RPAツールの導入に利用できる補助金を解説

2024/08/16

2024/8/15

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

RPA(Robotic Process Automation:ソフトウェアロボットによる業務自動化)ツールを探している人の中には、国や自治体の補助金を利用したい人もいますよね。その際、どの補助金でいくらまで補助されるのか、具体的な情報を知りたい人もいるでしょう。

当記事では、RPAツールを補助対象とする国や自治体の補助金を解説します。具体的に対象となるRPAツールの名称や参考価格も紹介するので、RPAツールの導入に興味のある人は、当記事を参考にしてみてください。

RPAツールの導入に利用できる補助金は複数ある

RPAツールの導入に利用できる補助金には、複数の種類があります。補助金には制度ごとに目的や対象が決められており、その目的や対象にあてはまる取り組みをRPAツールを用いて実施する場合に、RPAツールの導入費用の一部が補助される可能性があります。

【RPAツールに使える補助金の一覧】

制度名

概要

IT導入補助金

生産性向上につながるITツールの導入を支援する

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者の販路開拓や業務効率化の取組を支援する

ものづくり補助金

生産性向上につながる設備投資等を支援する

働き方改革推進支援助成金

中小企業における労働時間の設定の改善の促進を支援する

RPAツールの導入に利用できる補助金には、「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」「働き方改革推進支援助成金」が挙げられます。RPAツールの導入により生産性向上や労働環境の改善など、事業者の課題解決につながる取り組みを実施する場合に補助金を受給できる可能性があります。

公的な補助金を使うと、事業者は金銭的負担を抑えてRPAツールを導入できます。ただし、補助金を受給するためには制度の目的に合った事業計画の作成や必要書類の準備などが必要となるため、RPAツールの導入に補助金を利用したい人は各補助金の条件を確認したうえで申請可能な補助金を選びましょう。

IT導入補助金では生産性を向上させるRPAツールが対象

IT導入補助金は、中小企業や個人事業主等の生産性向上につながるITツールの導入を支援する制度です。RPAツールが対象となるのはIT導入補助金の「通常枠」であり、生産性向上や業務効率化など、企業の課題解決につながる機能を備えるソフトウェアとしてRPAツールを導入できる可能性があります。

【IT導入補助金(通常枠)の概要】

項目

詳細
制度の目的

ITツール導入による生産性向上や業務効率化

補助額

導入するソフトウェアの機能数により異なる

1機能以上:5万円以上150万円未満

4機能以上:150万円以上450万円以下

補助率

1/2

対象経費

  • ソフトウェア(購入費、クラウド利用料)
  • オプション(拡張機能、セキュリティ)
  • 役務(導入コンサル、保守サポート)
対象のRPAツール
  • Win Actor
  • RPA Ez Robot
  • RPAロボパットDX

参考:IT導入補助金2024公式サイト

IT導入補助金を利用して導入できるRPAツールのひとつとしてWin Actor」が挙げられます。Win ActorではExcelデータを基幹システムに転記できるため作業時間の短縮や入力ミスの防止が期待できるほか、大量のアンケート結果や売上データを基幹システムに反映させる作業も可能です。

また、IT導入補助金を利用して導入できるRPAツールのひとつとして「RPA Ez Robot」が挙げられます。RPA Ez Robotでは社内システムからロボットが報告書を作成するシナリオを作成できるため報告書作成の時間を短縮できるほか、社員に提出を課していた報告業務をロボットに対応させることも可能です。

ただし、IT導入補助金においてはRPAツールのみでの申請はできません。RPAツールは単体での申請ができない「汎用プロセス」に該当するソフトウェアのひとつであるため、IT導入補助金を利用してRPAツールを導入したいと考えている人は他のソフトウェアとあわせて導入しましょう。

なお、IT導入補助金において対象となるRPAツールは「ITツール・IT導入支援事業者検索」に登録されているもののみです。IT導入補助金の補助対象となるRPAツールには複数の種類がありますが、シナリオ登録や更新の有無、料金体系などは種類によって異なるため、操作性や価格を比較して導入するRPAツールを検討しましょう。

小規模事業者持続化補助金では販路拡大や生産性向上のためのRPAツールが対象

小規模事業者持続化補助金では、補助事業に必要な対象のRPAツールが対象です。事業者が小規模事業者持続化補助金の目的である「販路拡大」や「生産性向上」に沿う事業計画を立てて実行する場合に、その事業計画で利用するRPAツールは補助の対象となります。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

詳細
制度の目的

小規模事業者や個人事業主等の販路開拓および業務効率化の取組を支援する

補助上限額

通常枠:50万円(100万円)

特別枠:200万円(250万円)

※()はインボイス特例適用時

補助率

2/3

(要件を満たす場合は3/4)

対象経費

①機械装置等費

②広報費

③ウェブサイト関連費

④展示会等出展費

⑤旅費

⑥新商品開発費

⑦資料購入費

⑧借料

⑨設備処分費

⑩委託・外注費

RPAツールの導入事例

【宿泊業】

人手不足のため、無人営業ができる予約管理システムを導入。

それに伴い、毎月の予約とアンケート結果を自動で集計するRPAツールも導入

【フォトスタジオ】

季節のDMを送る際、より精度の高いエリアと層に絞ることを検討。

過去の問い合わせや顧客のデータからマーケティング資料を制作する際、RPAツールを導入

【ネット通販事業】

Google経由で訪れるユーザーの分析資料を作成し、ECサイトの更新に役立てる。

担当者の時間短縮のため、毎日決まった時間にレポート作成をするRPAツールを導入

【法律事務所】

残業を減らすため、毎月決まった役員報酬の計算にRPAツールを導入

参考:小規模事業者持続化補助金の公式サイト

たとえば、宿泊事業の場合、人員不足のために無人営業ができる予約管理システムを導入するとします。その際、RPAツールを導入すると、予約管理システム上で取得できる予約情報とアンケート結果をロボットに管理・集計させることが可能です。

小規模事業者持続化補助金でRPAツールが補助対象となる条件は、販路拡大や生産性向上に役立つ使い方をされることです。小規模事業者が通常の業務に使用するためのRPAツールは補助対象として認められない点に留意しましょう。

なお、小規模事業者持続化補助金の概要を確認したい人は、「小規模事業者持続化補助金とは?対象者や活用例をわかりやすく解説」を参考にしてみてください。

ものづくり補助金では革新的サービスや生産性向上のためのRPAツールが対象

ものづくり補助金では、革新的サービスや製品開発、試作品開発、生産性向上のためのRPAツールが対象です。RPAツールはパソコンで行う作業をロボットが人の代わりに行うため、発注書や見積書の作成などに役立てることができます。

【ものづくり補助金の概要】

項目

詳細
制度の目的

生産性向上につながる設備投資等にかかる費用の一部を支援する

補助上限額

最大1億円

※申請枠や事業規模により異なる

補助率

1/3~2/3

※申請枠や事業規模により異なる

対象経費

  • 機械装置・システム構築費
  • 運搬費
  • 技術導入費
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • クラウドサービス利用料
  • 原材料費
  • 海外旅費
  • 通訳・翻訳費
  • 広告宣伝・販売促進費
RPAツールの導入事例

【製造業】

職人の間接作業を減らすため、受発注に使えるRPAツールを導入

【印刷業】

品質を求められる医療用印刷物を受注するにあたり、印刷物チェックにより時間を取られることになった。

パソコン内のフォルダ整理や入稿データチェックのためRPAツールを導入

【税理士事務所】

手書き文字をOCRで読み取り、読み取ったデータを分析するためにRPAツールを導入

参考:ものづくり補助金公式サイト

たとえば、製造業の場合、職人が製品をつくる時間を確保するため、RPAツールを導入しました。RPAツールを導入した結果、職人がこれまで行ってきた受発注をロボットが行うことで、職人の間接作業の時間が短縮されました。

ものづくり補助金でRPAツールは、機械装置費の一環として、補助金の目的に沿っていれば補助されます。ただし、機械装置費は単価50万円以上の設備投資と共に行われる必要があり、RPAツールのみでは対象外となる可能性がある点に留意しましょう。

働き方改革推進支援助成金は従業員の休息時間確保の取り組みとしてRPAツールを導入できる

厚生労働省が管轄の「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」では、労務管理用機器やソフトウェアの導入が補助されます。事業者がシフト制や夜間勤務などで従業員を雇っていて、従業員の休息時間確保に取り組む場合に必要となるRPAツールが補助対象となる可能性があります。

【RPAツールを申請できる働き方改革推進支援助成金の概要】

補助対象となる取組み  補助上限額 補助率

① 労務管理担当者に対する研修
② 労働者に対する研修、周知・啓発
③ 外部専門家によるコンサルティング
④ 就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤ 人材確保に向けた取組
⑥ 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
⑦ 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

50万円~120万円
※従業員に休息を与える時間数により異なる

3/4または4/5

参考: 働き方改革推進支援助成金|厚生労働省

たとえば、ホームページや旅行サイトからのキャンセル情報をExcelでまとめていたホテルが、RPAツールの導入により作業を自動化した事例があります。ホテルが成果目標として従業員の勤務後に9時間以上の休息時間を設定するなら、助成の対象となる可能性があります。

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)では、勤務後に9時間~11時間の休息を与える「成果目標」の設定が必要です。RPAツールは従業員の休息への取り組みの一環であり、あくまで従業員の休息が主となる助成金であると理解しておきましょう。

RPAツールの導入に利用できる自治体の補助金もある

自治体が運営する補助金にも、RPAツールの導入が対象となる制度があります。自治体の補助金にはさまざまな種類があり、RPAツールの導入を目的としているものや、デジタルツール導入の一環としてRPAツールが対象とあるものなどがあります。

RPAツールの導入に利用できる自治体の補助金のひとつとして、東京都が実施している「中小企業デジタルツール導入促進支援事業」が挙げられます。都内の中小企業におけるデジタルツールの導入を支援する制度であり、業務効率化のためのRPAツールの導入などに対して最大半額(上限100万円)が補助されます。

RPAツールを対象とする自治体の補助金は、該当の自治体で事業を行う事業者が対象です。RPAツールを導入したい事業者は、事業所を管轄する自治体のホームページや相談窓口を活用し、RPAツールが対象となる補助金があるかどうかを確認してみましょう。

まとめ

RPAツールが対象となる国の補助金には、「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」「働き方改革推進支援助成金」などがあります。それぞれ制度の目的や対象が決められており、その目的や対象に合った取り組みを実施する事業者に対して補助金が支給されます。

また、RPAツールが補助対象となる制度には、都道府県や市区町村の自治体が独自に実施しているものもあります。自治体の補助金は管轄の地域において事業を実施する事業者が対象となるため、自治体のホームページや相談窓口を利用して自身が利用できる補助金が実施されているかどうかを確認してみてください。

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