ものづくり補助金におけるつなぎ融資の利用と申請方法を解説
2024/04/30
2023/10/20
ものづくり補助金を検討している人の中には、補助事業に必要な資金に不安を感じ、つなぎ融資を検討する人もいますよね。その際、つなぎ融資で具体的に借りられる金額や申込方法などで疑問を抱えている人も多いでしょう。
当記事では、ものづくり補助金でのつなぎ融資の定義や申請方法について解説します。ものづくり補助金の申請を検討している人は、当記事を参考にしてみてください。
Contents
つなぎ融資とは補助金の入金までに不足する資金を補う手段
つなぎ融資とは、補助金の入金までに不足する資金を補うために金融機関から融資を受けることです。ものづくり補助金の公募要領では、つなぎ融資について、ものづくり補助金対応POファイナンスや交付決定債権譲渡と記載しています。
【公募要領でのつなぎ融資についての記載文面】
事業資金の調達については、金融機関の判断によるつなぎ融資 (①ものづくり補助金対応POファイナンス*1、②交付決定債権譲渡*2) や 概算払*3を利用することが可能です。 |
ものづくり補助金に採択されたものの、補助事業を行う運転資金が足りないために、採択を辞退する人もいます。補助事業を実施する資金がなくてものづくり補助金に申請できない人、または既に採択されたものの補助事業を行う資金が足りない人は、金融機関からの「つなぎ融資」を検討してみましょう。
補助金POファイナンスとは
補助金POファイナンスとは、金融機関と補助金申請者との間に入り、金融機関からの融資をサポートするサービスです。ものづくり補助金事務局はTranzax(トランザックス)株式会社と提携しており、Tranzax社は補助金向けのPOファイナンスを提供しています。
【補助金POファイナンスの概要】
採択された事業者の「補助金交付決定通知書」を使い、融資のサポートをするサービス
|
Tranzax社について知らない人も多いと思いますが、Tranzax社は売掛金の早期現金化や受注時の短期資金のサポートを行っているIT企業として知られています。
たとえば、事業者Aが融資でTranzax社へ申し込む場合、事業者Aはものづくり補助金の交付決定通知書の写しを送付します。その際、Tranzax社は交付決定通知書を最新のIT技術で加工(電子記録債権化)し、その後の融資の手続きを代行します。
補助金POファイナンスを利用するメリットは、交付決定を担保にできる事と、業歴が浅くても融資を受けやすい事です。デメリットには「手数料がかかる」が挙げられます。つなぎ融資は自分で申し込むことも可能ですが、融資が初めての人や時間がない人は、補助金POファイナンスの利用を一度検討してみましょう。
なお、POファイナンスというサービスは以前からあり、建築業者やアパレル業者など、先に経費を支払うビジネスモデルの業者から需要があります。POファイナンスの詳細を知りたい人は、Tranzax株式会社の資料「POファイナンス®サービスのご紹介」を参考にしてみてください。
POファイナンスの申し込み手順とその後の流れ
POファイナンスへの申し込み手順は、WEBフォームから必要事項を入力し、必要書類を郵送します。POファイナンスに申し込む前には、POファイナンスとつなぎ融資の流れについて理解しておくと、つなぎ融資のあとの不要なトラブルを防げます。
POファイナンスへの申し込みは、Tranzaxの公式サイト「ご利用申し込みのご案内」から可能です。
つなぎ融資に申し込む場合、ものづくり補助金の手続きに加え、POファイナンスを通した金融機関への融資手続きが追加されることになります。通常、つなぎ融資はPOファイナンスへの申し込み後、審査を通過すると、約1週間で入金されます。
【POファイナンスへの申し込みとつなぎ融資の流れ】
1.事業者が交付決定を受ける 2.事業者がPOファイナンスサービスに利用申し込み手続きを行う 3.事業者が「応募申請案件に係る採否の通知(採択通知書)」の写しを Tranzax株式会社に送付 4.金融機関が事業者の口座に補助金額相当の資金を振り込む (抗弁切断の記録を行う) 5.事業者が補助事業を終え、全国中小企業団体中央会へ実績報告をする 6.全国中小企業団体中央会が確定検査をする 7.全国中小企業団体中央会が「補助金決済口座」に補助金を振り込み、 8.事業者が受けたつなぎ融資の債務は消滅する |
参考:POファイナンス®サービスのご紹介|Tranzax株式会社
※全国中小企業団体中央会とは、ものづくり補助金の運営組織です。
事業者がつなぎ融資を受けると、Tranzaxは「抗弁切断の記録」を行うため、事業者の「ものづくり補助金を受け取る権利」は消滅します。つなぎ融資の返済は、ものづくり補助金が入金される「補助金決済口座」から金融機関が元金一括払いで直接引き出すため、事業者は融資の返済をする必要はありません。
ものづくり補助金では補助金POファイナンスにはWEBフォームと郵送で申し込めるので、自宅にいながらつなぎ融資を受けられます。一方、つなぎ融資ではPOファイナンスへの手数料と融資の金利がかかるので、手数料を含めて申し込むべきかを検討してみてください。
借りられる金額は補助対象経費の満額ではない
TranzaxのPOファイナンスを利用する場合、つなぎ融資で借りられる金額は補助対象経費の満額ではありません。つなぎ融資を受けても、残りの補助対象経費は事業者が支払う必要があるので、ものづくり補助金に申請する際は資金繰りを考慮するようにしましょう。
ものづくり補助金の補助金POファイナンスで借りられる金額は、基本的に、交付決定額と同一です。交付決定額は、事業者が申請する補助対象経費に補助率をかけた金額となるため、補助事業をするためにはつなぎ融資だけでは足りません。
【補助対象経費における補助金額と自己負担額】
交付決定額=補助対象経費×補助率 交付決定額:100万円=補助対象経費:150万円×補助率:2/3 【補助金額】100万円 【自己負担額】50万円 |
たとえば、150万円のシステムを導入する小規模事業者がいるとします。ものづくり補助金の申請時に150万円の補助対象経費として申告して採択された場合、Tranzax経由のつなぎ融資で借りられる金額は100万円です。
ものづくり補助金では小規模事業者の補助率が2/3なので、150万円×2/3で求められる金額の100万円が交付決定額となるからです。Tranzaxではものづくり補助金で決定された交付決定額をつなぎ融資として借りることができます。
つなぎ融資を利用しても、ものづくり補助金の補助対象経費に支払える資金が全くない場合は、補助事業は実施できません。つなぎ融資で借りられるのは補助対象経費の6割または5割であると認識しておきましょう。
提携する金融機関は複数ある
POファイナンスサービスで事業者が利用できる金融機関は、複数あります。Tranzax株式会社のPOファイナンスサービスの場合、政府系金融機関の「商工組合中央金庫」や地方銀行の「横浜銀行」、信用金庫の「城南信用金庫」と提携しています。
【Tranzaxの補助金POファイナンスサービスと提携する金融機関の例】※一部抜粋
種別 | 金融機関名 |
政府系金融機関 | 商工組合中央金庫 |
地方銀行 |
|
信用金庫・信用組合 |
|
金融機関以外 | 東京・大阪で契約できる人のみ
|
参考:交付が決まったら早期資金化|Tranzax Webサイト
たとえば、商工組合中央金庫からつなぎ融資を受ける場合、事業者がPOファイナンスサービスを利用するのはTranzaxで、融資を受けるのは商工組合中央金庫となります。そのため、事業者はつなぎ融資に申し込む際に商工組合中央金庫の審査を受けることになります。
ものづくり補助金でつなぎ融資を受ける事業者は、金融機関の審査に必要な決算書や納税証明書などの書類を提出します。補助金の交付決定を受けたという担保はありますが、つなぎ融資の審査も通常の融資の審査のように書類提出があるので、覚えておきましょう。
資金調達には概算請求も利用できる
事業者の資金調達には、ものづくり補助金事務局が実施する「概算請求」も利用できます。概算払いとは、補助金交付決定額の90%を上限として、全国中小企業団体中央会が「支払済み補助対象経費×補助率」の額を支払う制度のことです。概算払いについては、ものづくり補助金の公募要領に以下のように記載があります。
【公募要領での概算払いについての記載文面】
補助金交付決定額の90%を上限として、「支払済み補助対象経費×補助率」の額を 支払う制度。なお、支払済み経費の証憑(請求書及び金融機関の振込金受取書等)の 提出が必要。 |
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
たとえば、ものづくり補助金で100万円の交付決定を受けた事業者がいるとします。その場合、事業者が補助対象経費を支払った証拠の証憑(領収書など)を提出すれば、交付決定額の90%である90万円までを概算払い請求できます。
事業者がものづくり補助金で交付決定を受けた場合は、概算払い請求をして補助金の受け取り時期を早めることができます。ただし、概算払いの場合も、先に事業者が補助対象経費を支払う必要があり、概算払いには請求書と振込明細が必要な点に留意しておきましょう。
この記事のまとめ
つなぎ融資とは、補助金の入金までに不足する資金を補う手段です。ものづくり補助金で補助金が入金されるのは交付決定から約1年後なので、採択された事業者が補助事業のための費用を先に払えない場合、つなぎ融資を資金調達として利用することがあります。
ものづくり補助金の場合、電子記録債権機関の1つであるTranzaxと提携しているため、補助金POファイナンスを利用できます。補助金POファイナンスとは、補助金の交付決定通知書を電子債権化して、金融機関から融資を受けるサポートをしてくれるサービスです。
通常、つなぎ融資は金融機関に申し込み、審査が通れば融資のお金はすぐに入金されます。そのため、事業者はつなぎ融資のお金で補助事業を実施できます。一方、つなぎ融資をする場合はPOファイナンスへ手数料、金融機関に金利を支払う必要があります。