小規模事業者持続化補助金の委託・外注費を解説
2024/07/19
2024/7/19
小規模事業者持続化補助金の利用を検討している人の中には、委託・外注費はどのような取り組みに使える対象経費なのかわからない人がいるのではないでしょうか。また、委託・外注費を店舗改装や車の内装工事などに使えないか気になっている人もいますよね。
当記事では、小規模事業者持続化補助金の委託・外注費を解説します。委託・外注費の対象となる経費や利用した事例も紹介するので、小規模事業者持続化補助金の委託・外注費について知りたい人は参考にしてみてください。
なお、当記事は小規模事業者持続化補助金の第16回公募要領をもとに作成しています。
委託・外注費の対象となる経費
小規模事業者持続化補助金の委託・外注費は補助事業の遂行に必要な業務を外部に依頼する費用に利用できます。販路開拓や業務効率化につながる工事や既存の車の内装工事等を外部に依頼する際の費用などを、委託・外注費として申請することが可能です。
対象となる経費 |
具体例 |
販路開拓につながる工事費用 |
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業務効率化につながる工事費用 |
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専門家への相談費用 |
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委託・外注費では、販路開拓等につながる取り組みに必要な業務を外部に依頼する際の費用の一部が補助されます。経費として申請できるのは自社では実施することが難しい業務に限られるため、デザイン会社がデザインを外注するなどの自社が通常事業として実施している業務は対象となりません。
委託・外注費の対象経費となるには、委託内容や日付、金額等が詳細に記載された契約書等を締結し、委託する側の申請者に成果物等が帰属する必要があります。市場調査の実施にともなう謝礼等は委託する側の申請者に成果物等が帰属しないため、補助対象となりません。
なお、ウェブサイトやシステム開発等で外部に依頼する場合にかかる費用は「委託・外注費」ではなく「ウェブサイト関連費」に該当します。委託・外注費は、他の経費項目に該当しない経費が対象のため、公募要項を確認して対象経費の項目を間違えないように申請しましょう。
委託・外注費が採択された事例
過去に小規模事業者持続化補助金の委託・外注費を申請して採択された申請者の事例があります。どのような業務を外部に依頼して採択されたのかを確認して、事業計画を立てる際の参考にしてみてください。
業種 |
事例 |
小売業 |
【取り組み内容】
【効果】
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宿泊業 |
【取り組み内容】
【効果】
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飲食サービス業 |
【取り組み内容】
【効果】
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小売業 |
【取り組み内容】
【効果】
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飲食サービス業 |
【取り組み内容】
【効果】
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※太字は「委託・外注費」に該当する取り組み |
たとえば、花屋において、新商品作成の作業スペースと販売スペース拡充を目的に店舗改装を行ったことにより、作業効率の向上や来客数を増やすことに成功した事例があります。花用冷蔵庫を導入して、常時花がストックすることができ販売機会を逃すことなくロスを最小限に抑えられました。
また、ホテルにおいて、段差の大きい階段をスロープに変更し客室や浴室に手すりを設置したことにより、様々な顧客を受け入れやすくすることに成功した事例があります。宿泊施設をバリアフリー化にしたことで、新規顧客が増えリピート率が向上し売上増加につながりました。
そして、飲食店において、和式トイレを洋式に改修工事を実施し洗面台や照明器具もあわせて改修したことにより、利用客が使いやすい環境に整えることに成功した事例があります。チラシ配布したことで新規顧客が増加し、改修工事によって幅広い顧客層が利用できました。
なお、小規模事業者持続化補助金の公式サイト内にある採択者一覧では、補助金制度を利用した補助事業の閲覧が可能です。過去の採択事例には委託・外注費を利用したさまざまな補助事業があるため、どのような事業が補助対象となるのかを知りたい人は参考にしてみてください。
委託・外注費の対象外となる経費
小規模事業者持続化補助金の委託・外注費の対象外となる経費を把握しておきましょう。対象外の経費を申請しても委託・外注費として認められず、経費の大半が補助対象外の場合は不採択や採択取消になる可能性があります。
対象外となる経費 |
例 |
販路開拓や業務効率化に結びつかない工事 |
※設備処分費に該当するものは除く |
有償スペースの改装費用 |
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委託・外注費の対象外となる経費には、補助事業である販路開拓や業務効率化(生産性向上)に結びつかない工事が挙げられます。小規模事業者持続化補助金は販路開拓や業務効率化等につながる取り組みを支援する制度であり、住宅兼店舗の改装工事における住宅部分の解体工事等は対象外です。
また、委託・外注費の対象外となる経費には、有償レンタルなどを目的としたスペースの改装が挙げられます。補助金制度は、有償レンタルを目的としたスペースの改装にかかる費用や商品の生産費用等は補助対象経費として認めず、コワーキングスペース等の有償スペースの改装にかかる費用は申請できません。
なお、解体工事においては委託・外注費の対象外でも「設備処分費」として申請できる場合があります。解体工事にかかる費用を申請したいと考えている人は、「委託・外注費」または「設備処分費」に該当するかどうかを公募要領で確認しておきましょう。
委託する内容が不動産の取得に該当する場合は補助対象外
外部に委託する内容が建物の増築・増床や小規模な建物(物置等)の設置の場合、「不動産の取得」に該当する3つの要件すべてを満たすものは補助対象外です。「不動産の取得」に該当する3つの要件は、固定資産税の課税対象である「家屋」の認定基準を準用しています。
要件 |
概要 |
外気分断性 |
屋根および周壁(三方向以上壁で囲われている等)を持ち、独立して風雨をしのぐことができること ※周壁のないものは該当しない |
土地への定着性 |
基礎等で物理的に土地に固着していること ※簡易物置を乗せただけのものは該当しない |
用途性 |
建造物が居住・作業・貯蔵等の目的を有し、目的とする用途に活用できる一定の利用空間が形成されていること |
不動産の取得に該当する1つ目の要件は、屋根および周壁があり独立して風雨をしのぐことができることです。支柱と屋根材のみで作られた飲食店の屋外テラス席や駐輪場、カーポート等の周壁のないものは「外気分断性」と認められないことから不動産の取得には該当しません。
また、不動産の取得に該当する2つ目の要件は、基礎等で物理的に土地に固着していることです。コンクリートブロックの上に、簡易物置やコンテナを乗せただけのものは「土地への定着性」と認められないことから不動産の取得には該当しません。
そして、不動産の取得に該当する3つ目の要件は、建造物が家屋本来の目的を有していることです。家屋本来の目的である作業や居住などの用途に活用できる一定の利用空間が形成されていることが「用途性」に該当します。
建物の増築・増床や小規模な建物(コンテナ等)の設置を外部に委託する場合、「不動産の取得」にあたる3つの要件すべてに該当するものは補助対象外となります。外部に委託した内容が「不動産の取得」に該当するかどうかを確認したい場合は、商工会議所等の支援機関に問い合わせてみましょう。
委託・外注費の申請に関するQ&A
小規模事業者持続化補助金の委託・外注費を申請する際に申請者が疑問に思う可能性がある点をQ&A形式にまとめました。小規模事業者持続化補助金の委託・外注費の申請に関して気になることがある人はQ&Aを確認してみましょう。
質問 |
答え |
委託・外注費を申請する場合の必要書類はありますか? |
委託・外注した業務の実施内容が確認できる成果物等が必要です。実績報告の際に提出しましょう。 |
補助事業を実施する際に支払う方法は銀行振込のみでしょうか? |
支払い方法は原則銀行振込のみです。ただし、妥当性確認できれば他の支払いも認められる可能性もあります。 |
自社が開催するセミナーイベントで自社の役員を別の組織の講師として招く場合の委託費は補助対象ですか? |
人件費の付け替えと判断されるため、補助対象外です。 |
1件あたり50万円以上(税抜)の工事をした場合に必要な証拠書類はありますか? |
財産取得となるため、財産処分制限に該当し、実施報告時に「取得財産等管理明細表」の提出が必要です。 |
ポスティングやウェブサイト作成を外注した場合は委託・外注費でしょうか? |
ポスティングは広報費、ウェブサイト作成はウェブサイト関連費に該当します。 |
実施報告書の審査を行った結果、成果物が不足していることが多々あると公募要項に記載されていました。店舗改装を依頼した場合は、改装前・改装後の写真やインボイス制度対応のためのコンサルティングを受けた場合は、コンサルティング内容や成果が確認できる詳細な資料等を揃えておきましょう。
店舗改修の工事等で、1件あたり50万円以上(税抜)の工事を依頼した場合、財産取得となるため実施報告時に「取得財産等管理明細表」の提出が必要です。補助事業等によって取得した財産になるため、「処分制限財産」に該当し補助事業目的外での使用などの処分行為が制限される場合があります。
なお、小規模事業者持続化補助金は補助事業を実施後、実績報告書や支出ごとの証拠書類などにより補助金額が確定されます。「補助金交付決定通知書」に記載した交付金額より、実際に受け取る補助金が減額される場合や受け取れない恐れがあることに留意しておきましょう。
この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金の委託・外注費では、補助事業の実施に必要な業務を外部に依頼する際にかかる費用の一部が補助されます。委託・外注費として申請するには、対象経費項目として定められている10項目のうち委託・外注費のみに該当する経費でなければなりません。
また、個人事業主や会社自らが実施することが難しい業務に限られ、通常事業として実施している業務は対象外です。店舗改装やバリアフリー化工事など自社が実施できない販路開拓や業務効率化(生産性向上)につながる業務を委託しましょう。
「不動産の取得」に該当しなければ、飲食店の店舗改修等の店舗改装に利用できる場合があるため、委託・外注費の利用を検討してみましょう。小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者や個人事業主などの対象者となる要件以外にも申請するための条件がさまざまあるため公募要項の確認をしておきましょう。