補助金の申請手続きから受け取りまでの流れを解説 

2024/10/11

2024/10/11

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

国や自治体の補助金を使って事業を進めるには、申請から受け取りまでの手続きを理解しておくことが必要です。しかし、補助金の申請プロセスがわからずに、どこから始めれば良いのかと迷う人もいるのではないでしょうか?

当記事では、補助金の申請から受け取りまでの流れを解説します。申請に向けて準備することや、申請後に何をすれば良いかなどを順に解説するので、これから補助金を申請してみたいと考えている人は参考にしてみてください。

なお、補助金申請の流れは制度によって異なります。当記事で紹介する内容はあくまで傾向であるため、申請する補助金が決まった際は、公募要領の内容に沿って手続きを進めてください。

国や自治体の補助金を受けとるまでの流れ

国や自治体の補助金を受け取るためには、申請から受け取りまでの流れを理解しておきましょう。補助金に申請する際は、事前準備から交付までの流れを理解しておくことで、申請準備や申請後の補助事業への取組みがスムーズに進められます。 

【補助金を受け取るまでの流れ】

項目 期間の目安 内容

事前準備

1ヶ月~3ヶ月

・補助金の申請要件を満たしておく
・電子申請のアカウントを取得する

公募申請

1日~1週間 ・電子申請や郵送申請などの申請方法がある
・作成した事業計画書や申請書類を提出する

審査と採択

3ヶ月程度 ・申請内容に基づき審査が行われ、優秀な事業計画が採択される
・公式サイトにて採択者発表後、メールや郵送での採択通知が届く
交付申請と交付決定 1ヶ月程度 ・採択者は見積書や図面などを提出し、交付申請を行う
・事務局による交付申請内容の確認後、交付決定通知が届く

補助事業の開始

6ケ月~1年程度 ・交付決定後、事業計画に基づいた補助事業を開始する
・実績報告で必要となる領収書、発注書、納品書などを保管する

報告書の提出

1ヶ月程度 ・事業終了後に実績報告書を作成し、証ひょう(=証拠書類)とともに提出する
・証ひょう(領収書や発注書、購入商品の写真など)の整理がポイント

補助金交付

1ヶ月程度 ・報告書が承認され、最終的な支給額が決定される
・指定の銀行口座に補助金が交付される

まず事前準備として、申請要件の確認や電子申請に必要なアカウントの取得を行っておくと、申請手続きがスムーズに進みます。また、審査を受けて採択されたあとは「交付申請」の手続きを済ませなければ、補助事業を開始することができない点も留意しておく必要があります。

補助金を確実に受け取るためには、申請から交付までの各項目を理解し、適切に手続きを進めることが求められます。各段階のポイントをおさえ、全体の流れを把握しましょう。

補助金は申請してすぐに振り込まれるわけではありません。申請する補助金の事業実施期間などによっては交付までには1年以上かかることもあるため、留意しておいてください。

事前準備

補助金を申請する際は、事前準備が必要です。申請する補助金の要件を満たしておくことや必要書類を揃えておくことなど、事前準備が整っていなければ申請がスムーズに進まなくなる可能性があるためです。

【事前準備の項目例】

項目 内容
申請要件の確認 ・申請する補助金における「対象者の要件」を満たしているかを確認する
事業計画の作成 ・補助金で実施する事業の目的、内容、経費計画、効果などを明確にした計画を策定する
自己資金の確認 ・補助金ではカバーできない費用を賄うための資金を確認しておく
申請に必要な手続きの実行 ・電子申請用アカウントの取得(対象の補助金のみ)
・申請要件となる認定制度の取得(対象者のみ)

たとえば、申請する補助金の対象者の要件として、従業員数や資本金、年間売上高などの規定があり、規定を満たさない場合は申請することができません。さらに、申請する補助金によっては、政府が掲げる認定制度の取得も要件の1つとして取り入れている場合があります。

また、近年、補助金申請の手続きは「書類を郵送する方法」から「電子申請による手続き」が推奨される傾向になってきています。電子申請する際には、申請者専用のアカウントが必要となるため、事前に取得しておく必要があります。

要件の確認や提出書類の準備を整えることで、申請時の不備やトラブルを防ぎ、手続きをスムーズに進めることができます。事前に必要な材料を揃えてから補助金申請に臨みましょう。

なお、補助金は後払いであるため、まずは事業を実施するための自己資金が必要です。自己資金が不足している場合は、補助金を受け取るまでの補填として「つなぎ融資」を使える可能性があるため、検討してみてください。

つなぎ融資に関する詳細は「補助金におけるつなぎ融資とは?検討するときの確認事項を解説」の記事にて紹介しています。

公募申請

事業計画と必要書類が揃えられたら、公募申請の手続きを行います。補助金の申請書類は、抜け漏れや不備があると採択審査に進むことができないため、不備不足なく揃えることが重要です。

まずは申請する補助金の公募要領を確認し、事業計画を具体的に作成します。事業計画書には、事業の目的やゴール設定、具体的な進行スケジュール、期待される効果などを明確に記載します。

つぎに、申請書類に企業の基本情報や事業計画に基づく予算の概要などを正確に記入し、添付書類である納税証明書や決算書などを漏れなく添付します。また、申請手続きは提出期限に間に合わなければ審査対象外になるため、余裕を持って準備する必要があります。

公募申請のポイントは、具体的で説得力のある事業計画書を作成することと、必要書類を正確に準備することです。特に、申請から取得までに時間がかかる書類や電子申請用のアカウントなどは早めに準備しておきましょう。

審査と採択

提出書類の内容が認められ、補助金審査に通過することを「採択」といいます。採択審査では、必要書類に不備不足がないことに加えて、主に事業計画や経費計画の内容が重視されます。具体的でない計画や実行が難しい計画は、審査で評価されにくく、採択されません。

【審査の観点】

項目 観点
事実の目的・目標 事業の目的が明確で、達成すべき目標が現実的であるか
実行可能性 事業計画が実行可能であり、必要な手段や体制が整っているか
社会的意義・貢献度 事業が社会や地域にどのような貢献をするか、その意義や影響が評価されるか
事業の持続可能性 補助金終了後も事業が継続できるか、長期的に運営できる見通しがあるか
財務状況・資金計画 企業の財務状況が健全であり、事業に必要な資金計画が適切であるか
補助金の効果的な活用 補助金が適切に使用され、事業の成果を最大限に引き出すために効果的に活用されるか
実績・経験 企業のこれまでの事業運営や実績が信頼でき、過去の取り組みが事業に活かされるか
計画の具体性 事業計画が具体的であり、達成までのプロセスやステップが詳細に示されているか

審査では、事業の目標や進め方が現実的かどうかが確認されます。計画に無理があると、採択される可能性は低くなります。また、補助金の使い道が適切かどうかも評価されます。具体性に欠ける計画や実行が難しい計画は、評価が下がり、採択されにくくなります。

さらに、事業が将来的に利益を生み続け、長期的に運営できるかも評価のポイントとなります。短期間で終わる事業や成果が見込めない計画は、審査に通りにくい傾向があります。

補助金審査では、具体的かつ実行可能な事業計画が必要で、長期的な自立が求められます。事業計画や経営計画の作成が難しい場合は、専門家に相談することも検討してみましょう。

補助金に関する相談先を知りたい人は「補助金の相談は誰にする?相談する内容に合った相談先を解説」の記事も参考にしてみてください。

交付申請と交付決定

申請する補助金によっては、採択後に「交付申請」の手続きが必要です。採択が決定すれば交付決定通知が届く補助金もある一方で、交付申請が必要な補助金の場合は、採択されても規定の手続きを行わなければ交付決定とはならず補助事業を実施することができません。

交付申請では、事業の詳細や経費の根拠を示すための見積もりや図面などの必要書類を提出し、内容が認められると補助金事務局から「交付決定通知書」が届きます。

補助金に採択されたら、速やかに交付申請を行いましょう。また、補助金事務局から届く交付決定通知書に記載されている交付決定日以前に契約や購入を行った経費は補助金の対象外となるため、留意しておきましょう。

補助事業開始

交付決定通知書に記載された「交付決定日」から、補助事業を開始できます。申請する補助金によって、補助事業の期間や終了日が設定されているため、事業計画に沿った内容を期間内に実施する必要があります。

たとえば、店舗改装とお店のリニューアルを宣伝するチラシ作成の補助事業を行う場合、改装工事のスケジュールにあわせて進行状況を管理することが求められます。また、期間内に事業を終了させるためには、工事と同時進行でチラシのデザインや発注部数の調整なども行う必要があります。

補助事業開始後は、事業計画に従い、期間内に全ての作業を完了させることが重要です。さらに、納品書や領収書などの証ひょう類は、補助事業終了後の「実績報告」に必要となるため、紛失しないようにまとめて保管しておきましょう。

報告書の提出

補助事業が終了したら「実績報告書」を提出することになります。実績報告の際は、すべての申請経費における証ひょう(=証拠書類)を整理し、提出しなければなりません。証ひょうの不備不足がある経費に対しては、その分の補助金が給付されなくなる可能性があります。

【実績報告に提出する証ひょうの例】

証ひょう項目 概要
発注書 ・経費がどのように計画され、実行されたかを確認する
・発注内容、数量、金額、納品期限などが記載されたものを提出
領収書 ・購入した物品やサービスに対して支払った金額を証明する
・必ず金額や取引先の情報、日付が記載されたものを提出
請求書 ・取引先から発行される支払いを求める書類
・経費に関する支払い内容や金額、期日が記載されたものを提出
納品書 ・物品やサービスが納品されたことを証明する書類
・納品日や納品された物の詳細が記載されたものを提出
契約書 ・業者との間で結んだ契約内容を証明する書類
・特に工事やサービスの提供に関する契約書は、支払いの根拠として重要
見積書 ・事業計画に基づく費用見積もりを示す書類
・契約や実際の支払いが適正であることを示す補完的な証ひょうとして提出
取引明細書・振込明細書 ・支払いが行われたことを示す銀行取引の明細書
・特に振込で支払いを行った場合、取引が確実に行われた証拠として必要
工事写真や製品の写真 ・実際に補助事業が行われたことを視覚的に示すための資料
・特に工事や改装の場合、ビフォーアフターの写真などが効果的
労務費の証拠書類 ・労働者に支払った人件費を証明する書類
・給与明細や雇用契約書など、労働力に対して支払われた経費を確認する
旅費の領収書 ・事業活動に伴う電車代、タクシー代、宿泊費などの証拠として提出
・日付や場所が明確に記載されているものを提出
宿泊費や会議費の領収書 ・出張やイベントなどで発生した宿泊費や会議費に関する経費
・日付や場所が明確に記載されているものを提出

証ひょう類とは、購入した物品やサービスに関連する取引の証拠として提出される書類や資料のことで、発注書や納品書、領収書、画像などが該当します。

たとえば、導入済みシステムの稼働状況を証明するために、操作画面やシステム稼働画面のスクリーンショットを提出することもあります。

実績報告書を提出する際、証ひょう類に不備不足がある場合は、予定通りの補助金額を受け取れなくなる可能性があります。補助事業期間中は、証ひょう類を1か所にまとめて紛失しないように保管し、必要な写真撮影やデータ保存も忘れずに行いましょう。

補助金交付

補助金の交付とは、申請者の銀行口座に補助金が入金されることを示します。補助事業終了後の実績報告から補助金交付までの流れを確認しましょう。

補助金申請者が実績報告書を提出すると、補助金事務局が報告内容の確認を行い、問題がなければ「補助金額決定通知」が発行されます。

申請者はこの通知を受け取り次第「補助金支払い請求書」を提出します。請求手続きが完了すると、通常1ヶ月以内に指定した銀行口座に補助金が振り込まれます。

補助金事務局からの「補助金額決定通知」が届いたら、補助金請求の手続きを行いましょう。万が一、実績報告の内容に不備があり、事務局から再提出をも求められた場合は、その分補助金の交付が遅れてしまうため、速やかに対応しましょう。

採択は補助金申請のゴールではない

採択は補助金申請のゴールではなく、採択後の実施項目を着実に進めることが大切です。申請準備から採択審査までの期間は3ヶ月程度であることに対し、採択後から補助金の交付までの期間は6ヶ月から1年と長く、さまざまな提出書類や申請までの工程があるためです。

【採択後から補助事業完了までの流れ】

フェーズ 項目 注意点・ポイントなど
フェーズ①
採択から交付決定まで
・採択決定
・交付申請
・交付決定
・申請する補助金によって交付申請が必要な場合と不要な場合がある
・交付決定通知を受ける前の補助事業は対象外
フェーズ②
事業開始から実績報告まで
・補助事業実施
・補助事業終了
・実績報告
・補助事業期間を過ぎた経費は補助対象外
・証ひょうに不備不足がある場合は予定通りの補助金額を受け取れない可能性有

フェーズ③
確定検査から補助金入金まで

・確定検査
・補助金額決定
・補助金額請求
・補助金入金
・実績報告に不備があった場合は差戻しや補助金額の減額がある
フェーズ④
効果報告から補助事業完了まで
・効果報告
・補助事業完了
・補助事業終了後の効果を数年間にわたり事務局に報告する
・補助金で購入した50万円以上の資産は処分や転売の際、報告が必要

申請する補助金によっては、採択後に交付申請を行わなければ交付決定を受けられず、補助事業を実施できないことがあります。交付申請では、事業の詳細や経費の根拠を示すための見積もりや図面などを提出する必要があり、提出が遅くなるとその分事業の開始が遅れてしまいます。

交付決定のタイミングに関わらず、補助事業の実施期間は事前に決められているため、交付申請が遅くなると補助事業に取り組める期間が短くなります。たとえば、補助事業実施期間が6ケ月と定められている補助金で交付申請が2か月遅れた場合、補助事業を実施できる期間は4ヶ月となってしまいます。

補助金に申請して採択を受けても、その後の工程を進められないために補助金を辞退する事業者の事例があります。採択後の流れや、フェーズごとの必要事項を整理し、補助事業や諸手続きを効率よく進めていきましょう。

なお、補助金を受け取ったあとは、決められた期間に補助金事務局への定期的な効果報告が求められます。補助金受給者が効果報告に応じない場合は、補助金の返還を求められることもあるため、事業完了までの工程は規定通りに実施しましょう。

まとめ

補助金を申請する際は、申請から交付までの流れを理解しておくことで、申請手続きや実績報告などの工程をスムーズに進められるようになります。補助金申請の前には、申請要件の確認や電子申請のアカウント取得などの事前準備を整えておきましょう。

申請する補助金によっては、採択後に交付申請の手続きが必要な場合があります。交付申請を行い、補助金事務局からの交付決定通知を受けなければ補助事業を実施できないため、速やかに手続きを行いましょう。

補助金は、採択後の補助事業実施から実績報告までに期間を費やすことになります。補助事業を実施できる期間は補助金ごとに定められているため、期間内にすべての補助事業計画を終了させなければなりません。

補助事業実施後の実績報告では、すべての経費における証拠書類の提出が求められるため、あらかじめ経費ごとに整理してまとめておくことがポイントです。また、補助金交付後は、定められた年数の効果報告を行いましょう。

share!!

認定支援機関SoLaboが、
補助金申請を
サポートします。

使いたい補助金が決まっているので、

補助金診断をしたい!という方は、
ご利用希望の補助金の診断ボタンへ
お進みください。

補助金申請に関するご相談は
お電話でも受け付けております。

0120-188-117(受付:9:00~18:00)