インボイス制度への対応に使えるIT導入補助金を解説
2024/03/25
2023/1/31
インボイス制度への対応を考えている人の中には、IT導入補助金の活用を検討している人もいますよね。また、IT導入補助金はインボイス制度への対応において、どのように活用できるのか知りたい人もいるでしょう。
当記事は、インボイス制度への対応に使えるIT導入補助金を解説します。導入できるITツールや補助金額も解説するので、インボイス制度への対応を考えている人は、参考にしてみてください。
なお、当記事はIT導入補助金2024「公式サイト」をもとに作成しています。
目次
インボイス制度への対応に活用できる
IT導入補助金は、インボイス制度への対応に向けたITツールを導入する場合に活用できます。申請するには、目的ごとに区別された枠や自社の事業状況に合ったITツールを選択する必要があります。
【IT導入補助金の概要】
目的 | インボイス制度やDX化(※1)などの対応のためのITツールの導入 |
使える人 | 中小企業、小規模事業者、大企業(※2) |
できること | インボイス制度への対応、DX化、セキュリティ対策、地域のDX化 |
補助される経費 | 導入するソフトウェアやハードウェア (ハードウェアのみの導入は不可) |
補助される金額 | 通常枠:最大450万円以下 インボイス枠(インボイス対応類型):最大370万円以下(内ハードウェア20万以下) インボイス枠(電子取引類型):最大350万円 以下 セキュリティ対策推進枠:最大 100万円以下 複数社連携IT導入枠:最大3,200万円以下 |
補助金を受け取るために必要なこと | ・ITツールを導入して自社の課題解決につながる事業(補助事業) の計画を、IT導入支援事業者とともに策定する ・補助事業を実施する ・補助事業終了後に実績報告を行う など |
※1業務プロセスの改善やビジネスモデルの変更など ※2大企業はインボイス枠の電子取引類型のみが申請可能 |
参考:IT導入補助金2024「公式サイト」をもとに株式会社SoLaboが作成
IT導入補助金を活用することで、生産性向上のためのITツールやインボイス制度に対応したITツールの導入費用が、一部補助されます。
導入できるITツールの種類は、ソフトウェアやオプションおよびサービス、ハードウェアなどがあり、補助対象の経費や補助金額は申請する枠によって異なります。
インボイス制度の対応や、DXのためにITツールを導入したい企業は、IT導入補助金を活用して費用の負担を軽減できます。費用を抑えてITツールの導入をしたいと考えている人は、IT導入補助金の活用を検討してみてください。
なお、IT導入補助金は後払いの制度です。補助金を受け取れるのは、ITツールを導入した後であることに留意して申請を検討しましょう。
IT導入補助金は小規模事業者や大企業も使える
IT導入補助金は、個人事業主を含む小規模事業者や大企業も活用できます。枠ごとに申請の対象となる企業規模が異なるため、申請する枠を選ぶ際は、申請対象となる企業規模を確認しましょう。
【対応別に対象となる企業規模と枠】
やりたいこと | 申請対象となる企業規模 | 活用できる枠 |
インボイス制度への対応 | 中小企業 小規模事業者 大企業(インボイス枠の電子取引類型のみ) |
通常枠 インボイス枠 複数社連携IT導入枠 |
セキュリティ対策 | 中小企業 小規模事業者 |
セキュリティ対策推進枠 |
DX化 | 中小企業 小規模事業者 |
通常枠 複数社連携IT導入枠 |
地域のDX化 | 中小企業 小規模事業者 |
複数社連携IT導入枠 |
インボイス枠の電子取引類型は、枠の中で唯一、大企業も対象となります。
ただし、導入できるITツールはソフトウェアのみです。「複数社によるインボイス制度に対応したクラウド型のソフトウェアの導入」や「事業者間のデータ連携」などを考えている事業者は、IT導入補助金の活用を検討してみてください。
IT導入補助金における中小企業や小規模事業者の定義
IT導入補助金における中小企業や小規模事業者の定義は、業種によって異なります。
【補助対象となる中小企業】
業種 | 資本金・出資額 (以下) |
常時使用する従業員の数 (以下) |
①製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
②卸売業 | 1億円 | 100人 |
③サービス業 | 5,000万円 | 100人 |
④小売業 | 5,000万円 | 50人 |
⑤ゴム製品製造業 | 3億円 | 900人 |
⑥ソフトウェア業または 情報処理サービス業 |
3億円 | 300人 |
⑦旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
⑧その他の業種 (上記以外) |
3億円 | 300人 |
⑨医療法人と社会福祉法人 および学校法人 |
– | 300人 |
⑩商工会や都道府県連合 および商工会議所 |
– | 100人 |
⑪中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | – | 主たる業種に記載の従業員規模 |
⑫特別の法律によって設立された組合またはその連合会 | – | 主たる業種に記載の従業員規模 |
⑬一般と公益の財団法人と社団法人 | – | 主たる業種に記載の従業員規模 |
【補助対象となる小規模事業者】
業種 | 常時使用する従業員の数(以下) |
①商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人 |
②サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人 |
③製造業・その他業種 | 20人 |
参考:IT導入補助金2024「公式サイト>補助対象者」をもとに株式会社SoLaboが作成
IT導入補助金において、電子取引類型以外の枠は、中小企業や小規模事業者が対象となっています。
ただし、中小企業や小規模事業者であっても、大企業の傘下で実質的な経営を大企業が行っている場合は「みなし大企業」とされ、電子取引類型以外の枠では申請の対象外となります。
みなし大企業とは、発行済み株式や出資総額の1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業や小規模事業者のことをさします。
IT導入補助金に申請する際は、自社の企業規模を確認してから、目的にあわせて申請できる枠を選択しましょう。
枠ごとに導入できるITツールが異なる
IT導入補助金では、選択する枠によって導入できるITツールの種類が異なります。
【枠と導入できるITツールの例】
枠 | ITツールの概要 | 導入できるITツールの例 |
通常枠 |
以下の機能をもつソフトウェア ・顧客対応や販売管理・仕入や在庫管理 ・会計や財務管理 ・決済や資金回収管理 ・総務や人事、給与や労務管理など ・自動化や分析ツールなど |
①弥生販売24ネットワークwithSQL3ライセンス ・帳票のかんたん発行が可能 ・製造業、運輸業、情報サービス業向け ②マネーフォワード クラウド【パーソナルミニ】 ・e-Tax対応の個人事業主向けの確定申告ソフト ・製造業、農業や林業および漁業、建設や土木業向け ③POSシステム【poscube】 ・汎用タブレットとPCで実現する高機能なPOSシステム(ソフトウェアのみ) ・小売業、宿泊業、飲食業向け |
インボイス枠(インボイス対応類型) |
・会計や受発注、決済機能のあるインボイス制度に対応したソフトウェア |
①RAPID-M ・住宅建材向け販売・管理総合ソフト ・建設や土木業、製造業、小売業向け ②SMILE V2 販売 プレミアム_2023 ・販売や購買にかかわる業務全般を管理可能 ・卸売業向け ③生産革新Wun-jin SMILE V Air Model1 ・シンプルな生産販売管理システム ・販売管理をベースに工程管理や製造指図書発行などが可能 ・製造業向け |
インボイス枠(電子取引類型) |
・クラウド型の受発注システム(ソフトウェアのみ) ※クラウド利用料(最大2年分) |
①SmartOrder ・インボイス対応のクラウド型受発注システム ・契約や案件、見積もりや取引先情報の管理などが可能 ・製造業、農業や林業および漁業、建設や土木業向け ②ISS(Ingredient SupplyLink System) ・インボイス対応の受発注システム ・クラウド上で発注~請求確認、受注~請求書発行まで一括でできる ・製造業、飲食業向け |
セキュリティ対策推進枠 |
導入費用、サービス利用料(最大2年分) ※サイバーセキュリティお助け隊サービスリストに掲載しているITツール |
①PFUサイバーセキュリティPCみまもりパック ・PCセキュリティパッチ検査や駆けつけ対処支援あり ・サイバー保険も自動付帯 ②Cloud Edge運用支援 EasySOC Plusパック ・ネットワーク監視型サービス ・標的型攻撃やビジネスメール詐欺の脅威を低減 ・不審なサイトへのアクセスやウイルス感染時の遠隔操作の通信をブロック |
複数社連携IT導入枠 |
・インボイス枠(インボイス対応類型)で対象のITツール |
参考:IT導入補助金2024公式サイト「IT導入支援事業者・ITツール検索・複数社連携IT導入枠の公募要領」をもとに株式会社SoLaboが作成
通常枠やインボイス枠のインボイス対応類型では、インボイス制度に対応した会計ソフトや、販売および在庫管理、レジに導入できるPOSシステムなどを導入できます。対して、インボイス枠の電子取引類型は、インボイス対応の受発注システムがおもな導入対象となっています。
セキュリティ対策推進枠は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスをメインとしたITツールが導入できます。
複数社連携IT導入枠は、枠の中で唯一、事業にかかる事務費も補助対象になります。おもに導入するソフトウェアおよびハードウェア、補助事業にかかる事務費が一部補助されます。
ただし、ITツールは、IT導入支援事業者の提供しているITツールの中から選択する必要があります。IT導入支援事業者が扱っていないITツールは対象外となるため、導入するITツールを検討する際は、IT導入補助金2024の公式サイト「IT導入支援事業者・ITツール検索」から枠に合ったITツールを検索してみてください。
IT導入補助金における補助対象外の経費
IT導入補助金において、補助対象外になる経費やITツールには、中古品やリース契約したITツールなどが挙げられます。
【IT導入補助金における補助対象外の経費(通常枠とインボイス枠の場合)】
・中古品 |
参考:IT導入補助金2024「公式サイト」の各枠の公募要領をもとに株式会社SoLaboが作成
補助対象外となる経費は、枠によっても異なります。たとえば、複数社連携IT導入枠の場合、既存のソフトウェアに対するバージョンアップにかかる費用は補助対象外です。
また、全ての枠で、補助対象のITツールでも交付決定前に購入したITツールは補助対象外となるため、ITツールを導入する際は、交付決定通知を受け取ってから購入や契約を行いましょう。
導入するITツールによって補助金額の範囲や補助率が異なる
IT導入補助金では、導入するITツールの種類や企業規模などにより、補助金額の範囲や補助率が異なります。申請予定の人は、導入予定のITツールを洗い出し、経費や補助金額がいくらになるのかを確認しておきましょう。
【枠ごとの補助金額の範囲や補助率】
枠(補助対象) | 補助金額の範囲 | 補助率 |
通常枠 (ソフトウェア、オプション費用、サービス費用) |
①1プロセス(機能)以上 5万~150万円未満 ②4プロセス(機能) 150万~450万円以下 |
1/2以内 |
インボイス枠:インボイス対応類型 (ソフトウェア、オプション、サービス、ハードウェア) |
・ソフトウェア ①下限なし~50万円以下 ②50万超~350万円以下 ・ハードウェア ①PCやタブレット等:10万円以下 ②レジや券売機:20万円以下 |
・ソフトウェア ①3/4以内 ※小規模事業者は4/5 ②2/3以内 ・ハードウェア ①②ともに1/2以内 |
インボイス枠:電子取引類型 (受発注システム、最大2年分のクラウド利用料) |
(下限なし)~350万円以下 | ・中小企業や 小規模事業者等 2/3以内 ・その他事業者 1/2以内 |
セキュリティ対策推進枠 (ソフトウェアの導入費用、最大2年分のサービス利用料) |
5万~100万円以下 | 1/2以内 |
複数社連携IT導入枠 (受発注システム、最大2年分のクラウド利用料) |
・基盤導入経費(※1) 【ソフトウェア】 ①50万円以下×構成員数 ②50超~350万円以下×構成員数 【ハードウェア】 ①PCやタブレット等:10万円×構成員数 ②レジや券売機:20万円×構成員数 ・消費動向等分析経費(※1) 50万円以下×構成員数 ・その他経費 200万円以下もしくは補助率で計算した上限額(※2) |
・基盤導入経費 【ソフトウェア】 ①3/4以内 ※小規模事業者は4/5 ②2/3以内 【ハードウェア】 ①②ともに1/2以内 ・消費動向等分析経費 2/3以内 ・その他経費 2/3以内 |
※1基盤導入と消費動向分析は合計3,000万円が上限額 ※2上限額=(基盤導入経費と消費動向等分析費の合計額)×10%×2/3(補助率) |
参考:IT導入補助金2024の「公式サイト>補助対象について」をもとに株式会社SoLaboが作成
たとえば、インボイス対応類型の場合、小規模事業者が50万円の会計ソフトを購入した際は、4/5の40万円が補助されます。さらに20万円のレジを購入する場合は、1/2の10万円が補助されるため、補助金額は合計50万円となり、自己負担額は合計20万円です。
また、インボイス枠の電子取引類型の場合、中小企業がクラウド利用料150万円の受発注システムを導入した際は、2/3の100万円が補助されます。ただし、電子取引類型の場合、ハードウェアの導入費用は補助されないことに注意しましょう。
同じ枠でも、補助金額の範囲や導入できるITツールの種類が異なります。枠によっては企業規模で補助率が異なるため、枠を選択する際に補助金額の範囲や補助率も確認しておきましょう。
IT導入補助金への申請手順
申請者は、ITツールの選定や事業計画を策定する前に「gBizIDプライムアカウントの取得」「SECURITY ACTIONの実施」「みらデジ経営チェック」を済ませておきましょう。
【申請手順】
手順 | 詳細 |
① 該当する枠の概要を把握する |
・IT導入補助金2024の公式サイトや公募要領、交付申請の手引きなどを確認する |
②3つの申請要件を満たす |
・「gBizIDプライム」アカウントの取得 |
③ 導入するソフトウェアを探す |
・「IT導入支援事業者・ITツール検索」で自社の事業状況に合ったITツールやIT導入支援事業者を探す |
④ 導入するハードウェアを探す ※ハードウェアを導入する場合 |
・導入したいソフトウェアを取り扱うIT導入支援事業者に、取り扱っているハードウェアを確認する ※ハードウェアの種類は「IT導入支援事業者・ITツール検索」で検索できない |
⑤ IT導入支援事業者へ依頼して 交付申請の手続きを行う |
・導入したいITツールを取り扱うIT導入支援事業者と事業計画を作成し、交付申請の依頼をする |
参考:IT導入補助金2024の「公式サイト」をもとに株式会社SoLaboが作成
事業計画の策定や申請手続きは、IT導入支援事業者と進めていく必要があります。ITツールの選定の際に、IT導入支援事業者やソフトウェアを選択し、自社の課題解決につながる事業計画を作成します。
交付申請の際は、現在の事業の実態を確認するために、必要書類の提出も求められます。法人や個人事業主で必要書類の種類が異なるため、申請前に「IT導入補助金の必要書類を解説!書類の準備や注意点も紹介」を参考に、準備する書類の確認をしてみてください。
なお、当メディアを運営する株式会社SoLaboもIT導入支援事業者です。申請相談もできるため、IT導入補助金の申請を検討している人は、株式会社SoLaboにお問い合わせください。
この記事のまとめ
IT導入補助金は、インボイス制度への対応の際、ITツールを導入する場合に活用できる後払いの補助金です。中小企業だけでなく、個人事業主や大企業も利用可能です。
ITツールは、IT導入支援事業者が提供している中からITツールを選択します。枠によって導入できるITツールが異なるため、枠を選択する際は、導入できるITツールを取り扱っているIT導入支援事業者やITツールの補助金額を確認しておくことが望ましいです。
事業計画や申請手続きはIT導入支援事業者とともに進めます。申請者は、手続きを円滑に進められるように、あらかじめ申請要件を確認しておきましょう。