補助金ガイド

ものづくり補助金の設備投資とは?対象の設備と申請時の注意点を解説

2024/03/28

2024/3/28

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

大型の機械や店舗をもつ事業者の中には、事業で新たに機械やシステムを導入したい人もいますよね。その中には、設備投資にものづくり補助金を利用すれば、事業者の経済的負担を軽減できると考える人もいるでしょう。

当記事では、ものづくり補助金を使って導入できる対象設備の具体的な要件を解説します。ものづくり補助金で設備を申請する際の注意点も紹介するので、ものづくり補助金で設備投資を検討中の人は当記事を参考にしてみてください。

設備投資とは補助事業向けの機械設備の導入のこと

ものづくり補助金における設備投資とは、事業者が補助事業向けの機械設備やシステムを導入することです。補助事業とは事業者がものづくり補助金のルールに沿って行う事業のことで、ものづくり補助金に採択されると、事業者は国から補助を受けて機械設備やシステムを導入できます。

ものづくり補助金の設備投資には、さまざまな要件があります。設備投資を行う事業者がものづくり補助金の補助を受ける場合は、購入金額や支払い方法など複数の要件を満たす必要があります。

【ものづくり補助金の設備投資の要件】

カテゴリ 概要
性質 革新的な製品・サービスまたは生産プロセスの省力化を行う補助事業にのみ使える機械設備・システムである
購入金額 単価50万円(税抜き) 以上である
補助対象経費 「機械装置・ システム構築費」として申請する
購入時期 ものづくり補助金に採択され、交付申請が受理され交付決定日が決まってから
支払い方法 原則として、事業者が設備を契約する事業者へ銀行振込で支払う
※クレジットカードで支払う場合は事前に事務局へ相談
相見積 相見積を行った上で、各見積書を交付申請時に提出する
補助金額 申請する枠ごとに決められた上限額を超えず、補助率をかけた範囲内で補助される

※参考:ものづくり補助金の公式サイト「18次締切公募要領」をもとに、株式会社ソラボが作成

たとえば、飲食店が現在使っている業務用の製麺機の老朽化にともない、新たな製麺機に買い換えるとします。ものづくり補助金では「革新的な製品・サービス」や「生産プロセスの省力化」に関わる設備投資が補助対象となるため、単なる買い替えは補助の対象外です。

また、測量技士が生産性のために新たな設備投資をする際に、税抜き35万円の測量用ドローンを購入するとします。ものづくり補助金では税抜き50万円以上の設備投資が対象なので、税抜き35万円の測量用ドローンは補助の対象外となります。

ものづくり補助金で設備投資をする際は、設備や金額、支払い方法などの要件を満たすことが大切です。ものづくり補助金を使って設備投資をしたい人は、対象となる設備投資の各要件を確認しておきましょう。

ものづくり補助金における設備投資は省力化を目的としている

ものづくり補助金における設備投資は省力化を目的としています。なぜなら、16次公募まで掲げられていた目的「生産プロセスの改善」は、17次公募からは「生産プロセスの省力化」に変更されたからです。

また、令和6年3月1日(金) に締め切られた17次公募からは、新たに「省力化(オーダーメイド)枠」が開始されました。これら2点の変更から、2024年のものづくり補助金の方針は省力化を重視している可能性があります。

【17次からの設備投資の変更点】

カテゴリ 17次公募からの場合 (参考)16次公募までの場合
性質

<全申請枠共通>

革新的な製品・サービスまたは生産プロセスの省力化を行う補助事業にのみ使える機械設備・システムであること

<全申請枠共通>

革新的な製品・サービスまたは生産プロセスの改善を行う補助事業にのみ使える機械設備・システムであること

省力化(オーダーメイド)枠>
生産工程を自動化するため、システムインテグレータ(SIer)と連携し、事業者の個々の業務に応じて設計された専用の機械装置やシステム

(例、ロボットシステム)であること

<回復型賃上げ・雇用拡大枠>
業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者が行う設備投資であること

<製品・サービス高付加価値化枠>
・通常類型
変更なし

・成長分野進出類型(DX・GX)
今後成長が見込まれる分野(DX・GX)と関連する設備投資であること

<デジタル枠>
DXやデジタル技術を背景とした設備投資であること

<グローバル枠>

国内に所在する本社を補助事業者とし、補助対象経費の1/2以上が海外支店の補助対象経費となる設備投資であること

<グリーン枠>
温室効果ガスの排出削減のための取り組みに必要な設備投資であること

たとえば、2023年16次公募までのものづくり補助金の場合、公募要領には「革新的な製品・サービスまたは生産プロセスの改善を行う」という表現で説明されています。

一方、2024年17次公募のものづくり補助金の場合は、公募要領に「革新的な製品・サービスまたは生産プロセスの省力化を行う」という表現で説明されています。ほぼ同じ文章にみえますが、生産プロセスの改善が省力化という言葉に変更されています。

2024年の17次公募からのものづくり補助金は、補助事業の目的に省力化が新たに加わったことにより、対象の設備にも影響する可能性があります。中小機構の作成したチラシによると、AIやロボットを活用する設備投資が例として挙げられているので、省力化を理解する上での参考にしてください。

革新性がある機械設備が対象となる

ものづくり補助金では、革新性がある機械設備が補助対象となります。革新性とは「自社がこれまで行ったことのない」「他社や地域でもあまり一般的ではない」という意味です。

具体的にどのような設備が「革新性がある」のかを知るには、過去の採択事例を参考にすることが有効です。採択事例で紹介された機械設備をみると、専門的で高い技術性をもつ機械設備が採択されている傾向にあります。

【過去に採択された機械設備の例】

採択された事業者の業種 機械設備・システム 導入後の効果
金属製品製造業
(プラスチック成型)
  • 電動射出成形機
  • 取り出し機
  • ベルトコンベアー
  • 粉砕機
  • ローダー付属乾燥機
歩留率低下を招くキズや 変色(シルバー)不良など品質に関わる問題を解決できた
金属製品製造業
(刃物)
刃物の研削・研磨作業を担う ロボット・システム ロボットシステムの導入による作業の自動化を実現し、残業時間の削減と研修時間の確保につながった
金属製品製造業
(ネジ)
大型部品の加工を実現する横型5軸複合加工機 生産環境の整備と効率化、リードタイム短縮化につながり、金属製品製造の体制を強化できた
出版・印刷・同関連産業 印刷物検査機 医薬品などのミスが許されず時間がかかる検査を機械が行うことにより、品質が向上した
電気機械器具製造業 平面研削盤 他社のできない技術を確立し、顧客の半導体製造装置の精度が向上した
サービス業
(測量・点検)
モバイル3D スキャナ 樹木等が障害になる場所では正確な地形測量が不可能だったが、正確に測れるようになった
業務用機械設備のメンテナンス事業 小型バウムクーヘンオーブンの開発 FOOMA  JAPAN2016(国際食品工業展)に出店したところ、中国からの引き合い(紹介、取引)があった
飲食店運営業 大型調理機器 大口の注文にも対応できるようになり、売上が伸びた
食品製造業 フルーツコーディアルと超低糖度ジャムの 開発 自力で「フルーツコーディア ル」 の商標登録を行うことができた

※参考:ものづくり補助金の公式サイトの「グッドプラクティス集」をもとに、株式会社ソラボが作成

たとえば、金属製品製造業(プラスチック成型)の事業者の場合、これまで中古の油圧式成形機でプラスチック成形加工を行ってきました。同社は地元の有力金型企業から新たな仕事を打診されましたが、中古の油圧式成型機では生産能力が弱いため、契約を結ぶことはできませんでした。

そこで、同社は自社の導入初となる最新の電動射出成形機と関連機器を、ものづくり補助金を使って導入しました。電動射出成形機は同社が過去に導入したことのない機械設備で、金属製品製造業(プラスチック成型)の業界でも最新の機械設備でしたので「革新的」と評価されました。

過去の採択事例では、自社が初めて導入する機械や業界で最新とされる設備が「革新的」とみなされました。ただし、過去に革新的とされた機械設備が今は違う場合や、設備導入以外にみどころがない補助事業は評価が低くなる事があるので、設備を選ぶ際は補助事業の内容にも革新性があるかを確認してみましょう。

三社以上の相見積があれば中古品も対象となる

ものづくり補助金では、三社以上の相見積があれば中古品の設備も対象です。中古品をものづくり補助金で導入する際は、見積に型式や年式が記載されている必要があります。

たとえば、パンの製造を営む事業者がコンベクションオーブンを導入する際、中古で状態のよいコンベクションオーブンをインターネットで見つけたとします。その際、同じ型式や年式が記載の見積を三社以上から取得できるのであれば、中古の設備でも補助の対象となります。

ただし、中古の設備で発売された時期がかなり古い場合、ものづくり補助金の審査で「革新的」と判断されない可能性があります。中古品には安さや市場にない製品があるといった魅力がありますが、審査で革新的とみなされない可能性もあるので、中古品を選ぶ際は慎重に判断してください。

汎用性のあるエアコンやトラックなどは対象外

汎用性のあるエアコンやトラックなどは、ものづくり補助金の対象外となります。なぜなら、ものづくり補助金では補助事業以外に使える設備は補助の対象外とされており、エアコンやトラックは補助事業の目的「革新的」や「省力化」に該当しないからです。

【補助事業のテーマと汎用性の関係】

「革新性」「省力化」につながる
設備投資である
「革新性」「省力化」につながる
設備投資ではない
汎用性がない

対象

(例、歯科用CAD、測量用ドローン、ウェラブルデバイス)

対象外

(例、特定の化学反応のみを目的とした特殊な化学プロセス装置、特定種の生物学的試験のみに使用される特殊な研究機器)

汎用性がある

対象外

(例、ロボットアーム、3Dプリンター、AIベースの監視システム)

対象外

(例、エアコン、収穫機、倉庫、キッチンカー)

たとえば、歯科用CADの場合、患者と歯科技師の負担が軽くなる点が革新的であり、歯科の治療以外には使えないので、汎用性がないと判断できます。

一方、ロボットアームや3Dプリンターの場合、設定を行えば他の事業でも使える可能性があります。ロボットアームは飲食店の盛り付けや工場でのピックアップなど幅広い使い道があり、3Dプリンターもさまざまな部品や設備を製作できる能力をもちます。

ものづくり補助金では「革新的な製品・サービスの開発」であっても、汎用性があり他の事業に使える設備は補助の対象外です。日常的に使えるエアコンやさまざまな用途に使える建物は補助の対象外となるので、ものづくり補助金に申請する人は対象外の設備を選ばないように注意しましょう。

設備投資は後払いで補助される

ものづくり補助金では、設備投資にかかる費用は後払いで補助されます。なぜなら、ものづくり補助金で補助金を受け取れるのは実績報告書を提出したあとだからです。

2023年までのものづくり補助金の場合、申請してから入金まで約1年以上あります。ものづくり補助金に採択されると、補助金の入金までの間、交付申請、補助事業の実施、実績報告書の提出などのさまざまな手続きが必要です。

【申請から入金までに発生する事務手続きとスケジュール】

また、補助金は事業者が導入する設備の全額ではなく、一部が補助される仕組みです。たとえば、ものづくり補助金で100万円の機械設備を購入し、補助率2/3が適用される場合は、採択後に事業者が100万円で機械設備を購入し、ものづくり補助金の確定検査に承認されると約66.6万円が戻ります。

ものづくり補助金で設備投資をする際は、事業者が先に支払って設備を導入するため、資金調達が必要となる可能性もあります。ものづくり補助金で確定検査を受ける際は、設備投資の支払いが確認できる通帳のコピーを提出することになる点に留意しましょう。

設備投資における申請時の注意点

設備投資における申請時の注意点は「会社規模に合う設備投資にする」と「納期を守れる設備投資にする」の2点です。なぜなら、ものづくり補助金では事業規模に合わない高額な設備を申請すると不採択になる可能性があるほか、採択後に設備導入の時期が遅れると計画どおりに補助事業を実施できないためです。

ものづくり補助金の公募要領に記載された審査項目「事業化面」では、財務状況に合う適切な設備投資であるかとの記載があります。また、事業化面には「事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュー ルが妥当か」と記載されているので、この2点が設備投資において大切だと推測できます。

【設備投資における申請時の注意点】

財務状況に合う設備投資にする 納期を守れる設備投資にする
  • 会社や事業の規模に対し、設備投資の金額が妥当であるか
  • ものづくり補助金のルール通り、設備投資を現金振込で支払おうとしているか
  • 複数社に相見積を依頼して設備の個取引先を決定するか
  • 機械設備やシステムの導入のスケジュールが数か月~半年先まで決められているか
  • 機械設備を使って行う事業内容の詳細(担当者や生産個数など)まで決められているか

申請の時点で自社の売上や収益がほとんどない場合は、高額な設備投資を申請しても不採択となる可能性があります。また、納期スケジュールが明確でない設備投資も評価が低くなることがあるため、ものづくり補助金で設備投資をする際は選ぶ設備の金額や納期が適当であるかも確認してみましょう。

補助事業後に財産処分をする際のルールを確認する

ものづくり補助金で設備投資をする予定の人は、補助事業後に財産処分をする際のルールを確認しましょう。財産処分とは、ものづくり補助金で取得した設備を補助事業期間のあとに処分することで、処分の際は報告と補助金額の一部を返還する義務があります。

たとえば、1,000万円の機械設備を導入する人が、ものづくり補助金で8か月間の補助事業を終えたとします。補助金の振り込み後に機械設備を処分する際は、事業者は事前にものづくり補助金事務局に報告し、ものづくり補助金で受けた補助金額を上限とする金額を事務局へ返還する義務があります。

また、取得した設備を第三者に譲渡したり貸付ける場合も、事前にものづくり補助金事務局への相談が必要です。

ものづくり補助金を利用して取得した設備は国の税金を使った設備なので、事業者が自由に処分することはできません。ものづくり補助金で設備投資をする際は、自社が長期的に使用できる設備なのかを検討した上で申請する設備を選択してください。

なお、補助金が振り込まれたあとも、ものづくり補助金で取得した設備に関する書類は5年間保管する必要があります。ものづくり補助金で補助金を受け取れるのは、事業者が設備投資をして確定検査をしたあとなので、設備購入の際の契約書や納品書などはすべて保管しておきましょう。

補助事業後に収益納付が必要となる条件を確認する

ものづくり補助金を利用して設備投資をする際は、補助事業後に収益納付が必要となる条件を確認しておきましょう。収益納付とは、補助事業により事業化や知的財産権の譲渡を行った場合に得た収益を国に返還することです。

たとえば、1,000万円の機械設備を導入する人が、ものづくり補助金で8か月間の補助事業を終えたとします。その後、事業者がものづくり補助金で取得した設備を本業に活用して利益を得たなら、受け取った補助金額(例、1,000万円)を上限として利益をものづくり補助金の事務局へ還付しなければなりません。

ものづくり補助金で取得した設備で補助事業期間後も収益を得る場合、事業者は収益納付をする義務があります。収益納付をしない事業者は、新たにものづくり補助金に申請する際に対象外や減点措置となるため、忘れずに収益納付をするよう留意してください。

この記事のまとめ

ものづくり補助金における設備投資とは、事業者が補助事業向けの機械設備やシステムを導入することです。補助事業とは事業者がものづくり補助金のルールに沿って行う事業のことで、ものづくり補助金に採択されると、事業者は国から補助を受けて機械設備やシステムを導入できます。

2024年からのものづくり補助金は、補助事業の目的に省力化が新たに加わりました。中小機構の作成したチラシによると、AIやロボットを活用する設備投資が例として挙げられているので、審査ではAIやロボットなど省力化を可能とする設備が重視される可能性があります。

ものづくり補助金は後払いの制度のため、設備投資をする際は事業者が導入費用を自費で支払う必要があります。事業者はものづくり補助金を受け取る前に機械設備やシステムの代金を支払うことになるので、ものづくり補助金を検討する際は、先払いとなる設備投資の資金も用意しておきましょう。

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