ものづくり補助金の給与支給総額に含まれる費用と計算方法を解説
2024/05/02
2024/1/17
ものづくり補助金を検討している人の中には、申請要件の一つである「給与支給総額」が具体的に何を指すのか、イメージがつかない人もいるでしょう。また、給与支給総額の伸び率(年平均成長率)を計算する方法を知りたい人もいると思います。
当記事では、ものづくり補助金の給与支給総額を具体的な項目名を使って解説します。給与支給総額の確認と計算ができる方法も紹介しますので、ものづくり補助金の給与支給総額の正確な意味を知りたい人は、当記事を参考にしてみてください。
給与支給総額に含まれる費用
ものづくり補助金の給与支給総額に含まれる費用は、給料(賃金)と各種手当、賞与です。給料と賃金は違う言葉ですが、管轄の法律により分かれた言葉なので、仕事に対する報酬という意味で同じです。交通費は経費扱いされるため、給料と賃金には含まれません。
【給与支給総額に含まれる費用】
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たとえば、以下のような従業員Aの給料明細があるとします。
基本給 280,000円 職務手当 34,000円 家族手当 10,000円 残業手当 56,000円 通勤費 5,000円 【合計】385,000円 |
この給与明細の中で、給与支給総額に当てはまる項目は「基本給」「職務手当」「家族手当」「残業手当」です。従業員Aの給与支給総額は、合計385,000円から通勤費5,000円を差し引いた380,000円となります。
ものづくり補助金の給与支給総額は、税金や社会保険料を控除する前の給与、手当、賞与の合算です。ものづくり補助金に申請する際は、入力画面で自社の給与総支給額を入力することになるので、給与支給総額に含まれる費用を理解しておきましょう。
なお、従業員がいない場合や給与支給総額が1年未満の場合も、ものづくり補助金に申請できます。従業員がいない場合は、役員報酬を給与支給額の代わりに使用し、給与支給総額が1年未満の場合は、6か月の給与支給総額を2倍にして1年にするといった見込み値を使用しましょう。
ものづくり補助金の給与支給総額やその他の申請要件を満たし、対象となるかを無料で診断できます。これから申請を検討している人はお試しください。
無料診断給与支給総額は決算書の労務費で確認できる
給与支給総額は決算書の「損益計算書」の労務費の項目で確認できます。労務費とは、製品やサービスを生産するのに必要なコストのことで、従業員の給与、残業費、賞与、福利厚生費の合算した金額を指します。そのため、労務費から福利厚生費を差し引けば、給与支給総額が計算できます。
また、損益計算書がない場合でも、法人は「法人事業概況説明書」の労務費、個人事業主は「青色申告書」の給料賃金や専従者給与から給与支給総額を確認できます。
【給与支給総額の確認方法】
共通 |
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決算書の損益計算書で、「製造原価報告書」または「販売管理費明細」に記載された 労務費の金額を確認する |
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事業形態ごとの確認方法 | |
法人 |
法人概況説明書の左側「10.主要科目」の「労務費」の欄 に記載された金額を確認する |
個人事業主 |
青色申告決算書(損益計算書)の「給料賃金」「専従者給与」「青色申告特別控除前の所得金額」欄 に記載された金額を確認する |
この他、製造業の場合は「製造原価報告書」に記載されている労務費も給与支給総額として利用できます。
決算書や法人事業概況説明書にある「労務費」の数値を使えば、給与支給総額を早く計算できます。従業員の数や事業所の数が多い場合は、決算書を活用して給与支給総額を導き出しましょう。
なお、決算書をまだ作成していない場合は、会計ソフトを使う事もひとつの方法です。会計ソフトの中には専門的な知識がなくても簡単に決算書を作成できる製品もあるので、決算書の作成で困っている人は導入を検討してみてください。
給与支給総額の伸び率の計算
給与支給総額の目標伸び率の計算は、事業計画の終了時点の伸び率を、事業計画を実施した年数で割ります。ものづくり補助金の公募要領で給与支給総額の申請要件は「年利1.5%」と記載があるため、給与支給総額は毎年かならず伸びる必要はありません。
【給与支給総額の伸び率が年成長率1.5%の場合の計算】※給与支給総額が100万円の場合
申請時の 給与支給総額 |
事業計画 1年終了後 |
事業計画 2年終了後 |
事業計画 3年終了後 |
事業計画 4年終了後 |
事業計画 5年終了後 |
100万円 | 100% | 100% | 100% | 103% | 107.5% |
たとえば、事業計画1年目から3年目の伸び率が0(ゼロ)の事業者の場合、事業計画4年目終了までの給料が上がらなくても、事業計画を終える時点の伸び率が107.5%なら給与支給総額の申請要件は満たします。なぜなら、107.5%を事業計画の年数(5年)で割ると1.5%となるからです。
給与支給総額の伸び率は、補助金を受け取ったあとに行う事業計画の終了時点の伸び率が1年あたり1.5%以上となるように計算して申請することが大切です。自社の給与支給総額を増額する目安が知りたい人は、計算サイトに伸び率、給与支給総額、事業計画の年数を入力して計算してみましょう。
なお、ものづくり補助金で大幅賃上げの特例を申請する人は、目標伸び率が4.5%上乗せされ、年平均6%以上となります。その代わり、大幅な賃上げの特例に適用されると、ものづくり補助金の補助金額が最大250万円~2,000万円引き上げられるので、補助金額を増加させたい場合は大幅な賃上げの実施も検討してみましょう。
給与支給総額の伸び率の要件
給与支給総額の伸び率には要件として一定の決まりがあります。給与支給総額の伸び率は申請時点では目標値を入力するのみですが、補助事業を終えた後、採択された事業計画を終了する段階で伸び率が達成されたか判定されます。
申請方法 |
①ものづくり補助金の申請時に電子申請の画面で
※事業計画を4年間にする場合は4年後の目標、5年間にする場合は4年後と5年後の目標も入力する |
比較対象の基準 |
ものづくり補助金に申請する時点から1年前の給与支給総額(事業計画の実行前) とものづくり補助金で採択された3年~5年の事業計画を終える時点(事業計画の実行後)の3年~5年分の給与支給総額を比較する |
判定時期 |
補助事業の終了後、補助金を受け取り、3年~5年の事業計画の終了時 |
たとえば、2023年年4月に採択された事業者の場合、補助事業を5月から最大10か月間行います。その後、翌月頃に事業者が実績報告書を提出して認められると、2024年4月頃に補助金が振り込まれます。給与支給総額の伸び率が審査される期間は、その後に行う3年〜5年の事業計画の終了時です。
ものづくり補助金の給与支給総額では、いつ入力するのか、どう達成すれば良いか等の条件を把握することも大切です。特に、給与支給総額を判定する時期はものづくり補助金に申請してから約4年から6年後と時期が離れているので、忘れずに実行するようにしましょう。
給与支給総額が未達だと補助金を返還しなければならない
給与支給総額の目標伸び率が未達だと、補助金を返還しなければなりません。なぜなら、ものづくり補助金の公募要領には、基本要件を満たせない場合は補助金の返還があるとの記載があるためです。
給与支給総額の目標において、補助金の返還を求められる条件は「事業計画終了時点において給与支給総額の年平均成長率1.5%以 上増加目標が達成できていない場合」です。導入した設備等の簿価又は時価のいずれか低い方の額のうち、補助金額 に対応する分(残存簿価等×補助金額/実際の購入金額)を返還します。
たとえば、給与総支給額が1,000万円で3年の事業計画が採択された場合、補助金を受け取った3年後には給与総支給額が最低4.5%以上に増加していなければなりません。目標伸び率が達成できなかった場合は、「残存簿価等×補助金額/実際の購入金額」で計算した金額を返還することになります。
給与支給総額の伸び率は補助金を受け取って3年〜5年の事業計画を終えた時点です。ただし、ものづくり補助金に申請した時点の付加価値額が目標通りに伸びなかった場合や、天災などやむをえない理由がある場合は、返還の対象外となるので留意しておきましょう。
この記事のまとめ
ものづくり補助金の給与支給総額は申請要件の1つです。ものづくり補助金に申請する人は、採択されたあとに実行する3年〜5年の事業計画を実施する際、給与支給総額が1.5%/年以上伸びる目標を達成しなければなりません。
ものづくり補助金の給与支給総額に含まれる費用は、給料(賃金)と各種手当、賞与です。給料と賃金は違う言葉ですが、管轄の法律により分かれた言葉なので、仕事に対する報酬という意味で同じです。交通費は経費扱いされるため、給料と賃金には含まれません。
給与支給総額の伸び率が達成されない場合は、補助金をもらったとしても補助金を一部返還しなければなりません。ただし、ものづくり補助金に採択されて設備導入をしても付加価値額が目標値に届かない場合や天災があった場合は、一部返還は求められません。