会社における補助金の使い道と会計処理の方法を解説

2024/10/23

2024/9/28

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

会社で新たな取組みを実施したい場合、設備導入やシステム開発、広報活動など、まとまった資金調達が必要になることがあります。その際、補助金をうまく活用できれば、かかった経費の一部を補填することができ、リスクをおさえながら新たな施策にチャレンジすることが可能です。

しかし「補助金をどんなことに使えるのか」や「補助金は課税対象なのか」といった疑問も思い浮かぶのではないでしょうか?

当記事では、会社における補助金の使い道や会計処理を解説します。新たな事業で補助金の申請を検討している人や、補助金を活用した際の会計処理が気になる人は参考にしてみてください。

会社が取り組む課題に応じて補助金の使い道はさまざま

国や地方自治体が用意している補助金の種類は多岐にわたり、会社が取組む課題に応じてさまざまな使い道があります。まずは補助金の種類や活用例を確認し、自社の課題解決に向けた取組みに適応するものを検討してみましょう。

【補助金の利用項目と活用例】

項目 活用例
生産性向上、業務効率化 <自動化機械の導入>
製造現場にロボットや自動化システムを導入し、作業時間を短縮と人件費削減を目指す。

<務管理システムの導入>
ERP(統合基幹業務システム)を導入し、在庫管理や販売管理の一元化と業務効率の向上を目指す。
新規事業、第二創業 <新規サービス・製品の提供>
新たなマーケットに参入するため、新商品や新サービスの開発・提供に向けた資金に充てる。

<事業拡大のための資金調達>
既存事業から派生する形で新しいビジネスを立ち上げ、拡大するための資金を調達する。
ものづくり、新商品開発 <試作品の開発>
新しい製品を開発し、その試作品の製造に必要な設備や材料を購入する費用に充当する。

<製造設備の拡充>
新商品の生産を開始するために、新しい製造ラインを構築し、生産能力を向上させる
設備投資 <生産設備の更新>
古くなった生産設備を新しいものに置き換え、生産性を向上させることで、製品の品質を安定させる。

<工場のリニューアル>
老朽化した工場を改装し、働きやすい環境を整えることで、労働環境の改善や作業効率の向上を図る。
販路開拓 <ECサイト制作>
自社商品のオンライン販売を強化するため、ECサイトの構築や運営費用に補助金を活用する。

<展示会や広告の活用>
国内外の展示会に出展し、商品を宣伝するためのブース設営費や、オンライン広告に充当する。

経営改善 <財務・人事システムの改善>
新しい会計ソフトや人事管理システムを導入し、経理業務の効率化や人事管理を自動化する。

<コンサルティングの活用>
経営戦略や財務改善のために、外部コンサルタントを雇い、経営改善のプランを策定する。
特許、知的財産 <特許取得>
新製品や技術の特許取得にかかる申請費用や、弁理士への依頼費用を補助金で賄う。
<商標登録>
新ブランドやサービスの商標を登録するための申請費用や、調査費用を補填する。
デジタル化 <業務のIT化>
業務プロセスをデジタル化し、ペーパーレス化や、電子化による業務の効率化を進める。

<クラウドシステムの導入>
クラウドベースのシステムを導入し、データの一元管理やリモートワーク環境の整備を行う。
地域活性、まちづくり <地域特産品の開発>
地域の特産品を活かした新商品の開発やブランド化を進め、地元産業の振興を図る。

<観光イベントの開催>
地域の観光資源を活用したイベントを開催し、地域経済の活性化を目指す。
省エネ、畜エネ <省エネ機器の導入>
エネルギー効率の高い機器を導入し、電力消費を削減することで環境負荷を軽減する。

<蓄電設備の導入>
太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを蓄電し、効率的に活用するための設備を導入する。
観光、インバウンド <観光施設の新設>
外国人観光客向けの観光施設や宿泊施設を新設し、地域のインバウンド需要を取り込む。

<インバウンド向けの販売促進>
外国人観光客をターゲットとした広告やウェブサイトの多言語化など、販促活動を行う。
防犯、防災、BCP <監視カメラの設置>
事務所や工場に防犯カメラを設置し、セキュリティ対策を強化する。

<事業継続計画(BCP)の策定>
自然災害や緊急事態に備えた事業継続計画を策定し、実行するための対策費用を補助する。

たとえば、販路開拓に補助金を活用する場合、展示会に出展して自社商品を宣伝することや、ECサイトを制作してオンラインでの販売を強化することができます。また、既存事業とは異なる分野で新しいビジネスを展開する際の設備導入や、マーケティング費用を補助金で賄うことも可能です。

補助金には、会社のさまざまな課題やニーズに合わせて、多岐にわたる活用方法があります。自社の取り組みたい課題に合った補助金を有効活用することで、資金不足のリスクをおさえつつ、事業の持続的な成長を目指しましょう。

雇用や労働環境に関する支援制度は助成金と称される

従業員の雇用や労働環境の改善などに関する支援制度は「助成金」と称されています。補助金と助成金の違いは一概には言えないものの、補助金は「売上や生産性の向上」を目的とし、助成金は「現状の職場環境の改善」を目的としている支援金である傾向があります。

【補助金と助成金の違い】

項目 補助金 助成金
管轄省庁 経済産業省・中小企業庁 厚生労働省
目的
  • 売上向上
  • 生産性向上
  • 新規事業の立ち上げ
  • 設備投資、技術開発など
  • 雇用維持
  • 職場環境改善
  • 従業員のスキルアップ
  • 育児・介護対応など
支給条件
  • 審査に通過する
  • 予算内に入る必要があるなど
  • 雇用保険の加入
  • 従業員の研修、育児・介護対応など
支給の確実性 申請しても必ず受給できるとは限らない 条件を満たせば基本的に100%支給される
申請難易度 申請には説得力のある事業計画が必要 条件を満たせば申請が可能
返済義務 返済不要 返済不要
主な対象分野
  • 新規事業開発
  • 設備投資
  • 技術革新
  • 販路開拓
  • 製品開発など
  • 雇用維持
  • 従業員の育成
  • 職場環境改善
  • 育児・介護対応など

たとえば、会社に障がい者や高齢者を雇い入れる場合は「就職が困難とみなされる求職者」の雇入れを支援する助成金を活用することができます。また、従業員が育児や介護のための休暇を取得し、仕事と家庭を両立できる環境を整える場合にも、関連する助成金が用意されています。

会社で新たな従業員の雇入れや雇用環境の改善に関する取組みを実施する場合は、助成金を活用できます。雇用の目的にあわせてさまざまな助成金が用意されているため、申請を検討する場合は厚生労働省や都道府県の募集状況を確認してみてください。

なお、助成金の種類や活用方法の詳細は「雇用に関する助成金はどのように活用できるのか?」の記事も参考にしてみてください。

補助金で得た収入は会計処理が必要

補助金で得た収入は、会社の財務状況に反映させるよう、適切な会計処理が必要です。補助金は本業の売上とは異なる収入であり、正確に仕訳けなければ財務が正しく把握できなくなるため、正しい処理方法を確認しましょう。

会社のお金の流れを帳簿に記録する「会計処理」において、補助金はお金が入ることから「収入」と仕訳けされます。また、本業以外の収入になるため、勘定科目の仕訳は「雑収入となります。

【会計の記載例】

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
預金(普通・当座) 100万円 雑収入 100万円

複式簿記では、現金で何かを購入する取引があった場合、資産の増加と減少の両方を記録します。その際、購入したことで資産が増える項目を「借方」、支払ったことで減るお金の項目を「貸方」と呼びます。

また、借方と貸方の勘定科目を選び、それぞれ同じ金額を記入する作業のことを「仕訳け」といいます。会計処理で「仕訳」を行うことで、取り引きの両側面を正確に把握することができます。

補助金を受け取った際の会計処理は、雑収入の勘定科目で仕訳けをします。さらに、補助金の支給が決算期をまたぐ場合や、補助金で固定資産を購入した場合などは、異なる仕訳け方法が必要になるため、それぞれの処理方法も確認しましょう。

決算期をまたぐ場合は未収入金として計上する

補助金が会社の口座に入金されるのが決算期をまたぐ場合は「未収入金」の勘定項目で仕訳けて計上します。補助金が入金されることは決まっているものの、現時点でまだ受け取っていない状況のため、一旦「未収入金」という項目で計上しておく必要があるためです。

【決算期をまたぐ場合の会計の記載例】

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
未収入金(補助金) 100万円 雑収入 100万円

会計処理において、補助金の収入を計上する時期は、基本的に「給付(支給)決定通知書」が届いた日付けで仕訳けを行います。しかし、実際の入金日が決算期をまたいでしまう場合はまず、借方に「未収入金」貸方に「雑収入」の勘定科目を記載します。

【決算後に補助金が入金された場合の会計の記載例】

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
預金(普通・当座) 100万円 未収入金 100万円

つぎに、決算後に補助金が入金された際の勘定科目を書き換える仕訳け処理を行います。その際は、借方の勘定科目を「預金(普通・当座)」、貸方の勘定科目を「未収入金」と書きかえて処理することになります。

補助金の会計処理は、入金時期によって仕訳が異なります。特に決算期をまたぐ場合は、入金確定時と入金時の2回の仕訳が必要になります。会計ソフトを利用している場合は、システムが自動で処理してくれることもありますが、仕訳内容が的確であるかを把握できるようにしておきましょう。

補助金は法人税の課税対象となる

補助金は、原則として法人税の課税対象となります。会社が受け取った補助金は利益を増やすものとされ、税法上「収益の増加」として課税範囲に含まれます。

たとえば、新製品開発のために補助金を受け取った場合、その金額は「雑収入」として会計処理され、法人税の計算に組み込まれます。また、高額な固定資産を取得して税負担が大きくなる場合、翌年度以降に課税額を分けることで、税務負担を調整することも可能です。

補助金は会社の利益を増やす収益として法人税の課税対象となります。補助金の適切な会計処理や税務負担を最適化することが難しい場合には、専門家に相談することも検討してみましょう。

補助金や助成金に関する相談先は「補助金の相談は誰にする?相談できる内容に合った相談先を解説」の記事も参考にしてみてください。

補助金にかかる法人税の負担を分割する方法がある

補助金にかかる法人税の負担を分割するための「圧縮記帳」という方法があります。補助金を一度に収益として計上すると、その年の税負担が大きくなりますが、圧縮記帳を活用することにより税金の支払いを複数年に分け、資金繰りの負担を抑えることが可能です。

【圧縮記帳のステップと記載例】

ステップ 借方 貸方 金額
1.補助金の受け取り 預金(普通・当座) 雑収入 1,000万円
2.機械装置の購入 固定資産(機械装置) 預金(普通・当座) 1,500万円
3.圧縮損の計上 圧縮損 固定資産(機械装置) 1,000万円
4.残りの減価償却(毎年) 減価償却費 固定資産(機械装置) 500万円を耐用年数に応じて分割

圧縮記帳を活用する際は、補助金を「雑収入」として計上し、同額を「圧縮損」として計上することで、その年の収益を圧縮します。収益の圧縮とは、固定資産の購入に対する税負担を次年度以降に分割して支払う方法です。

たとえば、1,500万円の機械装置を購入し、そのうち1,000万円を圧縮損として処理した場合、残りの500万円を耐用年数に応じて毎年「減価償却費」として費用に計上します。こうした圧縮記帳の活用は、税負担を抑え、会社の財務状況を安定させる効果があります。

圧縮記帳は、補助金に対する課税が企業の資金不足を引き起こすことを防ぐため、租税政策や産業政策の観点から設けられた制度です。しかし、圧縮記帳はあくまでも税金を単年で納付することを避けるための対策であり、課税が免除されるものではないことを留意しておきましょう。

消費税は不課税となる

補助金は、消費税が不課税となります。補助金は、国や地方自治体からの支援金であり、商品の販売やサービスによる収入とは性質が異なります。消費税は、ものやサービスの対価に課税されるため、補助金はその対象から外れます。

たとえば、新規事業の立ち上げや商品開発を支援するための補助金を受け取る場合は、事業の売上ではなく、事業支援のための給付です。そのため、補助金は本業の売上とは別の収入として扱われ、消費税はかかりません。

補助金を受け取る際、その金額に対しては消費税が課税されません。消費税が不課税である点を理解し、資金管理や税務処理を適切に行いましょう。

なお、会計処理における補助金の税区分や消費税の控除を解説した「補助金における消費税の税区分と返還の義務をわかりやすく解説」の記事も公開しています。「非課税」と「不課税」の区分の違いなど、さらに詳細な情報を知りたい人は参考にしてみてください。

まとめ

補助金は、会社の成長や事業の新たな取組みをサポートする資金として利用できます。設備導入や新事業の立ち上げなど、補助金の使い道は多岐にわたり、うまく活用すれば資金調達時のリスクをおさえながら事業を進めることが可能です。

補助金は基本的に法人税の課税対象となり、会計上は「雑収入」として計上します。決算期をまたいで補助金が入金される場合は「未収入金」として計上し、入金が確定した時点で「預金」として処理を行い、正確な財務状況を把握しましょう。

また、補助金の税負担を軽減するためには「圧縮記帳」が有効です。圧縮記帳を使うことで、補助金を収益として一度に計上するのではなく、税金の支払いを数年に分けて行うことが可能です。これにより、資金繰りの負担を抑え、会社の財務を安定させることができます。

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