補助金ガイド

製造業もIT導入補助金を利用できる!対象のITツールや補助額も解説

2024/04/17

2023/10/10

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

製造業で使えるITツールを導入したい人の中には、ITツールの導入費用が高いことに課題を抱えている人もいますよね。その際「ITツールを導入する場合は、IT導入補助金がもらえる」と聞いたことがある人もいるでしょう。

当記事では、製造業がIT導入補助金を利用して導入できるITツールについて紹介します。また、採択事例や補助額も解説しているため、製造業でITツールの導入を考えている人は参考にしてみてください。

なお、この記事はIT導入補助金2024公式サイトの「資料ダウンロード」にある公募要領を元に作成しています。

中小企業や小規模事業者に該当する製造業が対象

中小企業や小規模事業者に該当する製造業が、IT導入補助金に申請できます。事業規模は、業種ごとの従業員数と資本金をもとに定められているため、製造業における中小企業と小規模事業者の定義を確認する必要があります。

【製造業の中小企業・小規模事業者の定義】

項目 従業員数
資本金
中小企業 ~300人
※ゴム製品製造業は~900人
~3億円
小規模事業者 ~20人

参考:「補助対象者」|IT導入補助金2024公式サイト

たとえば、金属の加工を行う「従業員100人」「資本金3千万円」の事業者は、中小企業に該当するため対象者です。また、機械部品を製造する「従業員15人」の事業者は、小規模事業者に該当します。

製造業の対象者は、事業規模が「従業員数300人以下」「資本金3億円以下」ですが、ゴム製品製造業に限り従業員数900人以下の事業者が対象です。IT導入補助金の申請を考えている人は、自社が中小企業または小規模事業者にあてはまることを確認しましょう。

ただし、中小企業や小規模事業者でも申請要件を満たしていない場合や対象外の事業者にあてはまる場合は、補助対象外になります。申請要件や対象外の事業者について知りたい人は「IT導入補助金で不採択になる理由を特定して改善する方法を解説」を参考にしてみてください。

導入できるITツールは生産性向上につながるもの

IT導入補助金で導入できるITツールは、生産性向上つながるものです。IT導入補助金は、ITツールを導入することにより働き方改革や被用者保険の適応拡大、インボイス導入など国の制度変更に対応していくための補助金だからです。

IT導入補助金は、申請する枠ごとに導入できるITツールの種類が異なります。

【枠ごとに導入できるITツール】

通常枠
対象ソフトの機能
導入できるソフトウェアの例
①顧客対応・販売支援
②決済・債権債務・資金回収
③供給・在庫・物流
④会計・財務・経営
⑤総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス
⑥業種固有プロセス
⑦汎用・自動化・分析ツール
Lstep
クラウドサイン
Shopify
マネーフォワード 会計
Kintone
freee人事労務
弥生会計
ジョブカン勤怠管理
インボイス枠(インボイス対応類型)
対象ソフトの機能
導入できるソフトウェアの例
  • 会計
  • 受発注
  • 決済
freee会計
マネーフォワードクラウド
まもる君クラウド
弥生販売
レジポン
セルフチェックインシステム
Shopify
インボイス枠(電子取引類型)
対象ソフトの機能
導入できるソフトウェアの例
  • 受発注
まもる君クラウド
弥生販売
セキュリティ対策推進枠
対象のITツール
導入できるITツールの例
  • セキュリティ強化サービス
異常の監視サービス
問題発生時の駆けつけサービス
問題発生時の保険

参考:「ITツール・IT導入支援事業者検索」|IT導入補助金2024公式サイト

通常枠は、補助対象経費に当てはまるソフトウェアの機能が、IT導入補助金の中で一番多い枠です。インボイス枠は、インボイス制度を見据えた枠のため、インボイスに対応しているソフトウェアを導入しましょう。

IT導入補助金を利用する際は、導入の目的に合わせて「通常枠」「インボイス枠」「セキュリティ対策推進枠」のいずれかを選択します。枠ごとに導入できるITツールや補助額などの条件が異なるため、交付申請の際は「資料ダウンロード」にある各枠の公募要領を確認してください。

通常枠は製造業に特化したソフトウェアを導入できる

通常枠では、製造業に特化したソフトウェアを導入できます。IT導入補助金の通常枠は、業種ごとの悩みを解決できる機能「⑥業種固有プロセス」を持つソフトウェアが補助対象経費に含まれているからです。

【製造業に特化した機能を持つソフトウェア】

商品名 概要

品質管理・統計的工程管理システム
QC&SPC ver7.5

  • 製造現場の測定データを自動取り込みができるため人的ミスを減らせる
  • データの統計をグラフ化できるため、改善を行う際の支援につながる
HPGL-Plot
  • カッティングマシンで曲線をスムーズにするシステムを設定できる
  • Windows向けのシステムで、社内の複数のPCから操作できる
AutoCAD
  • 2D作図や3Dモデリングなどの設計ができる
  • 設計データはシステム上で管理でき、Webやモバイルのアプリから操作できる

ConMas i-Reporter
クラウド版5ライセンス

  • 日報や在庫管理がPCやタブレット端末での管理ができる
  • リアルタイムで情報が共有され、現場との連絡や誤配送、転記などのミスを減らせる
外観検査AI
  • 写真撮影やヒートマップの機能で、製品の品質管理ができる
  • AIにNG画像や環境変化を学習させることで品質管理の精度を上げられる

参考:「ITツール・IT導入支援事業者検索」|IT導入補助金2024公式サイト

たとえば、製造業に特化したソフトウェアには、工場の機械を制御するシステムや、日々の製造データの蓄積と管理ができるシステムがあります。また、CADやCAMなどの、製造する商品の設計ができるソフトウェアの導入も可能です。

製造業に特化した機能を持つソフトウェアを導入したい場合は、通常枠に申請します。導入するソフトウェアの機能数によって、補助額が異なるため、通常枠に申請する人は「IT導入補助金2023の通常枠とは?対象となる要件も解説」を確認してみてください。

インボイス対応類型のみハードウェアを購入できる

インボイス対応類型では、パソコンやタブレットなどのハードウェアを購入できます。ハードウェアが対象になるのは「会計」「受発注」「決済」のソフトウェアを共に導入する場合に限ります。

【購入できるハードウェア】

  • パソコン
  • タブレット
  • プリンター
  • スキャナー
  • 複合機

たとえば、受発注ソフトを導入して企業間やり取りを行う場合は、受発注ソフトを利用するためのパソコンやタブレットを購入できます。見積書や受発注リストを印刷したい場合であれば、プリンターや複合機も補助対象です。

ハードウェアを購入したい人は「会計」「受発注」「決済」のソフトウェアを選択し、インボイス対応類型に申請します。導入できるハードウェアの種類や条件が知りたい人は「IT導入補助金でパソコンを購入できる?条件や購入手順を解説」を参考にしてみましょう。

製造業で過去に採択された事例を確認する

製造業でIT導入補助金に申請したい人は、過去に採択された事例を確認しましょう。採択事例を確認することで、実際に採択された企業の取り組みや、導入しているITツールなどの傾向を知ることができます。 

【製造業の採択事例】

会社の概要 導入したツール
ツール導入後の効果

精密加工板金や工作機械部品の制作
(従業員33人)

FX4クラウド
(会計ソフト)
会計事務所との紙ベースのやり取りに2ヶ月掛かっていたが、クラウド上でデータが共有できるソフトを導入したため1ヶ月まで短縮できた。

自転車部品の金属熱処理の加工
(従業員71人)

i-Reporter
(現場帳票システム)
WinActor
(RPAツール)
現場での帳表類を紙で管理していたため記入ミスや再入力の手間が掛かっていたが、ソフト導入による電子化や再入力作業の自動化ができ現場作業員の負担が軽減された。

参考:「ITツール活用事例」|IT導入補助金2024公式サイト

採択されている事業者は、自社の課題に対してITツールを導入し、人手不足の解消や業務の効率化を実現しています。IT導入補助金に申請する人は、自社の課題を明確にし、課題に合わせたITツールを導入しましょう。

課題を解決するためのITツールを導入する場合でも、申請要件を満たしていない場合や事業計画野不備などの理由で不採択になる可能性もあります。不採択になる理由が知りたい人は「IT導入補助金で不採択になる理由を特定して改善する方法を解説」を参考にしてみましょう。

受け取れる補助額は申請する枠ごとに異なる

IT導入補助金を利用した場合に受け取れる補助金は、申請する枠ごとに異なります。

【100万円のITツールに対して受け取れる補助額の例】

補助率
受け取れる補助額の例
通常枠
(補助上限額450万円)
1/2
受け取れる補助額:50万円
〈計算式〉
100万円×補助率1/2=50万円
セキュリティ対策推進枠
(補助上限額100万円)
1/2
受け取れる補助額:50万円
〈計算式〉
100万円×補助率1/2=50万円
インボイス対応類型
(補助上限額350万円)
3/4 ※1
(~50万円)

2/3
(50万円超〜350万円)
受け取れる補助額:約72万円
〈計算式〉
67/100万円×補助率3/4=50万円
33/100万円×補助率2/3=22万円
50万円+22万円=72万円
※ハードウェア(PC・タブレット等)
補助率1/2・補助上限額10万円
<20万円のPCを購入した場合>
20万円×補助率1/2=補助額10万円
電子取引類型
(補助上限額350万円)
2/3
受け取れる補助額:約67万円
<計算式>
100万円×補助率2/3=67万円
※1小規模事業者は4/5

参考:「補助対象について」|IT導入補助金2024公式サイト

たとえば、通常枠とセキュリティ対策推進枠は補助率1/2で計算できるため、100万円のソフトを導入した場合の補助金は最大で50万円です。ただし、補助額が上限を超える場合は、上限額までの補助となります。

また、インボイス対応類型は、ITツール導入費用が約67万円を境に、以下の場合は補助率3/4、超えた場合は補助率2/3で計算します。ソフトの導入費用によって補助率が上下するため、計算する際は「補助金シミュレーター」を利用してみましょう。

IT導入補助金では、枠ごとに導入できるITツールの種類だけでなく補助額や補助率も異なります。導入するITツールと申請する枠が決まったら、導入するITツールの補助額を計算してみましょう。

申請したい人はIT導入支援事業者に相談する

IT導入補助金に申請したい人は、IT導入支援事業者に相談しましょう。IT導入支援事業者とは、IT導入補助金の申請者に対して、ITツールの販売を認められたITベンダーやサービス事業者のことです。

【IT導入支援事業者に相談する理由】

  • ITツールは、IT導入支援者から購入する必要があるから
  • 申請者は、IT導入支援事業者と協力して交付申請を行う必要があるから
  • IT導入支援事業者は、依頼からITツール導入後の報告までトータルサポートをしてくれるから

IT導入補助金に申請する場合、ITツールの購入や必要書類の作成時にIT導入支援事業者への依頼が必要となります。また、申請に関する相談やアフターフォローも含めてIT導入補助金の一連の流れをサポートしてくれます。

導入するITツールと相談するIT導入支援事業者は「ITツール・IT導入支援事業者検索」で探せます。相談する際は、電話やメールでIT導入補助金に申請したい旨と、導入したいITツールを伝えましょう。

なお、相談するIT導入支援事業者を探した際に、複数のIT導入支援事業者が見つかる場合もあります。IT導入支援事業者の選び方がわからない人は「IT導入補助金のIT導入支援事業者とは?サポート内容や選び方を解説」の記事参考にしてください。

この記事のまとめ

製造業を営む事業者も、ITツール導入の際にIT導入補助金に申請し採択されると補助金を受け取ることが可能です。IT導入補助金は、枠ごとに導入できるITツールや補助金額が異なります。

製造業が導入できるITツールは、給与や在庫、会計などの全業種で導入できるソフト以外にも、製造業に特化したソフトも導入できます。導入したいITツールを見つけたらIT導入支援事業者に相談してみましょう。

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