賃上げ目標が未達だとIT導入補助金がもらえない?枠ごとの扱いも解説
2024/04/04
2023/10/31
IT導入補助金の賃上げ目標とは、ITツールを導入することで生産性を向上させ、従業員に支払う賃金を上げる目標のことです。賃上げ目標は、必ず策定しなければいけない枠と策定したら審査時に加点される枠もあります。
IT導入補助金に申請したいと思っている人の中には、賃上げ目標が未達成になるとどうなるのか気になる人もいますよね。その際、補助金がもらえない可能性があるならIT導入補助金へ申請するかどうかを考えるという人もいるでしょう。
当記事では、IT導入補助金のどの枠で賃上げ目標が未達成になると補助金がもらえない可能性があるのかを解説します。また、賃上げ目標とは何かも解説しているため、これからIT導入補助金に申請する人は参考にしてみてください。
なお、この記事はIT導入補助金2024の通常枠の「公募要領」をもとに作成しています。
目次
IT導入補助金の賃上げ目標は枠によって扱いが異なる
IT導入補助金の賃上げ目標は、枠によって扱いが異なります。賃上げ目標の達成が必須となる場合と、加点項目として扱われる場合があります。
【IT導入補助金2024の賃上げ目標の概要】
項目 | 概要 | 枠 |
必須要件 |
|
|
加点項目 |
|
|
参考:各枠の「公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト
通常枠で補助金の申請額が150万円以上になる事業者の場合、賃上げ目標は必須項目です。補助金を受け取るためには、4機能以上あるITツールを導入したうえで、賃上げ目標を達成する必要があります。
他の枠では、賃上げ目標は加点項目として扱われます。加点項目とは、申請に必須ではないものの、賃上げ目標を策定すれば採択される可能性を高めることができる要件のことです。
IT導入補助金では、枠によって賃上げ目標の扱いが異なり、通常枠で補助金の申請額が150万円以上になる事業者のみ、必須要件として設定されています。他の枠でも、賃上げ目標を設定することで申請の際に加点となるため、採択される可能性を高めるために賃上げ目標の設定を検討してみましょう。
なお、複数社連携IT導入枠には、賃上げ目標がありません。複数社連携IT導入枠で少しでも採択される可能性を高めたい人は、国の推進する生産性向上や働き方改革につながる取り組みを実施しましょう。
150万円以上申請する事業者は賃上げ目標が未達だと補助金が返還になる
通常枠で補助金の申請額が150万円以上になる事業者は、賃上げ目標が未達成になると補助金の返還が求められます。賃上げ目標を立てて達成することが必須要件になっているため、未達成になると補助金を全額返還しなければいけません。
通常枠に150万円未満の補助金額で、賃上げ目標も策定して申請した事業者の場合は、審査の際に加点されますが、未達成になったとしても補助金の返還は不要です。ただし、通常枠に150万円以上の補助金額で申請した人は、必ず賃上げ目標を策定してから申請を行い、効果報告の際に未達成だと補助金の返還を求められます。
過去のIT導入補助金で通常枠B類型や特別枠C-2類型に申請した人も、効果報告で賃上げ目標が未達成だと補助金の返還が必要です。過去に申請した人もこれから申請する人も賃上げが必須要件の枠では、未達成になると補助金をもらえないと覚えておきましょう。
なお、賃上げ目標に関わらず、交付申請の審査で不採択になると補助金を受け取れません。これから申請する人でIT導入補助金の審査に落ちる理由を確認しておきたい人は「IT導入補助金で不採択になる理由を特定して改善する方法を解説」を参考にしてみましょう。
賃上げ目標は2つの増加目標からなる
賃上げ目標は「給与支給総額」と「事業場最低賃金」の2つの増加目標からなります。増加目標の2つとも従業員の給料を上げるための目標で、賃上げ目標が必須である通常枠(150万円以上)に申請した人は、達成できなかった場合に補助金の返還が求められます。
【賃上げ目標が未達とみなされる場合】
|
参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト
ITツール導入後の数年間で、給与支給総額と事情場内最低賃金の従業員に支払った給与の増加目標を達成できなかった場合、補助金の返還を求められます。また、2つの増加目標を従業員に表明していなかったことが発覚した場合や、効果報告を忘れていた場合も賃上げ目標が未達成とみなされます。
給与支給総額と事業場内最低賃金の増加目標の両方が達成できた際に、正式に補助金が自社のお金になります。賃上げ目標が必須要件の通常枠B類型に申請する人は、賃上げ目標の達成以外に、従業員に対して賃上げ目標を表明する必要があることを留意しましょう。
なお、給与支給総と事業場内最低賃金の増加目標を報告するのは、ITツール導入をして補助金を受け取った後の効果報告のタイミングです。効果報告のスケジュールが気になる人は「IT導入補助金における効果報告とは?枠ごとの内容と期間を解説」を参考にしてみましょう。
給与支給総額は年率平均1.5%以上を増加させる
給与支給総額は、年率平均1.5%以上を増加させましょう。給与支給総額の効果報告は事業終了時に行い、未達成になると補助金の返還が求められるからです。
【給与支給総額が未達成になった場合の補助額返還の割合】
項目 |
補助額の返還の割合
|
1年度目で未達成の場合 |
-(報告の必要がない)
|
2年度目で未達成の場合 |
-(報告の必要がない)
|
3年度目で未達成の場合 | 全額返還 |
参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、IT導入補助金2024に申請する人あれば、2028年4月~7月に給与支給総額の報告を行います。報告補助金を100万円受け取った人で、賃上げが未達成の場合は、100万円全額の返還を求められます。
給与支給総額は、3年度目の効果報告で未達成になると、補助金の全額を返還しなければいけません。1年度目、2年度目の報告はありませんが、増加目標は年率平均1.5%であるため、3年目の効果報告で給与支給総額を4.5%以上増加させる必要があります。
なお、ITツールを導入しても交付申請時の目標通りに「付加価値額を伸ばせなかった」場合や「天災」などで給与支給総額の増加目標が未達成になった場合は、例外になる場合もあります。例外に該当する場合は、IT導入補助金事務局に相談してみましょう。
事業場内最低賃金は地域の最低賃金から30円増加させる
事業場内最低賃金は、地域の最低賃金から30円増加させる必要があります。事業場内最低賃金の効果報告は、事業実施期間中の3年間で毎年1回ずつ報告を行い、未達成になると補助金の返還が求められるからです。
【事業場内最低賃金が未達成になった場合の補助額返還の割合】
項目 |
補助額の返還の割合
|
1年度目で未達成の場合 | 全額返還 |
2年度目で未達成の場合 | 2/3返還 |
3年度目で未達成の場合 | 1/3返還 |
参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、事業場内最低賃金は、毎年3月時点のもの事業期間中の3年において毎年4月~7月に報告します。現時点(2024/04/04)の東京都の最低賃金は1113円のため、報告する各年で1143円を超える必要があります。
事業場内最低賃金の効果報告は、1年度目で未達成の場合は補助金の全額を返還しなければいけませんが、1年度目に達成し2年度目に未達成の場合は補助金の2/3の金額を返還します。事業場最低賃金の補助額返還の割合は、3回の効果報告の中で1年達成していくごとに、補助額の返還の割合が減ります。
なお、3年度目の効果報告で事業場内最低賃金と給与支給総額の増加目標が両方未達成の場合は、補助額の返還割合が多い方で補助額を返還します。そのため、賃上げ目標は両方達成しないと補助金の返還が求められる点に注意しましょう。
特定の事業者は賃上げ目標が適応外になる
特定の事業者は、賃上げ目標が必須要件となる枠でも適応外になります。賃上げ目標が適応外になることで、増加目標が両方とも未達成になっても補助金の返還が求められることはありません。
【賃上げ目標が必須要件の場合で適応外になる事業者】
|
参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、介護の施設サービス事業者や専修学校が、通常枠に150万円以上で申請した場合でも、賃上げ目標の達成が問われなくなるため、効果報告時の補助金返還のリスクが少なくなります。ただし、効果報告時に補助金の不正受給や虚偽の申告をしていた場合は、補助金の返還が必要になることを留意しておきましょう。
賃上げ目標が適応外になる人は、効果報告後の補助金の返還が必要なくなります。賃上げ目標が必須要件の通常枠(150万円以上)へ申請する人は、自社が賃上げ目標の達成をする必要があるかを確認しましょう。
この記事のまとめ
IT導入補助金の賃上げ目標とは、給与支給総額と事業場内最低賃金の増加目標のことです。賃上げ目標が必須要件の枠で未達成になると入金された補助金の一部の金額または全額の返還が求められます。
IT導入補助金2024で賃上げ目標が必須要件に該当する人は、補助金額150万円以上で通常枠に申請する人です。これから通常枠に補助金額150万円以上の申請を考えている人は、申請前に賃上げ目標の達成の見込みがついてから申請しましょう。