事業再構築補助金における加点項目を解説
2024/04/26
2022/4/14
事業再構築補助金は事業計画書で必須の審査項目を満たした上で、加点項目を盛り込むと、審査を有利に進められます。
加点項目は、公募回ごとに異なり第10回公募では10つあります。
当記事では、加点の種類や申請条件を解説します。事業再構築補助金に申請する人は、申請できる加点がないかを探す参考にしてみてください。
なお、2024年4月23日に第12回公募要領が公開されました。公募要領の改訂にともない記載内容の一部が変更となっている可能性があるため、最新の公募内容やスケジュールは事業再構築補助金の公式サイトから確認してください。
事業再構築補助金の加点項目を得ると審査でプラスに働く
事業再構築補助金の加点項目を得ると審査でプラスに働きます。事業再構築補助金は「基本審査項目」「加点項目」「減点項目」の3つで審査され、加点項目があればあるだけ審査を有利に進められるからです。
たとえば、基礎審査の結果が同じだった場合、加点を持つ事業者のほうが加点を持たない事業者よりも優先的に採択されます。
事業再構築補助金では、加点項目に申請できる数が多ければ多いほど審査を有利に進めることができます。事業再構築補助金を利用したい人は、加点項目で申請できるものがないかを確認してみましょう。
なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)は、第4回~第8回の事業再構築補助金で採択支援数がNo1でした。事業者の方の状況にあわせて申請できる加点をお伝えできるので、まずは事業状況から申請できる加点を無料診断してみましょう。
無料診断事業再構築補助金の8つの加点項目
事業再構築補助金の加点項目は8つあります。加点項目ごとに申請条件や必要書類が異なるため、事業再構築補助金に申請したい人は、事業状況に合わせて申請できるものがないかを確認してみましょう。
【加点項目】 |
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たとえば、大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点は、「売上高が30%以上」または「付加価値額が45%以上」減少している事業者が申請できる加点です。そのため、大きく売上が減少していることを示す資料を提出することになります。
加点項目は条件を満たせば申請できます。複数の加点項目に申請することもできるため、条件を満たせるものがないかを確認してみましょう。
加点項目1:大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点
大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点は、「 2021 年 10 月以降のいずれかの月の売上高が対 2020 年又は 2019 年同月比で 30%以上減少していること」が申請条件です。売上高ではなく、付加価値額を用いることも可能です。
付加価値額を使って加点を申請する際は、「2021 年 10 月以降のいずれかの月の付加価値額が、2020 年または 2019 年同月比で 45%以上減少していること」が必要で、売上高よりも高い割合が求められます。
そのため、申請時には「2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020年又は2019年同月比で30%以 36 上減少していること(又は、2021年10月以降のいずれかの月の付加価値額が、対 2020年又は2019年同月比で45%以上減少していること)を示す書類」を添付することになります。
なお、第六回公募から創設された「グリーン成長枠」の場合、他の補助枠では必須の「売上減少要件」が設定されていませんが、売上減少の加点項目を証明する書類を提出すれば、加点対象となります。
加点項目2:最低賃金枠申請事業者に対する加点
最低賃金枠申請事業者に対する加点は、最低賃金枠に応募する事業者が対象となる加点です。
【最低賃金枠の申請要件】
①事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること【事業再構築要件】 ②2020 年 4 月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019 年又は 2020 年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して 10%以上減少していること等【売上高等減少要件】 ③2021 年 10 月から 2022 年 8 月までの間で、3 か月以上最低賃金+30 円以内で雇用している従業員が全従業員数の 10%以上いること【最低賃金要件】 ④事業計画を認定経営革新等支援機関と策定していること【認定支援機関要件】 ⑤補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること【付加価値額要件】 |
最低賃金枠の申請要件を満たせる場合は、最低賃金枠で申請してみましょう。
なお、最低賃金枠で不採択の場合は、事業者の手続きなしで通常枠において再審査されます。そのため、条件に当てはまる場合は、まず最低賃金枠で申請してみましょう。
加点項目3:経済産業省が行う EBPM の取組への協力に対する加点
経済産業省が行う EBPM の取組への協力に対する加点は、採択や不採択に関わらずEBPMに協力する事業者が加点されます。EBPMとは、エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング」の略で、日本語に訳すと「証拠に基づく政策立案」という意味です。
政策をその場限りのエピソードで立案するのではなく、合理的根拠(エビデンス)に基づく政策を立案するという考え方で、近年、日本政府はこの考えを重視しています。内閣府の公式ホームページでも取り組みが紹介されています。
参照:内閣府におけるEBPMへの取組|内閣府
申請時にEBPMへの協力をしていることを示す
加点項目のひとつ「EBPMへの協力」ですが、具体的にわたしたち事業者が何をすればいいのか言うと、事業再構築補助金の電子申請をする際に、加点項目のリストで「EBPMの取組に対する協力する」という欄にチェックマークを入れればいいのです。特に何か、別の書式を提出する必要はありません。
ただし、EBPMへの協力にチェックマークを入れると、以下の2点に同意することになります。
- ①補助金に採択されなくても数年間にわたりミラサポplusにログインして財務情報を入力する
- ②そのデータを経済産業省が閲覧することに了承する
加点項目4:パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点
パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点は、大規模賃金引上枠またはグリーン成長枠に応募する事業者が「パートナーシップ構築宣言」を行った際に、加点として申請できます。
パートナーシップ構築宣言とは、大企業と中小企業が連携することで、より効率よく国内全体の経済を活性化させる意図で、中小企業庁により企画されています。
暴力団や下請け企業と発注企業による癒着など、日本経済を活性化するための悪しき慣習を減少させ、よりよい好循環をつくるための試みです。
「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて宣言を公表している事業者が対象となるため、申請したい人は手続きをすすめましょう。
なお、応募締切日時点で宣言を公表していなければ加点の条件を満たせません。ポータルサイトに登録してから反映までに、混み合っていない場合でも3~4日はかかるため前もって準備しておきましょう。
加点項目5:事業再生を行う事業者に対する加点
事業再生を行う事業者に対する加点は、再生計画等を「策定中」の事業者か、再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内(令和2年3月25日以降)に再生計画等が成立等した事業者が対象です。
「事業再生」とは、2022年4月に経済産業省が発足した「中小企業活性化協議会」を通じ、中小企業者が借金を減らし、収益をあげる骨太体質へと生まれ変わるための一連の活動です。
(加点対象となる再生計画の例)
また、1.から7.における「策定中」の定義は以下のとおり。 1.から3.「再生計画策定支援(第二次対応)決定」以後 4.企業再生検討委員会による「再生計画着手承認」以後 5. 同ガイドラインに基づく「一時停止の要請」以後 6.同手続きに基づく「一時停止の要請」以後 7.事業再生 ADR 制度の「制度利用申請正式受理」以後 |
参照:事業再構築補助金 公募要領 第8回|事業再構築補助金事務局
加点項目6:特定事業者で、中小企業者でない者に対する加点
特定事業者で、中小企業者でない者に対する加点は、特定の事業者で、中小企業者にあてはまらない企業であれば加点対象となります。そのため、各業界の中小企業者の件を上回り、中堅企業の範囲に収まる事業者が対象になります。
業種 | 資本金 | 従業員(常勤) |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円を超える | 301人~500人 |
卸売業 | 1億円を超える | 101人~400人 |
サービス業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
5,000万円を超える | 101人~300人 |
小売業 | 5,000万円を超える |
51人~500人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円を超える | 301人~500人 |
また、要件を満たす「組合」も、特例として事業再構築補助金の第六回公募から申請できます。
具体的には、以下の組合です。
- 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会
- 酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会
- 内航海運組合、内航海運組合連合会
- 技術研究組合
参照:事業再構築補助金 公募要領 第8回|事業再構築補助金事務局
事業再構築補助金の特徴として、コロナ禍で売上を落とした小規模事業者向けの事業立て直し資金としての側面もありますが、第六回公募からは組合特例やグリーン成長枠が追加されるなど、大企業等の大きな組織向けの施策も充実しています。
加点項目7:サプライチェーン加点
サプライチェーン加点は、異なるサプライチェーンをもつ事業者が連携し、1年以上の取引関係を経て連携して申請する場合に、加点となる仕組みです。「サプライチェーン」とは、ある商品・製品を開発し、原材料を調達し、生産して消費者に届けるまでの一連の流れのことです。
たとえば、AとBと異なる事業の事業者同士が取引関係をもち、例えばアパレルとシューズのように、双方のサプライチェーンを利用できるようにすれば、加点対象となります。
申請時に決算書や売上台帳を追加で添付する
サプライチェーン加点に応募する事業者は、電子申請時の加点で「サプライチェーン」にチェックを入れます。
また、直近 1 年間の、該当の事業者の連携体間の取引関係(受注金額又は発注金額)が分かる書類として、決算書や売上台帳を添付することになります。
なお、サプライチェーンとして連携していると申請するすべての事業者は、実際に取引関係がある必要があります。
加点項目8:健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点
健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点は、令和4年度に健康経営優良法人に認定されている場合に、加点となる仕組みです。健康経営優良法人とは、地域の健康課題に即した取り組みや、日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度で、認定要件が設けられています。
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たとえば、2022年に健康経営優良法人に申請して2023年の3月に認定された場合、第10回事業再構築補助金の加点対象になります。一方で、まだ健康経営優良法人に認定されていな事業者は、2023年にの申請は8月~10月で2024年3月ごろに認定が決まるため、第10回の加点対象にはなりません。
健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点は、第10回の申請時点で健康経営優良法人に認定されている場合に加点される仕組みです。健康経営優良法人に認定されている事業者は、電子システムで申請する際にチェック事項を入力して加点を得ましょう。
なお、申請健康経営優良法人は、健康経営優良法人認定事務局の公式サイトから申請できます。
加点項目9:大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点
大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点は、事業実施期間終了後3~5 年で基準以上の賃上げを実施する場合に、加点となる仕組みです。賃上げ幅が大きいほど追加で加点されます。
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大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点は、事業再構築補助金への応募時に、給与支給総額を1年ごとに3%~5%以上引上られる事業計画を提出すると加点されます。その際、「賃金引上げ計画の誓約書」を提出する必要があり、正当な理由なく事業計画した基準に達しないと事業者名を公表されるため、実現可能な事業計画を考えましょう。
なお、大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点は、成長枠とグリーン成長枠を対象とした加点です。成長枠とグリーン成長枠に申請する人は、大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点への申請を検討してみてください。
加点項目10:ワーク・ライフ・バランス等の取組に対する加点
ワーク・ライフ・バランス等の取組に対する加点は、応募申請時点に「女性活躍推進法」「次世代法」に関連する認定を受けている事業者が加点となる仕組みです。ワーク・ライフ・バランス等の取組に力を入れている人は、認定を受けられるかを確認してみましょう。
項目 | 対象 |
女性の職業生活における活躍 | 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定(えるぼし1段階目~3段階目またはプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けている人 |
従業員数 100 人以下であって、「女性の活躍推進データベース」に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している人 | |
次世代育成支援 | 次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみんまたはプラチナくるみんのいずれかの認定)を受けた人 |
従業員数 100 人以下であって、「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」に次世代法に基づく一般事業主行動計画を公表している者 |
たとえば、一般事業主行動計画公表サイトに公表している事例では、産後(8週)から保育園に入るまでの子供を無料で預かる仕組みを導入しているものがあります。他にも育休の取得に関する制度の整備やサポート側のガイドブック作成などの行動計画があるので、次世代育成への支援に力を入れている会社は公表できる計画があるか確認してみましょう。
ワーク・ライフ・バランス等の取組に対する加点は、女性活躍や次世代育成の支援に力を入れている事業者が加点される仕組みです。それぞれの取組において認定を受けている事業者は、電子申請の際にチェック事項を入力してみてください。
加点に申請する際に気を付けたい3つの注意点
事業再構築補助金で加点項目を申請するときに気をつけたい点は3つあります。
【注意点】
- 注意点1:売上減少ではなく付加価値額減少で申請するなら45%減となる
- 注意点2:グリーン成長枠では減点項目がある
- 注意点3:EBPMに協力すると、数年にわたる財務情報の協力が必要
加点をえるためには、申請条件を満たさなくてはなりません。その際、補助金申請時だけでなく、申請後にも影響するものもあるので、申請前に条件を確認しておきましょう。
なお、事業再構築補助金には加点だけでなく減点項目もあります。申請する際は減点項目に該当しないかもあわせて確認してみてください。
また、申請時には事業計画書や認定経営革新等支援機関による確認書などの基礎審査の必要書類も合わせて準備する必要があります。加点項目は、あくまでも基礎審査の加点になるもののため基礎審査の準備もしておきましょう。
事業者ごとに事業計画書の内容や必要書類は異なります。自分にあった基礎審査の準備を知りたい人は、無料診断で確認してみましょう。
無料診断注意点1:売上減少ではなく付加価値額減少で申請するなら45%減となる
事業再構築補助金では1つめの加点項目として、大きく売上を落とした加点で30%という数値を示しています。これは売上ではなく付加価値額(=営業利益 + 人件費 + 減価償却費)を代わりにすることもできますが、その場合、加点の要件となる%は30%でなく、45%になります。
注意点2:グリーン成長枠では減点項目がある
グリーン成長枠は第六回公募から始まった新しい補助枠で、他の補助枠とは要件や仕組みが異なります。
グリーン成長枠は、一度採択された事業者でも、要件を満たすと2度目の申請が可能です。
しかし、2度目の申請の場合は他の応募者よりも「減点」対象となり、減点項目が追加されてしまいます。
注意点3:EBPMに協力すると、数年にわたる財務情報の協力が必要
事業再構築補助金の申請時に「EBPMに協力する」にチェックを入れると、補助金に不採択となった場合でも、数年にわたりミラサポPLUSで継続的に財務情報を入力しなければいけません。
<事業再構築補助金の電子申請時の加点入力欄>
この記事のまとめ
事業再構築補助金の加点項目を得ると審査でプラスに働きます。事業再構築補助金は「基本審査項目」「加点項目」「減点項目」の3つで審査され、加点項目があればあるだけ審査を有利に進められるからです。
加点項目には複数申請することもできるため、申請できる加点にはすべて申請してみましょう。
加点に申請するためには、申請条件を満たして必要書類を準備することになります。それぞれの補助金の申請条件と必要書類を確認しておきましょう。