事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用とは?概要と注意点を解説

2024/07/04

2023/4/21

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

事業承継や廃業をしたい人の中には、事業承継・引継ぎ補助金で補助を受けたい人もいますよね。その際、事業承継・引継ぎ補助金のパンフレットや公募要領にある「専門家活用」について、「専門家活用」が指す意味を知りたい人もいることでしょう。

当記事では、事業承継・引継ぎ補助金の申請方法の1つである「専門家活用」枠の概要を解説します。専門家活用枠で対象の補助経費や事業者も解説するので、事業承継・引継ぎ補助金に関心がある人は、当記事を参考にしてみてください。

なお、当記事は20247月に公開された事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠10次公募回の公募要領をもとに作成しています。

専門家活用は事業承継の専門家を通じて事業の引継ぎをする事業者が対象

事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠とは、弁護士や司法書士などの専門家に事業承継を依頼する際に利用できる申請枠です。専門家活用枠では、事業者が弁護士や司法書士などの専門家を活用し、事業をM&Aで売買する際に、かかる経費の一部補助を受けられます。

専門家活用枠で対象となる補助事業は、不動産のような有形資産だけでなく、株式や経営権を含めて売買するM&Aです。

【専門家活用枠を利用して申請できる経営引継ぎの例】

経営引継ぎの形態

有形資産+株式+経営権の引継ぎ

飲食店をしている第三者の会社の店舗と株式、経営権を引き継ぐ

無形資産+事業+経営権の引継ぎ

美容室をしている個人事業主から顧客リスト、事業、経営権を引き継ぐ

有形資産+無形資産+経営権の引継ぎ

運送業者から車両、従業員、経営権を引き継ぐ

参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、第三者から会社の事業を引き継ぐ場合、会社の店舗、株式、経営権を引き継ぐなら、「有形資産+株式+経営権」の引継ぎとなるため、専門家活用枠の対象事業の要件を満たすので、専門家活用枠へ申請できます。

また、第三者へ事業を譲り渡す場合も、株式や店舗だけでなく、第三者が実質的な経営者となる場合は、専門家活用枠の対象事業の要件を満たすので、専門家活用枠の補助の対象事業となります。

専門家活用枠では、M&Aで事業を購入する事業者だけでなく、売却する事業者も対象です。M&Aマッチングサイトや弁護士などを通じて事業承継をしたい人は、専門家活用枠の利用を検討してみてください。

なお、2024年7月に実施される事業承継・引継ぎ補助金の10次公募では専門家活用枠のみの募集となります。

専門家とは弁護士やM&Aアドバイザリーを指す

専門家活用の「専門家」には弁護士や法律事務所などの種類があり、そのうち「M&A 支援機関登録制度」に登録された専門家は「登録FA・仲介業者」と呼ばれます。事業者がM&Aを依頼する専門家は特に指定されていないので、事業者は自社で専門家を決められます。

【専門家の種類】

専門家の種類

依頼できる書類

弁護士

  • 事業譲渡契約書
  • 株式譲渡契約書
  • 遺産分割協議書

税理士

  • 確定申告書
  • 賃金台帳
  • 法人事業概況説明書

中小企業診断士

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 営業利益率低下に関する計算書

行政書士

  • 公正証書遺言書の原案
  • 履歴事項全部証明書の取得

法律事務所

  • 事業譲渡契約書
  • 株式譲渡契約書
  • 遺産分割協議書

たとえば、宿泊施設を買収したい事業者の場合、宿泊施設の買収に精通している法律事務所と契約をしたければ、自社でネット検索をして法律事務所を探すことができます。

また、宿泊施設を売却したい事業者の場合、事業承継の契約書作成や定款変更を依頼したければ、自社でネット検索をして行政書士探すことができます。

専門家活用枠を通して選べる専門家には、弁護士や中小企業診断士など、さまざまな専門家がいます。M&Aではさまざまな法的な手続きが発生するので、専門家にM&Aの依頼をしたい人は、自社の事業承継の形態に合う専門家を探してみてください。

補助金額は廃業費を含めると最大750万円

専門家活用枠の補助金額は、補助対象経費の50万円~600万円で、廃業費の150万円を合わせると最大750万円が補助されます。専門家活用枠から申請すると、事業者が支払う補助対象経費のうち、補助率をかけた補助金額の上限まで補助されます。

【専門家活用枠の概要】

類型

補助率

補助金額

上乗せ額(廃業費)

買い手支援型(型)

補助対象経費の2/3以内

対象経費の50万円~600万円以内

※補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は上限300万円に引き下げる

+150万円以内

売り手支援型(型)

補助対象経費の1/2または2/3以内

※売り手支援型の物価高等の影響で営業利益率低下直近決算期の営業利益等が赤字の場合は2/3となる

参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、買い手支援型(型)の場合、司法書士に支払う不動産売買の登記費用を含み600万円支払うとすると、補助率は2/3なので、400万円が補助されます。

また、売り手支援型の場合、税理士に対象事業の企業価値を算定する書類作成の依頼で300万円支払うなら、営業利益率低下がない場合は補助率1/2なので、150万円が補助されます。

専門家活用枠の補助金額は50万円~600万円で、補助率は買い手支援型が一律2/3となり、売り手支援型より優遇されています。補助金額を多くしたい人は、補助事業期間中に経営資源の引継ぎを完了できるよう、引継ぎ計画を立ててみましょう。

補助対象経費は専門家に支払うコンサルティング費用や着手金などがある

専門家活用枠の主な補助対象経費は、各種専門家に支払うコンサルティング費用や着手金。専門家活用枠の補助対象経費は、公募要領では「謝金」や「委託費」などと記載されているため、各補助対象経費が意味する内容を理解しておきましょう。

【専門家活用枠で補助される経費】

補助対象経費の種類

謝金、旅費、外注費(請負契約)

  • コンサルティング費用
  • コンサルティングをするための出張費
  • (建設業工事の)請負契約承継承諾願の作成費用

委託費(委任契約)

  • デューデリジェンス費用(DD費)
  • 着手金
  • マーケティング費用
  • リテーナー費用
  • 成功報酬
  • 契約書の作成・レビュー

システム利用料

M&Aマッチングサイト利用費

保険料

M&A 当事者間で交わされる最終合意契約に規定される表明保証条項に関する保険

廃業費

廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの売り手支援型 解約費、移転・移設費用

たとえば、企業が弁護士やコンサルタントなどの専門家に監査を頼む際のデューデリジェンス費用(DD費)を支払う場合、補助対象経費は「委託費」として申請します。

また、M&Aアドバイザリーへのコンサルティング費用を支払う場合は、コンサルタントが助言や個別の実作業、補助対象経費は謝金として申請します。

専門家活用枠の補助対象経費は、主に専門家との契約や手続きに係わる費用です。デューデリジェンス費用(DD費)や着手金、マーケティング費用を支払う場合は、専門家活用枠の公募要領を確認し、どの補助対象経費に当てはまるか確認してみてください。

なお、専門家活用枠で委託費を支払う予定の人は、「M&A 支援機関登録制度」に登録済みの 登録FA・仲介業者に支払う補助対象経費のみが補助されます。専門家への登記手続きや売却事業者紹介などで着手金や成功報酬を支払うなら、登録FA・仲介業者を選ぶようにしましょう。

 事業承継期間中に支払いや事業再編の着手などを終える

専門家活用枠では、事業承継期間中に支払いや事業再編の着手などを終える必要があります。事業承継期間とは、交付決定日から補助事業完了日までを指し、10次公募の場合、事業承継期間は交付決定日から20241122日までとなります。

【事業承継期間が係わる申請ルール】

ルールの種類

公募要領にある「経営資源引継ぎ」のルール

事業者と専門家の間で基本合意書または最終契約書を締結する際は、補助事業期間内に行わなければならない

廃業に係わるルール

事業者が廃業をする際は、関連する経営資源の引継ぎを補助事業期間内に完結しなければならない

補助対象経費に係わるルール

事業者が補助対象経費の支払いをする際は、補助対象経費の見積・発注・納品・検収・請求・支払をすべて補助対象期間内に終わらせなければならない

参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、買い手支援型で法人Aが個人事業主Bから事業を購入する場合、法人Aが交付決定を受ける前に法律事務所に着手金を支払うと、着手金は補助対象外となります。

また、売り手支援型で個人事業主Aが法人Bに事業を売却する場合、両者間で売却金額がまとまらず、補助対象期間中に支払いが完了できないと、個人事業主Aの補助対象経費は対象外となります。

専門家活用枠では、補助対象期間中に専門家へのクロージングまでが完了する必要があります。専門家活用枠に申請する際は、申請する事業承継の実施、補助対象経費への支払い、専門家と契約書を交わす日付が、いずれも補助対象期間内となるように留意しましょう。

対象者は経営資源引継ぎの要件を満たす中小企業者や個人事業主

専門家活用枠の対象事業者は、国内に拠点または居住地をもつ中小企業者や個人事業主のうち、MAで事業を購入または売却する人です。専門家活用枠で申請する際は、いずれの対象者も「経営資源引継ぎの要件」を満たさなければなりません。

【経営資源の引継ぎの要件】

  • 補助事業期間中に買い手と売り手の間で事業再編・事業統合が着手または実施されること

※廃業を伴う事業再編・事業統合をする予定の場合も含む

  • 専門家活用枠の公募要領に記載する「経営資源引継ぎ形態に係る区分整理」で定める形態に該当すること
  • 物品・不動産等のみの売買・グループ内の事業再編および親族内の事業承継に当てはまらないこと

参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、法人Aの株式の一部を保有する法人Bの場合、法人Aの株式を第三者割当増資で過半数保有し、法人Aの設備や従業員も引き継ぐときは、経営資源の引継ぎ要件を満たします。

一方、M&Aで事業譲渡する個人事業主の場合、代表権はそのままで、車両や不動産などの資産のみを法人に売却して引き継ぐときは、経営資源の要件を満たしません。

専門家活用枠の対象者は、国内で事業承継をする中小企業者と個人事業主です。対象事業者は、3期分の決算および申告が終了している法人、開業と青色申告申請書を税務署に提出した日付から5年経過した個人事業主なので、申請時に確認してみましょう。

2回申請できる人は複数の事業を持っている事業者

事業承継・引継ぎ補助金では同一の事業者による複数回の申請は不可ですが、複数の事業をもつ事業者は、2回目の申請が可能です。事業承継・引継ぎ補助金に2回目の申請をしたい人は、2回目の申請ができるか、申請単位や申請できる人をしてみましょう。

 

申請単位

同じ事業者や同じ事業で2回目の申請は不可

  • 【例外】事業を譲り受ける人(承継者)と補助対象経費を支払う人が異なる場合:

補助対象経費を支払う人が承継者の支配株主または株主代表である者なら、共同申請する場合、承継者は買い手支援型(型)から1申請、支配株主または株主代表である者は売り手支援型(型)から1申請、2申請が可

  • 【例外】売り手支援型(型)被承継者が複数の対象会社を異なる承継者に引継ぐ場合:

売り手支援型として2回目以降の申請が可

申請できる人

補助対象者(事業承継の手続きをする人)

  • 補助対象経費を支払う人
  • 補助対象経費の契約の名義人
  • 事業承継・引継ぎ補助金に関連する補助金で、過去に交付決定を受けていない人

〈関連する補助金の例〉

-令和2年度第1次補正予算「経営資源引継ぎ補助金」

-令和2年度第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」

-令和3年度当初予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」

参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、法人がA事業B事業C事業の3つの事業を持っている場合、A事業で一度交付決定を受けるとA事業で2度目の申請はできませんが、B事業またはC事業では2回目の申請が可能です。

ただし、複数の事業をもつ法人の場合でも、過去に令和2年度第1次補正予算「経営資源引継ぎ補助金」や令和3年度当初予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)で交付決定を受けた場合は、2回目の申請の対象者からは外れます。

専門家活用枠で2回目の申請をする場合は、別の事業でなければなりません。ただし、売り手側が複数の事業者に事業を譲り渡す場合は、複数回の申請が可能です。事業承継・引継ぎ補助金で2回目の申請をしたい人は、要件を満たせるか確認してみましょう。

事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠の採択率は55.9%

2024年度の9次公募で専門家活用枠の採択率は62.5%です。1次から8次公募の採択率は平均で57.8%程度でした。一方、事業承継・引継ぎ補助金の「経営革新」枠の9次公募の採択率は60.0%で専門家活用枠と近い数字ですが、申請者数と採択者数は異なります。

9次公募の専門家活用枠とその他の申請枠の採択率】

専門家活用枠

経営革新枠

採択率

62.5%

採択率

60.0%

申請者数

440

申請者数

388

採択者数

275

採択者数

233

※事業承継・引継ぎ補助金の公式サイト「採択結果」を元に、株式会社ソラボが作成

たとえば、9次公募の専門家活用枠の申請者数は440者ですが、9次公募の経営革新枠の申請者数は388者なので、経営革新枠より専門家活用枠の方が申請者数は多いことがわかります。

事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠の採択率は、2024年度の場合、62.5%程度でした。事業承継・引継ぎ補助金はあと何回の公募があるかは未定です。専門家経費の補助を希望する人は、早めに申請準備をしましょう。

なお、事業承継・引継ぎ補助金の採択率をより詳しく知りたい人は、「事業承継・引継ぎ補助金の採択率は?不採択になる理由や採択事例も解説」を参考にしてみてください。

対象となる事業は買い手支援型と売り手支援型の2つがある

専門家活用枠の補助対象事業は、「買い手支援型(型)」と「売り手支援型(型)」の2つに分けられます。事業承継・引継ぎ補助金の他の申請枠では「事業を譲り受ける人」のみが対象者なのに対し、専門家活用枠ではM&Aで事業を買う人も売る人も対象になります。

【買い手支援型と売り手支援型の概要】

申請型の種類

概要

買い手支援型(型)

事業再編・事業統合に伴い株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業等を支援する類型

売り手支援型(型)

事業再編・事業統合に伴い株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業等を支援する類型

参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、事業譲渡の場合、第三者から事業を譲り受ける人は「買い手」として買い手支援型の対象となり、第三者へ事業を譲り渡す人は「売り手」として売り手支援型の対象になります。

専門家活用枠の対象事業は、M&Aでの事業購入および事業売却です。事業承継・引継ぎ補助金の「経営革新」枠と異なり、専門家活用枠では事業を譲り渡す人も対象なので、専門家を通してM&Aをする予定の事業者は、専門家活用枠の利用を検討してみてください。

買い手支援型は事業を譲り受けてシナジーを生かした経営革新を行う

買い手支援型は事業を譲り受けてシナジーを生かした経営革新を行うことが求められます。シナジーとは相乗効果のことで、事業者がM&Aをすることで、売上増加やコスト削減などが見込まれることを示します。

【買い手支援型で補助の対象となる事業承継】

補助対象者

経営資源引継ぎの形態の種類

概要

事業を譲り受ける者(法人)

株式譲渡

対象会社の株主から株式の譲渡を通じ、対象会社を譲り受ける

事業を譲り受ける者(個人事業主)

事業を譲り受ける者(法人)

第三者割当増資

承継者のA社は被承継者のB社が資金調達のために発行した株式を購入し、B社の株主となる

事業を譲り受ける者(個人事業主)

株式交換

対象会社の株式を被承継者から販売され、株式を購入する承継者は対象会社を完全子会社とする

事業を譲り受ける者(法人)

吸収合併

承継者が被承継者を吸収し、ひとつの会社となる

事業を譲り受ける者(法人)

吸収分割

被承継者の事業について、会社分割を通じて承継者は被承継者から譲渡を受ける

事業を譲り受ける者(法人)

事業譲渡

被承継者の事業について、承継者が被承継者から譲渡を受ける

事業を譲り受ける者(個人事業主)

参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、株式譲渡を受ける法人の場合、譲り受ける株式が過半数であれば経営権も取得できるため、補助事業期間中に経営資源の引継ぎを行えば、補助の対象となります。

また、吸収合併で事業承継をする法人の場合、M&Aで購入する事業者を自社と合併し、経営資源とともに経営権も取得するのであれば、補助の対象となります。

買い手支援型は、他の事業者から経営資源を譲り受け、経営革新や地域経済をけん引する事業を支援します。株主譲渡や株式交換などで事業を譲り受ける人は、弁護士や行政書士に支払う費用が補助されるので、専門家活用枠の買い手支援型を検討してみましょう。

売り手支援型では地域で需要や雇用のあった事業が対象

売り手支援型は地域経済をけん引する事業を、地域のために継続することが前提の類型です。売り手支援型では、一部の事業承継の形態において、対象会社だけでなく対象会社の株主と共同申請できる場合があります。

【売り手支援型で補助の対象となる事業承継(抜粋)】

補助対象者

経営資源引継ぎの形態の種類

概要

対象会社

株式譲渡

対象会社が株式の譲渡を通じ、対象会社を承継者に譲り渡す

対象会社+対象会社の株主(共同申請の場合)

株式譲渡+廃業

対象会社を譲り受ける株主と対象会社が共同申請をして、対象会社を譲り受ける際の専門家経費と、対象会社を廃業するための経費を申請する

事業を譲り渡す者(法人)

第三者割当増資

被承継者のA社は資金調達のために株式を発行し、株式を購入したB社が株主となる

株式移転

被承継者と承継者が共に持ち株会社を設立する

新設合併

被承継者と承継者が合併し、新たな法人となる

事業再編等+廃業

被承継者のA社は第三者割当増資や株式交換などを行い、B社はA社の株式の取得を行う。その後A社は廃業する。

事業を譲り渡す者(個人事業主)

事業譲渡

被承継者の事業について、被承継者が承継者へ譲渡する

事業再編等+廃業

被承継者の個人事業主は、新設合併や吸収合併などを行う。その後被承継者は廃業する。

参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、対象会社が廃業して株式譲渡をする場合、対象会社を譲り受ける株主と対象会社の両方が共同申請できるので、対象会社を承継する株主と売り渡す対象会社の双方が、補助されます。

また、事業再編で事業を譲り渡す個人事業主の場合は、事業譲渡または事業再編と廃業で事業を譲り渡す際、売り手支援型の対象となります。

専門家活用枠の売り手支援型では、法人の場合は株式譲渡や新設合併、個人事業主の場合は事業譲渡と事業再編+廃業が対象事業です。地域で長年やってきた事業を手放す人は、弁護士や行政書士への費用が補助されるので、専門家活用枠の売り手支援型を検討しましょう。

事業を譲り渡す株主と生計を共にする場合は対象外となる

専門家活用枠では、事業承継をする株主と生計を共にする家族が被承継者の場合は、補助の対象外です。他にも、承継者と被承継者の組み合わせで補助対象外の場合があります。家族と事業承継をしたい人は、専門家活用枠の対象外に当てはまらないかを確認しましょう。

【承継者と被承継者の関係で補助対象外となる要件】

  • 事業承継をする株主と生計を共にする家族が被承継者の場合
  • 事業承継後に承継者が保有する被承継者の議決権が、過半数でない場合
  • 事業再編・事業統合後に事業を譲り受ける会社が持つ議決権が、事業を譲り渡す会社が持つ議決権よりも少ない場合

参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、売り手支援型で申請する人の場合、生計を共にする家族が手放す事業を家族から承継するなら、補助の対象外です。

また、買い手支援型で申請する人の場合、対象会社の事業を承継する際、対象会社の議決権を過半数保有しない条件で承継するのなら、補助の対象外です。

専門家活用枠では、承継者と非承継者の関係が家族の場合、および、承継後の議決権が過半数以下の場合は補助されません。専門家活用枠から申請する際は、承継者と被承継者の関係や引き継ぐ内容が要件を満たせるよう、公募要領の詳細まで細かく確認してみましょう。

事業承継・引継ぎ補助金の申請の流れを確認する

事業承継・引継ぎ補助金に関心のある人は、早めに申請の流れを確認しておきましょう。事業承継・引継ぎ補助金に申請するには、公募要領を読むことに加え、Gビズプライムアカウントの取得など、やるべきことが複数あります。

【事業承継・引継ぎ補助金の申請の流れ】

手続きの種類

内容

①3つの申請枠のうち、どれに申請するかを決める

事業承継・引継ぎ補助金の公募要領ダウンロードから申請予定の公募要領を確認する

②どの公募回に申請するか決める

事業承継・引き継ぎ補助金の上部にある各申請枠名をクリックし、スケジュールを確認する

③該当する専門機関をネット検索で探す

〈経営革新枠または廃業・再チャレンジ枠〉

認定支援機関を探す

〈専門家活用枠で委託費申請する場合〉

登録FA・仲介業者を探す

④GビズITプライムアカウントを取得する

スマートフォンまたは携帯電話、印鑑証明書や登録印を準備のうえ、gBizIDより申請する

⑤申請書類を準備する

交付申請の類型により必要な書類は異なるので、公募要領を確認し、必要な書類を準備する

⑥申請する

事業承継・引継ぎ補助金の各申請枠ページの下にある「jGrants ホームページ」より交付申請する

たとえば、事業承継・引継ぎ補助金でどの公募回に申請するかまだ決まっていない場合、事業承継・引継ぎ補助金は年間を通じて公募されている補助金ではないので、公式サイトで事業承継・引継ぎ補助金のスケジュールを確認する必要があります。

また、専門家活用枠から申請したい場合、補助対象経費の委託費を支払う予定であれば、相談する専門家として登録FA・仲介業者を探すことも必要です。

事業承継・引継ぎ補助金に申請する人は、やるべきことは複数あります。まずは全体的な申請の流れを把握し、公募要領を読むことや疑問点の解決をし、「専門家を探す」「Gビズプライムアカウントの取得をする」などの準備をしていきましょう。

他の申請枠と違い認定支援期間の確認書は必要ない

専門家活用枠では、事業承継引継ぎ補助金の他の申請枠と異なり、認定支援機関の確認書を提出する必要はありません。そのため、事業承継・引継ぎ補助金の申請時に要件を満たしているかの確認や、書類の不備がないかの確認は、事業者自身または専門家が確認します。

j Grantsでの申請時に必要な書類の例】

申請者

法人

事業承継引継ぎの形態区分

株式譲渡

必要書類(法人分)

  1. . 履歴事項全部証明書(交付申請日以前 3 カ月以内に発行されたもの)
  2. 直近の確定申告の基となる直近 3 期分の決算書(貸借対照表、損益計算書)
  3. 常時使用する従業員 1 名の労働条件通知書

必要書類(法人の代表者分)

住民票(交付申請日以前 3 カ月以内に発行されたもの)

たとえば、法人がjGrantsから専門家活用枠へ株式譲渡で申請する場合、「履歴事項全部証明書」「直近3期分の決算書」「常時使用する従業員1名の労働条件通知書」に加え、法人の代表の住民票も提出します。

事業承継・引継ぎ補助金に申請する際は、必要書類の漏れがないよう、公募要領をよく読みましょう。事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトでは、申請時の必要書類を確認するためにチェックリストがあるので、申請時の書類が気になる人は確認してみてください。

まとめ

事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠とは、弁護士や司法書士などの専門家に事業承継を依頼する事業者向けの申請枠です。専門家活用枠では、弁護士や司法書士などの専門家を活用し、事業をM&Aで売買する事業者が支払う経費の一部が補助されます。

専門家活用の「専門家」には弁護士や法律事務所などの種類があり、そのうち「M&A 支援機関登録制度」に登録された専門家は「登録FA・仲介業者」と呼ばれます。事業者がM&Aを依頼する専門家は特に指定されていないので、事業者は自社で専門家を決められます。

専門家活用枠の補助金額は、補助対象経費の50万円~600万円で、廃業費の150万円を合わせると最大750万円が補助されます。専門家活用枠から申請すると、事業者が支払う補助対象経費のうち、補助率をかけた補助金額の上限まで補助されます。

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