事業承継・引継ぎ補助金の必要書類を事業承継の類型別に解説

2024/07/04

2024/7/4

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

事業承継・引継ぎ補助金に申請したい人の中には、どんな必要書類を準備すればいいかと気になる人もいますよね。その際、具体的な書類名や入手方法を知りたい人もいるでしょう。

当記事では、事業承継・引継ぎ補助金の申請時に必要な書類を解説します。申請枠ごとの書類や事業形態別の書類も紹介するので、事業承継・引継ぎ補助金の必要書類の種類が知りたい人は、当記事を参考にしてみてください。

なお、当記事は事業承継・引継ぎ補助金の公式サイト(7次公募〜)にある各公募要領をもとに作成しています。

すべての申請者が提出する書類と該当者のみが提出する書類がある

必要書類には「すべての申請者」が提出する書類と「該当者のみ」が提出する書類があります。すべての申請者が提出する書類には「交付申請書」「類型別の書類」があり、該当者のみが提出する書類には「事業承継の類型ごとの書類」や「加点申請のための書類」があります。

【事業承継・引継ぎ補助金の必要書類】※10次公募では「専門家活用」のみ募集

申請枠

すべての申請者が提出する書類 

該当する申請者が提出する書類の例

経営革新

  • 交付申請書(別紙)
  • 認定経営革新等支援機関による確認書
  • 事業承継の類型別の書類
  • 補助率に関する要件充足を証明する書類
  • 「未来の承継」の要件充足を証明する書類
  • 「グループ申請」の必要書類
  • 資格要件充足を証明する書類
  • 賃上げ要件の充足意向を表明する書類
  • 加点事由への該当を証する書類

専門家活用

  • 交付申請書
  • 事業承継の類型別の書類
  • 補助率に関する要件充足を証明する書類
  • 加点事由への該当を証する書類

廃業・再チャレンジ

  • 交付申請書
  • 事業承継の類型別の書類

「再チャレンジ申請」の場合は①~③のいずれかを提出

①事業承継・引継ぎ支援センターから交付された支援依頼書の写し

②M&A 仲介業者や地域金融機関など M&A 支援機関との業務委託契約書の写し

③M&A マッチングサイトへの登録が完了したことを確認できる WEB ページまたは電子メールの写し

参考:公式サイト(7次公募〜)にある各種公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

経営革新枠へ申請する場合、すべての人が提出する書類は「交付申請書」と「認定経営革新等支援機関による確認書」です。該当する人のみが提出する書類には、グループ申請を行う場合に必要となる「出資関係図」や交付申請時に事業承継が完了していない場合に必要となる「経歴書、在籍証明書」などがあります。

また、専門家活用枠へ申請する場合、すべての人が提出する書類は「交付申請書」のみで、認定支援機関による確認書は必要ありません。該当する人のみが提出する書類には、補助率に関する要件を満たすことを証明する書類や、加点項目に該当することを証明する書類などがあります。

事業承継・引継ぎ補助金で全員必須の必要書類は「交付申請書」であり、その他の必要書類は状況によって異なります。該当者のみが提出する書類は、各申請枠の公募要領にある「該当する場合に必要な書類」の項目に記載されているので、確認してみましょう。

なお、当サイトを運営する株式会社SoLaboも認定支援機関として事業承継・引継ぎ補助金の申請サポートを行っています。事業承継・引継ぎ補助金の申請のために準備すべき書類や流れを知りたい人は下記よりお問い合わせください。

事業承継引継ぎ補助金は利用できる?無料診断

すべての申請者は交付申請書と類型別の書類を提出することになる

すべての申請者は、交付申請書と事業承継の類型別の書類を提出することになります。交付申請書には「GビズID」「担当者名」などの複数の項目を記載します。類型別の書類は事業者により異なるため、事業者は自社の「交付申請類型番号」を調べて自身がどの類型の書類を用意するのかを確認する必要があります。

【交付申請類型番号の調べ方】

①申請する枠の公募要領をパソコンで表示させる

②目次を見て、以下のページを表示させる

経営革新枠の場合:事業承継形態に係る区分整理
専門家活用枠の場合:経営資源引継ぎ形態に係る区分整理
廃業・再チャレンジの場合:廃業・再チャレンジに係る区分整理

③「承継者」「被承継者」の区分と「事業承継の形態」を照らし合わせ、交付申請類型番号を導き出す

【専門家活用枠における例(経営資源引継ぎ形態に係る区分整理)】

買い手支援類型(Ⅰ型)

対象者

引き継ぎ形態

交付申請類型番号

jGrants申請フォーム番号

実績報告類型番号

承継者

(法人)

株式譲渡

1

1

1

第三者割当増資

株式交換

吸収合併

2

吸収分割

3

事業譲渡

4

承継者

(個人事業主)

株式譲渡

2

2

1

第三者割当増資

事業譲渡

4

参考:専門家活用枠 公募要領(10次公募)|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、個人事業主が専門家活用枠に申請する場合、専門家活用枠の公募要領で「経営資源引継ぎ形態に係る区分整理」を確認します。承継者が個人事業主、事業承継の形態が株式譲渡、被承継者が法人の場合、交付申請類型番号とjGrants申請フォーム番号はいずれも「2」番となります。

交付申請類型番号やjGrants申請フォーム番号を確認すると、該当する事業者ごとに必要な書類が分かります。申請時に必要な類型別の必要書類は、公募要領の「必要書類」の説明ページにある交付申請類型番号をみて確認しましょう。

交付申請類型番号やjGrants申請フォーム番号から必要書類を確認する

交付申請番号およびjGrants申請フォーム番号を確認すると、申請時の必要書類が分かります。必要書類はそれぞれの申請枠のチェックリストで確認できるため、交付申請番号およびjGrants申請フォーム番号の確認後に公式サイトからチェックリストをダウンロードしてみましょう。

【必要書類チェックリストを使った必要書類の調べ方(一部抜粋)】

項目

J Grants申請フォーム番号

書類名

履歴事項全部証明書

直近の確定申告書

直近3期分の決算書

常時使用する従業員1名の労働条件通知書

営業利益低下に関する計算書

●:必須

○:該当必須

△:任意

-:不要

参考:公式サイト「必要書類チェックリスト」(専門家活用>交付申請手続き>各種資料)|事業承継・引継ぎ補助金

上記は専門家活用枠の必要書類チェックリストを一部抜粋したものです。交付申請類型番号およびjGrants申請フォーム番号が「1」の事業者の提出書類は「履歴事項全部証明書」「直近3期分の決算書」が必要だとわかります。

また、「常時使用する従業員1名の労働条件通知書」は要件に該当する人のみ提出が必須となる書類です。提出が必須となる要件はチェックリストの「補足」に記載されているため、自身が要件に該当するか確認しましょう。

必要チェックリストにある「j Grants申請フォーム番号」は「交付申請類型番号」と紐づいています。チェックリストを利用したい人は、各申請枠の「交付申請手続き」のページからダウンロードしてみてください。

該当者のみが提出する書類には補助率や加点で必要な書類がある

該当者のみが提出する書類には、補助率や加点など、状況に応じて必要な書類があります。該当者のみが提出する書類を用意すると、事業者は補助率の引き上げや審査に有利な加点に申請できます。

【要件に該当する事業者のみ必要書類を提出するケース】

  • 補助率引き上げ
  • 加点
  • 補助額上限の引き上げ(経営革新のみ)
  • 未来の承継(経営革新のみ)

たとえば、経営革新枠で補助額上限を800万円に引き上げたい場合、必要書類は「賃金引上げ計画の誓約書」「従業員への賃上げ計画の表明書」などの3点です。経営革新枠の必要書類チェックリスト内で「引上げ」の文字で検索をすると、必要な書類名が表示されます。

また、経営革新枠で「未来の承継」をする場合の必要書類は「事業承継計画表」「事業承継計画表(骨子)」「補助事業の実施体制図」などの5点です。経営革新枠の必要書類チェックリスト内で「未来」の文字で検索すると、必要な書類名が表示されます。

該当者のみの必要書類を提出すると、必要書類を提出しない時よりも補助率や審査が有利になる可能性があります。該当者のみの必要書類は原則、添付書類としてデータで送付するため、ExcelやPDF形式などの公募要領で指示された形式で準備してみてください。 

加点を希望する場合の必要書類

事業承継・引継ぎ補助金で加点を希望する場合は、別途、必要な書類があります。加点とは、要件を満たすことで審査を有利にする基準です。加点の申請は任意ですが、加点に必要な書類を提出することにより審査が有利になる可能性があります。

【申請枠ごとの加点の条件と必要書類(一部抜粋)】

経営革新枠

加点の要件

必要書類

以下いずれかの適用を受けている

  • 「中小企業の会計に関する基本要領」
  • 「中小企業の会計に関する指針」

以下のいずれかを提出

  • 中小企業の会計に関する基本要領のチェックリスト
  • 中小企業の会計に関する指針チェックリスト

※いずれも顧問会計専門家印のあるもの

以下いずれかの認定を受けている

  • 「経営力向上計画」
  • 「経営革新計画」
  • 「先端設備等導入計画」

以下のいずれかを提出

  • (経営力向上計画)経営力向上計画の認定書および申請書類
  • (経営革新計画)承認書
  • (先端設備等導入計画)認定書

「地域おこし協力隊」として地方公共団体から委嘱を受けている

(※取組の実施地が当該地域(市区町村)であること)

  • 地域おこし協力隊員の身分証

専門家活用

加点の要件

必要書類

以下いずれかの適用を受けている

  • 「中小企業の会計に関する基本要領」
  • 「中小企業の会計に関する指針」

以下のいずれかを提出

  • 中小企業の会計に関する基本要領のチェックリスト
  • 中小企業の会計に関する指針のチェックリスト

※いずれも顧問会計専門家印のあるもの

以下いずれかの認定を受けている

  • 「経営力向上計画」
  • 「経営革新計画」
  • 「先端設備等導入計画」

以下のいずれかを提出

  • (経営力向上計画)経営力向上計画の認定書および申請書類
  • (経営革新計画)承認書
  • (先端設備等導入計画)認定書

「地域未来牽引企業」である

地域未来牽引企業の選考証

ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組みに該当している

基準適合一般事業主認定通知書の写し

※計画期間が有効であること

参考:公式サイト(7次公募〜)にある各種公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、経営革新枠の場合、加点の要件には「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていることが挙げられます。これらの加点を満たすためには、専門家印のある中小企業の会計に関する「チェックリスト」を提出します。

また、専門家活用枠の場合は、経営革新枠と同じ加点もあれば、異なる加点「地域未来契印企業であること」のような加点もあります。加点を希望する事業者は、専門家印のある中小企業の会計に関する「チェックリスト」や「地域未来牽引企業の選考証」などを提出します。

加点の必要書類は多ければ多いほど審査において有利になる可能性があるため加点の要件を満たせるものはないか確認してみましょう。また、複数の加点要件を満たしている事業者は、すべての加点の必要書類を提出しましょう。

補助率2/3を希望する場合は別の必要書類がある

事業承継・引継ぎ補助金において、規定の条件を満たす申請者は補助率が1/2から2/3に引き上げられます。補助率2/3への引き上げを希望する場合は申請時に追加書類が必要となるため、まず補助率2/3を満たす条件を満たしているかを確認したうえで各要件に合う必要書類を用意しましょう。

【補助率2/3への引き上げを希望する場合の必要書類】

事業名

条件

提出する書類

経営革新

以下のいずれか1点に該当すること

① 中小企業基本法等の小規模企業者

② 物価高等の影響により、営業利益率が低下している者

③ 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者

④ 中小企業活性化協議会等からの支援を受けている者

①の場合:
(法人の場合)直近期の法人事業概況説明書の写し
(個人事業主の場合)直近期の所得税青色申告決算書

②の場合:
(法人・個人事業主共通) 営業利益率低下に関する計算書
(法人)直近期および 2 期前の確定申告の基となる決算書
の損益計算書
(個人事業主)直近期および 2 期前の所得税青色申告決算書

③の場合:

(法人)直近期の、確定申告の基となる決算書の損益計算書

(個人事業主)税務署の受付印のある直近の確定申告書 Bと所得税青色申告決算書

④の場合:

交付申請時において再生事業者であることを証明する書類

専門家活用

※売り手支援類型(Ⅱ型)のみ

以下のいずれか1点に該当すること

① 物価高等の影響により、営業利益率が低下している者

② 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者

経営革新と同じ

廃業・再チャレンジ

なし

なし

参考:公式サイト(7次公募〜)にある各種公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、従業員20人以下の小規模事業者に該当する事業者の場合、経営革新枠へ申請すると補助率2/3が適用される可能性があります。その際、法人なら「直近期の法人事業概況説明書の写し」を、個人事業主なら「直近期の所得税青色申告決算書」を提出します。

ただし、小規模事業者廃業・再チャレンジから申請する場合はそれらの書類は必要ありません。廃業・再チャレンジ枠の補助率はもともと2/3となっているため、補助率2/3のために希望を出す必要がないためです。

事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠または専門家活用枠に申請する人は、条件を満たすことにより補助率2/3へ引き上げられる可能性があります。 補助率2/3の条件を満たしている場合は、必要書類を確認してjGrantsでの交付申請時に添付しましょう。

なお、当サイトを運営する株式会社SoLaboは認定支援機関として事業承継・引継ぎ補助金の申請サポートを行っています。事業承継・引継ぎ補助金の申請のために準備すべき書類や流れを知りたい人は下記よりお問い合わせください。

事業承継引継ぎ補助金は利用できる?無料診断

申請書は申請期間中に電子申請で提出する

事業承継・引継ぎ補助金の申請書は、申請期間中に電子申請で提出することで申請が受理される仕組みです。申請スケジュールは確定したものから順次公開されるため、事業承継・引継ぎ補助金に申請したい人はこまめに公式サイトを確認しましょう。

【10次公募のスケジュール】

項目

スケジュール

申請受付期間

2024年7月1日(月)~ 2024年7月31日(水)17:00まで

交付決定日

8月末~9月初頭(予定)

事業実施期間

交付決定日~2024年11月22日(金)

実績報告期間

2024年8月29日(木)~2024年11月25日(月)

補助金交付手続き

2024年12月中旬以降(予定)

参考:事業スケジュール(専門家活用)|事業承継・引継ぎ補助金

10次公募では申請受付期間が1ヶ月となっています。申請時の必要書類の中には準備に時間がかかるものもあるため、必要書類を確認して早めに用意しましょう。

なお、事業承継・引継ぎ補助金の交付決定(採択)を受けて補助事業を実施した場合、事業者は補助事業の終了後に実績報告書を提出することになります。実績報告書の必要書類について知りたい人は「事業承継引継ぎ補助金の実績報告とは?必要書類と注意点も解説」を参考にしてみてください。

まとめ

必要書類には「すべての申請者が提出する書類」と「該当者のみが提出する書類」があります。前者には「交付申請書」「申請枠ごとに必須となる書類」があり、後者には「加点」「補助率引上げ」「補助上限額の引き上げ」「未来の承継」などの書類があります。

事業承継・引継ぎ補助金への申請は電子申請「jGrants」で行うので、必要書類は「jGrants 上の申請フォーム」への入力やPDFの添付で提出します。その際、公式サイトから「必要チェックリスト」をダウンロードして確認をすると、申請時の書類ミスの防止に役立ちます。

事業承継・引継ぎ補助金の申請書は、申請期間中に電子申請で提出することで申請が受理される仕組みです。事業承継・引継ぎ補助金のスケジュールは確定したものから順次公表されていくので、事業承継・引継ぎ補助金に申請したい人はこまめに公式サイトの最新情報を確認しましょう。

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