介護事業における補助金の用途と注意点を解説

2024/10/03

2024/10/3

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

介護事業を営む事業者の中には、介護事業に補助金を利用できる用途は何があるのか分からない人がいるのではないでしょうか。介護事業における補助金の用途は多岐にわたり、人材の確保や介護事業所の整備などに使えます。

当記事では、補助金を介護事業に利用するときの用途を解説します。また、補助金を介護事業に利用するときの注意点も紹介しているため、補助金を介護事業に利用したい人は参考にしてみてください。

介護事業における補助金の用途

介護事業における補助金の用途は様々あります。補助金を介護事業に活用することで、費用を抑えながら人材の確保や介護業務の効率化、利用者の安全確保などを行うことが可能です。

【介護事業における補助金の用途】

  • 人材の確保
  • ICTの導入
  • 介護ロボットの導入
  • 安全対策の強化
  • 施設のリフォーム

たとえば、補助金をWi-Fi環境の整備に利用できるため、スマホやタブレットを用いたオンライン面会が行えます。コミュニケーションツールにより、介護職員と利用者の家族とのやり取りもスムーズに対応でき、介護職員の負担を抑えられます。

また、補助金を事業所の床材を滑りにくいものに変えるなどに利用でき、施設のリフォームや大規模修繕も行えます。施設をリフォームすることにより、利用者の安全確保や介護職員が介助しやすくなり介護業務の効率化につながります。

なお、介護事業者が利用できる補助金では、介護おむつや使い捨て手袋などの消耗品は補助対象外となる傾向にあります。介護に関する補助金には、介護事業者向けの制度と在宅で介護をしている個人向けの制度があり、それぞれ対象となる用途や経費が異なる点に留意しましょう。

人材の確保

介護事業における補助金の用途には「人材の確保」が挙げられます。補助金を、事業所内の人手不足や介護職員の定着率を向上するために利用できます。

【人材を確保するための活用例】

  • 求人募集のサイトやチラシ等に求人情報を掲載
  • 求人情報に関するホームページ制作
  • 介護職員の資格取得
  • 介護職員の給与増加
  • 求人説明会等のイベントに出展
  • 研修やセミナーの実施 等

たとえば、求人情報を載せたホームページを制作する際に補助金を利用することは可能です。求人説明会のイベントに出展する際にも補助金が活用できるため、費用を抑えて人材の確保につながる取り組みが可能となります。

また、介護職員が資格取得する際に補助金を利用することも可能です。セミナー受講料や研修などの費用負担を抑えながら、介護職員のスキル向上やキャリアアップを図れます。

なお、補助金を利用して介護職員の給与増加や手当の支給を実施することで、職場環境が向上され介護職員の定着率が上がる可能性があります。また、補助金を利用して雇用機会の創出につなげることもできるため、介護事業の人材確保の促進が可能となります。

ICTの導入

介護事業における補助金の用途には「ICTの導入」が挙げられます。ICT(情報通信技術)システムの導入によって、情報などの共有を迅速に行えるため、業務の効率化につながります。

【ICTの導入の活用例】

活用例

概要

記録業務

  • インターネット上で介護業務に関する情報を一元管理・転記作業不要
  • スマホでのお知らせ配信
  • パソコンで請求書を作成しアプリで送信 等

情報共有

  • チャットツールを用いて介護職員同士による情報共有
  • 連絡手段としてインカムを導入 等

シフト管理

  • シフト自動作成 等

オンライン面会

  • スマホやタブレット、パソコンを使いオンラインで面会

たとえば、訪問介護にて補助金を利用しICTシステムを導入する場合、訪問介護のサービス状況をスマホなどにより即座に連絡や確認を行えます。介護職員がリアルタイムで確認できるため、訪問の抜け漏れを防ぐことが可能です。

また、老人ホームにて補助金を利用しICTシステムを導入する場合、インカムを連絡手段にすることが可能です。インカムを連絡手段として導入することで、介助により両手が使えない状態でも通話でき、情報共有がスムーズになります。

なお、補助金を利用してICTシステムを導入することにより、業務効率化以外にも様々なメリットがあります。ペーパーレス化によるコストの削減や、事務作業の手間や時間を省け、転記ミスが少なくなるなどの介護職員の負担を軽減することが可能です。

介護ロボットの導入

介護事業における補助金の用途には「介護ロボットの導入」が挙げられます。補助金を利用して、介護ロボットを導入することにより、介護業務の効率化や介護業務の省人化につながります。

【介護ロボットの例】

介護ロボットの種類

移乗介助

  • パワーアシストスーツ
  • 離床アシストロボット
  • 移乗サポートロボット 等

移動支援

  • ロボットアシストウォーカー
  • オートアシスト機能付き歩行車 等

排泄支援

  • 排泄動作支援機器
  • 自動排泄処理装置
  • 排泄検知システム 等

見守り・コミュニケーション

  • ベッド内蔵型離床センサー搭載電動ベッド
  • 人工知能搭載コミュニケーションロボット
  • 予測型見守りシステム 等

入浴支援

  • バスリフト
  • リフトキャリー 等

介護業務支援

  • 自動体位変換機能付きエアマットレス 等

たとえば、補助金を利用して移乗介助ロボットを導入することで、介護職員の身体的負担の軽減が可能です。非装着型の移乗介助ロボットの活用により、利用者の表皮剥離等の身体的負担の軽減もでき、安全性を向上させることができます。

また、補助金を利用して見守り支援システムを導入することで、利用者の状態をパソコン画面からみることが可能です。離床回数などのデータから健康管理がしやすくなるほか、利用者の行動を即座に確認できることから、転倒を未然に防ぐことにつながります。

なお、補助金を利用して介護ロボットを導入することで、介護職員の身体的負担や心理的負担が減り、介護職員の離職率の低下につながる可能性があります。介護の質が安定することにより、利用者の介護者に対する心理的な負担も軽減されるでしょう。

安全対策の強化

介護事業における補助金の用途には「安全対策の強化」が挙げられます。補助金を利用して、見守りシステムや見守りカメラを導入することで安全性を高め、介護職員の見回りの時間を短縮することが可能です。

【安全対策の強化の例】

  • 見守りシステム、センサーの導入
  • 見守りカメラの導入
  • アルコールチェック管理システムの導入

たとえば、見守りセンサー設置にかかる費用は、介護ロボットやICT導入補助金の対象となるため補助金で賄えます。見守りセンサーなどを導入することで、複数の利用者の健康状態や状況を把握でき、不調に気づきやすくなることや利用者の事故防止につながります。

また、福祉車両などで送迎を行う介護事業所で必須であるドライバーのアルコールチェックにかかる費用も補助金で賄うことが可能です。アルコールチェッカーとアルコールチェック管理システムと連動させることで、データ管理が自動化されるため、作業の工数を減らせます。

このように、補助金を利用して安全対策を強化することで、導入にかかる費用を抑えて利用者や介護職員の安全性の確保ができ、介護業務の質を高められます。補助金によっては導入できる機器が制限されている場合があるため、公募要項の確認を申請前に行いましょう。

施設のリフォーム

介護事業における補助金の用途には「施設のリフォーム」が挙げられます。介護事業所のリフォームを行うことにより、利用者の事故防止や介護職員の負担を減らすことができます。

【施設のリフォーム例】

リフォーム

創設

  • 新たに介護事業所を創設
  • 新たに宿舎を整備 等

改修

  • 浴室、食堂等の改修工事
  • 防災対策のための補強改修工事
  • 避難経路等の整備
  • エレベーター等の設置・改修
  • 床や壁の材料の変更
  • ユニット化改修 等

設備の設置・改造

  • 冷暖房設備の新規設置
  • 改修が必要となった冷暖房設備の改造工事
  • 給排水設備、電気設備、ガス設備、消防用設備等付帯設備の改造工事 等

バリアフリー化

  • スロープの設置
  • トイレや浴室に手すりの設置
  • トイレ改修工事
  • ドアの改善 等

たとえば、介護事業所の部屋や浴室、トイレへの手すりの設置などに補助金を利用することが可能です。さまざまな場所に手すりを設置することで、利用者が楽な姿勢で動くことができ、利用者自らできることが増えることなどにより生活の質を高められます。

また、介護事業所の玄関へのスロープの設置に補助金を利用することも可能です。階段や段差をなくしスロープを設置するなどのバリアフリー化を行うことで、車いすのままでの移動が可能となるほか、利用者の転落や転倒する可能性を減らし、安全性を高められます。

このように、介護事業所のリフォームを行うことによって、利便性を高められ利用者が生活しやすくなります。さらに、利用者のプライバシー保護のためのユニット化改修や介護職員が介助しやすいトイレにリフォームするなどの費用にも補助金を使えます。

補助金を介護事業に利用するときの注意点

補助金の用途を押さえた人は、補助金を介護事業に利用するときの注意点を把握しておきましょう。注意点を確認せずに申請手続きをそのまま進めてしまうと、問題が生じて申請できない場合や審査で不採択となる場合があるからです。

【補助金を介護事業に利用するときの注意点】

  • 補助金の目的に合わない取組は補助対象外となる
  • 介護報酬を伴う事業は補助対象外となる補助金がある
  • 介護事業の種類によって補助対象外となる場合がある

補助金の公募要項には、制度の目的や申請要件、補助対象外となる条件などが記載されています。補助対象外となる事業の項目に介護報酬を伴う事業があった場合、介護報酬を利用している事業所では申請できません。

また、介護事業の種類には訪問介護やデイサービス、養護老人ホームなどがあります。介護事業の種類を制限している補助金があり、補助対象外となる事業を運営していた場合は申請できないことを留意しておきましょう。

なお、補助金によっては申請内容の審査が実施される場合があり、注意点に気を付けていても不採択となる可能性があります。介護事業に補助金を利用する場合は、申請する補助金の公募要項を確認し、補助金に応じた事業計画書を作成しましょう。

補助金の目的に合わない取組は補助対象外となる

補助金を利用する際に、制度の目的と合わない取組の事業計画書を提出した場合、補助対象外と判断され不採択となります。補助金は、制度の目的と一致した取組を実施した場合に支援する制度だからです。

【補助金の目的の例】

  • 人材の確保
  • 業務の効率化
  • 介護職員の負担軽減
  • 環境の整備
  • 安全対策の強化

たとえば、「人材の確保」が目的の補助金の場合、介護施設の開設や事業所のリフォームにかかる費用は対象経費として認められない場合があります。人材確保を目的とする補助金では、ウェブサイトへの求人情報の掲載や、求人説明会等のイベントへの出展などが対象となります。

また、「業務の効率化」が目的の補助金の場合、介護職員のスキル向上のための研修費は対象経費として認められない場合があります。業務の効率化が目的の補助金では、業務の効率化につながるITツールの導入や介護ロボットの導入などが対象となります。

なお、介護事業に利用できる補助金を探す場合「介護 人材確保 補助金」のようなキーワードで調べることで補助金を活用する目的に応じた制度が見つけやすくなります。また、利用目的で絞り込んで希望に合った補助金を探せる検索サイトなども活用しながら、補助金を利用する目的と一致する補助金を見つけましょう。

介護報酬を伴う事業は補助対象外となる補助金がある

介護報酬を伴う事業は補助対象外となる補助金があります。介護報酬を利用している事業所は、補助金によっては申請できないことに留意しておきましょう。

たとえば、介護報酬を使っているデイサービスの場合、申請予定の補助金に応募できない可能性があります。介護報酬を利用している事業所が補助金に応募した場合、申請する補助金以外の国などが支援する他の制度と重複して申請することになるからです。

補助金によっては、国が財源となる他の支援制度と併用することは認められていない場合があります。介護報酬を利用している事業所は、申請する補助金の補助対象外に該当していないかどうか確認してみましょう。

なお、介護報酬以外にも診療報酬やほかの補助金などの支援制度と併用することはできない場合があります。申請したい補助金がほかの支援制度と併用して申請できるかどうか不明の場合は、補助金を管轄している事務局に問い合わせてみましょう。

介護事業の種類によって補助対象外となる場合がある

介護事業の種類によっては、補助金の対象外となる場合があります。自社の介護事業の種類が補助対象となる補助金を利用しましょう。

たとえば、小規模養護老人ホームが対象の補助金の場合、大規模の養護老人ホームは申請することはできません。介護事業を対象とする補助金では、施設利用者の定員数が定められている場合があるためです。

また、「訪問看護や訪問リハビリテーションを除く」のように補助対象外に該当する介護事業の種類が記載されている補助金もあります。事業所の種類が補助対象外に該当してしまった場合、申請要件をすべて満たしていても申請することは認められません。

なお、補助対象事業や補助対象外となる事業を確認する際は、補助金の公式サイトまたは公募要項から確認できます。公募要項を確認しても自社が補助対象事業に該当しているかどうかわからない場合は、補助金を管轄している事務局に問い合わせてみましょう。

介護事業に活用できる補助金の具体例

国や自治体が実施している補助金の中で、介護事業に活用できる制度はさまざまあります。補助金によっては、利用できる用途が決められている場合があることに留意しておきましょう。

【介護事業に活用できる補助金の具体例】

補助金名

特徴

IT導入補助金

(経済産業省中小企業庁)

介護記録管理、診療管理、見守りシステムなどが導入できる制度

滝川市介護職員資格取得支援金

(北海道滝川市)

介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修を修了した場合に資格取得費用の一部を助成する制度

介護職員研修受講促進支援事業費補助金

(神奈川県)

研修を受講するために必要な受講料などの費用を補助する

介護ロボット等導入支援事業補助金

(東京都三鷹市)

介護ロボットやICT機器等の導入に利用できる制度

大阪府介護施設等の整備に関する事業補助金

(大阪府)

施設の一部改修や大規模修繕工事にかかる費用を補助する制度

地域医療介護総合確保基金(施設整備等)による補助

(奈良県)

介護事業所の創設や改築にかかる費用を補助する制度

宗像市介護人材確保・定着事業補助金

(福岡県宗像市)

チラシ等に求人情報を掲載する費用や人材の採用に関するホームページの新規作成費に利用できる補助金

介護職員処遇改善加算

(厚生労働省)

職場環境等の改善などの要件を満たすことで支給される制度

「IT導入補助金」は、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する際にかかる経費の一部を補助する制度です。申請要件を満たし、採択された場合に、健康状態管理システムの導入や見守りシステムの導入の際にかかる費用の一部が支給されます。

「介護職員処遇改善加算」は、介護事業所で働く介護職員の給与の増加や職場環境の改善などを目的とした制度です。研修の実施することや賃金改善を除く、職場環境等の改善を行うことなどの申請要件を満たすことで助成金が受け取れます。

国や自治体の補助金を介護事業に利用する場合は、公募要項を読み込み、申請要件や目的などが自社が該当できるかどうか確認してから申請を行います。介護事業所の種類は指定されていないかなどを確認する場合は、補助金公式サイトに記載されている問い合わせ先に相談しましょう。

まとめ

介護事業における補助金の用途は多岐にわたり、介護事業所の安全性を高めることや人材確保、業務効率化などに利用することが可能です。介護事業所の整備や安全対策を強化することで利用者の利便性の向上や生活の質を高められます。

また、介護事業所のリフォームにも使えるため、手すりの設置やトイレの改修工事などのバリアフリー化を行えます。職場環境の整備や介護職員の給与の増加にも利用でき、離職率の低下にもつながる可能性があります。

ただし、介護事業に補助金を利用する際には、介護報酬を伴う事業は補助対象外となる場合や、介護事業の種類によって補助対象外となる場合があることに留意しておきましょう。国や自治体によって運営している補助金は異なるため、申請前は申請要件を満たしているかどうか確認してから申請を行うことが重要です。

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