IT導入補助金を利用して弥生会計を導入するときのポイントを解説
2024/06/24
2024/5/30
弥生会計は登録ユーザー310万人以上の業務ソフト「弥生」シリーズのひとつであり、IT導入補助金の補助対象となるITツールです。IT導入補助金を利用すればツール導入費の最大8割を補助金として受け取ることができるため、弥生会計を購入にかかる自己負担を軽減できます。
当記事では、IT導入補助金を利用して弥生会計を導入するときのポイントを解説します。弥生会計の導入にIT導入補助金を利用したいと考えている人は参考にしてみてください。
なお、当記事はIT導入補助金2024の公式サイトをもとに作成しています。
目次
IT導入補助金を利用して弥生会計を導入するときのポイントを押さえる
IT導入補助金を利用して弥生会計を導入するには、いくつかのポイントがあります。IT導入補助金を受給するためにはさまざまな条件を満たして申請する必要があるため、IT導入補助金を利用して弥生会計を導入するときのポイントを押さえておきましょう。
【IT導入補助金を利用して弥生会計を導入するときのポイント】
- 申請できる弥生会計の種類を確認する
- 申請要件を満たせるかどうかを確認する
- 弥生会計が補助対象となる申請枠を確認する
- 受給できる金額を確認する
IT導入補助金は事業者の労働生産性向上や業務効率化につながる取り組みを支援する制度であり、企業だけでなく個人事業主も対象となります。IT導入補助金を利用して希望の弥生会計を導入できるよう、申請のために押さえるべきポイントを確認して不備のないよう申請しましょう。
申請できる弥生会計の種類を確認する
IT導入補助金において補助対象となる経費は、IT導入補助金の事務局に事前登録されているITツールに限られます。弥生会計には複数の種類があるため、IT導入補助金を利用して弥生会計を導入予定の人は、導入したい弥生会計の製品が対象ツールとして登録されているかどうかを確認しておきましょう。
【IT導入補助金2024において対象となる弥生会計製品】
種類 |
概要 |
弥生会計24 (スタンダード・プロフェッショナル) |
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弥生会計ネットワーク |
|
弥生会計オンライン |
|
IT導入補助金2024において、ITツールとして登録されている弥生会計の種類は「弥生会計24」「弥生会計オンライン」「弥生会計ネットワーク」です。デスクトップアプリの購入費用だけでなく「弥生会計オンライン」のクラウド利用料も補助対象となっています。
また、ITツールの導入はIT導入支援事業者から行う必要がありますが、IT導入支援事業者によって取り扱うITツールが異なります。弥生会計の取り扱いがない場合もあるため、依頼したいIT導入支援事業者が弥生会計を取り扱っているか事前に確認が必要です。
なお、弥生会計をはじめとする弥生シリーズにはさまざまな業務ソフトが展開されています。販売管理に利用できる「弥生販売」や給与計算に利用できる「弥生給与」などもIT導入補助金の対象ツールとなっているため、あわせて導入を検討してみてください。
申請要件を満たせるかどうかを確認する
IT導入補助金に申請する場合、公募要領に定められている申請のための要件を満たす必要があります。要件には「申請者の要件」「事業の要件」「経費の要件」など複数の項目があり、すべての要件を満たさなければIT導入補助金を受給することはできません。
【IT導入補助金の申請要件】
要件 |
概要 |
申請者の要件 |
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補助事業の要件 |
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経費の要件 |
|
申請者の要件は、IT導入補助金の申請時点において申請者が満たすべき要件です。現在の事業規模や最低賃金に関する要件のほか、申請の際に必要となる手続きを実施することなどが要件として定められています。
補助事業の要件は、補助金を受給して取り組む事業において満たすべき要件です。共通の要件として生産性向上や業務効率化に取り組む事業であることが定められているほか、事業の目的に応じて申請者が選択する申請枠ごとにも要件が定められています。
経費の要件は、IT導入補助金において補助対象として認められる経費の要件です。弥生会計を導入する場合、ITツールを提供する「IT導入支援事業者」を通じて購入したものでなければ補助対象外となり、IT導入補助金を利用することはできません。
なお、IT導入補助金の公募要領には対象者の要件だけでなく対象外となる要件も定められています。対象者の要件を満たしていても、対象外となる要件に該当する項目がある場合はIT導入補助金を利用できない点に留意しておきましょう。
弥生会計が補助対象となる申請枠を確認する
IT導入補助金に申請する場合、自社の条件に合う申請枠をひとつ選び申請を行います。申請枠によって対象となるITツールが異なるため、弥生会計の導入にIT導入補助金を利用したい人は、弥生会計が補助対象となる申請枠を確認しておきましょう。
【弥生会計が補助対象となる3つの申請枠】
枠 |
概要 |
通常枠 |
自社の課題にあったITツールの導入により業務効率化や売上の向上をサポートする枠。 他の枠よりも対象となるソフトウェアの種類が多い |
インボイス枠 (インボイス対応類型) |
インボイス制度に対応した企業間取引におけるデジタル化をサポートする枠。 「会計」「受発注」「決済」いずれかの機能を有するソフトウェアに加え、パソコンやタブレット等のハードウェアも補助対象となる |
複数社連携IT導入枠 |
10社以上の中小企業者が連携してITツールを導入し、生産性向上を図る取り組みを支援する枠。 事業者単独での申請は不可 |
通常枠は、申請者が自社の課題に合ったITツールの導入を支援する枠です。ほかの申請枠よりも対象となるソフトウェアの種類が豊富なため、弥生会計以外にも業務の課題解決につながるソフトウェアを複数導入したい人に向いています。
インボイス枠は、事業におけるインボイス制度への対応を支援する枠です。ソフトウェアだけでなくハードウェアの導入にも利用できる枠であるため、弥生会計を使用するためのパソコンもあわせて導入したい人に向いています。
複数社連携IT導入枠は、複数の事業者が連携して地域のDX化や生産性向上を目指す取り組みを支援する枠です。ソフトウェアとハードウェアに加えて、効果的な連携をはかるための専門家費なども対象となりますが、事業者が単独で申請することはできません。
弥生会計を導入する場合、事業者が申請できる枠は「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型)」「複数社連携IT導入枠」です。枠によって対象となる事業者や導入できるITツールが異なるため、自社の状況や導入したいITツールに合わせて申請枠を選びましょう。
受給できる金額を確認する
IT導入補助金では、導入するITツールの費用すべてが補助されるわけではありません。受給できる金額は申請枠ごとに定められた補助率や補助額をもとに算出されるため、IT導入補助金へ申請予定の人は自社の条件においていくらの補助金を受け取れるのか確認しましょう。
【申請枠ごとの補助率と補助額】
枠 |
補助額 |
補助率 |
通常枠 |
5万円以上150万円未満 【4機能以上のソフトウェアを申請する場合】 150万円以上450万円以下 |
1/2以内 |
インボイス枠 (インボイス対応類型) |
最大350万円 |
【50万円以下】 中小企業:3/4以内 小規模事業者:4/5以内 【50万円超〜350万円以下】 2/3以内 |
複数社連携IT導入枠 |
最大3,200万円 |
1/2~4/5以内 (経費項目や事業規模により異なる) |
受給できる金額は「経費×補助率」の計算式によって求めることができます。IT導入補助金を利用した場合に受給できる金額を知りたい人は、導入したいITツールの金額に対して申請する枠に定められている補助率を掛けて計算をします。
たとえば、通常枠において弥生会計の導入費用18万円を申請する場合、受け取れる補助金額は経費に補助率を掛けた「18万円×1/2=9万円」となります。補助額の範囲である5万円以上150万円未満の範囲内のため、9万円を受給できます。
ただし、申請枠ごとに補助額の範囲が定められており、経費に補助率を掛けた金額が上限額を超える場合は上限額までの支給となります。また、企業規模や申請するITツールによっても補助率や補助上限額が変わるため。自社の条件にあわせて計算する必要があります。
IT導入補助金を利用して弥生会計を導入する場合、弥生会計の導入費用のすべてを補助金によってまかなうことはできません。弥生会計の導入にIT導入補助金を利用した場合に、自己負担がいくらになるかを事前に確認しておきましょう。
ポイントを押さえた人はIT導入補助金を利用するときの流れを確認する
弥生会計を導入するときのポイントを押さえた人は、IT導入補助金を利用するときの流れを確認しておきましょう。IT導入補助金では各種手続きやITツール導入のタイミングが決められており、手順に沿って申請をおこなわなかった場合に補助金を受け取れなくなる恐れがあるためです。
【IT導入補助金の利用の流れ】
- 申請に必要な3つの手続きをおこなう
- 必要書類を準備する
- IT導入支援事業者を選定する
- 交付申請をおこなう(電子申請)
- 交付決定後にITツールを導入して補助事業を実施する
- 事業実績報告後に入金される
なお、IT導入補助金への申請は申請マイページを利用した電子申請です。事業計画や必要書類はすべてデータで提出することとなり、郵送や電話での申請はできないことを前提として覚えておきましょう。
①申請に必要な3つの手続きをおこなう
IT導入補助金では、申請に必要な3つの手続きがあります。これらは公募要領において「申請要件」として定められており、実施しなければIT導入補助金への申請ができないため、申請の前に必ず手続きを済ませておきましょう。
【申請に必要な3つの手続き】
項目 |
概要 |
「gBizIDプライム」アカウントの取得 |
|
「SECURITY ACTION」宣言の実施 |
|
「みらデジ経営チェック」の実施 (※通常枠のみ必須要件) |
|
gBizIDプライムアカウントは行政サービスにログインするためのアカウントであり、IT導入補助金の申請に必須となります。IDの発行には約2週間を要するほか、印鑑(登録)証明書の原本、申請書、メールアドレス、SMSの受信が可能な電話番号が必要です。
SECURITY ACTIONは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施している情報セキュリティ対策への取り組みを自己宣言する制度です。交付申請時に宣言済アカウントIDの提出が求められ、入力をしないと申請を進めることができません。
みらデジ経営チェックは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する経営診断ツールです。デジ経営チェックを行う際にはみらデジへの事業者登録を行った上で、事前に取得したgBizIDプライムを連携させる必要があります。
3つの手続きは、申請者自身で行うことができます。交付申請の前であれば実施するタイミングに決まりはありませんが、gBizIDプライムアカウントの発行はみらデジ経営チェックの前に済ませておく必要がある点に留意し余裕を持って申請しましょう。
②必要書類を準備する
事前の手続きが済んだら、申請時に提出する書類を準備しましょう。必要書類は法人と個人事業主で異なるほか、申請する枠によって追加の書類が必要となる場合があります。
【IT導入補助金の申請における必要書類】
申請者 |
必要書類 |
法人 |
① 履歴事項全部証明書 ② 法人税の納税証明書(その1またはその2) |
個人事業主 |
① 運転免許証または運転経歴証明書または住民票 ② 所得税の納税証明書(その1またはその2) ③ 確定申告書 |
電子取引類型申請者 |
①取引先アカウント一覧 ②アカウントを供与する取引先ごとに提出が必要な書類 |
それぞれの書類には対象期間や様式などが指定されており、規定を満たしていない書類での申請は認められません。書類に関する注意点は「交付申請の手引き」に記載があるため、書類を準備する際にはかならず確認しておきましょう。
また、電子取引類型への申請者は、共通の必要書類に加えて取引先アカウント一覧と取引先ごとの書類が必要です。取引先が法人の場合は法人の必要書類、取引先が個人事業主の場合は個人事業主の必要書類をそれぞれの取引先から取得しなければなりません。
なお、IT導入補助金の申請は電子申請であり、必要書類は交付申請時に電子データとして添付します。データ容量やファイル形式にも指定があるため、データの容量が規定を超える場合などは事務局へ問い合わせてみてください。
③IT導入支援事業者を選定する
IT導入補助金の申請には、IT導入支援事業者のサポートが必要です。IT導入支援事業者は全国に数多く存在するため、選定する際のポイントを確認した上で自社に合った事業者へ依頼しましょう。
【IT導入支援事業者を選ぶポイント】
- 導入したいITツールの取り扱いがあるか
- サポート内容は充分か
- サポート費用は適切か
1つめのポイントは、導入したいITツールを取り扱っているかどうかです。原則として1回の申請につき依頼できるIT導入支援事業者は1社のみのため、複数のITツールを導入したい場合は希望のITツールをすべて取り扱っているIT導入支援事業者に依頼する必要があります。
2つ目のポイントは、サポート内容が自社にとって充分かどうかです。サポート範囲はIT導入支援事業者によって異なり、申請までのサポートとなる事業者もあれば補助金受給後の効果報告までサポートしてもらえる事業者もあります。
3つ目のポイントは、サポート費用が適切であるかどうかです。サポート費用はIT導入支援事業者によって異なるため、複数のIT導入支援事業者を比較して相場を確認した上で、自社の予算に合った事業者へ依頼することが望ましいです。
IT導入支援事業者を探す場合は、IT導入補助金の公式サイトにある「ITツール・IT導入支援事業者検索」を利用できます。ITツール名から取り扱いのある支援事業者を探せるため、弥生会計を取り扱うIT導入支援事業者を探したい場合に活用してみてください。
④交付申請をおこなう
申請の準備が整ったら、IT導入支援事業者と協力しながら交付申請をおこないましょう。IT導入補助金の申請は電子申請であり、郵送や電話による申込は受付けていません。
【交付申請の手順】
- IT導入支援事業者と相談しながら事業計画を策定する
- IT導入支援事業者から『申請マイページ』の招待を受け基本情報を入力する
- 交付申請に必要となる情報入力と書類添付をおこなう
- IT導入支援事業者が導入するITツール情報と事業計画値を入力する
- 『申請マイページ』上で入力内容の確認と申請に対する宣誓を行い事務局へ提出する
交付申請はIT導入支援事業者と相談のうえ事業計画を策定し、必要書類とあわせて申請マイ―ページから提出します。フォームへの入力はおもに申請者が実施しますが、申請マイページへの招待やITツール情報の入力など一部の工程はIT導入支援事業者がおこないます。
なお、複数社連携IT導入枠については申請手順がほかの申請枠と異なるほか、申請枠によっても入力内容の一部が異なる場合があります。交付申請の際には公募要領や交付申請の手引きから申請する枠の情報を確認し、誤りのないように注意してください。
⑤交付決定後にITツールを導入して補助事業を実施する
交付申請の審査を通過し、事務局から交付決定を受けたらITツールの導入が可能となります。交付申請において協力を依頼したIT導入支援事業者を通じて、申請したITツールの発注・契約・支払いをおこないましょう。
IT導入補助金において補助対象となるITツールは、交付決定後に購入したものに限られます。交付決定前に発注・契約・支払い等をおこなった場合は、採択された場合でも補助金の交付を受けることができないため注意が必要です。
ITツールの導入後は、交付申請において提出した事業計画に基づいて補助事業を実施します。補助事業の実施期間は交付決定からおおむね6ヶ月程度ですが、公募回によって異なるため、「事業スケジュール」から申請した公募回の補助事業実施期間を確認してください。
なお、ITツールの購入時点では補助金は入金されていません。IT導入補助金は後払いの制度であり、ITツールの購入時には全額分の自己資金が必要となるため、資金に不安がある人は補助金を受給するまでのつなぎ融資の利用も検討してみてください。
⑥事業実績報告が完了したら補助金が入金される
補助事業の実施期間終了後は、事業実績報告をおこないます。実績報告はITツールを適切に導入して事業を実施したことを確認するものであり、ITツールの支払いに係る証憑類やITツールを利用していることを証明するキャプチャ等の提出が求められます。
実績報告の内容をもとに、最終的な補助金額を決定する確定検査がおこなわれます。必要に応じて立入検査やヒアリングが行われる場合があるため、要請があった場合は速やかに対応しましょう。
確定検査において補助金の交付が認められると、補助金交付決定額が申請者へ通知されます。申請者がSMSによる認証をおこなうことにより補助金額が確定し、認証から約1か月後に指定の銀行口座へ補助金が振り込まれます。
補助金の入金後も効果報告が必要となる
補助金の入金後も、1年〜3年に渡り実績報告をおこなう必要があります。報告内容や報告回数は申請枠や申請内容によって異なりますが、すべての申請者が必ずおこなわなければならない報告です。
実績報告では、申請マイページから補助事業による効果や導入したITツールの使用状況などを報告します。実績報告において事業計画策定時に設定した目標を達成できなかった場合には、補助金の返還を求められる可能性がある点に留意しておきましょう。
なお、効果報告の詳細は「IT導入補助金における効果報告とは?枠ごとの内容と期間を解説」の記事で詳しく解説しています。IT導入補助金における効果報告の内容や流れを確認しておきたい人は参考にしてみてください。
まとめ
弥生会計を導入する際に、IT導入補助金を利用できる可能性があります。IT導入補助金は中小企業等における経営課題解決につながるITツールの導入を支援する補助金制度であり、ITツール導入費用の最大8割を補助金として受け取ることができます。
IT導入補助金を利用して弥生会計を導入するときのポイントは「①申請要件を満たせるかどうか」「②弥生会計が補助対象となる申請枠」「③受給できる金額」「④申請できる弥生会計の種類」の4点を確認することです。
IT導入補助金に申請するには様々な要件を満たす必要があるほか、弥生会計を取り扱っていないIT導入支援事業者もいるため、申請の際は自社の条件でIT導入補助金による弥生会計の導入が可能か事前に確認しなければなりません。
IT導入補助金は申請者全員がもらえるものではなく、IT導入補助金の要件をすべて満たし、目的に沿った取り組みを実施する事業者のみが受給できます。申請にはさまざまな規定があるため、申請要件や申請方法を事前に確認しておきましょう。