事業承継・引継ぎ補助金の採択率は?不採択になる理由や採択事例も解説

2024/07/04

2024/7/3

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

事業承継をしたい人の中には、事業承継・引継ぎ補助金に関心がある人もいますよね。その中には、事業承継・引継ぎ補助金の申請前に採択率を知りたい人や、申請後に採択率が気になる人もいるでしょう。

当記事では、事業承継・引継ぎ補助金の採択率を解説します。不採択となる理由や採択事例も解説するので、事業承継・引継ぎ補助金の採択率が気になる人は、当記事を参考にしてみてください。

なお、当記事は事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトをもとに作成しています。

事業承継・引継ぎ補助金の平均採択率は57.3%

これまでの事業承継・引継ぎ補助金の平均採択率は57.3%です。事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトでは、申請者数と採択者数は公開されているので、計算すると各公募回での採択率がわかります。

【事業承継・引継ぎ補助金の採択率】

公募回 採択率 申請者数 採択者数
1次

52.5%

1,033  531

2次

 51.3%  631 348

3次

55.8%  626  354

4次

55.0% 810 446

5次

59.8% 799 478

6次

60.6%  862 523

7次

59.4% 839

499

8次

60.5%

730

442

9次

61.1% 853 522

※小数点第2以下切り捨て

 参考:1次~4次採択結果、5・6次採択結果、7次~9次採択結果|事業承継・引継ぎ補助金

補助金の採択率は「申請者数÷採択者数×100」の計算式で求めることができます。たとえば、1次の採択率の場合、申請者数1,033人を採択者数531人で割ると52.5%なので、採択率は52.5%となります。

また、事業承継・引継ぎ補助金のこれまでの公募において、最も高い採択率となったのは9次公募の61.1%でした。一方で、最も低い採択率となったのは2次公募の51.3%でした。

事業承継・引継ぎ補助金のこれまでの採択率は、50%~60%前後を推移していています。今後の採択率に関しては、申請者数の増減も影響するので、あくまで目安として覚えておきましょう。

なお、他の補助金の採択率を知りたい人は「補助金の採択率とは?」の記事も参考にしてみてください。

公募回や申請する枠で採択率は変わる

事業承継・引継ぎ補助金の採択率は、申請する枠によっても変わります。そのため、申請する枠が決まっているなら、申請する枠の採択率もあわせて確認しておきましょう。

【1次から9次公募までの申請枠別の採択率】

公募回 経営革新 専門家活用 廃業・再チャレンジ
1次 採択率 50.2% 51.5% 55.8%
申請者数 209  790 34
採択者数 105  234 19
2次 採択率 55.8% 55.4% 42.8%
申請者数 188 422 21
採択者数 105 234 9
3次 採択率 56.6% 57.3% 44.8%
申請者数 189 408 29
採択者数 107 234 13
4次 採択率 55.3% 55.9% 35.7%
申請者数 264 518 28
採択者数 146 290 10
5次 採択率 60.1% 60.7% 45.9%
申請者数 309 453 37
採択者数 186 275 17
6次 採択率 61.0% 60.2% 62.1%
申請者数 357 468 37
採択者数 218 282 23
7次 採択率 60.7% 60.0% 35.7%
申請者数 313 498 28
採択者数 190 299 10
8次 採択率 60.1% 61.2% 54.5%
申請者数 334 374 22
採択者数 201 229 12
9次 採択率 60.0% 62.5% 56.0%
申請者数 388 440 25
採択者数 233 275 14
※採択率は小数点以下切り捨て

 参考:1次~4次採択結果、5・6次採択結果、7次~9次採択結果|事業承継・引継ぎ補助金

 「経営革新」と「専門家活用」枠の場合、1次公募から9次公募までの採択率がすべて50%を上回っています。しかし、「廃業・再チャレンジ」枠では4次と7次公募において40%を下回る採択率となりました。

事業承継・引継ぎ補助金の申請枠ごとに採択率を見ると、申請枠によって採択率に差があることが分かります。各申請枠の採択率は、公募要領の改訂により増減する可能性もあるので、事業承継・引継ぎ補助金に申請する人は公式サイトを確認してみてください。

なお、事業承継・引継ぎ補助金の廃業・再チャレンジ枠は、他の申請枠と併用できます。廃業・再チャレンジ枠は単独申請が少なく、ほとんどの事業者が併用申請をしているため、廃業・再チャレンジ枠に申請する人は併用申請ができるかを検討してみましょう。

申請前には不採択となる理由を確認してみる

事業承継・引継ぎ補助金に申請するなら、あらかじめ不採択となる理由を確認しておきましょう。不採択となる理由を把握して対策を検討することにより、事業承継・引継ぎ補助金で不採択となるリスクを軽減できる可能性があります。

【事業承継・引継ぎ補助金で不採択となる理由と具体例】

不採択となる理由 具体 例
対象事業者に該当しない <廃業・再チャレンジ枠の場合>
対象事業者ではない特定非営利活動法人(NPO)として申請した
事業承継の要件を満たしていない <経営革新枠の場合>
グループ企業の間で、不動産のみを保有する事業を承継する
対象事業の要件を満たしていない <経営革新枠でデジタル化の事業計画を提出する場合>
IPA が実施する「SECURITY ACTION」の宣言を行っていなかった
<経営革新事業で経営者交代型に申請する場合>
特定創業支援事業を受ける者等、経営の実績や知識があることを証明できなかった
必要書類に不備があった <経営革新枠または廃業・再チャレンジ枠の場合>
認定支援機関が発行する「確認書」を提出しなかった
〈共通:採択され交付申請をする場合〉
補助対象経費に必要な相見積を提出しなかった

参考:公式サイト|事業承継・引継ぎ補助金(7次公募~)

たとえば、経営革新枠の場合、経営革新枠では事業承継のあとに新たな事業を始めることが要件なので、不動産の承継のみをする事業者は対象外です。

また、経営革新枠および廃業・再チャレンジ枠の場合、提出書類に認定支援機関の「確認書」が含まれるので、電子申請時に添付するZipファイルにExcelファイル「確認書」を入れないと不採択になります。

事業承継・引継ぎ補助金では、公募要領に記載された要件やルールを遵守していない場合、不採択になります。申請する際は、公募要領や公式サイトの内容を熟読しておきましょう。

当メディアを運営する株式会社SoLaboは認定支援機関として事業承継引継ぎ補助金の申請サポートを行っています。サポートさせていただいた案件では採択された実績もありますので、不採択となった理由を特定し、再申請に活かしたい人は下記よりお問い合わせください。

事業承継引継ぎ補助金は利用できる?無料診断

なお、2024年7月に実施される事業承継・引継ぎ補助金の10次公募では専門家活用枠のみの募集となります。

申請前に採択事例を確認すると成功例がわかる

事業承継・引継ぎ補助金に申請するなら、事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトで、採択結果を確認してみましょう。採択結果を確認すると、どのような事業が採択されているのかがわかるため申請準備をする際の参考にすることができます。

【事業承継・引継ぎ補助金の採択事例】

申請枠と類型の種類  採択された事業内容
経営革新(創業支援型)
  • 有害物質を使用しない発色法による陶器用釉(うわ)薬の開発をする
  • レンタルしている物件の一部を改装し、地域にはない、女性のための心理カウンセリングと整体を開業する
  • 地元農家と競合し、地元野菜と自社栽培フルーツを生かしたドライフルーツを開発する
経営革新(経営者交代型)
  • 特殊計測用治具の需要増を背景に、CNC精密旋盤を導⼊し熟練技術と最新機械を融合し顧客要求に応える
  • コロナ禍でも集客に影響しない、歯のホワイトニング専用セルフサロンを展開する
  • IT化の遅れる運送業において、自社独⾃の業務システムを導⼊し、B to BからB to Cへの市場転換を行う
経営者革新(M&A型)
  • 営繕⼯事事業をしている中で、空調設備の有限会社を買収し、空調設備の経験者を代表に据え、地域ゼネコンの設立を目指す
  • これまでの桐箱オーダーメイド事業の販路を開拓するため、バイヤー、木工・藍染業者等と事業統合し、国内外の見本市へ出展する
  • 特定のレストランのみに卸していた食品を、スーパーに卸すため、真空・急速凍結機メーカーと提携し、大量生産できる体制を整える

参考:採択結果|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、経営者支援(創業支援型)の場合、事業承継期間内に創業する承継者が対象なので、採択結果の事業計画には、新しい技法や地域にないサービス業としての開業が見受けられました。

また、経営支援(M&A型)の場合、経営や実績のある被承継者に対しM&Aをする承継者が対象なので、採択結果の事業計画には、地域内での異業種の合併による総合企業や地域ゼネコンの事業が見受けられました。

事業承継・引継ぎ補助金の採択率は、申請者が応募する事業計画の内容にも左右されます。事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトでは実際に採択された事業計画が一部閲覧できるので、申請する人は事前に確認してみてください。

申請する際は3つの申請枠の中から選ぶことになる

事業承継・引継ぎ補助金に申請する際は、3つの申請枠から自社に合った事業を選び、申請することになります。3つの申請枠はそれぞれ、補助対象経費や補助金額などに違いがあります。

【事業承継・引継ぎ補助金の3つの事業の概要】※10次公募では「専門家活用」のみ募集

事業名 類型 補助対象経費 補助金額と補助率
経営支援 創業支援型(Ⅰ型)

〈事業費〉

  • 人件費
  • 店舗等借入費設備費
  • 原材料費
  • など

〈廃業費〉

  • 廃業支援費
  • 在庫廃棄費
  • 解体費
  • 原状回復費

など

<補助金額>
100万円~600万円以内
※廃棄費として+150万円以内の上乗せが可能
<補助率>
補助対象経費の2/3
経営者交代型(Ⅱ型)
M&A 型(Ⅲ型)
 専門家活用 買い手支援型(Ⅰ型)
  • 謝金
  • 旅費
  • 外注費
  • 委託費
  • システム利用料
  • 保険料
  • 廃業費
  • 廃業支援費
  • 在庫廃棄費

など

経営支援と同じ
売り手支援型(Ⅱ型)
廃業・再チャレンジ
  • 廃業支援費
  • 在庫廃棄費
  • 解体費
  • 原状回復費
  • リースの解約費
  • 移転・移設費用(併用申請のみ計上可)
 <補助対象経費>
50万円
<補助率>
補助対象経費の2/3

たとえば、経営支援枠の場合、補助対象経費には事業承継後に新事業をするための事業費と廃業費が補助されるので、事業承継をきっかけに新事業を始める人は、経営支援枠を選ぶことになります。

また、専門家活用枠の場合、補助対象経費に事業承継の専門家(登録FA・仲介業者)に支払う費用が補助されるので、事業再編や統合で株式・経営資源の売買をする人は、専門家活用枠を選ぶことになります。

事業承継・引継ぎ補助金に事業者が申請する際は、3つの申請枠から1つまたは2つ以上の申請枠を選択し、申請します。各申請枠で設定している対象事業者には違いがあるので、実際に申請する際は、各申請枠の公募要領にある「対象事業者」を確認してみてください。

なお、廃業・再チャレンジと合わせて併用申請する場合は、「廃業・再チャレンジ」として申請するのではなく、「経営革新」または「専門家活用」として申請するので、覚えておきましょう。

まとめ

事業承継・引継ぎ補助金の1次~9次公募における平均採択率は57.3%です。直近の9次公募の採択率は「経営革新」が60.0%、「専門家活用」が62.5%、「廃業・再チャレンジ」が56.0%でした。

事業承継・引継ぎ補助金の3つの申請枠の採択率は「経営革新」「専門家活用」はともに50~60%台となる傾向にありますが、「廃業・再チャレンジ」は40%台となる場合もあり、枠によっても採択率に差がある場合があります。

事業承継・引継ぎ補助金で採択されるには、不採択となる要素をできる限り取り除くことです。事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトからダウンロードできる公募要領や、採択結果を見ると、事業承継・引継ぎ補助金での不採択事例や成功事例を確認できます。

なお、2024年7月に実施される10次公募では専門家活用枠のみの募集となります。

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