IT導入補助金とは?図解を用いてわかりやすく解説
2024/05/23
2022/6/17
ITツールを導入を検討している人の中には、補助金を利用して導入費用を抑えたい人もいますよね。その際、ITツールの導入にIT導入補助金を利用できると耳にしたことがある人もいるでしょう。
当記事では、IT導入補助金とは何かを解説しています。IT導入補助金の仕組みがわかりやすいように図解を交えて解説しているため、IT導入補助金とは何かを知りたい人は参考にしてみてください。
目次
生産性向上につながるITツールの導入費用を支援する制度
IT導入補助金とは、生産性向上につながるITツールの導入費用を支援する制度のことです。「ソフトウェア」「ハードウェア」「サービス」などを導入することにより、生産性向上を見込める場合に利用できる補助金です。
【IT導入補助金の仕組み】
IT導入補助金は、事業の生産性向上を見据えたITツールを導入する場合に利用できる補助金です。生産性向上を見据えたITツールを導入することにより、業績の向上を見込めるため、「被用者保険の適応拡大」や「賃上げ」など国の制度変更へ対応する際の負担を軽減できます。
ただし、IT導入補助金は審査を通過する必要があるため、誰でも受給できる補助金ではありません。IT導入補助金の目的に合わない場合は審査に通過できない可能性もあるため、申請を検討している人はITツールの導入により生産性向上を見据えることができるかを考えてみましょう。
IT導入補助金を活用したITツールの導入事例
IT導入補助金2024の公式サイトでは過去のIT導入補助金の利用における「ITツール活用事例」を公開しています。過去のIT導入補助金も目的は大きく変わらないため、IT導入補助金の利用を検討している人は、過去の活用事例を参考にしてみましょう。
IT導入補助金において公開している「ITツール活用事例」は、審査を通過して実際に補助金を受給した事業者の事例です。実際に審査を通過した事業者の事例から、どのような課題を持つ事業者が、どのようなITツールを導入しているのかを確認できます。
過去の事例において、IT導入補助金に採択された事業者は経営課題に合わせたITツールを導入している傾向にあります。経営課題に合ったITツールの導入により「業務の効率化」「経費の削減」「販路の拡大」などの効果を得られ生産性向上にもつながります。
過去の採択事例はIT導入補助金を利用する上での参考になる可能性があります。「ITツール活用事例」には業種ごとの参考になる事例が記載されているため、IT導入補助金への申請を検討している人は、過去の事例からIT導入補助金を利用するイメージを深めてみましょう。
業務を効率化した事例
IT導入補助金の活用事例にはITツールを導入することにより、業務の効率化をした事例があります。業務の負担の大きいことが経営課題の場合、経営課題に合ったITツールを導入することにより業務の効率化が期待できます。
たとえば、経理業務に特化したITツールを導入した事例では、経理業務の効率化につながっています。ITツールの導入により、会計処理の入力作業を自動化できるようになったため、経理担当による会計処理の手入力作業の負担が減りました。
また、保育業に特化したITツールを導入した事例では、保育業の情報管理の効率化につながっています。ITツールの導入により、保育業の情報をデータとして一元管理できるようになったため、保育士の情報管理の負担が減りました。
業務の効率化により他の作業に充てる時間が増えるため、生産性向上も期待できます。ITツールの導入から業務を効率化した事例もあるため、業務に負担を感じている人はIT導入補助金を利用して業務効率化につながるITツールの導入を検討してみましょう。
経費を削減した事例
IT導入補助金の活用事例にはITツールを導入することにより、経費の削減をした事例があります。不要な経費を抱えていることが経営課題の場合、経営課題に合ったITツールを導入することにより経費の削減が期待できます。
たとえば、クラウド型のITツールを導入した事例では、紙の経費削減につながっています。ITツールの導入により、資料をデータとして保存できるようになったため、資料作成の際に紙を利用することが減りました。
また、リモートワークに対応できるITツールを導入した事例では、オフィスの利用料の経費削減につながっています。ITツールの導入により、従業員の自宅から業務を実施できるようになったため、オフィスに出社しない従業員の席を設けなくてもよくなりました。
経費の削減により、売り上げが変わらなくても利益が増えることになるため、生産性向上も期待できます。ITツールの導入から経費を削減した事例もあるため、無駄に感じる経費がある人はIT導入補助金を利用して経費の削減につながるITツールの導入を検討してみましょう。
販路を開拓した事例
IT導入補助金の活用事例にはITツールを導入することにより、販路の開拓をした事例があります。新規顧客を獲得できていないことが経営課題の場合、経営課題に合ったITツールを導入することにより販路の開拓が期待できます。
たとえば、オンライン予約に対応できるソフトウェアを導入した事例では、web利用者の顧客を増やす販路の開拓につながっています。ITツールの導入により、web上からの予約を実施できるようになったため、webを利用している人からの予約が増えました。
また、リモート営業に対応できるソフトウェアを導入した事例では、全国の顧客を増やす販路の開拓につながっています。ITツールの導入により、地域を問わずに営業を実施できるようになったため、webを利用して問い合わせをしてくれる見込み顧客が増えました。
販路の開拓により、新規顧客の獲得につながり売り上げが増えることになるため、生産性向上も期待できます。ITツールの導入から販路の開拓につながる事例もあるため、顧客を増やしたい人はIT導入補助金を利用して販路の開拓につながるITツールの導入を検討してみましょう。
対象者は中小企業や小規模事業者
IT導入補助金の対象者は、中小企業や小規模事業者に該当する事業者です。IT導入補助金は経済産業省に属する独立行政法人中小企業基盤整備機構が、中小企業や小規模事業者の生産性向上の取り組みのひとつとしてIT導入補助金の制度を設けているからです。
業種 | 資本金 (以下) |
従業員 (以下) |
中小企業 | ||
|
3億円 | 300人 |
|
1億円 | 100人 |
|
5,000万円 | 100人 |
|
5,000万円 | 50人 |
|
3億円 | 900人 |
|
3億円 | 300人 |
|
5,000万円 | 200人 |
|
3億円 | 300人 |
|
–
|
300人 |
|
100人 | |
|
主たる業種に
記載の従業員規模 |
|
小規模事業者 | ||
|
– | 5人 |
|
20人 |
参考:IT導入補助金公式サイト「IT導入補助金とは>補助対象者」
対象者となる事業規模は、業種ごとに定められている「資本金」と「従業員」から判断できます。IT導入補助金を利用するには、自社の資本金額や従業員数が中小企業または小規模事業者に該当する必要があります。
IT導入補助金を利用するためには、中小企業や小規模事業者の定義に該当している必要があります。IT導入補助金は事業規模によって利用できない人もいるため、中小企業や小規模事業者に該当するかを知りたい人は自社の資本金額と従業員数を確認しましょう。
対象外の事業者になる可能性もある
中小企業や小規模事業者に該当する事業者であっても、対象外の事業者に該当する可能性があります。事業規模の要件を満たしていても申請できない場合があるため、IT導入補助金を利用したい人は対象外となる事業者の項目も押さえておきましょう。
|
参考:IT導入補助金2024 各枠の「公募要領」|IT導入補助金
たとえば、対象外の事業者に該当する人は、IT導入補助金を利用できません。対象外の事業者にある反社会勢力とのつながりや宗教法人としての活動している人は、その他の対象者の条件を満たしている場合であっても、IT導入補助金に申請できなくなる可能性があります。
IT導入補助金に申請できる事業者は、対象外となる事業者の条件に該当していない必要があります。中小企業や小規模事業者であっても対象外の事業者になる可能性もあるため、IT導入補助金への申請を検討している人は対象外の事業者の特徴を押さえておきましょう。
IT導入補助金は4つの申請枠に分けられる
IT導入補助金は4つの申請枠に分かれています。IT導入補助金の4つの申請枠はそれぞれ異なる特徴を持っているため、IT導入補助金の利用を考えている人は申請を検討している申請枠の特徴を確認してみましょう。
【IT導入補助金の申請枠の種類】
IT導入補助金全体としての目的は生産性向上ですが、それぞれの申請枠ごとにも特徴があります。インボイス制度への対応を進めるためのインボイス枠や、セキュリティ強化を進めるためのセキュリティ対策推進枠など申請枠ごとに特徴が異なります。
IT導入補助金の申請枠は「通常枠」「インボイス枠」「セキュリティ対策推進枠」「複数社連携IT導入類型」です。4種類いずれかの申請枠を選択して申請する必要があるため、IT導入補助金の利用を検討している人はそれぞれの申請枠の概要を確認しましょう。
通常枠
通常枠は「働き方改革」「被用者保険の適用拡大」「賃上げ」「インボイスの導入」などの国の制度変更に対応するための申請枠です。国の制度変更に幅広く対応するために、自社の課題に合ったITツールを導入し、生産性向上を図る申請枠になります。
項目 | 内容 |
対象経費 |
「顧客対応・販売支援」
|
補助額 | 5万円~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 |
参考:IT導入補助金2024 公募要領 通常枠|IT導入補助金2024
通常枠の特徴は、対象となるソフトウェアの種類が豊富なことです。顧客対応や会計などの特定の業務のソフトウェアだけでなく、介護や建築などの特定の業種に特化したソフトウェアも補助対象になります。
また、通常枠はソフトウェア導入費用の最大半額を補助金として受給できます。ソフトウェアの購入費用だけでなく、オプションや役務などのソフトウェアの導入関連費を含めた合計金額に対して最大半額を補助金として受給できます。
通常枠は、他の申請枠と比べて対象のソフトウェアの種類が豊富な申請枠です。通常枠は対象となるソフトウェアの種類が豊富なため、自社の課題に合ったソフトウェアの導入を考えている人は通常枠への申請を検討してみましょう。
インボイス枠
インボイス枠は、インボイス制度へ対応するための申請枠です。国の制度変更のひとつであるインボイス制度への対応を推進するための枠であり、対象経費はインボイスに特化したITツールに限られているものの、通常枠と比較して補助率は高く設定されています。
項目 | 内容 | |
インボイス対応類型
|
対象経費 |
|
補助額 | (下限なし)~350万円以下 | |
補助率 | 4/5~1/2 | |
電子取引類型
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対象経費 |
|
補助額 | (下限なし)~350万円以下 | |
補助率 | 2/3~1/2 |
参考1:IT導入補助金2024 公募要領 インボイス枠(インボイス対応類型)|IT導入補助金
参考2:IT導入補助金2024 公募要領 インボイス枠(電子取引類型)|IT導入補助金
インボイス枠の特徴は、「インボイス対応類型」と「電子取引類型」の2種類の申請類型に分けられていることです。インボイス制度に対応するための「インボイス対応類型」と、受発注取引のインボイス制度に対応するための「電子取引類型」に分けられます。
また、インボイス枠はITツールの導入費用に対して最大8割の補助金を受給できます。インボイス制度への対応を推進するために、通常枠やセキュリティ対策推進枠と比べて、補助率が高い申請枠です。
インボイス枠はインボイス制度への対応を強力に推進しているため、他の申請枠よりも補助金の受給額が多くなる傾向にあります。インボイス枠はインボイス対応類型と電子取引類型があるため、インボイス枠へ申請する人は2つの申請類型のどちらに該当するかを確認しましょう。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃に対するセキュリティ対策を強化するための申請枠です。IT導入補助金の目的である生産性向上に対して、サイバー攻撃により生産性向上を阻害されるリスクを避けるために、セキュリティを強化する申請枠を設けています。
項目 | 内容 |
対象経費 |
|
補助額 | 5万円~100万円以下 |
補助率 | 1/2以内 |
参考:IT導入補助金2024 公募要領 セキュリティ対策推進枠|IT導入補助金
セキュリティ対策推進枠の特徴は、サイバーセキュリティお助け隊サービスリストに登録されているサービスが対象であることです。ネットワーク異常の「見守り」「駆け付け」「保険」などのサイバーセキュリティを強化するためのサービスが対象です。
また、セキュリティ対策推進枠はセキュリティサービスの利用料に対して最大半額を補助金として受給できます。サービス利用料は最大2年分までが補助対象になるため、半額の補助金を受給できた場合、1年分のサービス利用料を補助金として受給できます。
セキュリティ対策推進枠はセキュリティ強化のサービスを導入することにより、事業継続を脅かすリスクを減らすことにつながります。サイバー攻撃による供給制限や価格高騰のリスク低減のため、セキュリティ強化をしたい人はセキュリティ対策推進枠への申請を検討してみましょう。
複数社連携IT導入枠
複数社連携IT導入枠は、複数の事業者を一斉にデジタル化するための申請枠です。サプライチェーンや商業集積地全体の生産性向上やデジタル化を進めるために、複数の事業者が一斉に利用できる申請枠を設けています。
項目 | 内容 |
対象経費 |
|
補助額 | (下限なし)~3200万円以下 |
補助率 | 4/5~1/2 |
参考:IT導入補助金2024 公募要領 複数社連携IT導入枠|IT導入補助金
複数社連携IT導入枠の特徴は、業務や地域のつながりのある複数の事業者が一斉にデジタル化を進めるための申請枠であることです。商店街や取引関係のある会社などの複数の事業者において、一斉にデジタル化することにより全体的な生産性向上の期待ができます。
また、複数社連携IT導入枠は申請する事業者数ごとに補助金の受給額が異なります。参加する事業者の数に応じて受給できる補助額の上限が増える仕組みとなっており、最大3,200万円が補助されます。
複数社連携IT導入枠は、複数の事業者の協力によって申請する枠のため、単独事業者での申請はできません。団体の事業者が申請する枠のため、サプライチェーンや商業集積地においてITツールの導入を考えている人は複数社連携IT導入枠への申請を検討してみましょう。
申請を検討している人はIT導入支援事業者に相談する
IT導入補助金への申請を検討している事業者は、IT導入支援事業者に相談する必要があります。IT導入補助金に申請するには、申請者とIT導入支援事業者が協力して申請手続きを行う必要があるからです。
IT導入支援事業者とは、IT導入補助金事務局からIT導入補助金においてのITツールの提供を認められた事業者のことです。IT導入支援事業者はITツールの提供だけでなく、IT導入補助金の利用における申請者のサポートも行っています。
【IT導入支援事業者と申請者の関係図】
IT導入支援事業者に相談する際は、IT導入補助金を利用したITツールの導入を検討している旨を伝えます。IT導入支援事業者に相談することにより、導入できるITツールの説明やIT導入補助金の手続きの説明を受けられます。
申請する際は、申請者とIT導入支援事業者が補助事業のパートナーとして手続きを行う必要があります。申請を検討している人はIT導入支援事業者との相談をした後、補助事業のパートナーになってほしいIT導入支援事業者とともに申請を行います。
申請を検討している人は、依頼するIT導入支援事業者を見つける必要があります。IT導入支援事業者の探し方を知りたい人は「IT導入支援事業者とは?IT導入補助金の申請における選び方と探し方を解説」を参考にしてみましょう。
この記事のまとめ
IT導入補助金とは、生産性向上につながるITツールの導入費用を支援する制度のことです。経済産業省に属する独立行政法人中小企業基盤整備機構が、中小企業や小規模事業者における生産性向上の取り組みのひとつとしてIT導入補助金の制度を設けています。
IT導入補助金の申請枠は「通常枠」「インボイス枠」「セキュリティ対策推進枠」「複数社連携IT導入類型」です。4種類の申請枠はそれぞれ概要が異なり、IT導入補助金を利用したい人は4種類いずれかの申請枠を選択して交付申請を行います。
IT導入補助金への申請を検討している人は、相談するIT導入支援事業者を見つける必要があります。IT導入補助金に申請するには、申請者とIT導入支援事業者が協力して申請手続きを行う必要があることに留意しておきましょう。