製造業がものづくり補助金を利用する際の条件と採択事例を解説
2024/05/07
2022/10/24
製造業で設備投資を検討する人の中には、ものづくり補助金を使って設備を購入したい人もいることでしょう。その際、自社がものづくり補助金の対象となるのか、どのような設備なら補助されるのかと気になる人もいますよね。
当記事では、ものづくり補助金を検討している製造業者に向けて、申請のための条件と採択事例をご紹介します。製造業でものづくり補助金を検討している人は、当記事を参考にしてみてください。
なお、当記事は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版」を元に作成しています。
Contents
製造業で対象となるには2つの条件を両方満たす
製造業者がものづくり補助金で対象になるには、事業規模と基本要件の両方を満たす必要があります。ものづくり補助金では事業規模が大きいと補助の対象外となり、基本要件を満たさない場合も補助の対象外となるためです。
【ものづくり補助金で対象となる条件】
対象者の条件 | 概要 |
事業規模が規定の範囲に該当する |
※業種により異なる ※ゴム製品製造業の従業員数はは900人以内 |
要件を満たしている |
①基本要件
②申請する枠の要件を満たす 例)省力化(オーダーメイド)枠に申請する場合は、省力化(オーダーメイド)枠の要件を満たす |
※ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
たとえば、従業員数が20名で資本金が3,000万円の金属加工事業者の場合、事業規模の要件は満たせます。さらに「NC工作機械の導入で金属加工の生産物を増やす」といった事業計画を立て、売上を上げて利益の増加と賃上げにつなげる説明ができれば事業規模と基本要件の両方を満たせる可能性があります。
また、従業員数が250名で資本金が1億円のオフセット印刷業の事業者の場合、デジタル印刷の導入で版を作らない事業計画を立てれば、コストを削減して利益の増加と賃上げにつなげる説明ができるため、事業規模だけでなく要件も満たせる可能性が出てきます。
ものづくり補助金では基本要件を満たせば、個人事業主や従業員数が3名といった小規模事業者も対象になります。製造業でものづくり補助金の対象となるか、自社の資本金と従業員数を確認し、基本要件を満たす事業計画を立てましょう。
なお、ものづくり補助金で申請できる枠は、2024年の18次公募の場合、省力化(オーダーメイド)枠やグローバル枠など3種類あります。ものづくり補助金では各申請枠で設定された個別の要件も合わせて満たす必要があります。
詳細は、公募要領の「補助対象事業の要件」を確認してみてください。
条件にあてはまっても対象外になる場合がある
事業規模と要件を満たす場合でも、公募要領に定められた対象外の事業者は補助されません。そのため、ものづくり補助金に申請する際は、対象の条件を満たすだけでなく、対象外の条件に該当しないかを確認することが大切です。
対象外 |
|
※ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
たとえば、従業員数が1万人以上で工場を複数持つ大企業の場合、DX化により工場間の情報を統合して効率化できたとしても、事業規模が大企業のため、対象外です。
ものづくり補助金で対象となるには、対象となる条件を満たすだけでなく、対象外の事業者に該当しないことも求められます。申請する時は、補助対象外の事業者に該当しないかも確認しておきましょう。
製造業の採択事例では対象設備や事業計画に着目する
製造業でものづくり補助金への応募を検討中なら、製造業の採択事例をみてみましょう。製造業の採択事例では対象設備や事業計画に着目することがポイントです。
【ものづくり補助金の製造業の採択事例】
製造業の種類 | 事業計画 |
生産用機械器具製造業 | 金属粉末射出成形法による航空機ジェットエンジン部品の試作開発 |
食料品製造業 | 電解水装置導入による製造ライン構築事業 |
義歯製造業 | 義肢製作におけるDXの活用と切削サービス提供 |
機械加工製造業 | 建設機械、自動車エンジン部品製造におけるデジタル技術の導入 |
家具・装備品製造業 | 公共施設の木質化施策に伴う据付家具製作における納期短縮の実現 |
食料品製造業 | 遠赤外線とマイナスイオンの効果を用いたドライフルーツの開発および販路開拓 |
情報通信機械器具製造業 | プレス・レーザー複合マシンの導入による厚板ステンレス加工の実現 |
参考:成果事例のご紹介|ものづくり補助金
たとえば、ものづくり補助金で設備の購入費を申請する場合、事業者は「◯◯の設備が欲しい」と設備を主体にするのではなく、「□□の補助事業をしたい」と事業計画を主体にします。なぜなら、ものづくり補助金は補助事業の内容を総合的に審査して採択が決められる補助金だからです。
自社が導入したい設備が申請できるか検討する際は、採択事例を参考にできます。ものづくり補助金の公式サイトにある「成果事例のご紹介」ではさまざまな製造業の採択事例を確認できるので、採択事例を調べる際に利用してみましょう。
DXに役立つ製品やサービスの事業計画を検討する
製造業でものづくり補助金を検討しているなら、DX化とデジタル技術を推進する事業計画も検討してみましょう。DXに関連する事業計画をすることで、製品・サービス高付加価値化枠の成長分野進出類型(DX・GX)に申請できるようになったり、審査の際に有利になる加点が得られたりするからです。
製品・サービス高付加価値化枠の成長分野進出類型(DX・GX)枠は、2024年1月~3月の18次公募から追加された申請枠です。
【DXに関わる申請枠と加点】
項目 | 申請要件 |
①製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型(DX・GX) | 以下すべてに該当する事業であること ①3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、企業全体の売上高の 10%以上となる事業計画を策定すること ②金融機関から資金調達を行う際は、金融機関から確認を受け、確認書を発行してもらう |
②政策加点
(DX認定事業者) |
応募締切日時点においてDX推進ポータルのサイトで有効な認定を受けている |
※ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
たとえば、製造業のDX化の場合、自社の製造プロセスを見える化する取り組みや、工場間での設計方法を一化する取り組みなどの事業計画が立てられます。
また、設計・製造・品質保証部門間の知見やノウハウが活かされていない企業の場合、ICTを使って部門の壁を取りはらた仮想部屋を構築し、部門を超えたすり合わせをする事業もDX化と言える場合があります。
製造業でものづくり補助金に申請をするときは、DX化とデジタル技術を念頭に事業計画を立てる事も検討してみましょう。製造業のDXについては、経済産業省が事例を「製造業によるDX化の事例集」としてPDFでまとめているので、参考にしてみてください。
ものづくり補助金の主な対象経費は設備投資
ものづくり補助金では補助の対象となる主な補助対象経費は、設備投資です。具体的に補助の対象となる経費は、機械装置やシステム構築費や技術導入費と、その関連経費となります。
【ものづくり補助金の補助対象経費と補助されない経費】
補助対象経費 | 補助されない経費 |
|
|
※ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
たとえば、ドリルマシンの製造業者の場合、ドリルマシンの製造で生産性を高めるための機械設備は補助されますが、人件費や事務所の家賃は補助対象外です。
また、自動車整備工場の場合、次世代EV車対応強化のための機械設備は補助されますが、自動車整備工場にかけられた保険料や新たな工場を立てるための不動産費用は対象外です。
製造業は金属を扱う事業者や食品メーカーなど、製造のジャンルが幅広いため、事業者が申請できる経費もさまざまです。パソコンや車などの汎用性のある購入経費は、たとえ補助事業に使うものであっても補助されないので注意しましょう。
なお、補助の対象にならない経費は公募要領に明記されています。ものづくり補助金で補助の対象とならない経費については、「ものづくり補助金の対象外となる事業者と設備導入を解説」を確認してみてください。
ものづくり補助金は通年で申請できる
2023年までのところ、ものづくり補助金は通年で申請できました。ものづくり補助金は今後も継続的に公募される可能性があるので、ものづくり補助金に申請する人は、事業計画や申請の準備が整ったタイミングで、申請しましょう。
たとえば、10月24日締切の公募回に申請する場合、少なくとも2週間前の10月10日までには事業計画書の作成や必要書類の準備を始める必要があります。ものづくり補助金のWEBサイトにある「データポータル」によると、ものづくり補助金で採択された事業者は事業計画書の作成に時間をかけた人が多いというデータがあるためです。
十分に準備ができない場合は、申請しても採択されない可能性があります。直近の公募回に申請するには時間が足りない場合は、その次の公募回に申請することも検討してみましょう。
なお、ものづくり補助金の公募は通年ですが、公募回によって要件や申請できる枠が異なることがあります。これから申請する人は、最新の公募回の公募要領を確認するようにしてみてください。
ものづくり補助金の申請準備には20時間から50時間かかる
ものづくり補助金の申請準備には20時間から50時間かかります。ものづくり補助金の公式サイトにある「データポータル」によると、13次から16次の採択者が事業計画書の作成にかけた時間は、全体の60,9%が50時間以内で、特に多かったのは50時間以内から20時間以内という結果でした。
ものづくり補助金では事業計画書の他にも、提出書類が複数あります。ものづくり補助金の申請の準備をする前に申請の流れを把握すると、どのような申請準備があるか全体像を把握してから計画を立てられるため、効率的です。
【ものづくり補助金の申請前に必要な事前準備】
|
ものづくり補助金の申請の場合、GビズプライムIDを使用する電子申請なので、印鑑証明書や登録印の用意が必要です。また、ものづくり補助金で必要書類を揃える場合、事業計画書や賃金引上げ計画の誓約書などの用意が必要です。
ものづくり補助金に申請するのは時間がかかります。特に、本業と並行して補助金申請の準備をするのであれば、時間に十分な余裕をもったスケジューリングが大切です。
ものづくり補助金の申請手順について知りたい人は「ものづくり補助金の申請方法と流れを解説」も併せて読んでみてください。
この記事のまとめ
ものづくり補助金の申請者の中で、製造業者の割合は約5割と半数を占めています。すべての製造業者が対象になるわけではなく、事業規模と申請要件を満たす必要があります。
製造業で対象となる経費は、設備投資に関する経費のみです。また、付加価値額や従業員の給与を上げられる事業計画を作成する必要があります。
過去の事例からみると、ものづくり補助金に申請する事業者は事業計画の作成に20時間~50時間を費やしています。ものづくり補助金に申請する場合は、時間に十分な余裕をもって準備を進めましょう。