建設業における小規模事業者持続化補助金の活用方法と事例を紹介
2021/8/12
2022/05/02
小規模事業者の方で販路開拓を検討している事業者にとっては非常にありがたい補助金なのが、小規模事業者持続化補助金です。この小規模事業者持続化補助金は、建設業の方でも利用できるのでしょうか?今回は、建設業の方でも小規模事業者持続化補助金を利用できるのか、また利用できる場合はどのような場合なのかについて解説します。
建設業は小規模事業者持続化補助金の対象なのか
結論から言うと、建設業の方も小規模事業者持続化補助金の対象となる場合があります。しかし、満たすべき要件がいくつかあり、まず自身が要件に当てはまるかどうかを確認しましょう。
補助対象者
補助金の対象者は、以下の8項目の要件をすべて満たす事業者である必要があります。
- 小規模事業者であること
- 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
- 直近過去3年分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の年平均額が 15 億円を超えていないこと
- 商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
- 本事業への応募の前提として、持続的な経営に向けた経営計画を策定していること
- 本補助金の受付締切日の前10か月以内に小規模事業者持続化補助金が採択されていないこと
- 一般型と低感染リスク型ビジネス枠の両方を採択していないこと
- 反社会的勢力に該当しないこと
当サイトでは、申請者が小規模事業者持続化補助金の補助対象になるか、また申請した場合に採択されるか無料診断ができます。当社SoLaboは小規模事業者持続化補助金の申請サポートも併せて実施しており、どのように申請すれば採択されるかについてのノウハウがありますので、自社が申請可能か気になる人は無料診断をお試しください。
無料診断小規模事業者であること
業種ごとに、常時使用する従業員数で小規模事業者であるかどうかが判断されます。
建設業の場合、製造業その他に分類されるので、常時使用する従業員の数は20人以下となります。そのため、21人以上の従業員を雇用している事業者は対象外ですので、ご注意ください。
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) |
常時使用する従業員の数5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
常時使用する従業員の数20人以下 |
製造業その他 |
常時使用する従業員の数20人以下 |
補助対象経費
補助金の申請対象として扱われる経費は、一般型で13種類、低感染リスク型ビジネス枠で12種類あります。
一般型 |
低感染リスク型ビジネス枠 |
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①機械装置等費 ②広報費 ③展示会等出展費 ④旅費 ⑤開発費 ⑥資料購入費 ⑦雑役務費 ⑧借料 ⑨専門家謝金 ⑩専門家旅費 ⑪設備処分費 ⑫委託費 ⑬外注費 |
①機械装置等費 ②広報費 ③展示会等出展費(オンラインによる展示会に限る) ④開発費 ⑤資料購入費 ⑥雑役務費 ⑦借料 ⑧専門家謝金 ⑨設備処分費 ⑩委託費 ⑪外注費 ⑫感染防止対策費(換気設備、アクリル板、マスク等)
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ここでは、それぞれについて例を挙げつつ解説します。
一般型
①機械装置等費
建設業は多くの機械装置を利用する事業ですが、既存事業で使用機械に関しては販路開拓という目的に沿っておらず、対象となりません。建設業で対象となるのは、主に広報のための看板設置などに使用する機材やインターネット広告などに利用するソフトウェアなどが挙げられます。
②広報費
広報費は、広報のためのホームページ制作費やチラシなどの制作費が該当します。新聞などへの広告費なども対象です。建築業でも広報を行うことで新規顧客を取り込むことが重要なので、特に申請することが多い項目といえるでしょう。
③展示会等出展費
展示会への出展費用が計上される経費です。展示会に出展する場合に必要な出展費用を経費として補助してもらうことができます。展示物の運搬費用や海外向けの通訳、翻訳にかかる費用も補助対象です。
④旅費
補助事業のための情報収集、調査や展示会に行くための旅費です。交通費と宿泊費が該当します。ただし、それぞれに計上できる経費には制限があります。
交通費は公共交通機関を利用する場合のみで、タクシー代やレンタカー代といった公共交通機関以外の交通機関を利用する場合や、ガソリン代や高速道路料金といった、自家用車による移動でかかる費用も対象外です。当然、新幹線のグリーン車や飛行機のビジネスクラス等の通常料金に加えて付加される料金も対象になりません。また、宿泊費でも食事や入浴量などの宿泊以外に付加される費用に関しては、これを除いて計算します。
⑤開発費
新商品の試作品開発に使用する原材料や設計、デザインなどに関する経費です。建築業ではあまりお世話になることはないかもしれません。
⑥資料購入費
補助事業のための資料となる本を購入する費用です。1種類につき1冊のみで、1冊10万円未満のものと指定されています。建築関係の書物では通常事業のためになってしまうので、販路開拓のためのノウハウ本などがメインになるでしょう。
⑦雑役務費
補助事業のための臨時アルバイトや派遣労働者の報酬や交通費です。臨時での雇用のみで、補助期間後も正規に雇い続ける場合などは補助対象外となります。また、通常業務も兼任する場合なども補助対象になりません。
例えば、新たに作る広報用ホームページの作成、更新のための臨時派遣労働者を雇い入れる場合は対象となりますが、事務作業なども兼業する場合は対象外になります。
⑧借料
機器や設備のレンタル・リース料が該当します。通常の事業にも利用できる機器の場合は対象外です。また、レンタル期間が補助事業期間を超える場合は、補助事業期間の分だけを計算して対象とします。
⑨専門家謝金
専門家に補助事業に関する指導、助言を受ける場合に支払う謝礼です。指導、助言以外の委託や外注を行う場合は別経費扱いになります。商工会議所の職員は専門家であっても対象外なことや、謝礼の金額は単価の根拠が明白であること、などの注意点があるので、専門家に頼む前に対象になるかどうかを確認しておきましょう。
⑩専門家旅費
対象が補助事業について指導男、助言を行う専門家になりますが、基本的には「④旅費」と同様です。
⑪設備処分費(補助対象経費総額の1/2が上限)
補助事業を行うための作業スペース確保などを目的として、死蔵している設備機器などを廃棄処分する費用、またはレンタル・リースしていた設備機器返却のために原状回復・修理を行う費用です。この項目のみ交付決定後に変更がきかず、計上額も補助対象経費総額の1/2までと定められています。
対象はあくまで死蔵している設備のみで、不要となっていても資材や消耗品は処分に費用が掛かっても対象にはなりません。
⑫委託費
委託費は、①~⑪に該当せず、専門家などに助言や指導だけでなく、業務委託を行う場合の費用です。マーケティングや市場調査など、建築業の業務と関係の薄い業務を委託する場合に対象となります。
⑬外注費
①~⑫すべてに該当しない経費で、補助事業に必要な業務の一部を第三者に外注する場合に支払われる報酬を扱う経費です。補助事業として使用するスペースを確保するための店舗や事務所の改装工事等が対象となります。
低感染リスク型ビジネス枠
一般型と比較して「④旅費」「⑩専門家旅費」が存在しないため数字のナンバリングがずれている他、「⑫感染防止対策費(換気設備、アクリル板、マスク等)」が追加されています。
同名の項目であれば基本的な内容は一般型と同じなので、ここでは低感染リスク型ビジネス枠のみにある「⑫感染防止対策費(換気設備、アクリル板、マスク等)」について解説します。
⑫感染防止対策費(換気設備、アクリル板、マスク等)
新型コロナウイルス感染症に対する感染防止対策費用です。ただし、これだけでは販路拡大や業務効率化にはつながらないので、感染防止対策費のみでの申請はできません。
金額も補助金総額の1/4(25万円)までが上限で、あくまでも販路拡大や業務効率化を目指す場合に利用可能な補助金であるというスタンスは一般型と変わりません。
建設業が気を付けたいNGの補助金利用例
補助金の経費として通らない例として、パソコンなどの汎用性の高い機材が挙げられます。目的外に利用する可能性が高い機材は、補助対象とはなりません。
また、イベントとしての展示会などは申請が可能ですが、モデルハウスのような一般的な業務で行う展示に関しても通りません。
建設業で小規模事業者持続化補助金を受けた例
小規模事業者持続化補助金の特設ページには採択者一覧のページが準備されており、採択された事業者が確認できます。その中では、会社名や事業名称が確認できますので、参考になるでしょう。また、経済産業省のミラサポplusというホームページではより詳しい補助金事例が紹介されています。自身の業種と類似した事例もあると思いますので、参考にしてみてください。
事例①販路拡大のための広告戦略
販路拡大のため、広報、会社紹介のためのホームページや看板の作成を行う事業です。建設業の場合、多くの事業者は広告戦略のために小規模事業者持続化補助金を利用しています。
ホームページ作成を行う場合、地域の人に知ってもらうために地域名や業務内容がキーワードになり検索されやすいようにしつつ、見やすいデザインや顧客が興味を持ってくれそうなキャッチコピーのあるホームページを用意しています。
ホームページでは従業員の獲得を並行して狙う事業者も多いです。看板などの場合は、大きく目立つ場所に、シンプルかつ分かりやすい看板を作成して設置しています。
事例②地域の相談を受ける駆け込み寺役
地域に密着した取り組みとして、地域からの相談を受ける駆け込み寺として事務所を活用する会社もあります。カウンセリング、というほど本格的ではありませんが、地域の相談に乗ることで顧客とのつながりを大切にする補助事業です。
建設業では家などの命や生活を預けるものの建築に携わるため、地域からの信頼が強いことは大きなメリットになります。地域からの信頼を獲得しつつ、話題性による顧客の獲得も狙っていく戦略です。
事例③テレワーク対応
コロナ禍に対応してインターネットで注文を受けたり、事務作業を行う社員が自宅から作業に従事することができる環境をつくるための補助事業です。事業で利用するパソコンに必要なソフトウェアを導入したり、必要な機器を取り揃えるなどの経費を小規模事業者持続化補助金で賄います。
ただし、NG例でも挙げたように、パソコンそのものは補助事業以外でも使用できるため、経費としては認められません。
小規模事業者持続化補助金を受けるときの注意点
小規模事業者持続化補助金を検討している方は、以下の注意点を踏まえて、申請に向けて準備しましょう。
補助事業は通常業務と同じではいけない
建設業に限ったことではありませんが、補助事業は通常業務と同じ内容では審査に通りません。低感染リスク型ビジネス枠の場合も含めて、補助事業で新たな販路開拓に取り組む場合でなければならないのです。
準備期間をしっかり用意する
GビズIDの作成や様式4の書類作成には、1週間から2週間程度の時間がかかります。申請したい締め切りに間に合うように、逆算して間に合うように準備しましょう。
補助金は後払い
小規模事業者持続化補助金のみならず、補助金は基本的に後払いです。補助事業を行った後に報告書を提出し、それに対して審査を行った後から補助金が支払われます。
そのため、補助事業を行っている間の運転資金は手元の資金で賄わなければなりません。もし手元の運転資金が心もとない場合は、融資を受けて運転資金を確保するのも検討しましょう。
融資について知りたいという方は、当社株式会社SoLabo(ソラボ)が運営する「創業融資ガイド」をぜひ参照してみてください。
この記事のまとめ
建設業では、広告による顧客獲得やテレワーク対応による事業改革などに小規模事業者持続化補助金が利用できます。特に顧客獲得のための広告事業で使いやすいので、看板やホームページを作成する場合にはぜひ活用していきましょう。