小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費を解説
2024/07/16
2024/7/12
小規模事業者持続化補助金の利用を検討している人の中には、ウェブサイトに関する費用に補助金を活用したいと考える人はいるのではないでしょうか。小規模事業者や個人事業主向けの支援制度である小規模事業者持続化補助金はウェブサイト関連の費用にも活用が可能です。
当記事では、小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費を解説します。ウェブサイト関連費の対象となる経費や利用した事例も紹介するので、小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費について知りたい人は参考にしてみてください。
なお、当記事は小規模事業者持続化補助金の第16回公募要領をもとに作成しています。
ウェブサイト関連費は販路開拓につながるECサイト作成に利用できる
小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費は、販路開拓や業務効率化(生産性向上)につながるECサイト作成等に利用できます。小規模事業者持続化補助金に申請する際は、販路開拓や業務効率化のための事業計画を立てる必要があります。
経費 |
具体例 |
ウェブサイト等で使用するロゴデザイン費 |
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メルマガ、メールによる DM やチラシ |
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ホームページや動画字幕の翻訳 |
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インターネット広告運用の代行サービス |
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インターネット上で公開や利用するもの |
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電子看板に表示するコンテンツの作成費用 |
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広報動画の編集・制作費用 |
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ウェブアプリケーションの導入 |
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小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費は、販路開拓や業務効率化を行うウェブサイト制作関連の取り組みにかかる費用が対象です。インターネットを介したDMやウェブ広告の費用も、広報費ではなくウェブサイト関連費に該当します。
たとえば、ウェブサイト関連費となる経費例は、商品を販売するウェブサイトの立ち上げやホームページに掲載するバナー掲載にかかる費用等があります。他の企業が運営するインターネットショッピングモールに出品することや売上額等により変動する利用料は除く費用も補助対象です。
ただし、商品・サービスの宣伝が目的ではなく、単なる会社の営業活動に活用すると判断されるウェブサイトは補助対象外です。ほかにも、ウェブサイトに関連するコンサルティングやアドバイスを依頼する費用などは補助対象外となる点に留意しましょう。
ウェブサイト関連費が採択された事例
小規模持続化補助金のウェブサイト関連費を申請する場合は、過去に利用した事業者の事例を確認して自社の事業計画を立ててみましょう。過去にウェブサイト関連費が採択された事例を知ることで経費の活用方法等をイメージしやすくなり、事業計画をたてる際の参考にすることができます。
対象経費項目 |
事例 |
機械装置等費+ウェブサイト関連費 |
【取り組み内容】
【効果】
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展示会等出展費+ウェブサイト関連費 |
【取り組み内容】
【効果】
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新商品開発費+広報費+ウェブサイト関連費 |
【取り組み内容】
【効果】
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広報費+ウェブサイト関連費 |
【取り組み内容】
【効果】
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広報費+ウェブサイト関連費 |
【取り組み内容】
【効果】
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たとえば、「機械装置等費+ウェブサイト関連費」を組み合わせた事例では、体験教室の開設に向けた卓上研磨機の購入に加え、宣伝用のHPの立ち上げやDM配布に取り組みました。体験教室の開設により受講者の購買意欲を促進させ、DM配布などの広報活動によって集客⼒が向上し売上増加につながります。
また、「新商品開発費+広報費+ウェブサイト関連費」を組み合わせた事例では、チラシ配布による新商品のPRに加え、ホームページやSNS開設に取り組みました。チラシ配布やホームページ、SNSを見た新規顧客を獲得することができ、売上の増加につながります。
そして、「広報費+ウェブサイト関連費」を組み合わせた事例では、料理教室の動画を公開して海外の観光ガイドに広告掲載や予約システムを搭載したホームページ改良に取り組みました。メディアによる取材によって、認知度が向上し料理教室の動画を掲載することで信頼度の向上や売上増加につながります。
小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費を利用した例は、補助金制度の公式サイトにある採択者一覧で閲覧できます。また、「小規模事業者持続化補助金をホームページ制作に活用する方法を解説」の記事でもホームページ制作に利用した事例を紹介しているので参考にしてみてください。
ウェブサイト関連費を申請する時の注意点
小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費を申請する時の注意点を把握しておきましょう。注意点を把握せずに申請した場合、不採択または交付取消になる可能性があります。
【ウェブサイト関連費を申請する時の注意点】
- ウェブサイト関連費は単独で申請できない
- ウェブサイト関連費として利用できる金額は申請額の1/4まで
- 50万円以上のウェブサイトを作成する場合は一定期間サイトの処分ができない
ウェブサイト関連費を申請する時の注意点の1つ目は、ウェブサイト関連費は単独で申請できないことです。小規模事業者持続化補助金には10種類の対象経費項目が設けられていますが、ウェブ関連費と設備処分費は単独で申請することができないため、事業計画を立てる際は他の経費と組み合わせましょう。
また、ウェブサイト関連費を申請する時の注意点の2つ目は、ウェブサイト関連費として利用できる金額は申請した総額の1/4(最大50万円)までです。ウェブサイト関連費は他の経費項目と異なり、ウェブサイト関連費として申請できる金額の上限は決まっています。
そして、ウェブサイト関連費を申請する時の注意点の3つ目は、50万円以上のウェブサイトを作成する場合は一定期間サイトの処分等ができないことです。処分制限期間内にウェブサイトを処分する場合は、補助金事務局等の承認を受ける手続きが必要になります。
ウェブサイト関連費は単独で申請できない
小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費は単独で申請することはできません。申請した対象経費の項目が、ウェブサイト関連費のみであった場合は不採択となります。
補助対象経費 |
活用例 |
①機械装置等費 |
補助事業の実施に必要な製造機械の購入 等 |
②広報費 |
新サービスを紹介するチラシやパンフレット、ポスター作成・配布、看板の設置等 |
③ウェブサイト関連費 |
商品販売のホームページ制作、インターネット広告、ECサイト等の開発、構築、改修、運用にかかる経費等 |
④展示会等出展費 |
オンラインを含む展示会・商談会の出展や参加にかかる経費等 |
⑤旅費 |
補助事業に必要な原材料調達の調査等にかかる宿泊代、展示会等の会場の交通費 等 |
⑥新商品開発費 |
新商品の試作品開発等に伴う原材料やデザイン費用 等 |
⑦資料購入費 |
補助事業に関連する資料や書籍の購入費用 等 |
⑧借料 |
機器・設備等のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) 等 |
⑨設備処分費 |
新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備機器等を廃棄・処分 等 |
⑩委託・外注費 |
自社が実施できない補助事業の一部を外部に依頼する費用(契約は必須) |
小規模事業者持続化補助金の対象経費項目は10種類設けられていますが、ウェブサイト関連費のみによる申請は認められておらず、他の経費とともに申請することが条件のひとつです。ウェブサイト関連費を申請したい場合は、必ず他の対象経費項目と組み合わせる必要があります。
たとえば、ウェブサイト関連費を利用したい場合は、「広報費+ウェブサイト関連費」や「機械装置等費+ウェブサイト関連費」等の他の対象経費と合わせた事業計画を立てます。「機械装置等費+ウェブサイト関連費」の例では、厨房設備を導入してSNSなどで新メニューのPRを行った事業がありました。
なお、小規模事業者持続化補助金の対象経費項目にある設備処分費もウェブサイト関連費と同様に単独での申請はできません。ウェブサイト関連費を申請する場合、他の対象経費と組み合わせた取り組みを検討しましょう。
ウェブサイト関連費として利用できる金額は申請額の1/4まで
小規模事業者持続化補助金を申請する際に、ウェブサイト関連費として利用できる金額は申請した経費の総額の1/4(最大50万円)までです。ウェブサイト関連費の申請額の上限は、交付が確定したときの補助金総額の1/4までであることを留意しておきましょう。
申請枠 |
通常枠 |
特別枠 (賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠) |
補助率 |
2/3 |
2/3 (賃金引上げ枠へ申請する赤字事業者のみ3/4) |
補助上限額 |
50万円 |
200万円 |
補助上限額(インボイス特例適用時) |
100万円 |
250万円 |
ウェブサイト関連費の補助上限額 |
12.5万円
25万円 |
50万円 (インボイス特例適用時も同じ) |
通常枠(インボイス特例適用外)において、ウェブサイト関連費15万円と広報費45万円を申請した場合の計算例を解説します。
まずは、経費の金額に補助率を掛けて補助額を算出します。ウェブサイト関連費の計算式は「15万円×2/3(補助率)=10万円(申請額)」、広報費の計算式は「45万円×2/3=30万円」となり、各申請額の合計である40万円が申請経費の総額です。
つぎに、申請経費の総額として算出した金額と該当する申請枠に定められている補助上限額を比較します。算出した申請経費の総額が40万円、通常枠の補助上限額が50万円のため、金額の低い40万円が申請額となります。
なお、インボイス特例が適用された場合、通常枠のみウェブサイト関連費の上限額が変わります。インボイス特例適用時などの状況に応じたウェブサイト関連費の計算方法は「いくらもらえる?小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金額の関係性を解説」の記事を参考にしてみてください。
50万円以上のウェブサイトを作成する場合は一定期間サイトの処分ができない
ウェブサイト関連費では、50万円(税抜き)以上のウェブサイトを作成した場合は一定期間サイトの処分等ができません。50万円(税抜き)以上のウェブサイトは「処分制限財産」に該当し、補助事業等によって取得した財産は処分する際に補助金事務局等の承認を受ける必要があるためです。
補助事業が終了して補助金の支払いを受けた後であっても、取得日から5年間はウェブサイトの処分や譲渡等が制限されることがあります。処分制限期間内に財産を処分する場合には、補助金事務局等へ申請を行い承認を受けた後でなければ処分できません。
財産処分を行う際には、資産価値から算出される金額の返還のために、交付を受けた補助金のすべてまたは一部の返納が必要となる場合があります。補助金事務局等による承認を得ずにウェブサイトを処分した場合は交付規程違反となり、加算金が課された上で補助金の交付取消と補助金の返還が求められます。
なお、補助事業の実施に必要なホームページの改良や機能強化については、補助金事務局等の事前承認を要する処分行為に該当しません。ウェブサイトの処分に該当する行為は、補助事業目的外での使用や担保提供、廃棄等です。
ウェブサイト関連費の申請に関するQ&A
小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費を申請する際に、対象経費の区分や証拠書類に関して申請者がつまづきやすい点をQ&A形式にまとめました。ウェブサイト関連費の申請に関して気になることがある人は、Q&Aも参考にしてみてください。
質問 |
答え |
小規模事業者持続化補助金の対象者は小規模事業者のみですか? |
小規模事業者持続化補助金は小規模事業者と個人事業主等が対象となります。 |
ホームページ制作を外部に依頼する時の費用は「ウェブサイト関連費」と「委託・外注費」のどちらですか? |
ウェブサイト関連費に該当します。 |
システムの購入等にかかる費用はウェブサイト関連費ですか? |
ウェブサイト関連費です。ただし、販路開拓等のための特定業務用のソフトウェアの購入は機械装置等費で申請できます。 |
ホームページ等に求人情報を掲載した場合は補助対象になりますか? |
通常の営業活動にかかる経費と判断されるため、補助対象外となります。 |
ホームページ制作をした場合の成果物はホームページ画面を提出することは可能ですか? |
可能です。ホームページ画面のプリントまたは スクリーンショットデータとホームページのURLの記載が必要です。 |
補助事業期間内に公開しなかった動画やホームページは補助対象になりますか? |
期間内に取り組みが完了しなかったとみなされるため、補助対象とは認められません。 |
ホームページ制作を制作会社に依頼する場合の経費区分は「委託・外注費」ではなく、「ウェブサイト関連費」に該当します。小規模事業者持続化補助金に申請する場合は、公募要項の確認や商工会議所への問い合わせをして対象経費項目の記載ミスを防ぎましょう。
また、補助事業計画に記載したホームページ等が補助事業実施の期間内までに公開できなかった場合は、取り組みの完了と認められません。申請した経費すべてが対象外となり補助金を受け取れなくなるため、補助事業の実施期間内にホームページ等を公開できるかどうか事前に確認しなければなりません。
なお、小規模事業者持続化補助金は小規模事業者や個人事業主等が対象の補助金制度です。申請には対象経費や事業規模をはじめさまざまな要件を満たす必要があるため、小規模事業者持続化補助金への申請を検討している人は、公募要項を確認して自社が対象となるかどうかを確認しておきましょう。
この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費は、販路開拓につながるホームページを制作する費用などに利用することが可能です。業務効率化のためのソフトウェアなどもウェブサイト関連費に該当します。
ウェブサイト関連費には対象外となる経費もあるほか、用途に応じて申請する経費項目が変わる場合もあるため、公募要項にある対象経費の例をかならず確認しておきましょう。たとえば、ウェブサイトとチラシのどちらにも同じロゴを使用する場合は、ロゴデザイン費が広報費となる場合もあります。
ただし、小規模事業者持続化補助金を利用する場合は販路開拓や業務効率化等につながる取組でなければ、不採択になります。小規模事業者持続化補助金の利用を検討している小規模事業者や個人事業主は、販路開拓や業務効率化等につながるウェブサイト関連の費用の申請を行いましょう。