小規模事業者持続化補助金における加点について解説
2024/04/10
2023/2/14
個人事業主や法人の中には、小規模事業者持続化補助金の申請を検討している人もいますよね。その際、採択審査における加点審査の内容や、そもそも加点とはどのようなものなのかと疑問に思う人もいるでしょう。
この記事では、小規模事業者持続化補助金における加点について解説します。採択審査の観点となる「基礎審査」「書面審査」「政策加点審査」それぞれの注意事項や要点についても説明していきますので、加点について知りたい人は参考にしてみて下さい。
なお、当記事は小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領をもとに作成しています。
小規模事業者持続化補助金は加点方式で審査される
小規模事業者持続化補助金(以下:持続化補助金)は、書面審査と政策加点審査の2つの項目で加点審査が行われます。
加点審査とは、何か加算する要素があればあるだけ評価が上がる審査方法です。そのため、加算する要素を一つでも多く取り入れることが、審査を有利に進めることに繋がります。
【持続化補助金における審査の観点】
出典:補助金ガイド
持続化補助金では、書面審査は必須の審査として設定されています。そのため、書面審査で審査される経営計画書や補助事業計画書を作成する場合は、審査項目の要素を取り入れ、明確で説得力のある書類を作成する必要があります。
また、政策加点審査は任意の審査として設定されています。「重点政策加点」の項目の中から1つと、「政策加点」の項目の中から1つ、合計2つまでの加点を申請することができ、申請できた分だけ高い評価が得られます。
持続化補助金では書面審査と政策加点審査の2つの項目が加点審査されるため、申請者には、審査項目を反映させて加点を多く取り入れることが求められます。申請の事前に、書面審査と政策加点審査の項目を確認し、理解を深めておきましょう。
なお、持続化補助金の採択審査には「基礎審査」「書面審査」「政策加点審査」の3項目があります。基礎審査は申請要件にあたるため、要件を満たしていない場合は審査の対象外になります。
持続化補助金の申請を検討している人は、基礎審査の要件を全て満たしたうえで加点審査に臨みましょう。持続化補助金の基礎審査の詳細を確認したい人は「小規模事業者持続化補助金の審査基準と不採択になる理由を解説」も参考にしてみて下さい。
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無料診断書面審査では加点の対象となる内容をおさえ反映させる
書面審査では、加点項目の内容を経営計画書や補助事業計画書に反映させましょう。書面審査では、経営計画書や補助事業計画書の内容が審査されるためです。
【持続化補助金における書面審査の審査項目】 |
①自社の経営分析の妥当性 ②経営方針、目標と今後のプランの適切性 ③補助事業計画の有効性 ④積算の透明、適切性 |
※小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成
たとえば、「経営方針や目標、今後のプランの適切性」の項目では、自社の強みや対象となる市場の特性を踏まえた内容であるかという観点で評価されます。そのため、商品・サービスが他社に比べて優れている点や数字の目標などを記載することが審査の評価に繋がります。
また、経営計画書には、写真や図・表などを加えることも可能です。経営計画書を作成する際には、写真や図・表などを取り入れ、明確で説得力のある書類を作成してみましょう。
書面審査では、経営計画書や補助事業計画書の内容が審査されます。そのため、 必ず審査項目に沿った要素を反映させ、明確で説得力のある内容を作成しましょう。
重点政策加点と政策加点の中から対象となる加点を確認する
持続化補助金の政策加点審査で申請できる加点は、「重点政策加点」と「政策加点」に分けられています。さらに重点政策加点には4種類、政策加点には5種類の項目が用意されています。申請する際は、重点政策加点、政策加点からそれぞれ1つずつ、合計2つまで申請可能です。
【持続化補助金における政策加点審査の加点項目】
加点項目 |
加点対象 | |
重点政策加点 |
赤字賃上げ加点 |
賃金引上げ枠に申請する事業者のうち赤字である事業者 |
事業環境変化加点 |
ウクライナ情勢や原油価格、LPガス価格 などの高騰で影響を受けている事業者 |
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東日本大震災加点 |
福島第一原子力発電所の影響を受け、避難 指示の対象となった地域の事業者、被害を 受けた水産加工業者 |
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くるみん・えるぼし加点 |
1. 次世代育成支援対策推進法(次世代法) に基づく「くるみん認定」を受けている事者 2. 女性の職業生活における活躍の推進に関 する法律(女性活躍推進法)に基づく 「えるぼし認定」を受けている事業者 |
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政策加点 |
パワーアップ型加点 |
・地域資源型 地域資源等を活用し、地域外への販売や 新規事業のたち上げを行う計画 ・地域コミュニティ型 地域の課題解決や暮らしの実需に応える サービスを提供し、地域内の需要喚起を 目的とした取組などを行う計画 |
経営力向上計画加点 |
中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上 計画」の認定を受けている事業者 |
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事業承継加点 |
年齢が満60歳以上となる代表者で、かつ、 後継者候補が補助事業を中心になって 行っている環境の事業者 |
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過疎地域加点 |
過疎地域の持続的発展の支援に関する 特別措置法に定める過疎地域に所在し、 地域経済の持続的発展につながる 取り組みを行う事業者 |
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一般事業主行動計画策定加点 |
1. 従業員100人以下の事業者で 2. 従業員100人以下の事業者で |
※小規模事業者持続化補助金の公式サイト「小規模事業者持続化補助金のガイドブック」を参考に株式会社SoLaboが作成
たとえば、重点政策加点の「事業環境変化加点」は、近年のウクライナ情勢による原油やLPガスの価格高騰で厳しい影響を受けた事業者に加点されます。また、政策加点の「パワーアップ型加点」は、地域の特化したものに着目し、事業計画に取り入れることで加点されます。
政策加点審査に申請する際は、重点政策加点と政策加点の項目と概要を理解し、該当する項目があれば積極的に申請し、加点を増やしましょう。その際、申請できるのは重点政策加点と政策加点の項目から1つずつです。3つ以上の申請は対象外となるため留意しておきましょう。
重点政策加点:事業環境変化加点
事業環境変化加点は、ウクライナ情勢や原油価格、LPガス価格等の高騰による影響を受けている事業者が申請できる加点項目です。
たとえば、原油価格の高騰により深刻な影響を受けているガソリンを利用する運送業や製造業などの事業者は事業環境変化加点の対象になります。
また、物価高騰により資材や材料などの仕入れ価格が高騰しているために影響を受けている商業、サービス業の事業者も加点の対象となる可能性があります 。
ウクライナ情勢や原油価格、LPガス価格等の高騰により、事業を行う上で厳しい影響を受けている事業者は、事業環境変化加点の申請を行いましょう。
重点政策加点:東日本大震災加点
東日本大震災加点は、東京電力福島第一原子力発電所の事故による影響を受け、現在も厳しい事業環境にある事業者に対して付与される加点項目です。
【東日本大震災加点の対象となる事業者と対象地域】
補助金対象となる事業者 |
対象地域 |
避難指示の対象となった福島県 12市町村に所在する事業者 |
田 村市、南相馬市、川俣町、広野町、 楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、 双葉町、浪江町、葛尾村及び飯舘村 |
風評影響を受けた太平洋沿岸部に 所在する水産仲介業者及び水産加工業者 |
北海道、青森県、岩手県、宮城県、 福島県、茨城県及び千葉県 |
※小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成
たとえば、東京電力福島第一原子量発電所の事故により避難指示の対象となった福島県12市町村に所在する事業者には、政策的観点から加点が付与されます。
また、ALPS処理水に伴う風評影響を克服するため、新たな販路開拓等に取り組む太平洋沿岸部に所在する水産仲介業者や水産加工業者も加点の対象となります。
東日本大震災の影響により厳しい環境の中でも新たな販路開拓に向けて前進している事業者には、政策的観点からの加点が行われます。対象となる地域、事業に該当する事業者は加点を申請しましょう。
重点政策加点:くるみん・えるぼし加点
くるみん・えるぼし加点は、「くるみん認定」または「えるぼし認定」を受けている事業者が申請できる加点項目です。
【くるみん認定とえるぼし認定の概要の一例】
くるみん認定 |
|
根拠となる法律 |
次世代法(次世代育成支援対策推進法) |
法律の目的 |
働き方の見直しに取り組み、 |
補助金の加点対象となる基準 |
子育てサポート企業であると |
えるぼし認定 |
|
根拠となる法律 |
女性活躍推進法 |
法律の目的 |
働きたいと考える全ての女性が、 |
補助金の加点対象となる基準 |
女性の活躍推進に向けた取り組みが |
たとえば、くるみん認定を受けるためには、「一定水準以上の育児休業取得」や「育児に伴う時短勤務制度の設置」などの要件を満たす必要があります。要件を満たした企業には、国の認定を受けた証である「くるみんマーク」が付与され、自社製品やHP、求人広告などに表示することができます。
「くるみん認定」や「えるぼし認定」を受け、子育てサポートや女性の活躍を推進する事業者は、くるみん・えるぼし加点の対象になります。申請の際は、「基準適合一般事業主通知書の写し」が必要になるため、準備しておきましょう。
くるみん認定・えるぼし認定に関する詳しい情報は厚生労働省の公式サイトで確認できます。
政策加点:パワーアップ型加点
パワーアップ型加点は、地域の発展を目的とした加点項目です。パワーアップ型加点には、「地域資源型」と「地域コミュニティ型」の2種類があります。
「地域資源型」は、地域資源等を活用し、地域外への販売や新規事業の立ち上げを行う計画を評価する加点です。たとえば、地域の特産品の果物を使ったアイスの開発とECサイトでの販売や、地域の伝統工芸品のもの作り体験施設の開設と広告宣費などが考えられます。
「地域コミュニティ型」は、地域内の課題解決や需要喚起を目的とした取り組みを行う計画を評価する加点です。たとえば、空き家問題に着目し、高齢者の雇用や憩いの場となる古民家カフェ、子育てサロンを開設するなども考えられます。
パワーアップ型加点は、地域の資源活用や地域コミュニティの課題解決に貢献するような事業計画に対して加点されます。加点の条件が事業計画のみであるため、比較的取り組みやすい加点項目です。申請を希望する人は、パワーアップ加点の要素を取り入れた補助事業計画書を作成し、加点を申請しましょう。
政策加点:経営力向上計画加点
経営力向上計画とは、中小企業庁による政策のひとつで、事業者が人材育成や設備投資などによって経営力を向上させるために策定する事業計画です。経営力向上計画の制度に申請し、認定された事業者は、税金の優遇や金融支援、法的支援などを受けることができます。
経営力向上計画の認定を受けている事業者は、経営力向上計画加点が付与されます。該当する人は、加点を申請しましょう。なお、経営力向上計画を申請する場合には、申請から認定までに約30日かかるため、申請を検討している人は早めに準備しておきましょう。
経営力向上計画の申請について詳しく知りたい人は、「経営力向上計画の申請の流れは?提出先はどこ?」も参考にしてみて下さい。
政策加点:事業承継加点
たとえば、満60歳以上の代表者と一緒に事業を営み、将来的にその事業を引き継ぐ予定の人がいる場合には、加点の対象になります。60歳以上の事業の代表者で、行う事業の後継ぎ候補がいる人は、事業承継加点の申請を検討してみましょう。
なお、事業承継加点の付与を希望する代表者の満年齢には、「基準日」が設けられています。満年齢の基準日について気になる人は、小規模事業者持続化補助金<一般型>の参考資料p9を確認してください。
政策加点:過疎地域加点
過疎地域加点は、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に定める地域に所在する事業者が対象の加点項目です。過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法とは、総務省が行う政策で、地域格差の是正や、美しい国土の形成に寄与することを目的としています。
北海道の小樽市や函館市、静岡県の伊豆市、沖縄県の宮古島市など、全国各地に存在します。
対象の地域において地域の持続的発展に繋がる取り組みを行う事業者を対象に加点が付与されるため、該当する人は加点を申請しましょう。
なお、対象となる地域については、総務省の「過疎地域市町村等一覧」で確認できます。
政策加点:一般事業主行動計画策定加点
一般事業主行動計画策定加点は、「女性の活躍推進企業データベース」もしくは「両立支援のひろば」において「一般事業主行動計画」を公表している事業者が対象となる加点です。
【一般事業主行動計画・女性の活躍推進企業データベース・両立支援のひろばの概要】
一般事業主行動計画 |
厚生労働省の制度の1つで、 |
女性の活躍推進企業データベース |
・厚生労働省の公式サイトの1つで、 ・企業が「女性活躍推進法」に基づき、「女性の活躍推進企業データベース」の中で、 |
両立支援のひろば |
・厚生労働省の公式サイトの1つで、企業の ・企業が「次世代法」に基づき、「両立支援のひろば」の中で、 |
たとえば「両立支援のひろば」では、企業の行動計画の一例として、「社員の育児休業取得状況」の公表が見られました。また、「女性の活躍推進企業データベース」では、「在宅勤務制度」や「育児短時間勤務制度」などの公表が見られました。
女性の活躍推進や子育て支援などに関する「一般事業主行動計画」を策定し、公表している事業者は、一般事業主行動計画策定加点に申請できます。行動計画は、厚生労働省の公式サイトである「女性の活躍推進企業データベース」または「両立支援のひろば」で公表することになります。
なお、重点政策加点の「くるみん・えるぼし加点」にも申請している場合、加点の内容が重複するため、重点政策加点のみが加点されます。そのため、可能であれば、政策加点の中の違う項目を申請し、重点政策加点と政策加点から1つずつ、合計2つの加点を申請できるようにしましょう。
無料診断ではどの加点項目に当てはまるかがわかります。これから小規模事業者持続化補助金の申請を検討している人はお試しください。
無料診断この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金の加点審査は、書面審査と政策加点審査で行われます。書面審査では、経営計画書や補助事業計画書の内容が加点審査されます。そのため、申請者は、審査項目に沿った要素を取り入れ、根拠と説得力のある書類の作成を求められます。
また、政策加点審査では、「重点政策加点」と「政策加点」の項目から1つずつ、合計2つまでの加点に申請することができます。加点の申請は任意ですが、加点の数が多ければ多いほど採択審査を有利に進められる可能性があるため、積極的に申請しましょう。