設備・備品等の購入費
    • 直接仮設費(足場代、養生費等)
    • 労務費
    • 電線やケーブル等の材料・運搬費
    • 搬入・据付費
    • 撤去費
    • 処分費

    システム等導入費

    取組に直接必要なシステム構築、ソフトウェア・ハードウェア導入、クラウド利用等に要する

    経費

    • システムの構築・改修に要する経費
    • ソフトウェアの購入・利用に要する経費
    • ハードウェアの購入・改修、リースに要する経費
    • クラウドサービスの利用に要する経費
    • 外部の事業者に設定等を依頼する場合に要する経費
    • 助成対象期間に実施する運用・保守に要する経費

    専門家指導費

    取組について外部の専門家から専門技術等の指導・助言を受ける場合に要する経費

    • 外部専門家への謝金・交通費
    • 外部研修の受講料

    不動産賃借料

    取組に必要な事務所、施設等を新たに借りる場合に要する経費

    • 事務所や施設の賃借料

    (敷金、礼金、手数料、保険料等は対象外)

    販売促進費

    助成対象商品の販売促進に要する経費

    • WEBサイト制作・改修費
    • 印刷物製作費
    • PR動画製作費
    • 広告費
    • 出展小間料
    • 資材費
    • 輸送費
    • 通訳費
    • オンライン出展基本料
    • ECサイト出店初期登録料

    その他経費

    取組に直接必要な経費で、他の経費区分に属さないもの

    経営展開サポート事業の対象経費には、「原材料・副資材費」「機械装置・工具器具費」など11の経費区分が定められています。「その他経費」では、他の経費区分に該当しないものの事業の取り組みとして必要であると認められる経費が助成対象となる場合があります。

    ただし、対象経費に該当する項目であっても助成対象と認められない場合もあります。助成事業に直接関係のない経費や、契約から支払いまでの手続きが助成対象期間内に行われなかった経費などは、対象経費の項目に該当する内容であっても助成対象外となります。

    なお、「販売促進費」および「その他経費」は単独での申請ができません。販売促進費とその他経費を申請したいと考えている人は、ほかの区分に該当する経費とあわせて申請しなければならないことに留意しておきましょう。

    助成率と助成上限額

    経営展開サポート事業では、最大800万円の助成金を受け取ることができます。経営展開サポート事業においていくらの金額を受け取れるのかは「助成対象経費」「助成率」「助成上限額」を用いて算出します。

    【経営展開サポート事業の助成率と助成上限額】

    助成率

    助成対象経費の2/3以内

    助成上限額

    800万円

    受け取れる助成金を算出するには、まずは申請する助成対象経費の金額を求めます。「機械装置・工具器具費」200万円と「委託・外注費」100万円を申請する場合「200万円+100万円=300万円」の計算式により300万円が助成対象経費の金額となります。

    つぎに、対象経費の合計金額に助成率「2/3」を掛けます。助成対象経費が300万円の場合「300万円×2/3=200万円」となり、200万円を申請できる計算となります。

    最後に、算出した金額が助成上限額を超えていないかどうかを確認します。経営展開サポート事業における助成上限額は「800万円」のため、助成対象経費に助成率を掛けて算出された金額が200万円であれば助成額の範囲内であるため、200万円を助成金として受け取れる計算です。

    ただし、算出した金額が助成上限額である800万円を超える場合には、上限額の800万円までの支給となります。「助成対象経費×2/3」と「助成上限額」のうち、いずれか低い方の金額が申請金額として適用されます。

    なお、実際に受給できる金額は助成事業の実施後に行う「実績報告」の内容に応じて決定されます。計算式によって求められるのは受給できる最大の金額であり、助成事業の実施内容によっては算出した金額よりも減額される可能性がある点に留意しましょう。

    申請方法はJグランツによる電子申請

    経営展開サポート事業への申請方法は、デジタル庁が運営する補助金や助成金の申請システム「Jグランツ」からの電子申請です。自治体の窓口での申請や郵送による申請は受け付けていないため、経営展開サポート事業へ申請予定の人はその前提を踏まえておきましょう。 

    経営展開サポート事業へ申請するためにはJグランツへログインし、申請フォームへ必要事項の入力を行います。入力する内容には「事業形態」「法人名(屋号)」「所在地」「代表者情報」「担当者情報」「事業実施場所」など複数の項目があり、申請者が法人か個人事業主かによって入力項目が異なります。

    Jグランツは申請手続きのほか、申請内容の変更手続きや交付決定通知の確認など、経営展開サポート事業においてさまざまな場面で利用するサービスです。経営展開サポート事業の公式サイトでは、Jグランツの使い方が記載された「電子申請マニュアル」も公開されています。

    なお、Jグランツへのログインには、さまざまな行政システムへログインできる共通アカウント「GビズID」のプライムアカウントの取得が必要です。アカウントの発行には2週間程度を要する可能性があるため、経営展開サポート事業へ申請予定の人は余裕を持ってGビズIDを取得しておきましょう。

    必要書類

    Jグランツによる申請の際には、必要事項の入力に加えて必要書類の添付も行います。申請締め切りまでに書類が揃えられない場合は申請不可となり助成金を受け取ることができないため、事前にどのような書類が必要となるのかを確認しておきましょう。

    【経営展開サポート事業の申請における必要書類】

    項目

    必要書類

    全員が提出する書類

    • 申請様式
    • 誓約書

    法人のみが提出する書類

    • 履歴事項全部証明書
    • 法人事業税納税証明書
    • 法人都民税納税証明書
    • 決算書(損益計算書)

    個人事業主のみが提出する書類

    • 開業届
    • 個人事業税納税証明書
    • 所得税納税証明書(※非課税の場合)
    • 住民税納税証明書
    • 住民税非課税証明書(※非課税の場)
    • 所得税確定申告書

    申請内容によって提出が必要となる書類

    • 見積書(相見積書)
    • 見積限定理由書
    • カタログ
    • 図面(設計図、平面図等)
    • 特許証、特許等公報等
    • 展示会出展要項
    • ECサイトの出店登録要項

    必要書類には「申請様式」「誓約書」「納税証明書」「決算書」「確定申告書」「見積書」など複数の種類があります。申請者が法人か個人事業主かによって用意すべき書類が異なるほか、申請内容に応じて該当者のみに必要となる書類もあります。

    また、必要書類はすべて電子データとしてJグランツの申請フォームへ添付します。スマートフォン等を用いて撮影した写真を提出することも可能ですが、文字が鮮明に読み取れないものやデータ形式が規定を満たしていないものなどは不受理となるため、提出前に不備がないかどうかを確認してください。

    なお、必要書類の中には自治体の役所や税務署、取引先など外部への発行依頼が必要となるものもあります。申請の際にはすべての書類を揃えておく必要がありますが、書類によっては即日発行ができない可能性もあるため、必要書類の準備は余裕を持って行いましょう。

    審査項目

    Jグランツの申請フォームへ入力した内容と提出書類をもとに、専門家による審査が行われます。審査には書類審査と面接があり、いずれも「発展性」「市場性」「実現性」「優秀性」「自己分析力」の5つの視点から採択または不採択を判断されます。

    【審査の視点】

    項目

    詳細

    発展性

    既存事業の深化・発展に資する取組か

    市場性

    ポストコロナ等における事業環境の変化前後の市場分析は十分か

    実現性

    取り組むための体制は整っているか

    優秀性

    事業者としての創意工夫、今後の展望はあるか

    自己分析力

    自社の状況を適切に理解しているか

    まずは、書類審査によってJグランツの入力内容と提出書類の内容が一定の水準を満たしているかどうかが審査されます。一定の水準を満たしていると判断された場合は面接日程・実施場所等がメールにて通知されますが、一定の水準を満たしていないと判断された場合は不採択となり不採択通知が届きます。

    つぎに、書類審査を通過した申請者には専門家との対面による面接が実施されます。面接では申請書類をもとに内容の説明を行うこととなり、事業者の代表者、役員、従業員に限り最大2名までの出席が認められています。

    審査結果は、申請もしくは面接実施からおおむね1ヶ月以内に通知されますが、申請の件数や内容により前後する可能性があります。メールの確認漏れにより面接に参加できなかった場合は申請の辞退とみなされるため、申請後は折を見てメールを確認しましょう。

    なお、これまでの公募回における採択結果や採択率、採択事例などは2024年8月現在公表されていません。過去の採択率は審査の難易度や採択の傾向を知る手がかりのひとつとなるため、採択率の求め方や他の補助金や助成金の採択率を知りたい人は「補助金の採択率とは?」の記事を参考にしてみてください。

    申請から助成金交付までの流れ

    経営展開サポート事業への申請を検討している人は、申請から助成金交付までの流れを確認しておきましょう。全体の流れを確認することにより「助成金を受け取るためにはどのような手続きが必要となるのか」「助成金の入金がいつごろ行われるのか」など、制度の全体像をイメージできます。

    【申請から助成金交付までの流れ】

    流れ

    詳細

    ①申請の提出

    Jグランツによる電子申請を行う。

    申請フォームへの入力と必要書類の添付が必要となる

    ②審査

    申請内容をもとに書類と面接による審査が実施される

    ③交付決定

    面接を通過した場合「交付決定通知書」がメールで送付される

    ④助成事業の実施

    ※アドバイザー派遣(任意)

    申請した助成対象経費を用いて助成事業を実施する(交付決定日から1年間)

    ⑤実績報告

    助成事業の完了後、原則1か月以内に実績報告書と必要書類を全て提出する

    ⑥完了検査

    ※アドバイザー派遣(必須)

    実績報告の内容に基づき助成事業の実施が適正であるか審査され、助成金の交付額が決定する

    ⑦助成金額の確定

    完了検査後約1か月後に「助成金確定通知書」により確定した交付額が通知される

    ⑧助成金の請求

    「助成金確定通知書」の受領後「助成金請求書」を提出する

    ⑨助成金の入金

    「助成金請求書」の提出から約1か月後に、指定の助成事業者名義の金融機関口座に助成金が入金される

    経営展開サポート事業での助成金交付までの流れにおいて、まずは申請を行い助成金の目的に沿った事業計画であることを認められる「交付決定」を受ける必要があります。交付決定を受けるには、書類と面接による2つの審査を通過しなければなりません。

    交付決定を受けた場合は、申請した経費を用いて事業計画に沿った助成事業を実施します。経営展開サポート事業において助成金の振込は助成事業の実施後となるため、助成対象期間中に経費を支払う際には自己資金による立替が必要です。

    助成事業が完了したら、実績報告と完了検査を経て助成金額が確定し、諸手続きを実施したあと約1か月程度で指定の口座に助成金が振り込まれます。最終的な助成金額は助成事業の実施状況や完了検査の結果等に基づいて決定するため、助成金申請額よりも減額となる可能性があります。

    なお、経営展開サポート事業では最大2回の「アドバイザー派遣」が実施され、助成事業の実施場所や帳簿の確認のほか、経営アドバイザーによる助言を受けることができます。助成事業期間中のアドバイザー派遣は任意ですが、助成事業の効果的な実施のため必要に応じて利用してみましょう。

    2024年度における募集スケジュール

    経営展開サポート事業の申請を検討している人は、2024年度における公募スケジュールを確認しておきましょう。経営展開サポート事業の公式サイトでは、2024年度に実施予定となっている第12回までの募集スケジュールが公開されています。

    【経営展開サポート事業の募集スケジュール】

    募集回

    申請受付期間

    第1回~第5回

    受付終了

    第6回

    令和6年9月2日から9月13日まで

    第7回

    令和6年10月1日から10月15日まで

    第8回

    令和6年11月1日から11月15日まで

    第9回

    令和6年12月2日から12月13日まで

    第10回

    令和7年1月6日から1月15日まで

    第11回

    令和7年2月3日から2月14日まで

    第12回

    令和7年3月3日から3月14日まで

    令和6年8月時点において、第5回までの受付が終了しています。今後のスケジュールは、令和7年3月に実施される第12回募集まで1か月に1度のペースで募集が行われる予定となっています。

    また、第5回締切では予定されていた締め切り日よりも早く受付が終了されました。募集状況によっては予定よりも早く申請が締め切られる場合があるため、経営展開サポート事業へ申請したい人は余裕のあるスケジュールで準備ができる募集回への申請を検討しましょう。

    なお、第7回以降のスケジュールは予定であり、予算の都合等により募集予定が変更される可能性があります。申請受付期間外や募集終了後は申請の提出ができないため、申請前に公式サイトから最新の募集状況を確認してください。

    経営展開サポート事業に関するQ&A

    経営展開サポート事業に関して、申請者が疑問に思いそうな点や申請の際につまずきそうな点をQ&Aにまとめました。事務局へ問い合わせる前に自分で解決できる可能性があるため、経営展開サポート事業への申請にあたって疑問や不安がある人はQ&Aを確認してみましょう。

    経営展開サポート事業に関するQ&A

    質問

    回答

    複数回申請できますか?

    交付決定を受けた場合は本年度内の申請はできません。

    一方、申請が不受理・不採択となった場合は再申請が可能です

    面接はオンラインでも可能ですか?

    原則は対面形式です。

    対面での実施が困難な事情がある場合は事務局までご相談ください

    新紙幣に対応する券売機に更新・改修するための費用も対象となりますか?

    既存事業の深化や発展に繋がる取組であれば対象となる可能性があります

    不採択となった場合に理由を教えてもらえますか?

    審査の内容や結果等へのお問い合わせには一切お答えできません

    公的機関から納税猶予の特例を受けていても申請できますか?

    住民税・事業税等に未納がある場合は申請できません

    経費の支払い方法は決まっていますか?

    助成事業者名義の口座からの振込払いが原則です。

    ただし、振込払いが困難な場合「クレジットカード」「現金」「手形・小切手」での支払いが認められる場合があります

    経費をクレジットカードで支払ったのですが、引落し日が助成対象期間を超えてしまいます

    引落し日が助成対象期間を超える支払いはすべて対象外となります

    参考:「助成金 募集要項(一般コース)」および「FAQ」|東京都中小企業振興公社

    助成対象経費の支払いは金融機関の口座からの振込払いが原則ですが、振込払いが困難な場合に限り「クレジットカード」「現金」「手形・小切手」が認められる場合があります。振込払い以外の方法によって支払いをする場合、それぞれの支払い方法に定められた条件を満たす必要があります。

    また、経費をクレジットカードで支払った場合には、引落し日にも注意が必要です。経費の支払いは助成対象期間内に完了させることが条件となっているため、購入日が助成対象期間内であっても引落し日が助成対象期間を過ぎてしまう場合には助成対象外となります。

    経営展開サポート事業に関する疑問や不安は、申請者自身で解決できる場合があります。問い合わせの電話が混みあうことも考えられるため、申請にあたって気になることがある人は事務局へ問い合わせる前に、まずは公式サイト内の募集要項やFAQを確認してみましょう。

    申請に不安がある人は認定支援機関に相談する

    経営展開サポート事業の申請は事業者が自分だけで行うことも可能ですが、申請に不安がある人は認定支援機関に相談することを検討しましょう。認定支援機関に相談することにより、申請に関する相談や書類作成への助言などさまざまな場面において経営展開サポート事業の申請を支援してもらうことができます。

    認定支援機関は中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関のことです。認定支援機関には「税理士」「公認会計士」「中小企業診断士」「商工会」「金融機関」などの機関が登録されており、それぞれ支援内容や得意分野が異なります。

    経営展開サポート事業では最大2回のアドバイザー派遣の利用が可能ですが、経営改善に関する助言や助成事業をより効果的に実施するための助言が主な内容となります。伴走支援として手厚いサポートを受けたい場合は、認定支援機関へ相談することも選択肢のひとつです。

    認定支援機関に相談することにより、申請の不安を解消することや採択の可能性を高めることが可能です。補助金や助成金の相談ができる支援機関を詳しく知りたい人は「補助金の相談は誰にする?相談できる内容に合った相談先を解説」の記事を参考にしてみてください。

    まとめ

    経営展開サポート事業とは、ポストコロナにおける消費者ニーズの変化や物価・エネルギー価格の高騰などに対応するため、これまで営んできた事業を「深化」「発展」させて経営基盤の強化を図る取り組みを支援する制度です。2024年度に東京都が実施する助成金制度であり、中小企業や個人事業主が対象となります。

    経営展開サポート事業では「原材料費」「機械装置費」「委託・外注費」「販売促進費」「その他経費」など、幅広い経費が助成対象です。助成率は助成対象経費の2/3以内であり、最大800万円を助成金として受け取ることができます。

    ただし、助成金を受給するには書類と面接による審査に通過する必要があるほか、助成金が交付されるまでの自己資金が必要となることなど、いくつかの注意点もあります。申請すれば必ずもらえるものではない点や、支払いから助成金の受け取りまでに1年以上かかる可能性がある点に留意してください。

    なお、2024年度においては令和7年3月に実施される第12回公募まで1か月に1度のペースで募集が行われる予定です。予算の都合や応募状況により募集スケジュールが変更になる可能性があるため、経営展開サポート事業への申請を検討している人は募集回の受付期間を確認し、余裕を持って準備を行いましょう。

    個人事業主が補助金を活用するときのポイントを解説

    補助金の中には、個人事業主が活用できるものもあります。国や地方自治体の補助金は原則として返済が不要なため、個人事業主が補助金を活用することにより、財政面の負担を減らせる可能性があります。

    当記事では、個人事業主が補助金を活用するときのポイントを解説します。補助金の対象者や対象経費、留意点も紹介するため、補助金を活用したい個人事業主の人は参考にしてみてください。

    ポイントは条件に合った補助金を探すこと

    個人事業主が補助金を活用する場合、条件に合った補助金を探すことがポイントです。補助金は「生産性向上」「地域経済活性化」などの目的が定められている関係上、色々な条件が設定されているため、補助金を活用したい個人事業主の人は補助金の条件を整理してみましょう。

    【補助金を探すときの条件例】

    • 対象者に含まれるかどうか
    • 対象経費に含まれるかどうか
    • 必要書類を揃えられるかどうか

    補助金を探すときの条件は「対象者に含まれるかどうか」「対象経費に含まれるかどうか」「必要書類を揃えられるかどうか」が挙げられます。あらゆる補助金の中から条件に合った補助金を探すことになるため、補助金を活用したい人は各項目を確認してみましょう。

    対象者に含まれるかどうか

    補助金を探すときの条件のひとつは個人事業主が対象者に含まれるかどうかです。各補助金は補助対象者が定められているため、補助金を活用したい個人事業主の人は補助金の対象者を確認してみましょう。

    【補助金申請における対象者の例】

    補助金名

    事業形態

    特記事項

    小規模事業者持続化補助金

    • 小規模事業者

     

    • 商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
    • 商工会議所の支援を受けること

    ものづくり補助金

    • 中小企業者
    • 小規模企業者
    • 小規模事業者 など
    • 設備投資を行うこと

    IT導入補助金

    • 中小企業等
    • 小規模事業者
    • ITツールを導入すること
    • IT導入支援事業者の支援を受けること

    たとえば、小規模事業者持続化補助金は個人事業主が補助対象に含まれています。小規模事業者持続化補助金の公募要領では、個人事業主や法人を含む「小規模事業者」が対象者とされているため、個人事業主は小規模事業者持続化補助金に申請が可能です。

    また、IT導入補助金は個人事業主が対象に含まれています。IT導入補助金の公募要領では、個人事業主や法人を含む「中小企業等」と「小規模事業者」が対象者とされているため、個人事業主はIT導入補助金に申請が可能です。

    なお、個人事業主が対象と明記されている補助金でも対象外となる場合が考えられます。「課税所得が規定以上の額」「国の助成制度を活用している事業との重複」など、場合によっては補助対象外となる可能性があるため、補助金を活用したい個人事業主の人は補助対象外となる場合も確認しておくようにしましょう。

    対象経費に含まれるかどうか

    補助金を探すときの条件のひとつは補助を受けたい経費が対象経費に含まれるかどうかです。各補助金は対象となる経費が定められているため、補助金を活用したい個人事業主の人は補助金の対象経費を確認してみましょう。

    【補助金申請における対象経費の例】

    補助金名

    対象経費の例

    具体例

    小規模事業者持続化補助金

    機械装置等費

    3Dプリンター

    ウェブサイト関連費

    ウェブサイトの作成費や更新費

    旅費

    宿泊代やバス運賃、電車賃

    ものづくり補助金

    機械装置・システム構築費

    電子計算機、デジタル複合機

    専門家経費

    専門家への謝礼

    クラウドサービス利用費

    クラウドサービスの利用費、通信料

    IT導入補助金

    (インボイス枠)

    ソフトウェア購入費

    ソフトウェアの使用料、保守費用

    ハードウェア関連費

    パソコン、タブレット、プリンター

    たとえば、ものづくり補助金は「機械装置・システム構築費」が対象経費に含まれています。具体例として「測定工具」「検査工具」「電子計算機」「デジタル複合機」などが挙げられ、単価が税抜き50万円以上の設備投資をすることが条件となります。

    また、IT導入補助金のインボイス枠は「ハードウェア関連費」が対象経費に含まれています。具体例として「パソコン」「タブレット」「プリンター」などが挙げられ、ソフトウェアの購入先として選定したIT導入支援事業者から購入することが条件となります。

    なお、対象経費はそれぞれの補助金の申請枠によって異なる可能性があります。申請枠を設けている補助金は枠ごとに対象経費が異なることも考えられるため、補助金を活用したい個人事業主の人は申請枠ごとの対象経費を確認してみましょう。

    必要書類を揃えられるかどうか

    補助金を探すときの条件のひとつは必要書類を揃えられるかどうかです。必要書類は補助金次第ですが、補助金を申請するときは複数の書類を提出することになるため、補助金を活用したい個人事業主の人は必要書類を確認してみましょう。

    【補助金申請における必要書類の例】

    書類名

    概要

    確定申告書の控え

    直近分の確定申告書の控え

    所得税の納税証明書

    直近分の所得税の納税証明書

    開業届の控え

    税務署印が押された開業届の控え

    収支予算書

    収入と支出の予算額を明示した書類

    たとえば、「確定申告書の控え」が必要となる補助金があります。確定申告を終えた個人事業主でなければ確定申告書の控えの準備ができないため、開業したばかりの個人事業主は補助金の申請ができないおそれがあります。

    また、「開業届の控え」が必要となる補助金があります。個人事業主が開業届を税務署へ出さないことによる罰則はありませんが、開業届の控えの提出が必要となる補助金があるため、開業届を出していない個人事業主は補助金の申請ができないおそれがあります。

    なお、代替案が設けられている場合もあります。「決算期を迎えていない場合は確定申告書の控えは不要」「設立後間もない場合は設立事業計画書を提出」などの代替案が設けられている場合もあるため、補助金を活用したい個人事業主の人は各補助金の規程を確認してみましょう。

    ポイントを押さえた人は補助金の留意点も確認する

    補助金を活用するときのポイントを押さえた人は、個人事業主が補助金を活用するときの留意点も確認しておきましょう。留意点を確認しておかなければ、想定通りに補助金を活用できないおそれがあります。

    【個人事業主が補助金を活用するときの留意点】
    • 入金は事業完了後の場合がある
    • 補助金は所得税額に影響する場合がある

    補助金を活用するときの留意点として「入金は事業完了後の場合があること」「補助金は所得税額に影響する場合があること」が挙げられます規定は補助金ごとに異なるため、各補助金の規程に従うことになりますが、補助金を活用したい個人事業主の人は留意点の一例として各項目を確認してみましょう。

    入金は事業完了後の場合がある

    個人事業主が補助金を活用するときの留意点のひとつは、補助金の入金が事業完了後になる場合があることです。事業を行う資金を先払いする関係上、資金繰りが逼迫するおそれがあるため、補助金を活用したい個人事業主の人は補助金が入金されるまでの流れを確認してみましょう。

    【補助金が入金されるまでの流れの例】
    1. 補助金を申請する
    2. 申請内容の審査が行われる
    3. 審査に通過した場合は採択通知を受ける
    4. 事業を行う
    5. 事業の完了を報告する
    6. 事業内容の審査が行われる
    7. 審査に通過した場合は補助金が入金される

    補助金に採択された後は、原則として入金より前に事業を行うことになります。入金が事業の完了後となる場合は、事業を行うための資金を事業者が立て替えることになるため、補助金に採択された場合でもそれ相応の自己資金を工面しておかなければなりません。

    また、入金までにかかる期間は補助金次第です。補助金によっては「事業完了後から3か月」「事業完了後から半年」など、事業完了後の審査に時間がかかることも考えられるため、事業完了後すぐに入金されるとは限りません。

    なお、最終的な補助金額は原則として事業完了後の審査により確定します。対象経費に含まれないと判断された場合は、採択されたあとに補助金額が減額されるおそれもあるため、補助金を活用したい個人事業主の人は各補助金の規程に従って事業を実施しましょう。

    補助金は所得税額に影響する場合がある

    個人事業主が補助金を活用するときの留意点のひとつは、補助金が所得税額に影響する場合があることです。事業に関する補助金は収入として扱われる関係上、受給した年の所得税が増える可能性があるため、補助金を活用したい個人事業主の人は所得税の算出方法を確認しておきましょう。

    【所得税の算出方法】

    項目

    概要

    算出方法

    (収入-経費-所得控除)×税率-税額控除=基準所得税額

    算出するときの留意点

    • 国庫補助金等の総収入金額不算入の特例により、税負担を軽減できる場合がある
    • 1年間の収入から経費を差し引いた収支が赤字の場合、所得税は生じない

    所得税の基準所得税額は1年間の収入から経費や所得控除を差し引き、所得金額ごとに定められた税率を掛けることにより算出できます。原則として補助金は収入に算入されるため、収入の増加に伴って所得税額も増えることが考えられます。

    また、国庫補助金等の総収入金額不算入の特例により、税負担を軽減できる場合があります。国税庁の公式サイトによると、個人事業主が補助金を受給して固定資産の取得や改良をした場合、取得や改良に活用した補助金額分を収入として算入しない特例があります。

    ただし、所得税額の算出方法は個人事業主の状況次第となる可能性があります。受給する補助金の種類や個人事業主の所得状況によっても、所得税額の算出方法が異なることも考えられるため、確定申告をするときは事業所を管轄する税務署に確認することも検討してみましょう。

    補助金における税金の情報が知りたい人は「補助金に税金はかかるのか?課税の仕組みを交えながら解説」を参考にしてみてください。

    まとめ

    個人事業主が補助金を活用する場合、条件に合った補助金を探すことがポイントです。条件は「対象者に含まれるかどうか」「対象経費に含まれるかどうか」などが挙げられるため、補助金を活用したい個人事業主の人はそれぞれの条件を押さえておきましょう。

    補助金を探すときの条件のひとつは個人事業主が対象者に含まれるかどうかです。補助金は「中小企業」「小規模事業者」など、対象者が定められているため、補助金を活用したい個人事業主の人はまずは個人事業主が対象者に含まれるかどうかを確認してみてください。

    補助金を活用するときは留意点があります。補助金の留意点は「入金は事業完了後の場合があること」「補助金は所得税額に影響する場合があること」が挙げられるため、補助金を活用したい個人事業主の人は覚えておきましょう。