補助金ガイド

事業再構築要件を定義ごとに解説

2024/05/14

2021/6/21

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

事業再構築補助金に申請したいと考えている人の中には、要件を確認している人もいますよね。その際、事業再構築要件の内容を具体的に知りたい人もいるでしょう。

当記事では、事業再構築要件における定義を解説します。定義ごとの要件も解説するので、事業再構築要件を詳しく知りたい人は参考にしてみてください。

なお、当記事は事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに作成しています。

事業再構築の定義を選択して事業の方向性を定める

事業再構築要件を満たした事業計画をたてるには、事業再構築の定義を選択して事業の方向性を定める必要があります。事業再構築の定義は「新市場進出」「業種転換」「事業転換」「事業再編」「国内回帰」「地域サプライチェーン維持・強靱化」の6つからひとつを選択します。

【事業再構築の定義(類型)と概要】
定義(類型) 概要
①新市場進出
(新分野展開・業態転換)
おもな事業を変更せず新たな商品やサービスで新たな市場に進出する
例:「建築解体工事事業」の建設業が
新たに「再生砂利製造・販売事業」に進出
②業種転換 既存の業種から新たな業種へ転換する類型
例:建設業から製造業へ転換する
(業種は総務省
日本標準産業分類」の大分類を参考)
③事業転換 おもな業種を変えずに主力の事業を転換する
例:建設業のまま事業を「塗装事業」から
「足場工事事業」へ転換する
(事業は総務省「
日本標準産業分類」の中分類以下を参考)
④事業再編 事業再編を通して事業を再構築する
例:合併や事業譲渡など組織再編したうえで「新市場進出」
「事業転換」「業種転換」に取り組む
(事業再編は会社法上の組織再編行為を行う必要がある)
⑤国内回帰 海外で製造および調達している製品を、既存の設備より先進的な国内拠点で製造する
例:フィリピンで製造や調達をしている製品を、最新設備を導入した国内拠点を設置して国内で製造する
⑥地域サプライチェーン維持・強靱化 地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠かつ供給に不足が生じ得る製品の国内拠点を整備する
※⑤⑥はサプライチェーン強靭化枠に申請する人のみ選択可

参考:第12回公募要領|事業再構築補助金

新市場進出は、新分野への挑戦や営業形態の変更ができる定義です。たとえば、建設工事を営んでいる事業者が新たに核シェルターの設計および設置事業に挑戦する場合や、飲食店経営している事業者が業態をECサイトによる販売に変更する場合などがあてはまります。

業種転換は、主力としている業種を変更できる定義です。たとえば、現在のおもな業種を製造業から建設業に変更する場合があてはまります。

事業転換は、主力としている事業を変更できる定義です。たとえば、美容室経営をしている事業者が、おもな事業をリラクゼーションサロンに変更する場合にあてはまります。

事業再編は、事業再編をしたのち事業再構築に挑戦できる定義です。たとえば、吸収合併や事業譲渡などの会社法上の組織再編行為を実施したあとに「新市場進出」「業種転換」「事業転換」のいずれかに取り組みます。

国内回帰と地域サプライチェーン維持・強靭化は、国内において先進的な生産拠点を整備するための定義です。たとえば、取引先から部品製造の増産依頼を受けて東京に最新設備の工場を建設し、海外で取引先が製造をしている部品を、国内で新たな手法により製造する取り組みがあてはまります。

事業再構築要件を満たすためには、事業再構築の定義に基づいた事業計画を作成しましょう。

新市場進出の要件

新市場進出には3つの要件が定められています。

【新市場進出(新分野展開・業態転換)の要件】

  • 新たな製品・商品・サービスを提供すること、又は提供方法を相当程度変更すること
  • 新たな市場に進出すること
  • 新規事業の売上高が総売上高の10%以上になること(付加価値額の場合は15%以上)

新市場進出は、新たな商品やサービスの提供や提供方法の変更により、異なる市場へ進出する類型です。新規事業の売上は、事業における総売上高の10%以上になる必要があるため、実現可能な事業計画となるよう留意しておきましょう。

業種転換の要件

業種転換には3つの要件が定められています。

【業種転換の要件】

  • 新たな製品・商品・サービスを提供すること
  • 新たな市場に進出すること
  • 主要な業種が大分類レベルで変わること

業種転換は、既存の業種から新たな業種へ転換する類型です。主要な業種は総務省「日本標準産業分類」における大分類レベルで変更する必要があります。

事業転換の要件

事業転換には3つの要件が定められています。

【事業転換の要件】

  • 新たな製品・商品・サービスを提供すること
  • 新たな市場に進出すること
  • 主要な業種が細から中分類レベルで変わること

事業転換は、おもな業種を変えずに主力の事業を転換する類型です。主要な業種は総務省「日本標準産業分類」における細分類または中分類レベルで変更する必要があります。

事業再編の要件

事業再編には2つの要件が定められています。

【事業再編の要件】

  • 会社法上の組織再編行為(「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」「事業譲渡」)を行うこと
  • 新市場進出、業種転換、業態転換のいずれかを行うこと

事業再編では、吸収合併や事業譲渡など会社法上の組織再編行為を行う必要があります。また、組織再編をしたあとに「新市場進出」「業種転換」「事業転換」のいずれかに取り組むことが求められます。

事業再編の要件を満たす事業計画書を作成する際には「会社法上の組織再編行為を行うこと」と「新市場進出、業種転換、事業転換のいずれかの要件を満たすこと」を表やグラフなどを用いて示しましょう。

会社法上の組織再編には5種類ある

会社法上の組織再編には「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」「事業譲渡」の5つの種類があります。

【要件を満たす際の判断基準】
組織再編行為
事業再構築の
申請者
要件を満たす際に判断基準とする事業の範囲
再編する前の判断基準となる
事業の範囲
(現状の事業の範囲)
再編したあとの判断基準
となる事業の範囲
(補助事業後や3~5年の
事業計画の事業の範囲)
吸収合併 合併後存続する
会社
吸収合併後存続する会社と
吸収合併後消滅する会社の合計
合併後存続する会社
新設合併 合併後新設される
会社
吸収合併後消滅する会社の合計 合併後新設される会社
吸収分割
事業を引き継ぐ
会社
事業を引き渡す会社の該当事業
と事業を引き継ぐ会社の合計
事業を引き継ぐ会社
事業を引き渡す
会社
事業を引き渡す会社から
引き渡す事業を除いたもの
事業を引き渡す会社
新設分割
新設される会社 事業を引き渡す会社の該当する
事業
新設される会社
事業を引き渡す
会社
事業を引き渡す会社から
引き渡す事業を除いたもの
事業を引き渡す会社
株式交換
親会社 親会社 親会社
子会社 子会社 子会社
株式移転
親会社 親会社 親会社
子会社 子会社 子会社
事業譲渡
事業譲渡先の会社 事業譲渡元の会社の譲渡する
事業と事業譲渡先の会社の合計
事業譲渡先の会社
事業譲渡元の会社 事業譲渡元の会社の譲渡する
事業を除いた事業
事業譲渡元の会社

参考:「事業再構築指針の手引き」|事業再構築補助金

吸収分割した場合、事業を引き継ぐ会社も事業を引き渡す会社も、どちらも事業再構築補助金に申請できます。その際、事業を引き継ぐ会社は、従業員数や既存の設備など、組織再編前でも「引き渡される会社の事業と自社の事業の合計」で申請します。

事業譲渡した場合は、事業譲渡先の会社と事業譲渡元の会社の、どちらも事業再構築補助金に申請できます。その際、事業譲渡元の会社は、組織再編前でも引き渡す予定の事業を除いて申請しなければなりません。

組織再編をする申請者は、事業再構築補助金に申請する時点で組織再編をしていない場合でも、組織再編後の事業規模で申請をすることになります。事業再編を選択する人は、組織再編後の事業の範囲で申請時の要件を確認しましょう。

国内回帰の要件

国内回帰の要件は「海外製造等要件」「導入設備の先進性要件」「新事業売上高10%等要件」の3つあります。

【国内回帰の要件】
要件 詳細
海外製造等要件 ①海外で製造および調達している製品であること
②国内に生産拠点を整備する計画であるということ
導入設備の先進性要件

①先進的な設備を導入すること

②導入設備の導入効果を証明すること

新事業売上高10%等要件

新たな製品や製造方法などの売上高が、総売上高の10%以上となること

(総付加価値額の15%以上でも可)

参考:第12回「公募要領(サプライチェーン強靭化枠)」|事業再構築補助金

海外製造等要件の①海外で製造や調達をしている製品であることを示すには「2020年以降に海外で製造または海外から調達した実績」と「2020年1月以降に海外から納品している事実」がわかる説明や添付書類が必要です。

②の国内の生産拠点を整備する計画を示すには、国内拠点の整備場所や面積、国内で生産する製品の生産計画などを事業計画書に記載します。

事業再編の要件を満たす事業計画書を作成する際には「海外で製造調達して先進的な国内拠点をつくること」と「3年~5年の事業計画終了時点で、売上高が基準値以上になっていること」を表やグラフなどを用いて示しましょう。

地域サプライチェーン維持・強靭化の要件

地域サプライチェーン維持・強靭化の要件は「地域不可欠性要件」「導入設備の先進性要件」「新事業売上高10%等要件」の3つあります。

【地域サプライチェーン維持・強靭化の要件】
要件 詳細
地域不可欠性要件 ① 地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠かつ供給に不足が生じ得る製品であること
②国内に生産拠点を整備する計画であるということ
導入設備の先進性要件

①先進的な設備を導入すること

②導入設備の導入効果を証明すること

新事業売上高10%等要件

新たな製品や製造方法などの売上高が、総売上高の10%以上となること

(総付加価値額の15%以上でも可)

参考:第12回「公募要領(サプライチェーン強靭化枠)」|事業再構築補助金

地域不可欠性要件を満たすには、「地域未来投資促進法に基づく基本計画における地域の特性の活用戦略に沿った事業であること」もしくは「地方公共団体が独自に策定する産業戦略に沿った事業であること」を示します。

また、補助事業において製造する製品が地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠かつ供給に不足が生じ得ることを事業計画書の表紙などで示す必要があります。

地域サプライチェーン維持・強靭化の要件を満たす事業計画書を作成する際には「地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品製造の先進的な国内拠点をつくること」と「3年~5年の事業計画終了時点で、売上高が基準値以上になっていること」を表やグラフなどを用いて示しましょう。

事業計画書の表紙に事業再構築要件を満たしていることを示す

事業計画書を記載する際は、表紙に事業再構築要件を満たしていることを示します。事業計画書の1ページ目となる表紙は、事業計画書の中で唯一フォーマットが決まっているため、事業再構築の公式サイトにある「必要書類」からダウンロードしておきましょう。

【事業計画書の表紙例】

参考:第12回事業再構築補助金「公募要領」をもとに株式会社SoLaboが作成

事業計画書の表紙には、自社で新たに取り入れる製品やサービスの内容や、既存の事業と異なる市場へ進出することなどを記載します。その際、第3者が事業のイメージがしやすいように、事業に関連する写真を入れることが望ましいです。

事業計画書の書き方や記載例を確認したい人は「事業再構築補助金の事業計画書の書き方と記入例を解説」を参考にしてみてください。

なお、当メディアを運営する株式会社SoLaboは、申請サポートを行っている認定支援機関です。申請前の相談や事業計画書の作成サポートを依頼したいと考えている人は無料診断からお問い合わせください。

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この記事のまとめ

事業再構築要件を満たす事業計画をたてる際は、事業の方向性を定めるために事業再構築の定義をひとつ選びます。第12回公募において、事業再構築の定義は「新市場進出」「業種転換」「事業転換」「事業再編」「国内回帰」「地域サプライチェーン維持・強靭化」の6つ設定されています。

事業再構築要件を満たすには、事業計画書の表紙にフォーマットに沿って、製品や市場の新規性など事業再構築要件を満たすことを示します。事業計画書の表紙のフォーマットは、事業再構築補助金の公式サイトにある「必要書類」からダウンロードしてください。

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