補助金ガイド

製造業がものづくり補助金を利用する際の条件と採択事例を解説

2023/01/04

2022/10/24

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

製造業で設備投資を検討する人の中には、ものづくり補助金を使って設備を購入したい人もいることでしょう。その際、「自社がものづくり補助金の対象となるのか」「どのような設備なら補助されるのか」と気になる人もいますよね。

当記事では、ものづくり補助金を検討している製造業者に向けて、申請のための条件と採択事例をご紹介します。製造業でものづくり補助金を検討している人は、当記事を参考にしてみてください。

なお、当記事は「令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(13次締切分)1.0版」を元に作成しています。

製造業で対象となるには2つの条件を両方満たす必要がある

製造業者がものづくり補助金で対象になるには、「事業規模」と「基本要件」の両方を満たす必要があります。なぜなら、ものづくり補助金の対象者は資本金と従業員数で定められていて、基本要件を満たすのが申請の条件だからです。

【ものづくり補助金で対象となる条件】
対象者の条件 概要
事業規模が規定の範囲に該当する
  • 資本金:3億円以内
  • 常時雇用する従業員数:300人以内
要件を満たしている

①基本要件
以下を満たす3~5年の事業計画の策定及び実行
 付加価値額 +3%以上/年
 給与支給総額 +1.5%以上/年
 事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円
②申請する枠の要件を満たす

例)デジタル枠に申請する場合は、デジタル枠の要件を満たす

 ※ものづくり補助金の公式サイトから「公募要領 13次締切 1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成

たとえば、従業員数が20名で資本金が3,000万円の金属加工事業者の場合、NC工作機械の導入で金属加工の生産物を増やす事業計画を立てれば、売上を上げて利益の増加と賃上げにつなげる説明ができるため、事業規模と要件の両方を満たせる可能性があります。

また、従業員数が250名で資本金が1億円のオフセット印刷業の事業者の場合、デジタル印刷の導入で版を作らない事業計画を立てれば、コストを削減して利益の増加と賃上げにつなげる説明ができるため、事業規模だけでなく要件も満たせる可能性が出てきます。

ものづくり補助金では基本要件を満たせば、個人事業主や従業員数が3名といった小規模事業者も対象になります。製造業でものづくり補助金の対象となるか、自社の資本金と従業員数を確認し、基本要件を満たす事業計画を立てましょう。

なお、ものづくり補助金で申請できる枠は、一般型の通常枠以外で回復型賃上げ・雇用拡大枠やデジタル枠など5種類あります。通常枠以外の申請枠で申請する場合、各申請枠で設定された個別の要件も合わせて満たす必要があります。

詳細は、公募要領の「補助対象事業の要件」を確認してみてください。

条件にあてはまっても対象外になる場合がある

事業規模と要件を満たす場合でも、公募要領に定められた対象外の事業者は補助されません。そのため、ものづくり補助金に申請する際は、対象の条件を満たすだけでなく、対象外の条件に該当しないかを確認することが大切です。

【対象外になる事業者の例】
対象外
  • 従業員数が1万人を超える製造業の大企業
  • 既存の工場で使用していた機械設備が老朽したため、これまでと同じ機械設備の代替品として同じ機械設備を単純に追加発注したい製造業者
  •  親会社が大企業で、自社の発行済み株式の1/2以上を親会社に取得されている製造業者
  • 応募締切日前10ヶ月以内にものづくり補助金に採択され交付決定を受けた製造業者
  •  日本国内に本社がない外資系の製造業者

※ものづくり補助金の公式サイトから「令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(13次締切分)1.0版」を元に株式会社ソラボが作成

たとえば、従業員数が1万人以上で工場を複数持つ大企業の場合、DX化により工場間の情報を統合して効率化できたとしても、事業規模が大企業のため、ものづくり補助金の対象外です。

ものづくり補助金で対象となるには、条件を満たすだけでなく、対象外の事業者に該当しないことも大切です。申請する時は、公募要領の「補助対象者」の見出し本文にある補助対象外の事業者も確認しておきましょう。

製造業の採択事例では対象設備や事業計画に着目する

製造業でものづくり補助金への応募を検討中なら、製造業の採択事例をみてみましょう。これから申請する人が事業計画を立てる上で、採択された対象設備や事業計画は参考になるからです。

【ものづくり補助金の製造業の採択事例】
製造業の種類 事業計画
生産用機械器具製造業 金属粉末射出成形法による航空機ジェットエンジン部品の試作開発
食料品製造業  電解水装置導入による製造ライン構築事業
義歯製造業 義肢製作におけるDXの活用と切削サービス提供
機械加工製造業 建設機械、自動車エンジン部品製造におけるデジタル技術の導入
家具・装備品製造業 公共施設の木質化施策に伴う据付家具製作における納期短縮の実現
食料品製造業 遠赤外線とマイナスイオンの効果を用いたドライフルーツの開発および販路開拓
情報通信機械器具製造業 プレス・レーザー複合マシンの導入による厚板ステンレス加工の実現

 参考:成果事例のご紹介|ものづくり補助金の公式サイト

たとえば、ものづくり補助金で設備の購入費を補助して欲しい場合、事業者は「◯◯の設備を欲しい」と設備を主体にするのではなく、「□□の補助事業をしたい」と事業計画を主体にして、補助事業に必要な設備を申請します。

そのため、製造業で導入したい設備があるときは、採択事例を参考にして、自社の場合はどのような事業計画でどのような補助対象経費を申請できるかを考えてみましょう。

事業計画の書き方を知りたい人は「ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方」も確認してみましょう。

DXに役立つ製品やサービスの事業計画を検討する

製造業でものづくり補助金を検討しているなら、DX化とデジタル技術を推進する事業計画も検討してみましょう。DXに関連する事業計画をすることで、デジタル枠に申請できるようになったり、審査の際に有利になる加点が得られたりするからです。

デジタル枠は、2022年3月の10次公募から開始された申請枠です。中小企業の場合、通常枠だと補助率は1/2ですが、デジタル枠では補助率が一律2/3です。また、デジタル枠で不採択となった場合は、自動的に通常枠で再審査される優遇措置があります。

【DXの事業計画に関わる枠と加点】
項目 申請要件
①デジタル枠 以下すべてに該当する事業であること
①DXに資する革新的な製品・サービスの開発
②経済産業省が公開するDX推進指標を活用し、自己診断結果を締切までに独立行政
法人情報処理推進機構(IPA)に提出する
③IPAが実施する「SECURITY ACTION」の
「★一つ星」または「★★二つ星」の宣言を応募申請時点で行っている
②政策加点 デジタル枠に申請する事業者が、「技術の活用及びDX推進の取組状況」について様式3を用いて提出すること

※ものづくり補助金の公式サイトから「令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(13次締切分)1.0版」を元に株式会社ソラボが作成

たとえば、製造業のDX化の場合、自社の製造プロセスを見える化する取り組みや、工場間での設計方法を一化する取り組みなどの事業計画が立てられます。

また、設計・製造・品質保証部門間の知見やノウハウが活かされていない企業の場合、ICTを使って部門の壁を取りはらた仮想部屋を構築し、部門を超えたすり合わせをする事業もDX化と言える場合があります。

製造業でものづくり補助金に申請をするときは、DX化とデジタル技術を念頭に事業計画を立てる事も検討してみましょう。製造業のDXについては、経済産業省が事例を「製造業によるDX化の事例集」としてPDFでまとめているので、参考にしてみてください。

ものづくり補助金の主な対象経費は設備投資

ものづくり補助金では補助の対象となる主な補助対象経費は、設備投資です。そのため、ものづくり補助金で補助の対象となる経費は、機械装置やシステム構築費や技術導入費と、その関連経費です。

【ものづくり補助金の補助対象経費と補助されない経費】

補助対象経費  補助されない経費
  1. 機械装置・システム構築費
  2. 技術導入費
  3. 専門家経費
  4. 運搬費
  5. クラウドサービス利用費
  6. 原材料費
  7. 外注費
  8. 知的財産権等関連経費
  • パソコン、タブレット
  • 乗用車
  • 事務所家賃、敷金、光熱費、仲介手数料
  • 電話代、インターネット代などの通信費
  • 文房具などの消耗品費
  • 各種保険料
  • 事業計画を立てるために士業や金融機関に支払う謝礼 など

※補助対象経費は一般型通常枠の場合
※ものづくり補助金の公式サイト「令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(13次締切分)1.0版」を元に、株式会社ソラボ作成

たとえば、ドリルマシンの製造業者の場合、ドリルマシンの製造で生産性を高めるための機械設備は補助されますが、人件費や事務所の家賃は補助対象外です。

また、自動車整備工場の場合、次世代EV車対応強化のための機械設備は補助されますが、自動車整備工場にかけられた保険料や新たな工場を立てるための不動産費用は対象外です。

製造業は金属を扱う事業者や食品メーカーなど、製造のジャンルが幅広いため、事業者が申請できる経費もさまざまです。パソコンや車などの汎用性のある購入経費は、たとえ補助事業に使うものであっても補助されないので注意しましょう。

なお、補助の対象にならない経費は公募要領に明記されています。ものづくり補助金で補助の対象とならない経費については、「ものづくり補助金の対象外となる事業者と設備導入を解説」を確認してみてください。

ものづくり補助金は通年で申請できる

ものづくり補助金は通年で申請できます。そのため、ものづくり補助金に申請する人は、事業計画や申請の準備が整ったタイミングで、申請しましょう。

たとえば、10月24日締切の公募回に申請する場合、期日までに事業計画書の作成や、必要書類の準備を整える必要があります。十分に準備ができない場合は、申請しても採択されない可能性があるので、次の公募回に申請することも検討してみましょう。

なお、ものづくり補助金の公募は通年ですが、公募回によって要件や申請できる枠が異なることがあります。申請する人は、申請する公募回の公募要領を確認するようにしてみてください。

ものづくり補助金の申請準備には20時間から50時間がかかる

ものづくり補助金の公式サイトにある「データポータル」によると、7次から10次の採択者が事業計画書の作成にかけた時間は、全体の54.1%が20時間から50時間でした。そのため、事業計画書の作成は2~3時間ですぐ終わるものではないことが分かります。

ものづくり補助金では事業計画書の他にも、提出書類が複数あります。ものづくり補助金の申請の準備をする前に申請の流れを把握すると、どのような申請準備があるか全体像を把握してからスケジュールを立てられるため、効率的です。

【ものづくり補助金の申請前に必要な事前準備】
  1. スケジュールを確認して申請日を決める
  2.  GビズIDプライムアカウントを取得する
  3. 申請に必要な書類を準備する

ものづくり補助金の申請の場合、GビズプライムIDを使用する電子申請なので、印鑑証明書や登録員の用意が必要です。また、ものづくり補助金で必要書類を揃える場合、事業計画書や賃金引上げ計画の誓約書などの用意が必要です。

ものづくり補助金に申請するのは時間がかかります。特に、本業と並行して補助金申請の準備をするのであれば、時間に十分な余裕をもったスケジューリングが大切です。

ものづくり補助金の申請手順について知りたい人は「ものづくり補助金の申請とは?申請準備や電子申請の手順を解説」も併せて読んでみてください。

この記事のまとめ

ものづくり補助金の申請者の中で、製造業者の割合は約5割と半数を占めています。すべての製造業者が対象になるわけではなく、事業規模と申請要件を満たす必要があります。

製造業で対象となる経費は、設備投資に関する経費のみです。また、付加価値額や従業員の給与を上げられる事業計画で必要となる設備であることを明記する必要があります。

過去の事例からみると、ものづくり補助金に申請する事業者は事業計画の作成に20~50時間を費やしているため、ものづくり補助金に申請する場合は、申請の流れを把握し時間に十分な余裕をもって準備を進めましょう。

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