日本人の食の選択肢に「ベーグル」を

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日本人の食の選択肢に「ベーグル」を

ZONO BAGEL 前薗 雄飛

PROFILE

ZONO BAGEL

前薗 雄飛

新卒から26年間、展示会主催会社に勤務し、事務局長として大規模プロジェクトを統括するキャリアを歩む 。2024年12月に、独学での試行錯誤を経て「日本人の食の選択肢にベーグルを入れる」というミッションを掲げ、蔵前にベーグル専門店「ZONO BAGEL」を創業。異業種からの挑戦ながら、26年のキャリアで培った緻密な戦略眼を武器に、天然酵母のベーグルとこだわりのコーヒーを提供。固定観念に縛られない店作りで、ベーグルの新しい価値を追求し続けている。

公式HP
office:
東京都台東区蔵前4-4-5

お話を伺ったのは、蔵前でベーグル専門店「ZONO BAGEL」を運営する前薗雄飛さん。26年間の会社員生活を経て、50歳を前に未経験の飲食業界へ。緻密なマーケティング視点と「日本人の食の選択肢を増やす」という高い志で、チェーン展開を見据える前薗さんの開業までの軌跡を辿ります。

「おにぎり・サンドイッチ」に並ぶ、第三の選択肢へ

― まずは、事業内容についてお聞かせください。
前薗氏:「日本人の食の選択肢にベーグルを入れる」ことをミッションに、ベーグルの製造・販売をしています。

今、お腹が空いた時に多くの人が思い浮かべるのはおにぎりやパン、サンドイッチですよね。そこに「ベーグル」という選択肢を当たり前に根付かせたいんです。

実は私自身、ベーグルに馴染みがあったわけではありません。でも、初めて本当に美味しいベーグルに出会った時の「なんだこれは!」という衝撃が忘れられなくて。

お客様からも、Googleの口コミなどで「これまで白米派だったけれど、ベーグルがこんなに美味しいとは知らなかった」といった嬉しいお声もいただいていて、強い手応えを感じています。

― どのような特長・こだわりがあるのでしょうか?
前薗氏:天然酵母を使用した生地作りと、固定観念に縛られないメニュー開発ですね。私は飲食業界の修行経験がないので、固定観念が一切ありません。

ベーグルって本当に自由で、何を挟んでも美味しいんです。チョコやフルーツといったデザート系から、ドライカレーやソーセージマスタードなどの食事系まで幅広くいけますから。スタッフとは頻繁にミーティングを行っていて、「これ、ベーグルに挟んだら面白いよね」なんて話しながら、自由な発想で新メニューを考案しています。

最近では「雨の日はコーヒー200円引き」などのイベントも始めました。当店の立地は、決して人通りが多いわけではありません。でも、魅力的な商品と仕掛けで「うちがここの人流を変えてやる」という気概で取り組んでいます。

― コーヒーにもこだわりがあるそうですね。
前薗氏:当店で販売しているコーヒーは「株式会社モリカワ」(和歌山県の、自社焙煎設備を持つ企業)に依頼して、ベーグルに合うように焙煎いただいています。

備長炭で炊いているから炭火の香りがして、とてもいい香りがするんですよ。

デザイナーの友人が地方創生もしていて、豊富な人脈を持っているのですが、その縁で「株式会社モリカワ」を紹介してくれて。実は、私は元々ブラックコーヒーは飲めなくて、砂糖とミルクを必ず入れていたのですが、モリカワさんの炭火のコーヒーを飲んだら、本当に美味しくて。良いコーヒーは苦いだけじゃなくて奥に甘さがあるんですよ。ブラックコーヒーに対する苦手意識が消えて、今ではコーヒーそのものを楽しめるようになりました。

ZONO BAGEL

100店舗を食べ歩き、見出した「物差しのない市場」

― 26年間、展示会主催会社にて事務局長を務めていらしたそうですが、なぜそこから、未経験の飲食業を始めようと思われたのですか?
前薗氏:経営者の親の背中を見て育ったので、元々「いつかは自分の事業を」という思いがありました。

親からは「まずは勤め人としての経験もあった方がいい」と言われたこともあり、新卒で展示会主催会社に入社したんです。

展示会の仕事って、メンバーと一緒に文化祭をやっている感じで、とても面白いんですよね。非常に充実していたこともあり、気付いたら26年勤めていました。でも、50歳を前に元々抱いていた「自分で事業を行うこと」に挑戦したいという思いが強くなったんです。

「じゃあ、何の業種で起業しようか?」と考えた時に、これまで行ってきたBtoBではなく、”お客様の笑顔が直接見える”BtoCで勝負したいと考え、「それなら食だな」と思い至ったんです。

― 数ある食べ物の中から「ベーグル」を選んだ理由は何だったのでしょう?
前薗氏:妻から「まずは家の近くのお店を見てみたら」とアドバイスを貰い、近所にある有名なベーグル屋さんに並んでみたことがきっかけですね。

そのお店はご夫婦でやっている小さなお店で、朝7時からオープンなので、ちょっと早めのつもりで6時半に向かいました。でも、すでに100人ほどの大行列ができていて。約3時間ほど待ってようやく食べられたベーグルが、驚くほど美味しかったんです。

そこからベーグルに興味を持ち、国内外のベーグル専門店を100店舗近く食べ歩きました。前職で培ったマーケティングの視点からも、ベーグルには大きな可能性を感じたんです。

例えば、おにぎりやサンドイッチには「コンビニなら200円以内」という強固な価値基準、いわゆる「物差し」が存在します。でも、ベーグルにはまだそれがないんです。

― 「物差しがない」とは、どういうことでしょうか?
前薗氏: 価値が固定化されていないからこそ、品質に見合った価格を提示しても納得していただける市場なんです。

当店ではハーフサイズで約500円で販売していますが、有名店だと、ハーフサイズで約1,000円、フルサイズだと2,000円もするんですよね。

また、テイクアウト需要に非常に適しており、客単価も上がりやすいのも強みですね。当店はテイクアウトのみの販売ですが、複数個購入される方が多いんです。イートインだと、自分が食べる分しか購入されないじゃないですか。

起業の際、失敗する方の多くはマーケティングを疎かにしています。私は「しっかりとファンがいる、伸びる市場だ」と確信したからこそ、この道を選びました。

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「一人ではやらず、人を信じて任せる」理想の店舗運営

― 修行経験ゼロでのスタートですが、壁にぶつかることや、苦労も多かったのでは?
前薗氏:そうですね。

修行経験ゼロ、ベーグルのスクールに少し通っただけですので、商売として毎日数百個を安定して作り続けるという挑戦は正直、経験したことのない難しさでした。

オープンまでの半年間は事業パートナーと試行錯誤して、独自にメニュー開発を行っていましたが、製造する際に必要な機材も「どれを買えばいいのか」といったところから、買っても使い方が分からないといったところまで様々な苦労がありました。

そもそも、料理で言う”さしすせそ”が分かっていなかったんです。アボカドの色の変色を防ぐためにレモンをかけるとか。完成品が頭の中にあっても、知識がないし経験もないので、引き出しも少ない。ですが、業界の固定観念がないからこそ、自由な発想が生まれているので、そこについてはメリットもありますね。

― 弱みでありながらも強みということですね。印象に残っているエピソードはありますか?
前薗氏:一番記憶に残っている失敗は、一度、朝5時に開店準備のために出勤したら、自動洗浄したはずのオーブンが汚くて。

再度自動洗浄を行っても綺麗にならず、おかしいなと思って中を確認したら、ベーグルが中に残っていて、洗浄の水に浸かってプカプカ浮いていたんですよ(笑)。それを取ろうとしてぜんぶ溢してしまって……泣きそうになりながら一人で床を拭きました。

そうこうしているうちにスタッフが出勤してきて、「床掃除してくれたんですね!」と言われて。溢した水を拭いているうちに、床の汚れが落ちて綺麗になっていたんですよね。そこで、「あ、俺は床掃除をしてたんだな」と思えたんです。失敗を失敗で終わらせず、何でも真剣に、かつ楽観的に捉えるようにしています。

― 発想の転換、大事ですね!ほかにも、大切にしている考え方はありますか?
前薗氏:「一人でやらず、人を信じて任せる」ことです。

前職で26年、チームを組織しビジョンを共有する「オーガナイザー」をやってきました。商材が展示会からベーグルに変わっても、そのスキルは活かせます。

店舗設計やキャラクターデザインも、妻や友人、パパ友のクリエイターの方などが協力してくれました。現場のスタッフも、パティシエ経験者など優秀なメンバーばかり。私の役割は、彼らが「やらされている」ではなく「やりたい」と思える環境を作ることですね。

オープン当初から前向きでやりたい気持ちのあるスタッフが揃っていて、全員が「将来、多店舗展開した際の店長になれるような人材」であることが自慢です。

後付けの「好き」が人生を面白くする

― 今後、どのように事業展開をお考えですか?
前薗氏:まずはこの蔵前の店舗を軌道に乗せ、オンライン販売や法人向けの大口注文など、販売チャネルを拡大していきます。

そして、ゆくゆくはチェーン展開を目指します。

コンビニのように多くの人の目に触れる機会を作ることで、日本人の日常の食卓にベーグルが当たり前に並ぶ世界を作りたいですね。

― 最後に、これから新しいことに挑戦しようとしている方へメッセージをお願いします。
前薗氏:とにかく「まずはやってみる」ことだと思います 。

私の周りにも「やりたいことが見つからない」という人がいますが、目の前にあるものでも、まずは決めて行動してしまえば、結果は後からついてきます。例えば、「目の前にたまたまワインが置いてあったから、ワインに関わる事業を始める」でもいいんですよ。

私自身も、ベーグルを食べて美味しさを知ってから「ベーグル専門店にしよう」と決めましたし、コーヒーだって、販売するために動き出してから好きになりました。深い理由なんて無くて、決めたらあとはどうするかだけ。

もちろん、起業することで、サラリーマンのままでは分からなかったような重い責任も伴います。自分事としてよりシビアに捉えることも増えました。

でも、行動すれば新しい出会いがあります。起業したことで、これまで出会うことのなかった様々な面白い人に出会うことができました。インプットが増加したことで、人生が劇的に面白くなったんです。

失敗もすべて糧になります。ぜひ飛び込んでみてください。

【店舗情報】※instagram、食べログへ遷移します。

instagram:https://www.instagram.com/zono_bagel
食べログ:https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131103/13316468/

ZONO BAGEL

日本人の食の選択肢に、ベーグルという新しい彩りを
東京・蔵前を拠点に、「日本人の食の選択肢にベーグルを」というミッションを掲げるベーグルの製造販売事業者。前職の展示会業界で培った組織運営力を活かし、未経験ながら各分野のプロフェッショナルが集うチームを構築。徹底した市場調査に基づき、天然酵母のベーグルと炭火焙煎のオリジナルコーヒーを武器に展開している。今後は多店舗展開やオンライン販売も視野に入れ、「ベーグルが当たり前にある日常」の実現と、食を通じた新しい価値観の提供を目指す。

公式HP
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東京都台東区蔵前4-4-5