建設業における小規模事業者持続化補助金の活用方法と事例を紹介
2024/07/03
2024/6/28
建設業を営む個人事業主や小規模事業者の中には、小規模事業者持続化補助金の利用を検討している人もいるのではないでしょうか?しかし、小規模事業者持続化補助金は、申請すれば誰でも受けられるものではなく、条件を満たしている人が利用できる補助金です。
当記事では、建設業の人向けに小規模事業者持続化補助金の活用方法と事例を紹介していきます。補助金の計算例も解説するので、小規模事業者持続化補助金がどのような補助金なのかを調べている人は参考にしてみてください。
なお、当記事は小規模事業者持続化補助金の第16回公募要領をもとに作成しています。
Contents
小規模事業者持続化補助金は建設業の販路開拓に活用できる
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の「販路開拓」や「生産性向上」に繋がる取り組みにかかった経費の一部が補助される制度です。そのため、補助金に申請する場合は、自社の販路開拓を行うための事業計画を立て、計画の内容が審査で認められなければなりません。
たとえば、ホームページの作成やウェブ広告を活用して自社の販促を行うことは、事業の「販路開拓」に繋がります。また、機械を導入することで多くの人手を他の業務に回せることや、作業時間を短縮できることは事業の「生産性向上」に繋がります。
建設業の事業者が小規模事業者持続化補助金を利用するには、販路開拓や生産性向上に繋がる事業に取り組むことが必要です。補助金に申請する場合は、補助事業に活用する「対象経費項目」の確認を行い、販路開拓のための「補助事業計画」を立てましょう。
当サイトでは、申請者が小規模事業者持続化補助金の補助対象になるか、また申請した場合に採択されるか無料診断ができます。当社SoLaboは小規模事業者持続化補助金の申請サポートも併せて実施しており、どのように申請すれば採択されるかについてのノウハウがありますので、自社が申請可能か気になる人は無料診断をお試しください。
無料診断一人親方も補助対象となる
小規模事業者持続化補助金は、従業員を雇用していない一人親方も補助対象者となります。「一人親方」とは建設業などを営む人が従業員を雇用せずに、自分自身のみまたは家族だけで事業を行う事業主のことです。
小規模事業者持続化補助金を申請できる事業者は、小規模事業者の定義に該当する小規模事業者や個人事業主等です。中小企業庁の「小規模事業者の定義」によると、建築業の場合は常時使用する従業員数20人以下が小規模事業者に該当するため、従業員数が20人以下であれば一人親方も補助対象となります。
ただし、小規模事業者にあてはまる一人親方であっても、企業組合や協業組合を除く協同組合等の組合にはいっている場合や開業していない創業予定者の場合は補助対象外です。税務署に開業届を提出していても、申請時点までに事業を開始していない場合は小規模事業者持続化補助金に申請できません。
一人親方も小規模事業者持続化補助金の補助対象となりますが、対象者の要件をひとつでも満たせない場合には申請することができません。補助金制度に申請する際は公募要項を確認し、不明点がある場合は管轄の商工会議所に問い合わせてみてください。
販路開拓のための補助事業には10種類の対象経費を活用できる
小規模事業者持続化補助金に申請する際は、用意されている10種類の「補助対象経費」を活用し、販路開拓に繋がる「補助事業計画」を作成することになります。経費項目ごとの活用事例を参考にしながら自社の事業計画を考えてみましょう。
補助対象経費科目 |
概要 |
①機械装置等費 |
補助事業の遂行に必要な製造装置の購入などの経費 【具体例】
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②広報費 |
新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置などの経費 【具体例】
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③ウェブサイト関連費 |
ウェブサイトやECサイトなどの構築、更新、改修、開発、運用に係る経費 【具体例】
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④展示会等出展費 |
オンラインを含む展示会・商談会の出展料に係る経費 |
⑤旅費 |
販路開拓(展示会などの会場との往復を含む)を行うための旅費 |
⑥開発費 |
新商品の試作品開発に伴う経費 |
⑦資料購入費 |
補助事業に関連する資料・図書にかかる経費 |
⑧借料 |
機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
⑨設備処分費 |
新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分に係る経費 借りていた設備機器等を返却する際に修理・原状回復するのに必要な経費 ※商品在庫の処分や自己所有物の修繕費は対象外 【具体例】
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⑩委託・外注費 |
店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼する経費(契約必須) |
※小規模事業者持続化補助金<一般型>第16回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成
たとえば、建設業の工事、工程管理などの作業効率をあげるための機械やソフトウェアの購入費用は「機械装置等費」を利用できます。また、自社ホームページからの問い合わせ、見積もり予約に繋がるサイト作成やウェブ広告には「ウェブサイト関連費」を利用できます。
なお、補助事業以外でも使える汎用性の高いパソコンやコピー機などは、補助対象経費と認められません。同様に、展示会に出展する費用は申請できても、モデルハウスなど販路開拓等に繋がらない展示は対象外となる点にも留意しておきましょう。
経費項目ごとの「補助対象になる経費例」と「対象にならない経費例」は、小規模事業者持続化補助金の公募要領に記載されています。事業計画に活用する経費が対象経費に該当するか確認したい人は、小規模事業者持続化補助金の公式サイトにある公募要項を確認してみてください。
建設業の採択事例
小規模事業者持続化補助金の公式サイトに掲載されている「採択者一覧」のページでは、採択された事業者や補助事業名が確認できます。また、経済産業省の「ミラサポplus」では、より詳しい事例が紹介されているため、事業計画を立てる際の参考になります。
住宅工務店 |
建設現場にウェアラブルカメラを導入し、遠隔臨場や夜間現場不在時の盗難防止を実現 |
石材加工業 |
飲食店向けに「溶岩プレート」を開発し、コロナ禍の巣ごもり需要に着目した家庭用商品も製作 ECモールと自社ECサイトにて商品を販売 |
屋外広告設置業 |
個人向けHPを作成し、ビルオーナーへ直接工事の提案 業務効率化のためにポータブル切断機を購入、トラックの荷台を改良 |
電気工事店 |
作業の効率化に優れたバンドソーや測定機を導入し、太陽光パネル設置工事PRの為のリスティング広告の掲載 |
造園・土木業 |
立地条件を克服する広告戦略として看板の設置、ロゴマークの作成・活用 自宅の庭をイメージしやすい「サンプルガーデン」を設置 |
たとえば、住宅工務店では、建設現場にウェアラブルカメラを導入することで現場の人員削減に成功しました。削減された人員は他の業務を担えるため、より多くの現場を手掛けられることになり、生産性向上に繋がった事例があります。
また、石材加工業では、消費者の需要に着目した新商品を開発して新たな顧客層の獲得に成功しました。ECサイトとECモールを活用した商品の販売を行ったことにより、消費者からの認知度が上がり販路開拓に繋がった事例があります。
建設業の活用事例では、作業効率と生産性向上に繋がる機材装置費や、販路開拓を目的とした広報費、ウェブサイト関連費の活用が多く見られました。小規模事業者持続化補助金を申請する際には、さまざまな活用事例を参考にしながら補助事業計画を立ててみましょう。
小規模事業者持続化補助金の補助金額は最高で250万円
一般型 |
通常枠 |
特別枠 |
|
申請枠 |
通常枠 |
賃金引上げ枠 |
卒業枠 後継者支援枠 創業枠 |
補助率 |
2/3 |
2/3 赤字事業者は3/4 |
2/3 |
補助上限額 |
50万円 |
200万円 |
|
インボイス特例が 適用された場合 |
100万円 |
250万円 |
※小規模事業者持続化補助金<一般型>第16回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成
たとえば、インボイス特例対象外の事業者が、創業枠で機材装置費と広報費を合わせて330万円を申請した場合、補助率2/3を掛けて計算すると、約220万円です。しかし、創業枠の補助上限額が200万円なので、受けられる補助金額は200万円となります。
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠は50万円、特別枠は200万円です。「免税事業者」から「適格請求書(インボイス)発行事業者」になることでインボイス特例が適用された場合には、さらに50万円を上乗せした金額が上限額となります。
なお、補助対象経費の中の「ウェブサイト関連費」を活用する場合は、補助金額の計算方法が変わります。ウェブサイト関連費の上限額は、算出された補助金額の全体の1/4までの金額と定められているため、計算の工程が増えます。
ウェブサイト関連費を含めた補助金の計算方法が気になる人は、「いくら受け取れる?小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金額の関係性を解説」も参考にしてみてください。
補助金額の計算例
中小企業庁「ミラサポplus」で公開されている建築業の活用事例を参考に、補助事業経費の申請例を作成しました。活用事例では、金額や使用した経費が公開されていないため、申請例の金額は概算になっています。
造園・土木業 |
立地条件を克服する看板の設置・ロゴマークの作成と活用 |
申請者が支払う補助対象経費:120万円 |
(内訳) 看板作製費・設置費用: 42万円 【開発費】 手作りガーデンサンプル制作費用: 48万円 【施設処分費】 |
受け取れる補助金額:80万円 |
(計算式) |
作成した経費例の場合、申請者が支払う経費額は120万円です。次に、この経費に対する補助金額を計算した場合「120万円×2/3(補助率)=80万円」となり、申請者が受け取れる補助金額は80万円となります。
また、小規模事業者持続化補助金が交付(申請者の銀行口座に入金)されるのは、補助事業の実施後となります。そのため、事業を行うための資金はあらかじめ申請者が準備しておく必要があることを留意しておきましょう。
小規模事業者持続化補助金の申請は地域の商工会の支援を受けながら進める
小規模事業者持続化補助金の必要書類は、商工会や商工会議所の支援を受けながら準備を進めることになります。そのため、補助金の申請を決めたらまず、自分が事業を営む地域の商工会または商工会議所を確認しておきましょう。
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提出書類の1つである「事業支援計画書」は、商工会または商工会議所に発行を依頼する書類です。申請者はまず、電子申請システムへ「経営計画書」や「補助事業計画書」の入力を行い、商工会または商工会議所に「事業支援計画書」の発行を依頼するという流れです。
また、「経営計画書」や「補助事業計画書」は、補助金の採択審査において観点となる書類であり、根拠と説得力のある内容を作成する必要があります。申請者が書類の作成に慣れていない場合は、地域の商工会に相談もできるため、支援を受けてみましょう。
「事業支援計画書」は、依頼してから発行までに約1週間かかり、電子申請に必要なGビズIDプライムアカウントは、申請してから取得までに約3〜4週間かかります。申請してから受け取るまでに時間を要するものは、早めに準備しておきましょう。
なお、小規模事業者持続化補助金の第16回公募では郵送での申請は認められず、電子申請システムのみ応募を受け付けています。GビズIDの詳しい情報は、デジタル庁が運営するgBizIDのサイトで確認できます。
この記事のまとめ
建設業の事業者が小規模事業者持続化補助金に申請するためには、販路開拓や生産性向上に繋がる補助事業計画を立てる必要があります。補助事業計画は、用意されている10種類の対象経費を組み合わせて作成することになります。
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠で申請する場合は50万円、特別枠で申請する場合は200万円です。また、免税事業者であった事業者がインボイス発行事業者となった場合はインボイス特例が適用され、さらに50万円が上乗せされます。
小規模事業者持続化補助金の過去の採択者の事業内容や事例は、公式サイトや経済産業省のミラサポplusにて確認できます。建設業の事例では、機械装置費や広報費、ウェブサイト関連費を活用した事例が多く紹介されています。