保育園はIT導入補助金を利用できる?要件と対象のツールを解説
2024/07/26
2024/2/5
保育園にITを取り入れたい人の中には、IT導入補助金に注目している人もいますよね。その際、「保育園はIT導入補助金の対象なのか」「どのような経費が補助されるのか」といった疑問もあるでしょう。
当記事では、IT導入補助金を利用できる保育園の要件を解説します。保育園が具体的に申請できるシステム(ITツール)も紹介するので、IT導入補助金を検討している保育園は当記事を参考にしてみてください。
なお、当記事はIT導入補助金2024の公式サイトにある各公募要領をもとに作成しています。
目次
自治体運営の保育園以外ならIT導入補助金の対象となる可能性がある
自治体運営の保育園以外ならIT導入補助金の対象となる可能性があります。IT導入補助金では自治体が運営する保育園は補助の対象外ですが、他の保育園は事業規模を満たせば対象事業者となります。
【IT導入補助金で対象となる保育園の種類と事業規模】
社会福祉法人の場合 | ||
対象可否 | 求められる事業規模 | |
〇 | 常時使用する従業員数:300人以下 | |
株式会社の場合 | ||
対象可否 | 求められる事業規模 | |
〇 | 資本金:3億円以下 | 常時使用する従業員数:300人以下 |
学校法人の場合 | ||
対象可否 | 求められる事業規模 | |
〇 | 常時使用する従業員数:300人以下 | |
自治体の場合 | ||
対象可否 | 求められる事業規模 | |
× | – |
参考:各枠の「資料ダウンロード」の公募要領|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、社会福祉法人の場合、常時使用する従業員数が300人以下なら、IT導入補助金の対象事業者です。社会福祉法人には資本金の定義がないため、常時使用の従業員数がクリアできれば対象事業者です。
一方、株式会社が運営する保育園の場合は、資本金が3億円以下で従業員数が300人以下なら、IT導入補助金の対象事業者です。保育園の形態が株式会社や合同会社なら、資本金と雇用する従業員数の両方をクリアすると、対象事業者になります。
保育園での保育士の数は、年齢別の子供の数に対して基準が設けられているため、ほとんどの保育園は対象事業者となります。ただし、大企業や自治体が運営する保育園は対象外です。IT導入補助金を検討する際は、保育園の形態と事業規模を確認してみましょう。
なお、大企業の場合、インボイス枠の電子取引類型であれば申請対象となります。中小企業者の定義の「資本金5千万円~3億円」「従業員数50人~300人」を超える事業者は、インボイス枠の電子取引類型の活用を検討してみてください。
対象の保育園なら申請要件を満たせば申請できる
IT導入補助金の対象になる保育園は申請要件を満たせば申請できます。そのため、IT導入補助金の対象事業者となる保育園は、申請前に申請要件をすべて満たしているかを確認してみましょう。
【IT導入補助金の申請要件】
|
※通常枠の申請要件より抜粋
参考:「通常枠の公募要領」|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、通常枠に150万円未満で申請する東京都の保育園の場合、保育園で働く保育士や職員の最低賃金は1,072円以上である必要があります。保育園で働く従業員の年間給与を計算し、人数で割った数値が最低賃金以上なら、申請要件の1つは満たせます。
一方、通常枠に150万円以上で申請する東京都の保育園の場合は、賃上げの要件「3年間以内に給与支給総額を年率平均1.5%以上」も満たす必要があります。通常枠に150万円以上で申請する保育園は、賃上げ計画を含む事業計画を申請時に提出しなければなりません。
IT導入補助金の申請要件は枠ごとに異なります。IT導入補助金に申請する際は、申請要件をすべて満たせるかを各枠の公募要領で確認してみましょう。
なお、公募要領とは、IT導入補助金の「条件や補助金額などの申請ルールがまとめられた資料」です。IT導入補助金2024の場合、公式サイトの上部「資料ダウンロード」よりダウンロードできるので、IT導入補助金に関心のある人は目を通しておきましょう。
IT導入補助金では保育園の悩みを解決できるシステムが導入できる
IT導入補助金では、保育園の悩みを解決できるシステムが導入できます。IT導入補助金の対象ツールには、「登降園管理システム」や「保育園支援システム」があります。これらのシステムを使って業務を効率化すれば、保育園の業務時間の短縮につながります。
【保育園向けのIT導入補助金で対象のITツール】
保育園の悩み | 解決が期待できるITツール/参考価格 |
|
幼稚園・保育園支援システム「延長せんせい」 /1,080,000円 |
|
Chi Reaff Space 小規模認可保育園 年間利用パック /240,000円 |
|
保育士バンク!パレット /1,100,000円 |
参考:「ITツール・IT導入支援事業者検索」|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、登園/降園時間と保育料の管理が悩みの場合、「保育園向け登降園・職員勤怠管理システム」の導入で解決できる可能性があります。なぜなら、同システムは保護者がタッチパネルに入力した登降園データを自動集計し、保育料の計算をしてくれるからです。
IT導入補助金で対象のITツールは複合的な機能をもつので、保育園向けのITツールにも複合的な機能があります。ITツールを選ぶ際は、できるだけ複数の製品を比較するようにしましょう。
なお、保育園がITツールを購入するタイミングは、交付決定を受けてからです。保育園は補助金を受け取る前に、ITツールの代金をIT導入支援事業者へ支払います。IT導入補助金で補助金が振り込まれるのは、交付決定から数か月先となるので、留意しておきましょう。
職員が利用しやすい機能があるかを確認する
保育園がITツールの検討をする際は、職員が利用しやすい機能があるかを確認しましょう。実際にITツールを保育園へ導入した際は、毎日使用する職員の使用感が良いことが大切だからです。
【保育園向けITツールの機能の例】
タッチパネル | |
導入前の現状 | 導入後のイメージ |
保育士が手作業で日誌に園児の登園/退園時間を記録する |
保護者がタッチパネルをタップすることで、自動的にITツールに登園/退勤時間が記録される |
シフト管理 | |
導入前の現状 | 導入後のイメージ |
園児の人数や年齢に合った保育士を配置するのが難しい場面があった |
過剰配置や保育士不足を防ぎ、適切な人数の保育士を配置できる |
手入力/音声入力 | |
導入前の現状 | 導入後のイメージ |
パソコン操作が苦手な職員がいて、なかなかシステム導入に踏み出せない |
タッチパネルや音声入力ができるため、パソコンになじみのない職員も利用しやすい |
集計 | |
導入前の現状 | 導入後のイメージ |
おやつ代、保育料を保育士が毎日記録し、月末に手動で計算している |
園児の登園記録から自動的におやつ代と保育料を計算する |
たとえば、タッチパネルを導入する場合、ペンを必要とする日誌と違い、直接手で操作できます。タッチパネルで入力されたデータはサーバに保管されるため、他の先生ともデータを共有しやすい」「保育料の計算にも活用できる」という利点もあります。
また、シフト管理機能のあるITツールを導入する場合は、園児の年齢、人数と保育士の配置を自動で提案します。園児の人数に対して保育士が多すぎる、少なすぎるという人的ミスを防げるため、業務の効率アップが期待できます。
保育園にITツールを導入する際は、実際のITツールをデモで触ってみるとよいでしょう。IT導入補助金ではIT導入支援事業者というベンダーを通して、ITツールを購入します。事前に疑問点があれば、積極的にIT導入支援事業者に問い合わせてみてください。
ITツールの購入先はIT導入支援事業者経由に限定される
保育園がIT導入補助金を使ってITツールを導入する場合は、ITツールの購入先がIT導入支援事業者経由に限定されます。そのため、事業者が保育園のITツールを申請するなら、対象のITツールを扱うIT導入支援事業者を探す必要があります。
【保育園のITツールを扱うIT導入支援事業者の探し方】
|
参考:「ITツール・IT導入支援事業者検索」|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、保育園向けのITツールを扱うIT導入支援事業者を探す場合、まずは「IT導入支援事業者・ITツール検索」にアクセスします。取り扱い業種の「保育業向け」をクリックすると、関連するITツールを販売するIT導入支援事業者を見つけられます。
このほか、ネット検索で「保育士 時短 ITツール」といった検索ワードでも調べられます。ただし、その際に表示されるページには、ダイレクトにIT導入支援事業者の名前は書かれていません。さまざまなキーワードを試す必要があることに留意しておきましょう。
IT導入補助金では最大450万円が補助される
IT導入補助金では最大450万円が補助されます。IT導入補助金には複数の申請枠があり、自社が申請したい枠を選んで申請することになります。その際「通常枠」「インボイス対応類型」「セキュリティ対策推進枠」は同時に申請できます。
【IT導入補助金の申請枠と補助金額/補助率】
通常枠 |
|||||
補助金額 | 補助率 | 補助対象経費 | |||
1機能以上 | 4機能以上 | 1/2以内 |
ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大 2 年分)、導入関連費 |
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5 万円~150 万円未満 | 150 万円~450 万円以下 | ||||
インボイス枠(インボイス対応類型) | |||||
ITツール導入費 | ハードウェア導入費 | ITツール導入費 | ハードウェア導入費 | 通常枠と同じ + ハードウェア導入費 |
|
(下限なし)~350万円 | ~10万円または~20万円 | 3/4(※)または2/3 | 1/2 | ||
インボイス枠(電子取引類型) | |||||
(下限なし)~350 万円 | 中小企業・小規模事業者等:2/3 その他の事業者等:1/2 |
ITツール(インボイス機能) | |||
セキュリティ対策推進枠 | |||||
5万円~100 万円 | 1/2 |
(独)IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービス |
参考:各枠の「資料ダウンロード」の公募要領|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、支援ツールとパソコンを導入したい場合「インボイス枠(インボイス対応類型)」で申請します。追加で「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載中のサービスも導入する場合は、同時にセキュリティ対策推進枠にも申請できます。
「インボイス枠(インボイス対応類型)」ではITツールが最大350万円まで、ハードウェアは最大20万円まで補助されます。セキュリティ対策推進枠も同時に申請するなら、サービス導入費用として最大100万円の補助が追加されます。
IT導入補助金でもらえる補助金は、保育園が支払う経費に補助率をかけた金額です。補助対象経費の消費税は、補助の対象ではありません。保育園がもらえる補助金額を計算する際は、ITツールやハードウェアの消費税を抜いた金額に補助率をかけてみましょう。
保育園のICT化は自治体も推進している
保育園のICT化は自治体も推進しています。IT導入補助金は経済産業省が実施する事業者補助金ですが、厚生労働省が実施する補助金に「保育対策総合支援事業費補助金」があります。ただし、この補助金を実施するのは市区町村です。
【令和5年度保育所等におけるICT化推進等事業の概要】※スペースの都合上、抜粋
管轄 | 厚生労働省 |
URL | 令和5年度 保育関係予算概算要求の概要 |
対象事業 | ① 賃貸物件による保育所改修費等支援事業 ② 小規模保育改修費等支援事業 |
実施主体 | 都道府県、市区町村 |
補助基準額 |
(1)(ア)業務のICT化等を行うためのシステム導入 1施設当たり:1,000千円 (イ)翻訳機等の購入 1施設当たり:150千円 |
補助割合 |
(1)国:1/2、市区町村:1/4、事業者:1/4 ※地方自治体が運営する施設を対象にする場合は、国:1/2、自治体:1/2 |
たとえば、北海道砂川市の場合、保育所のICT化推進等事業として保育園と保護者が連絡用に使えるアプリを導入しました。また、福島県川俣町では、小学生の行動経路を保護者に伝える「⼦ども⾒守り通知サービス」を導入しました。
厚生労働省の「ICT化推進等事業」は全国で実施されていますが、まだ導入されていない自治体も多くあります。保育園のオンライン化やIT化に関心のある人は、保育園を管轄の自治体にICT化推進等事業の実施状況を確認してみましょう。
この記事のまとめ
IT導入補助金では自治体が運営する保育園は補助の対象外ですが、他の保育園は、事業規模を満たせば申請対象の事業者となります。大企業に関連のない限り、ほとんどの園は対象事業者となります。
IT導入補助金では、保育園の悩みを解決できるシステムが導入できます。IT導入補助金の対象ツールには、「登降園管理システム」や「保育園支援システム」があります。これらのシステムを使って保育士や職員の業務が効率化できれば、労働環境の改善につながります。
IT導入補助金では、保育園の悩みを解決できるシステムが導入できます。IT導入補助金の対象ツールには、「登降園管理システム」や「保育園支援システム」があります。これらのシステムを使って保育士や職員の業務が効率化できれば、労働環境の改善につながります。