事業再構築補助金における付加価値額の計算方法と記載例を解説
2024/05/02
2021/8/2
事業再構築補助金に申請する人の中には、付加価値額の計算方法が知りたい人もいますよね。また、事業計画書における付加価値額の記載例を知りたい人もいるでしょう。
当記事では、事業再構築補助金における付加価値額の計算方法と記載例を解説します。収益計画表の記載例も解説するので、事業計画書における付加価値額の計算や記載例を確認したい人は、参考にしてみてください。
なお、当記事は事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに作成しています。
付加価値額は営業利益と人件費および減価償却費を足して計算する
事業再構築補助金における付加価値額は「営業利益」「人件費」「減価償却費」を足して計算します。そのため、付加価値額の計算をするときは、利益や費用項目を確認できる決算書や確定申告書の控えなどを準備しておきましょう。
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費 |
参考:第12回事業再構築補助金「公募要領」
事業再構築補助金において、付加価値額の計算はおもに「付加価値額要件を満たす事業計画をたてるとき」と「売上高等減少要件を付加価値額で満たす場合」に必要になります。
付加価値額要件を満たす事業計画をたてるときには「補助金を活用した事業(補助事業)の終了直後と補助事業後3~5年の付加価値額の増加」を求めます。事業計画書に収益計画を記載する際、申請枠に応じて年平均成長率3~5%増加させる付加価値額要件を満たすことを示す必要があるためです。
事業再構築補助金における付加価値額は「営業利益」「人件費」「減価償却費」を足した金額をさします。付加価値額の計算は、事業再構築補助金において要件を満たしていることを示す際に必要であるため、事業計画をたてる前に計算方法を確認しておきましょう。
なお、人件費にあてはまる経費項目や定義を知りたい人は「事業再構築補助金における人件費とは?算出が必要な場面も解説」を参考にしてみてください。
付加価値額の伸び率の計算方法
事業計画に記載する収益計画では、付加価値額の伸び率を示します。毎年度の事業化状況報告において、事務局側から伸び率の達成状況の確認がされるため、付加価値額とあわせて付加価値額の伸び率の目標値も事業計画書に記載しておきます。
<計算式> 付加価値額の伸び率 (%) =(伸び率を確認したい年度の付加価値額 – 補助事業終了年度の付加価値額 )÷補助事業終了年度の付加価値額 <例> 伸び率を確認したい年度の付加価値額:11,000,000円、補助事業終了年度の付加価値額:10,000,000円 (11,000,000 – 10,000,000)÷ 10,000,000 = 0.1 → 伸び率 = 10% |
付加価値額の伸び率の計算方法には「①伸び率を確認したい年度の付加価値額」と「②補助事業終了年度の付加価値額」を使います。たとえば、①が11,000,000円、②10,000,000円である場合、0.1が算出され、伸び率は10%となります。
付加価値額の伸び率は、伸び率を確認したい年度の付加価値額から補助事業終了年度の付加価値額を引き、算出された金額を補助事業終了年度の付加価値額で割って計算します。付加価値額要件の達成を示す際の計算にも使われるため、付加価値額を算出した後は、あわせて付加価値額の伸び率も記載してください。
従業員一人あたりの付加価値額の計算方法
付加価値額要件は、企業全体の付加価値額で要件を満たせない場合、従業員一人あたりの付加価値額で満たすことも可能です。従業員一人あたりの付加価値額で要件を満たす場合でも、企業全体の付加価値額の計算は必要であるため、売上高や経費項目は事前に記載しておきましょう。
<計算式> |
従業員一人あたりの付加価値額の計算方法には「①従業員一人あたりの売上高」に「②付加価値率」をかけます。たとえば、①が1,000,000円、②が70%である場合、従業員一人あたりの付加価値額は700,000円となります。
付加価値額要件を満たす事業計画をたてる際、企業全体の付加価値額で要件を満たせない場合、代わりに従業員一人あたりの付加価値額で要件を満たせます。企業全体の付加価値額の増加が期待できない場合などは、従業員一人あたりの付加価値額で要件を満たすことも検討してみてください。
なお、従業員一人あたりの付加価値額の伸び率も、付加価値額の伸び率同様、以下の計算方法で求められます。
(伸び率を確認したい年度の従業員一人あたりの付加価値額 – 補助事業終了年度の従業員一人あたりの付加価値額) ÷ 補助事業終了年度の従業員一人あたりの付加価値額 |
事業計画書における付加価値額の記載例
事業計画書に記載する収益計画では、付加価値額要件が満たせていることや、実施する事業計画が実現できる内容である根拠を示します。「公募要領(P48)」で記載が必要な項目の確認ができるため、事業計画書に記載が求められる項目は事前に確認しておきましょう。
直近の決算年度 (実績) ○○年○月 |
補助事業 終了年度 |
1年後 | 2年後 | 3年後 | |
①売上高 | 45,000,000 | 80,000,000 | 90,000,000 | 92,000,000 | 95,000,000 |
②営業利益 | ▲17,000,000 | 2,500,000 | 5,000,000 | 6,000,000 | 8,500,000 |
③経常利益 | ▲14,000,000 | 5,500,000 | 8,500,000 | 10,000,000 | 12,000,000 |
④人件費 | 15,000,000 | 20,000,000 | 22,500,000 | 22,700,000 | 23,000,000 |
⑤減価償却費 | 8,000,000 | 8,100,000 | 8,100,000 | 8,100,000 | 8,100,000 |
付加価値額 (②+④+⑤) |
6,000,000 | 30,600,000 | 35,600,000 | 36,800,000 | 39,600,000 |
伸び率(%) | – | – | 16.3% | 20.2% | 29.4% ※2 |
従業員数 ※1 | 35 | 40 | 41 | 42 | 45 |
従業員一人あたりの 付加価値額 ※1 |
171,429 | 765,000 | 868,293 | 876,190 | 880,000 |
従業員一人あたりの 付加価値額の伸び率 ※1 |
– | – | 13.5% | 14.5% | 15.0% |
※1 付加価値額要件を従業員一人あたりの付加価値額の増加で満たす場合に記載が必要です。 ※2 年率平均 =補助事業後の伸び率÷年数 計算例:29.4% ÷ 3 = 9.8% ※3 収益計画に記載する金額は、単価や売上高の想定金額から根拠のある数値を記載しましょう。 |
※伸び率は小数点第2以下切り捨て
事業計画書の収益計画には、補助事業終了後3~5年の売上高や営業利益および費用の想定額を記載します。付加価値額要件を「企業全体の付加価値額の増加」で満たす場合は、付加価値額と伸び率を記載しましょう。
対して、付加価値額要件を「従業員一人あたりの付加価値額の増加」で満たす場合は、付加価値額と伸び率に加え「従業員数」「従業員一人あたりの付加価値額」「従業員一人あたりの付加価値額の伸び率」を記載します。
付加価値額や伸び率の記載をした後は、付加価値額要件を満たしていることを示すため、年平均成長率を確認しましょう。年平均成長率は、補助事業後3~5年の伸び率の数値を用いて計算します。
また、収益計画表を作成した後は、付加価値額の根拠となる算出根拠を記述する必要があります。収益計画で記載した想定の費用や利益の金額をもとに、算出した付加価値額が根拠のある数値であることを記述しましょう。
収益計画を記載した後は付加価値額の要件を再度確認する
事業計画書における収益計画を記載した後は、付加価値額要件を再度確認しましょう。申請枠ごとに達成条件となる数値が異なるため、自社が申請を想定している枠の付加価値額要件が満たせているか確認が必要です。
申請枠 | 付加価値額要件(①または②を満たす事業計画の策定) |
|
① 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率4%以上増加見込み ② 従業員一人あたり付加価値額の年平均成長率4%以上増加見込み |
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① 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率3%以上増加見込み ② 従業員一人あたり付加価値額の年平均成長率3%以上増加見込み |
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① 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率5%以上増加見込み ② 従業員一人あたり付加価値額の年平均成長率5%以上増加見込み |
参考:第12回「公募要領」|事業再構築補助金
付加価値額要件において、達成条件の数値は申請枠ごとに異なります。「成長分野進出枠は4%以上」「コロナ回復加速化枠は3%以上」「サプライチェーン強靭化枠は5%以上」となっているため、付加価値額に関する金額は申請する枠を確認したうえで記載しましょう。
なお、事業再構築補助金では、付加価値額要件が未達成であっても補助金の返金は不要です。ただし、事業計画の目標や要件の達成のために責任をもって取り組む必要があることに変わりありません。事業再構築補助金の申請者は、要件の達成を目指して事業計画を実施しましょう。
この記事のまとめ
事業再構築補助金における付加価値額は「営業利益」「人件費」「減価償却費」を足して計算します。また、付加価値額の伸び率は、伸び率を確認したい年度の付加価値額から補助事業終了年度の付加価値額を引いた後に、補助事業終了年度の付加価値額で割って計算します。
企業全体の付加価値額で要件を満たせない場合、従業員一人あたりの付加価値額で要件を満たせます。従業員一人あたりの付加価値額は「従業員一人あたりの売上高」に「付加価値率」をかけて計算します。
収益計画では、付加価値額要件が満たせていることや、実施する事業計画が実現できる内容である根拠を示す必要があるため、付加価値額や補助事業後3~5年の伸び率の記載が求められます。また、あわせて付加価値額の算出根拠の記述も必要です。