小規模事業者持続化補助金は薬局でも利用できるのか
2024/04/10
2023/6/15
近年の薬局経営では、オンライン資格確認が義務化され、今後は電子処方箋や服薬指導に係る「DX」や「かりつけ薬局」への転向なども課題となっていますよね。その中で、新しいシステムや機材導入の資金調達に利用できる補助金を検討している人もいるでしょう。
当記事では、小規模事業者持続化補助金は薬局にも利用できるのかを解説します。補助金の活用例や、補助金額の計算方法についても解説するので、今後の薬局の事業計画に小規模事業者持続化補助金の利用を考えている人は参考にしてみてください。
なお、当記事は小規模事業者持続化補助金の「第15回公募要領」をもとに作成しています。
小規模事業者持続化補助金は薬局経営の販路開拓に利用できる
小規模事業者持続化補助金は、薬局を経営する人の販路開拓に利用できる補助金です。小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓に繋がる取り組みや、販路開拓と合わせて行う業務効率化(生産性向上)を支援する目的の補助金であるためです。
たとえば、今後「かかりつけ薬局」としての機能を持って活動する際に、ウェブサイトの制作や広告チラシの配布を行うことは販路開拓に繋がります。また、電子処方箋やオンライン服薬指導の導入などのDXは、業務効率化・生産性向上の取り組みに繋がります。
小規模事業者持続化補助金は、薬局の経営における販路開拓や生産性向上に繋がる取り組みに役立てられます。小規模事業者持続化補助金に申請する際は、どのような経費に補助金を活用できるのかを確認してみましょう。
なお、保険診療を行っている保険薬局の場合は小規模事業者持続化補助金の対象外になります。
10種類の対象経費を活用して販路開拓の事業計画を立てる
小規模事業者持続化補助金には、10種類の対象経費が用意されています。補助金を申請する際、申請者は、対象経費を活用した「補助事業計画」を立てる必要があります。
補助対象経費科目 |
概要・活用例 |
①機械装置等費 |
補助事業の遂行に必要な製造装置の購入などの経費 例:機能性の高い分包機、キャッシュレス決済端末の導入費用 |
②広報費 |
新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置などの経費 例:ポスティング用広告チラシ作成、視認性・デザイン性に優れた看板作製 |
③ウェブサイト関連費 |
ウェブサイトやECサイトなどの構築、更新、改修、開発、運用に係る経費 例:電子処方箋やオンライン服薬指導に対応するためのクラウド導入費 |
④展示会等出展費 |
展示会・商談会の出展料に係る経費 例:かかりつけ薬局をアピールするための地域イベント出展費用 |
⑤旅費 |
販路開拓(展示会などの会場との往復を含む)を行うための旅費 例:セミナーや薬局EXPOなどに出向いた際の交通費 |
⑥開発費 |
新商品の試作品開発に伴う経費 |
⑦資料購入費 |
補助事業に関連する資料・図書にかかる経費 |
⑧借料 |
機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) 例:デジタルサイネージのレンタル料 |
⑨設備処分費 |
新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分に係る経費 例:相談スペースの設置、車いす用の導線確保のために不要な棚を処分する費用 |
⑩委託・外注費 |
店舗改装など自社では実施困難な業務を第3者に依頼する経費(契約必須) |
参考:<一般型>第15回公募要領|小規模事業者持続化補助金
たとえば、機能性の高い全自動分包機や、キャッシュレス決済対応の端末導入費は、機材装置費として申請できます。数種類の薬が1包にまとめられ、朝昼晩のいつ飲む薬かを可視化することや複数の決済方法が選べることで、顧客の獲得に繋がる可能性があります。
また、顧客にかかりつけ薬局の機能を宣伝するためのウェブサイトの制作は、ウェブサイト関連費として申請できます。ウェブサイト関連費は、薬局のターゲット層を絞ったインターネットの掲載に活用し、地域の介護や子育て世代のへの認知向上も目指せます。
小規模事業者持続化補助金の補助対象経費は全部で10種類あります。補助金を申請する場合、申請者は、対象経費を活用した補助事業計画を立てることになります。その際、ウェブサイト関連費のみを使った事業計画では申請できないため、留意しておきましょう
ウェブサイト関連費のみでの申請は出来ない
小規模事業者持続化補助金は、ECサイト制作費やクラウド導入費などが対象となるウェブサイト関連費のみでの申請は出来ません。そのため、ウェブサイト関連費を申請する際には必ず、広報費や機材装置費などの他の対象経費と組み合わせて申請することになります。
たとえば、ウェブサイト制作と並行し、サイトのURLやQRコードを載せた配布用の広告チラシを広報費で作成する工夫ができます。また、DXに伴うクラウド導入と合わせて必要な端末や、レセコンのデータと連動可能な自動分包機などを機材装置費で購入できます。
小規模事業者持続化補助金は、ウェブサイト関連費のみの申請ができないため、他の経費項目と合わせた事業計画を立てる必要があります。その際、パソコンやコピー機、車両などの汎用性の高いものは経費の対象外となるため、事前に確認しておきましょう。
小規模事業者持続化補助金の対象とならない経費例の詳細は「第15回公募要領」で確認できます。
最大で250万円の補助を受けることができる
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠で申請した場合は100万円、特別枠で申請した場合は250万円です。小規模事業者持続化補助金の申請枠には通常枠と特別枠があり、枠ごとに補助金額を計算する際の補助率や補助上限額が定められています。
一般型 |
通常枠 |
特別枠 |
|
申請枠 |
通常枠 |
賃金引上げ枠 |
卒業枠 後継者支援枠 創業枠 |
補助率 |
2/3 |
2/3 赤字事業者は3/4 |
2/3 |
補助上限額 |
50万円 |
200万円
|
|
インボイス特例が適用された場合 |
100万円 |
250万円 |
参考:<一般型>第15回公募要領|小規模事業者持続化補助金
たとえば、インボイス特例対象外の事業者が、創業枠で機材装置費と広報費を合わせて330万円を申請した場合、補助率2/3を掛けて計算すると、約218万円です。しかし、補助上限額が200万円なので、受けられる補助金額は200万円となります。
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠は50万円、特別枠は200万円です。また、「免税事業者」であった人が「適格請求書発行事業者」になることでインボイス特例が適用された場合には、さらに50万円を上乗せした金額が上限額となります。
なお、ウェブサイト関連費を含んだ経費を申請する場合、ウェブサイト関連費として申請できる上限額は、全体の申請金額の1/4となります。そのため、ウェブサイト関連費を申請する場合は補助金の計算方法が異なるため、その場合の計算方法も確認してみましょう。
調剤薬局の補助金申請例
ホームページ制作やクラウド導入費を申請する際の経費項目であるウェブサイト関連費の上限額は、補助金申請額の全体の1/4です。そのため、ウェブサイト関連費を含む場合の補助金額を計算する際は、ウェブサイト関連費と他の経費を分けて計算することになります。
申請者が支払う補助対象経費:180万円 |
(内訳) 【機材装置費】 自動分包機 65万円 【広報費】 チラシ作成・ポスティング費 20万円 【借料】 デジタルサイネージのレンタル料(6か月分)45万円 【ウェブサイト関連費】 HP制作、電子処方箋クラウド導入費 50万円 |
受け取れる補助金額:115.4万円 |
(計算式) ① 機材装置費、広報費、借料の合計130万円×2/3=86.6万円 ② ウェブサイト関連費50万円×2/3=33万円 ※ウェブサイト関連費は申請額の1/4以下である必要があるため、申請できる金額は 86.6万円(ウェブサイト関連費以外の合計額) ÷ 3(1/4を求めるための値) = 28.8万円(ウェブサイト関連費の上限額) 86.6万円+28.8万円=115.4万円 |
たとえば、受け取れる補助金額は119.6万円です。一方でウェブサイト関連費を含む場合は、全体の補助金額の1/4以下になる金額で申請する必要があるため、実際に受け取れる補助金額は115.4万円となります。
小規模事業者持続化補助金に申請する人は、申請枠ごとの補助率や上限額から補助金額を計算し、いくら補助を受けられるかを確認してみましょう。その際、ウェブサイト関連費を含む場合の計算方法は複雑になるため、正しく計算できるようにしておきましょう。
ウェブサイト関連費を含む補助金額の詳しい計算方法については、「いくら受け取れる?小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金額の関係性を解説」を確認してみてください。
小規模事業者持続化補助金の申請には商工会や商工会議所の支援が必要
小規模事業者持続化補助金を申請する際は、地域の商工会や商工会議所の支援を受けながら進めましょう。小規模事業者持続化補助金の申請書類は、商工会または商工会議所を通して準備する必要があるためです。
① 電子申請の際に必要なGビズIDプライムアカウントの申請・取得 ② 「経営計画書兼補助事業計画書」と「補助事業計画書」を作成 ③ 作成した書類の写しを商工会または商工会議所に提出し、「事業支援計画書」の作成を依頼する ④ その他の書類(小規模持続化補助金事業にかかる申請書、補助金交付申請書、宣誓・同意書、その他申請枠や申請条件によって必要な書類)を記入 ⑤ 後日作成の終わった事業支援計画書を受け取り、②④の必要書類と共に提出する |
たとえば、提出書類の1つに「事業支援計画書」があります。事業支援計画書は、申請者が作成した「経営計画書」や「補助事業計画書」を商工会または商工会議所に提出し、作成を依頼する書類です。
また、「経営計画書」や「補助事業計画書」は、補助金の採択審査において観点となる書類であり、明確で説得力のある内容を作成する必要があります。申請者が書類の作成に慣れていない場合は地域の商工会に相談もできるため、支援を受けると良いでしょう。
なお、「事業支援計画書」は依頼してから発行までに約1週間かかります。電子申請に必要なGビズIDプライムアカウントは、申請から取得までに約3~4週間かかります。申請してから受け取るまでに時間を要するものは、早めに準備しておきましょう。
GビズIDの詳しい情報は、デジタル庁の「gBizID」で確認できます。
この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金は、今後の薬局経営の課題である「DX」や「かかりつけ薬局への転向」を目指す際の取り組みに利用できる補助金です。電子処方箋やオンライン対応に必要なクラウド導入費や、調剤業務の自動化にも役立てられます。
小規模事業者持続化補助金に申請する際は、10種類の補助対象経費を活用し、販路開拓や生産性向上に繋がる事業計画を立てることになります。その際、経費項目の中のウェブサイト関連費のみでの申請はできないため、他の経費と組み合わせて申請する必要があります。
また、補助金額の計算は、申請枠ごとの「補助率」や「補助上限額」に沿って算出します。その際に申請できるウェブサイト関連費の上限額は、申請する補助金額の全体の1/4です。申請に必要な書類の準備は、地域の商工会議所や商工会の支援を受けながら進めましょう。