小規模事業者持続化補助金の対象となる旅費を解説
2024/06/20
2024/6/18
小規模事業者持続化補助金の利用を考えている人の中には、事業を実施する際にかかる宿泊費や交通費を経費として申請したい人もいますよね。小規模事業者持続化補助金では、条件を満たせば宿泊費や交通費などの「旅費」を補助対象経費として申請できる場合があります。
当記事では、小規模事業者持続化補助金における旅費について解説します。小規模事業者持続化補助金において、旅費の対象となる経費や受給できる金額を知りたい人は参考にしてみてください。
なお、当記事は小規模事業者持続化補助金<一般型>第14回〜16回受付締切回の公式サイトをもとに作成しています。
販路開拓のための旅費が補助対象となる
小規模事業者持続化補助金では、販路開拓のための旅費が補助対象となります。小規模事業者持続化補助金は小規模事業者の販路開拓を支援する制度であり、補助金の目的である販路開拓の取り組みへの必要性が認められた場合に限り、宿泊費や移動費などの経費を「旅費」として申請することが可能です。
たとえば、販路開拓を目的とした展示会への出展や新商品の生産に必要な原材料の調達などにともなう宿泊費と交通費は、旅費として申請できる可能性があります。また、新商品の生産に必要な原材料の調達や調査を行う際にかかる宿泊費や交通費などの費用は、旅費として申請できる可能性があります。
しかし、販路開拓を目的としない出張や、通常の営業活動とみなされる場合の費用は補助対象外となります。販路開拓にともなう出張等の必要性を証明するためには、出張旅費明細書(兼出張報告書)によってどのように新たな販路開拓につながったのかを報告しなければなりません。
なお、旅費として計上できるのは補助金の申請時に作成する「補助事業計画」に明記された出張にかかる経費のみです。補助事業計画において明記されていない出張にかかる経費は、販路開拓を目的とする場合でも補助対象外となる点に留意しましょう。
旅費の対象になる経費
販路開拓につながる出張にかかる経費の中でも、旅費としての申請が認められる経費には条件があります。小規模事業者持続化補助金において旅費の申請を検討している人は、どのような経費を補助対象として申請できるのかを確認しておきましょう。
【旅費の対象となる経費の具体例】
- 宿泊施設への宿泊代
- バス・電車賃
- 新幹線料金(指定席購入含む)
- 航空券代(燃油サーチャージ含む)※エコノミークラス分の料金まで
- 航空保険料
- 入国税
旅費の対象となる経費には、ホテルや旅館への宿泊代、公共交通機関の運賃、一部の空港諸税などが挙げられます。事業終了後の実績報告において、宿泊施設への宿泊や航空機への搭乗などを実際に行ったことがわかる請求書や領収書などの証拠書類の提出が必要です。
なお、海外出張にともなう旅費の場合、外国語で記載された証拠書類は日本語に翻訳および要約をしたものをあわせて提出する必要があります。証拠書類の翻訳や要約にかかる費用は、小規模事業者持続化補助金においては補助対象外となる点に留意しておきましょう。
旅費の対象にならない経費
販路開拓につながる出張にかかる経費の中でも、旅費としての申請が認められない経費があります。小規模事業者持続化補助金において旅費の申請を検討している人は、旅費の対象とならない経費も確認しておきましょう。
【旅費の対象にならない経費の具体例】
- 日当
- 車費(ガソリン代、駐車場代、高速道路通行料等)
- タクシー・レンタカー代
- グリーン車・ビジネスクラス等の付加料金分
- 宿泊プランに含まれる朝食・入浴料等の相当分
- パスポート取得料
- 国の助成制度を利用して支払われた経費(全国旅行支援等)
小規模事業者持続化補助金における旅費の対象となる移動費は、原則として公共交通機関の利用料のみです。ガソリン代やレンタカー代、高速道路の通行料などは公共交通機関の利用とはみなされないため、旅費として申請することはできません。
また、移動費は公共交通機関を利用した最も経済的かつ合理的な経路によって算出された実費を申請する必要があります。新幹線の利用時におけるグリーン車の料金や、航空機の利用時におけるビジネスクラスの料金など、付加料金にあたる分の経費は旅費として申請することはできません。
そして、小規模事業者持続化補助金は国が実施するその他の助成制度と併用が不可となっています。全国旅行支援などの国の助成制度を利用して支払いを行った経費は、小規模事業者持続化補助金を利用すると重複申請となるため、旅費として申請することはできません。
最大250万円の補助金を受給できる
小規模事業者持続化補助金の申請者は、申請の目的ごとに分けられた5つの申請枠からひとつの枠を選んで申請します。申請枠ごとに補助率と補助上限額が定められており、小規模事業者持続化補助金において最も高い場合の補助額は250万円となっています。
項目 |
通常枠 |
特別枠 (賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠) |
補助率 |
2/3 |
2/3 (賃金引上げ枠へ申請する赤字事業者は3/4) |
補助上限額 |
50万円 |
200万円 |
補助上限額 (インボイス特例適用時) |
100万円 |
250万円 |
参考:第 16 回公募要領(P.8)|小規模事業者持続化補助金
補助上限額が最も高い250万円となるのは、インボイス特例の要件を満たして特別枠へ申請する場合です。インボイス特例は免税事業者からインボイス発行事業者に転換する事業者を対象とする制度であり、申請枠の補助上限額が一律50万円上乗せされます。
小規模事業者持続化補助金において受給できる補助金額は「旅費を含む申請経費の総額」「補助率」「補助上限額」をもとに算出します。申請経費の総額に補助率を掛けた金額と補助上限額を比較して、いずれか低い方の金額を補助対象経費として申請することが可能です。
なお、受給できる補助金額の計算方法は「いくらもらえる?小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金額の関係性を解説」の記事でも解説しています。小規模事業者持続化補助金に申請した場合に、いくらの補助金を受け取れる可能性があるのかを知りたい人は参考にしてみてください。
宿泊費の上限額は宿泊先の地域によって異なる
旅費として申請できる宿泊費の上限額は、宿泊先の地域によって異なります。1泊あたりの上限額を超える部分は旅費として申請できず申請者の自己負担となるため、旅費を申請予定の人は宿泊先の地域の補助上限額を確認しておきましょう。
宿泊先 |
区分 |
上限額(円/泊) ※税抜き |
具体例 |
国内 |
甲地方 |
10,900 |
東京都特別区と横浜市、大阪市、福岡市等12の主要都市 |
乙地方 |
9,800 |
甲地方以外の地域 |
|
海外 |
指定都市 |
19,300 |
ニューヨーク、パリ、シンガポール等14都市 |
甲 |
16,100 |
北米、西欧、中近東 |
|
乙 |
12,900 |
東欧、東南アジア、韓国、香港、大洋州 |
|
丙 |
11,600 |
西南アジア、中国、台湾、中南米、アフリカ、南極等 |
国内旅費の区分は「甲地方」と「乙地方」の2種類です。甲地方には東京都特別区、横浜市、大阪市、福岡市など13の都市が指定されており、甲地方に指定されていない地域はすべて乙地方に該当します。
海外旅費の区分は「指定都市」「甲」「乙」「丙」の4種類です。海外旅費は原則として国ごとの区分となっていますが、ニューヨークやパリなど14の都市のみ「指定都市」としてほかの地域よりも上限額が高く設定されています。
なお、宿泊費の上限額に日当は含まれません。宿泊プランの中に朝食代や入浴料などが含まれている場合には、日当を除いた金額を申請しなければならないことに留意しましょう。
旅費の申請に関するQ&A
小規模事業者持続化補助金において旅費を申請する際、支払い方法や証拠書類に関する内容など申請者が気になりそうな点をQ&A形式にまとめました。旅費の申請に関して気になることがある人は、Q&Aをあわせて確認しておきましょう。
質問 |
回答 |
複数人で出張する場合は全員分の旅費が補助対象となりますか? |
申請できる人数に制限はなく旅費の総額として申請可能です。ただし、補助率や補助上限額は人数にかかわらず一律となります |
クーポンで支払った旅費は補助対象になりますか? |
クーポン適用分の支払いは対象とならず、現金で支払った分のみが補助対象となります |
ツアーのパック料金として支払ったため、1泊あたりの宿泊費がわかりません |
旅行代理店へ確認し、朝食代などを除いた1泊あたりの料金を報告してください |
銀行振り込みによる支払いができない場合はどうすればよいですか? |
旅費の場合、証拠書類等の提出により理由が妥当である場合は現金払いが認められることがあります |
航空券のeチケットは証拠書類になりますか? |
eチケット控えでは飛行機へ搭乗したことが確認できないため証拠書類として認められません。搭乗券の半券や搭乗証明書を提出してください |
従業員が立て替えた分の旅費も補助対象になりますか? |
補助対象になります。実績報告の際に以下のような証拠書類をあわせて提出してください
|
小規模事業者持続化補助金「補助事業の手引き(P.41)」等を参考に株式会社SoLaboが作成
小規模事業者持続化補助金では宿泊費や交通費などの「旅費」も補助対象となりますが、申請するためにはさまざまな条件があります。条件を満たせない場合には旅費を申請することができない可能性があるため、申請前には公募要領や補助事業の手引きを確認しておきましょう。
この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金では、販路開拓につながる出張等にかかる旅費が補助対象となります。展示会への出店や新商品の開発に必要な原材料の調達など、販路開拓のために必要であると認められる場合の宿泊費や交通費であれば、経費として申請できます。
小規模事業者持続化補助金における旅費の対象となるのは、宿泊施設への宿泊費や公共交通機関を利用した交通費、一部の航空諸税などです。ただし、交通費は最も経済的および合理的な経路で算出する必要があるため、グリーン車やビジネスクラス等の追加料金分は補助対象に含まれません。
小規模事業者持続化補助金では、旅費を含む申請経費のうち最大250万円が補助されます。申請枠ごとの補助率と補助上限額をもとに受給可能額を算出できますが、宿泊費においては別途1泊当たりの上限額が設定されているため、宿泊費を申請予定の人は宿泊先の1泊当たりの上限額も確認しておきましょう。