中小企業省力化投資補助金とは?わかりやすく解説

2024/08/21

2024/8/8

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

中小企業省力化投資補助金は、令和5年度からの3年間を変革期間とすることを踏まえ、事業の売上拡大や生産性向上を後押しすることを目的に実施されている制度です。中小企業や個人事業主等が対象となり、生産性向上につながる設備投資にかかる費用の一部が補助されます。

当記事では、中小企業省力化投資補助金とはどのような制度なのか、申請を検討中の人やはじめて申請する人にもわかりやすく解説します。事業における設備投資の負担を軽減するために、補助金の利用を検討している人は参考にしてみてください。

なお、当記事は中小企業省力化投資補助金の「公式サイト」をもとに作成しています。

人手不足に悩む中小企業の省力化製品導入を支援する補助金

中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業に対してIoTやロボット等の設備導入を支援する補助金制度です人手不足の解消と生産性向上を図る取り組みを支援することにより、中小企業等の付加価値額向上とともに、賃上げにつなげることを目的としています。

【中小企業省力化投資補助金の公募内容】

項目

詳細

目的

人手不足を解消できる製品の導入や生産性向上を図る取り組みを実施し、賃上げにつなげること

対象者

中小企業や小規模事業者

(個人事業主を含む)

対象経費

人手不足を解消するロボットやIoT機器

補助上限額

従業員数によって異なる

5人以下:200万円(300万円)

6~20人以下:500万円以下(750万円)

21人以上:1,000万円以下(1,500万円)

※()は賃上げ要件を達成した場合

補助率

1/2以下

補助金を受け取るまでに必要なこと

  • 導入する省力化製品を「製品カタログ」から選ぶ
  • 付加価値額や生産性を向上させる事業計画をたてる
  • 販売事業者と共同申請する
  • 付加価値額や生産性を向上させる事業を実施する
  • 実績を報告する など

参考:「公募要領」|中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金では、補助対象の人手不足を解消する製品として「製品カタログ」に導入できる機器が掲載されています。「製品カタログ」に掲載されている製品を導入することで購入費や導入費を補助してもらえるため、コストを抑えて新たな体制へと移行できます。

従業員の減少や人手不足による残業時間の増加などに悩んでいる事業者は、中小企業省力化投資補助金を活用できる可能性があります。省力化製品の導入により事業の課題を解決したいと考えている人は、中小企業省力化投資補助金の利用を検討してみてください。

なお、補助金は申請してすぐに受け取れるわけではありません。補助金を受け取れるのは付加価値額や生産性向上を図る取り組み(補助事業)を実施したあととなるため、取り組みにかかる経費の支払いには自己資金を用意する必要がある点に留意しましょう。

人手不足解消につながるロボットやIoT機器を導入できる

中小企業省力化投資補助金は、人手不足解消につながるロボットやIoT機器が導入できます。申請者は「製品カタログ」に記載している製品の中から、自社の人手不足解消につながる製品を選択します。

【中小企業省力化投資補助金で導入できる製品】

機器カテゴリ

対象業種

対象業務プロセス

①清掃ロボット

  • 飲食サービス業
  • 宿泊業
  • 製造業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 清掃業務

②配膳ロボット

  • 飲食サービス業
  • 宿泊業
  • 製造業
  • 卸売業
  • 配膳業務
  • 搬送業務

③自動倉庫

  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 製造業
  • 保管
  • 在庫管理
  • 入出庫

④検品・仕分システム

  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 製造業
  • 資材調達
  • 加工・生産
  • 検査
  • 保管・在庫管理
  • 入出庫

⑤無人搬送車

(AGV・AMR)

  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 製造業
  • 資材調達
  • 加工・生産
  • 検査
  • 保管・在庫管理
  • 入出庫

⑥スチームコンベクションオーブン

  • 飲食サービス業
  • 小売業
  • 宿泊業

(規模問わず調理が行われている場所)

  • 調理

⑦券売機

  • 飲食サービス業
  • 注文受付
  • 請求・支払
  • 顧客対応

⑧自動チェックイン機

  • 宿泊業
  • 受付案内
  • 予約管理
  • 請求・支払
  • 顧客対応

⑨自動精算機

  • 飲食サービス業
  • 小売業
  • 注文受付
  • 請求・支払
  • 顧客対応

⑩タブレット型給油許可システム

  • 小売業

(ガソリンスタンド)

  • 給油

⑪オートラベラー

  • 製造業
  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 加工・生産
  • 梱包・加工
  • 保管・在庫管理

⑫飲料補充ロボ

  • 小売業
  • 飲料補充業務

⑬デジタル紙面色校正装置

  • 印刷・同関連業
  • 印刷

⑭測量機

  • 建設業
  • 専門・技術サービス業
  • 調査・測量
  • 施工
  • 検査

⑮丁合機

  • 製造業
  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 加工・生産
  • 梱包・加工
  • 出荷
  • 販売・納品

⑯印刷用紙高積装置

  • 印刷・同関連業
  • 印刷

⑰インキ自動計量装置

  • 印刷・同関連業
  • 印刷

⑱段ボール製箱機

  • 製造業
  • 加工・生産

⑲近赤外線センサ式

プラスチック材質選別機

  • 製造業
  • 廃棄物処理業
  • 卸売業
  • 分別業務

参考:「製品カテゴリ」|中小企業省力化投資補助金

たとえば、飲食サービス業が清掃ロボットを導入する場合、清掃ロボットの購入費用と導入費用が補助されます。導入費用には、設置や運搬作業、動作確認や設定などが含まれます。

中小企業省力化投資補助金において導入する製品は、「製品カタログ」に掲載されている製品の中から選ぶ必要があります。製品カタログには、保守およびサポート費用の目安や販売事業者の情報も掲載されるため、申請予定の人は導入する製品の情報を確認し自社に合った製品を選択しましょう。

補助の対象外となる製品もある

中小企業省力化投資補助金では、販売事業者が製品カタログに登録した製品以外は補助の対象外となります。申請を検討している人は「製品カタログ」から自社の人手不足を解消する製品を選択しましょう。

【補助の対象外になる製品】

項目

具体例

製品本体の費用

  • 製品の購入費用に、申請者の顧客が負担する費用を含んでいるもの

(売上原価に相当するもの)

  • 対外的に無償で提供されているもの
  • リース・レンタル契約の製品
  • 中古品
  • 交付決定前に購入した製品
  • 公租公課(消費税)
  • 事業の目的・趣旨から適切でないと判断されるもの

導入費用

  • 補助事業実施期間外に発生した費用
  • 過去に購入した製品に対する作業費用
  • 補助対象経費ではない製品に対する費用
  • 省力化製品の導入とは関連のないデータ作成費用や、データ投入費用等
  • 省力化製品の試運転に伴う原材料費、光熱費等
  • 補助事業者の通常業務に対する代行作業費用
  • 移動交通費・宿泊費
  • 委託・外注費
  • 申請者の顧客が負担する費用が導入費用に含まれるもの

(試作を行うための原材料費に相当するもの)

  • 交付申請時に金額が定められないもの
  • 対外的に無償で提供されているもの
  • 補助金申請、報告にかかる申請代行費
  • 公租公課(消費税)
  • 事業の目的・趣旨から適切でないと判断されるもの

参考:「公募要領」(p.8)|中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金において導入する製品は、人手不足を解消し、付加価値額や生産性を向上させる事業を行う中で活用されるもののみです。そのため、補助事業(補助金を活用する事業)以外の事業で活用する製品は補助の対象外となります。

なお、中小企業省力化投資補助金においては交付決定前に購入した製品や補助事業期間終了後に支払いが行われた製品など、補助事業実施期間外に発生した費用は補助の対象外となります。公募要領には「いかなる理由であっても事前着手は認められない」旨の記載があるため、製品の購入や導入は交付決定後の補助事業実施期間内に行いましょう。

対象者は中小企業や個人事業主

中小企業省力化投資補助金の対象者は、中小企業の定義に該当する企業や個人事業主です。中小企業の定義は、業種ごとに異なるため、申請を検討している人は、自社が対象者にあてはまるかを確認しておきましょう。

【中小企業の定義】

業種

資本金

(以下)

従業員

(以下)

製造業、建設業、運輸業

3 億円

300人

卸売業

1 億円

100人

サービス業

(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)

5,000万円

100人

小売業

5,000万円

50人

ゴム製品製造業

(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)

3 億円

900人

ソフトウェア業または情報処理サービス業

3 億円

300人

旅館業

5,000万円

200人

その他の業種(上記以外)

3 億円

300人

参考:「公募要領」(p.9)|中小企業省力化投資補助金

たとえば、飲食店を経営している事業者は「サービス業」にあてはまります。サービス業は資本金が5,000万円以下、もしくは従業員が100人以下であれば、中小企業省力化投資補助金における申請の対象です。

また、宿泊業と旅館業の分類は異なり、旅館以外の宿泊業は「サービス業」に該当します。自社の業種がどの項目にあてはまるのか知りたい人は、総務省の「日本標準産業分類」を確認してみてください。

なお、中小企業や個人事業主であっても、会社の意思決定権を大企業等がもっている「みなし大企業」に該当する場合は申請の対象外です。中小企業省力化投資補助金へ申請予定の人は、自社がみなし大企業に該当しないか公募要領(p.10)を確認しましょう。

補助上限額は申請する企業の従業員数によって異なる

中小企業省力化投資補助金の補助上限額は、従業員数によって異なります。申請予定の人は、事業計画をたてる際に補助対象経費の金額を計算し、自社が事業を実施した場合に受け取れる金額の目安を把握しておきましょう。

【補助上限額と補助率】

従業員

補助率

補助上限額

5人以下

1/2以下

200万円(300万円)

6~20人以下

500万円以下(750万円)

21以上

1,000万円以下(1,500万円)

※()内の数字は、賃上げ目標を達成した場合に引き上げられる金額

参考:「公募要領」(p.6)|中小企業省力化投資補助金

たとえば、従業員が20人の中小企業が補助対象経費400万円を申請した場合、補助率が1/2のため最大で200万円が補助されます。補助率1/2を掛けた金額が補助上限額である200万円を超える場合は200万円までが補助され、200万円を超える金額は自己負担となります。

事業計画をたてる際に賃上げ目標を設定した申請者は、賃上げ目標を設定していない事業者と比べて補助金を多く受け取れます。ただし、賃上げ目標を設定したにもかかわらず目標を達成できなかった場合、補助額は減額されます。

補助上限額や補助率は、申請者の企業規模や事業計画の内容によって異なります。自社の事業計画に対して補助金がいくら受け取れるのか知りたい人は、補助対象経費や従業員数を用いて計算してみてください。

なお、交付決定を受けた申請者であっても、申請した経費の全額が補助されるとは限りません。審査によって経費と認められないものが申請されている場合や、賃上げ目標が未達成の場合などは減額される可能性もあることに留意しましょう。

採択されるためには要件を満たす事業計画をたてる

中小企業省力化投資補助金に採択されるためには、事業の要件を満たす事業計画をたてることが求められます。そのため、事業計画をたてる際は、事業の要件をすべて満たしているかの確認が必要です。

【補助対象事業の要件と補助対象外となる事業】

項目

内容

補助対象事業の要件

  • 導入する省力化製品に紐付けられた業種と補助事業者の営む事業の業種が1つ以上合致すること
  • カタログに登録された価格以内の製品本体価格・導入経費を補助対象として事業計画に組み込むこと

※補助額の範囲外で、自費により経費を追加する場合は可)

  • 労働生産性の向上目標を設定し、その実現に向けて取り組むこと
  • 補助上限額の引き上げを行う場合、賃上げ目標の設定と従業員への表明を行いその実現に向けて取り組むこと
  • 省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に供する事業ではないこと
  • 労働生産性の向上にかかる目標を合理的に達成することが可能な事業計画に沿って実施されること
  • 効果報告期間が終了するまでの間、省力化製品の導入を契機として、自然退職や自己都合退職によらない従業員の解雇を積極的に行わないこと
  • 補助額が500万円を超える場合、保険への加入を行うこと

補助対象外となる事業

  • 省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に用いるもの

例)調理として登録されている省力化製品を、家事のために使用する

  • 実質的な労働を伴わない事業または主に資産運用的性格の強い事業
  • 建築または購入した施設・設備を自ら占有し、事業に用いることなく特定の第三者に長期間賃貸させるような事業
  • 取り組む事業が1次産業(農業・林業・漁業)である事業
  • 従業員の解雇を通じて労働生産性を向上させる事業
  • 既に所有する製品の置き換えであり省力化効果が得られない事業。
  • 日本国外で実施する事業
  • 公序良俗に反する事業
  • 法令に違反する恐れがある事業や消費者保護の観点から不適切であると認められる事業
  • 風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律第2条各項に規定する営業を営む事業
  • 暴力団または暴力団員と関係がある中小企業等による事業
  • 申請時に虚偽の内容を含む事業
  • その他制度趣旨・本公募要領にそぐわない事業

参考:「公募要領」(p.17)|中小企業省力化投資補助金

たとえば、飲食店を営む事業者が「製品カタログ」に載っているスチームコンベクションオーブンを飲食店で活用する場合は、補助の対象となります。しかし、飲食店ではなく、家事に活用する場合は補助の対象外となります。

製品カタログに載っているロボットやIoT機器でも、登録されている業種や業務プロセス以外で活用する場合は補助の対象外となります。要件を満たしていない場合は審査において不採択となり補助金の受給ができなくなるため、製品を選ぶ際は実施する補助事業に適した製品を選択してください。

なお、補助事業の要件は中小企業省力化投資補助金の公式サイトにある公募要領(p.17)に記載されているため、事業計画をたてる際に必ず確認しましょう。

申請を検討している人は補助金を受け取るまでの流れを確認する

中小企業省力化投資補助金への申請を検討している人は、事前に補助金を受け取るまでの流れを確認しておきましょう。補助金を受け取るには、審査や各種手続き、事業計画の実施が必要です。

【補助金を受け取るまでの流れ】

流れ

概要

①事前準備

  • 公募要領の確認
  • gBizIDプライムアカウントの取得
  • カタログから製品選定
  • 販売事業者の選定
  • 必要書類の準備

②交付申請

電子申請システムを通じて製品の販売事業者と共に申請する

③審査

交付申請の内容をもとに審査が実施される

④交付決定

採択された場合は申請受付システムを通じて採択通知を受け取る

⑤補助事業実施

交付決定日から原則12か月以内に、事業計画に基づく補助事業を完了させる

⑥実績報告

補助事業で実施した内容について以下を含めて報告する

  • 支払いに係る証憑
  • 導入実績に係る証憑
  • 事業計画の達成状況

⑦確定検査

実績報告の内容を踏まえて補助額が確定される

⑧補助金の請求・支払い

補助額の確定後、事務局に対して支払請求を行うことで補助金が支払われる

⑨効果報告

補助事業終了後5年間にわたり以下の内容を報告する

  • 省力化製品の稼働状況
  • 事業計画の達成状況

参考:「公募要領」(p.5)|中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金の申請方法は申請受付システムによる電子申請であり、申請には「gBizIDプライムアカウント」の取得が必要です。gBizIDプライムアカウントはオンライン申請をすれば即日発行が可能ですが、郵送による手続きを行った場合は2週間程度を要する可能性があります。

また、中小企業省力化投資補助金への申請手続きは、導入する製品の販売事業者とともに進める必要があります。申請者は、導入したい製品を「製品カタログ」から選び、製品の販売事業者に交付申請をする旨を連絡してから共同申請を行います。

申請の手続きには、事業計画の作成や販売事業者への連絡など、時間を要する手続きがあります。申請を検討している人は、全体の流れを確認して余裕をもったスケジュールで申請の準備を進めてください。

なお、中小企業省力化投資補助金では、補助金の受給後も「効果報告」として、補助事業終了後5年間にわたり事業状況の報告が必要です。導入した製品の稼働状況や事業計画の達成状況を伝える義務が発生するため、申請予定の人は補助金を受け取った後も手続きがあることに留意しておきましょう。

まとめ

中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業に対してIoTやロボット等の省力化製品の導入を支援する補助金制度です。人手不足の解消と生産性向上を図る取り組みを支援することにより、中小企業等の付加価値額向上とともに、賃上げにつなげることを目的としています。

補助対象となる経費は、「製品カタログ」に記載されている省力化製品です。人手不足を解消する配膳ロボットやIoT機器などが対象となっており、製品の購入費や設置費および運搬費などの導入費のうち最大半額を補助金として受け取ることができます。

事業計画で賃上げ目標を設定した場合は、補助額を引き上げることができます。事業の課題解決に向けて省力化製品を導入したいと会考えている人は、対象となるための要件や補助金を受け取るまでの手続きを確認し、中小企業省力化投資補助金への申請を検討してみましょう。

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