補助金ガイド

小規模事業者持続化補助金は運送業や軽貨物ドライバーも対象か?

2024/04/04

2023/4/26

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

コロナ禍やガソリン高騰などの厳しい影響を受けてきた運送業の中には、新たな事業計画やサービスの導入などを検討している人はいますよね。その際、取り組む事業にかかる経費の一部が支援される小規模事業者持続化補助金について知りたい人もいるでしょう。

当記事では、小規模事業者持続化補助金が運送業にも利用できるかを解説します。補助金の活用例や概要も紹介するので、小規模事業者持続化補助金の情報を調べている人は参考にしてみてください。

なお、当記事は小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領をもとに作成しています。

小規模事業者持続化補助金は運送業や軽貨物事業も対象の補助金

小規模事業者持続化補助金は、運送業も利用できる補助金です。運送業は、小規模事業者持続化補助金の公募要領にて、「製造業その他」の業種として補助金の対象になっているからです。

たとえば、小規模事業者であれば、一般または特定貨物自動車運送業や、タクシーのような一般乗用旅客自動車運送業も対象になります。また、軽貨物と称される貨物軽自動車運送事業も対象です。

小規模事業者持続化補助金は、運送業も利用できる補助金であり、事業者の販路開拓や生産性向上に繋がる取り組みに使う経費の一部が補助されます。運送業の事業者が小規模事業者持続化補助金を申請する際には、どのような経費項目を活用できるか確認しましょう。

対象経費の活用例を参考に事業計画を考える

小規模事業者持続化補助金の補助対象経費には、10種類の経費項目があります。項目ごとの活用事例を参考に、運送業の事業計画にどのように活用できるかを考えましょう。

【補助対象となる経費】

補助対象経費科目

活用事例

①機械装置等費

補助事業の遂行に必要な製造装置の購入など

※介護タクシーに兼備するストレッチャーやAEDなどにも利用可

②広報費

新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置など

※トラックや軽貨物の車体に取り付ける広告看板やカーラッピングなどにも利用可

③ウェブサイト関連費

ウェブサイトやECサイトなどの構築、更新、改修、開発、運用に係る経費

※集客から受注につながる自社サイトやリスティング広告などにも利用可

※ウェブサイト関連費のみでの補助金申請は不可

④展示会等出展費

展示会・商談会の出展料など

⑤旅費

販路開拓(展示会などの会場との往復を含む)などを行うための旅費

⑥開発費

新商品の試作品開発などに伴う経費

⑦資料購入費

補助事業に関連する資料・図書など

⑧借料

機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)

⑨設備処分費

新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分など

⑩委託・外注費

車両や店舗の改装など自社では実施困難な業務を第3者に依頼(契約必須)

※小規模事業者持続化補助金の公式サイト「小規模事業者持続化補助金のガイドブック」を参考に株式会社SoLaboが作成

たとえば、ストレッチャー移送が可能なタクシー会社が、医療機関や老人施設に認知を広めるためのパンフレットを作成・配置した事例があります。その結果、福祉・医療関係者との人脈ネットワークが構築され、受注件数が伸び、新たな福祉助成事業の契約も成立しました。

 また、企業対企業の配送業者が、レンタルトラックとプロドライバーによる運転サービスを組み合わせた「レントラ便」を企画・開発した事例もあります。ECサイトや新配車システムの構築にも取り組んだ結果、売上高は毎年前年比+1015%増で維持し続けています。

 小規模事業者持続化補助金には、補助事業に対応できる10種類の対象経費項目があり、活用例もさまざまです。事業者が計画している取り組みは、どの経費項目が利用できるのか、活用例も参考にしながら考えましょう。

車両は補助金の対象ではないため経費として申請できない

軽貨物車やタクシーとして利用するための車両などは、小規模事業者持続化補助金の対象経費として認められません。補助事業の計画を立てる際は、補助金の対象にならないものもあるため、確認しておきましょう。

【機材装置等費の対象とならない経費の一例】

・自動車等車両(ブルトーザーやパワーショベルなどは対象になる)

・自転車・パソコン・事務用プリンター・タブレット・WEBカメラ・PC周辺機器・テレビ・電話機・その他汎用性が高く目的外使用になりえるもの

※小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領をもとに株式会社SoLaboが作成

たとえば、小規模事業者持続化補助金の公募要領によると、汎用性が高く目的外使用になりえるものについては対象外と明記されているため、車両やドライブレコーダーなどの車載機器も対象外です。

小規模事業者持続化補助金で運送業に関する経費を申請する際、車両やドライブレコーダー、カーナビなどは補助金の対象外です。汎用性が高く、日常使用もできそうなものは補助対象にならないことを留意しておきましょう。

なお、対象となる経費の例と対象とならない経費の例は、小規模事業者持続化補助金の公募要領で確認できます。車両を経費として申請しようと考えていた人は、車両や汎用性の高いものは避けた補助金の対象経費を使用し、事業計画を検討し直しましょう。

当メディアを運営する株式会社SoLaboは国が認める認定支援機関で、現在公募されている補助金の申請支援を行っています。補助金の対象となるか、申請できる経費にはどのようなものがあるか等を知りたい人は下記無料診断フォームより診断してください。

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小規模事業者持続化補助金の補助上限額は最高で250万円

小規模事業者持続化補助金で申請者が受け取れる補助上限金額は、最高で250万円です。

【小規模事業者持続化補助金の補助率と補助上限額】

一般型

通常枠

特別枠

申請枠

通常枠

賃金引上げ枠

卒業枠

後継者支援枠

創業枠

補助率

2/3

2/3

赤字事業者は3/4

2/3

補助上限額

50万円

200万円

インボイス特例※

50万円

※インボイス特例は、免税事業者であった事業者が、適格請求書(インボイス)発行事業者へ転換した際に受けられる特例であり、適用された場合は50万円が上乗せされる

※小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領をもとに株式会社SoLaboが作成

たとえば、補助上限額が50万円の通常枠にインボイス特例が適用された場合の補助上限額は100万円になります。また、補助上限額が200万円の特別枠にインボイス特例が適用された場合の補助上限額は250万円となります。

小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、最高で250万円ですが、実際に受けられる補助金額は申請者の条件によって違ってきます。補助金を申請する際は、5種類の申請枠の中から1つの枠を選んで申請することになるため、申請枠についても把握しておきましょう。

小規模事業者補助金の申請枠は全部で5種類ある

小規模事業者持続化補助金の申請枠は、通常枠と4種類の特別枠を合わせて全部で5種類の申請枠があります。申請する際には、申請枠ごとの要件を把握し、自社はどの枠の要件を満たしているのか確認してみましょう。 

【小規模事業者持続化補助金の申請枠】

 

申請枠

概要

通常枠

通常枠

小規模事業者自らが作成した経営計画に基づき、商工会や商工会議所の支援を受けながら行う販路開拓などの取り組みを支援

特別枠

賃金引上げ枠

販路開拓の取り組みに加え、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上である小規模事業者

※赤字事業者は補助率3/4に引き上げ加点を実施

卒業枠

販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業

員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者

後継者支援枠

販路開拓の取り組みに加え、アトツギ甲子園においてファイナリ

ストに選ばれた小規模事業者

創業枠

産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業の支援」を受け、販路開拓に取り組む創業した小規模事業者

※小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領をもとに株式会社SoLaboが作成

たとえば、賃金引上げ枠の場合は、通常枠の要件に加えて事業場内最低賃金が地域の最低賃金より+30円以上である事業者が申請できます。また、賃金引上げ枠のみ、赤字事業者は補助率が3/4に引き上げられ、加点による優先採択が実施されます。

小規模事業者持続化補助金を申請する際、申請者は5つの申請枠の中から要件を満たす1つの枠を選び申請します。各申請枠の詳しい要件は、公募要領 で確認し、注意点などは事前に把握しておきましょう。

運送業の場合は従業員数20人以下の小規模事業者が補助金の対象者である

小規模事業者持続化補助金の対象者の要件の1つとして、まず小規模事業者である必要があります。また、小規模事業者の定義は、業種別に従業員の数で決められています。運送業の対象業種は、製造業その他です。そのため、小規模事業者と判断される「常時使用する従業員の数」は20人以下です。

【小規模事業者の定義】

業種

従業員数

商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)

常時使用する従業員の数 5人以下

サービス業のうち宿泊業・娯楽業

常時使用する従業員の数 20人以下

製造業その他

常時使用する従業員の数 20人以下

※小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領をもとに株式会社SoLaboが作成

小規模事業者持続化補助金の対象者の要件として、運送業の場合は常時使用する従業員の数が20人以下である必要があります。たとえば、ドライバーの正社員10人、経理のパートタイム労働者5人の場合、常時使用する従業員の数は10人なので補助金の対象です。

常時使用する従業員には、従業員との兼務役員や所定の期間を超えて引き続き雇用されているパートタイム労働者なども含まれます。また、申請者の所得や過去の補助金利用状況などに関する要件も定められているため、申請する際には公募要領を確認しましょう。

申請者の要件に関する情報は、「小規模事業者持続化補助金の対象者と対象事業を解説」も参考にしてみてください。

申請する際は商工会または商工会議所の支援を受けながら進める

小規模事業者持続化補助金の申請を行う際は、必ず地域の商工会または商工会議所の支援を受けながら手続きを進めましょう。小規模事業者持続化補助金の申請には、商工会や商工会議所を通して必要書類を取り揃える必要があるからです。

【申請手順の一例】

① 申請方法を電子申請にする場合は、GビズIDプライムアカウントの申請・取得

② 「経営計画書兼補助事業計画書」と「補助事業計画書」を作成

③ 作成した書類の写しを商工会または商工会議所に提出し、「事業支援計画書」の作成を依頼する

④ その他の書類(小規模持続化補助金事業にかかる申請書、補助金交付申請書、宣誓・同意書、その他申請枠や申請条件によって必要な書類)を記入

⑤ 後日作成の終わった事業支援計画書を受け取り、②④の必要書類と共に事務局へ提出する

※株式会社SoLabo作成

たとえば、補助金の必要書類の1つに「事業支援計画書」があります。事業支援計画書は、申請者が作成した「経営計画書」や「補助事業計画書」を商工会または商工会議所に提出してから作成を依頼する書類です。

また、経営計画書や補助事業計画書は、補助金の採択審査において審査される書類であり、明確で説得力のある内容を作成する必要があります。商工会の担当者は、経営計画書や補助事業計画書の作成におけるアドバイスも行っているため、支援を受けると良いでしょう。

なお、補助金の申請を郵送で行うことは可能ですが、審査の減点対象となるため、できる限り電子申請で行いましょう。電子申請の際には、GビズIDプライムアカウントを取得しておく必要があります。GビズIDの詳しい情報は、デジタル庁のgBizIDで確認できます。

ガソリン高騰の事情で加点審査が有利になる可能性がある

小規模事業者持続化補助金は、「書面審査」と「政策加点審査」による加点方式の採択審査が行われます。そのうちの政策加点審査では、申請者の取り組む事業内容や、置かれた事業環境に対して加点されます。

【政策加点審査の概要】

加点項目

概要

パワーアップ型加点

・地域資源型

地域資源等を活用し、地域外への販売や新規事業のたち上げを行う計画に加点

・地域コミュニティ型

地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供し、地域内の需要喚起を目的とした取組等を行う計画に加点

赤字賃上げ加点

賃金引上げ枠に申請する事業者のうち、赤字である事業者に対して加点

経営力向上計画加点

中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業者に対して加点

事業承継加点

代表者の年齢が満60歳以上の事業者で、かつ、後継者候補が補助事業を中心になって行う場合に加点

東日本大震災加点

福島第一原子力発電所による被害を受けた水産加工業者等に対して加点

過疎地域加点

 

過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に定める過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展につながる取り組みを行う事業者に対して、加点

事業環境変化加点

ウクライナ情勢や原油価格、LPガス価格等の高騰による影響を受けている事 業者に対して加点

※小規模事業者持続化補助金の公式サイト「小規模事業者持続化補助金のガイドブック」を参考に株式会社SoLaboが作成

運送業を行う事業者は、数年に及んだコロナ禍や、ウクライナ情勢による原油・ガソリン価格の高騰で、厳しい影響を受けてきました。そのため、政策加点審査の項目のひとつである「事業環境変化加点」を申請でき、採択審査を有利に進められる可能性があります

また、加点項目は1つでも多く申請できれば、その分が加点に繋がるため、事業内容や事業環境で該当する項目があれば、積極的に申請しましょう。加点についての詳しい情報は、「小規模事業者持続化補助金の加点について解説」も参考にしてみてください。

この記事のまとめ

小規模事業者持続化補助金は、運送業も利用できる補助金で、タクシーや軽貨物の事業者も対象です。補助金の対象経費には、全部で10種類のさまざまな経費項目があるため、自社の事業計画にはどの経費を利用できるのか、活用事例を参考にしながら考えましょう。

小規模事業者持続化補助金を申請する際は、5種類の申請枠の中から条件の合う1つの枠を選び申請します。補助上限額は、最高で250万円ですが、申請枠や補助率、インボイス特例の適用など、申請者の条件によって変わります。

近年新型コロナ感染症や、ガソリン高騰などの厳しい影響に直面してきた運送業の事業者は、小規模事業者持続化補助金の政策加点審査における「事業環境変化加点」を申請することができます。加点は多いほど採択審査が有利に運ぶ可能性があるため、積極的に申請しましょう。

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