補助金ガイド

IT導入補助金の労働生産性とは?計算方法や未達だとどうなるかを解説

2024/04/17

2023/11/30

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

IT導入補助金の利用を考えている人の中には、労働生産性という言葉を目にしたことがある人もいますよね。その際、IT導入補助金の申請や交付において、労働生産性がどのように関わるのかを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、IT導入補助金の労働生産性とは何かを解説しています。また、労働生産性の計算方法や労働生産性の計画目標が未達だとどうなるかも紹介しているため、IT導入補助金を利用したい人は参考にしてみてください。

なお、この記事は IT導入補助金2024公式サイトの「資料ダウンロード」にある各枠の「公募要領」と「交付申請の手引き」をもとに作成しています。

IT導入補助金の労働生産性とは従業員1人が1時間で生み出した付加価値を指す

IT導入補助金の労働生産性とは、1人の従業員が1時間当たりに生み出した付加価値を指します。労働生産性を計算する際は、まず計算する年度の営業利益や人件費、減価償却額などの情報を集め、付加価値額の計算をしましょう。

【付加価値額の計算方法】

付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
  • 付加価値額(粗利益に当たる部分)
  • 営業利益(売上高から売上原価や販売管理費を差し引いた利益)
  • 人件費(給与や賞与、各種手当など)
  • 減価償却額(固定資産や無形資産の使用期間に応じて分割した費用)

【労働生産性の計算方法】

労働生産性=付加価値額÷(従業員数×年間の勤務時間平均)
  • 従業員数(正規雇用、契約社員、パート、アルバイトの合計人数)
  • 年間の勤務時間平均(全従業員の勤務時間を平均した1人当たりの勤務時間)

参考:「ITツール登録要領」|IT導入補助金2024公式サイト

労働生産性は、事業全体で生み出した付加価値額を、全従業員が勤務した時間で割って求められます。労働生産性は、付加価値額を増加させることや従業員の負担を減らすことで向上を狙うことも可能です。

ITツールを活用して労働生産性を向上させる方法

ITツールを活用することで、労働生産性の向上に繋げることができます。IT導入補助金は労働生産性の向上を目的とした補助金のため、労働生産性の向上につながるソフトウェアが補助対象になっています。

【ソフトウェア導入による効果の例】

ソフトウェアの種類 機能の一例 効果
勤怠管理ソフト スマホやPCで勤怠打刻ができる 出先にいる従業員が、勤怠打刻のために会社に戻る必要がなくなり、移動にかかる労働時間を減らせる
会計ソフト 金融機関と連携し、取引データの取得と仕分けが自動で行える 転記作業が手入力から自動化されたことで、従業員の業務を削減できる
マーケティングオートメーションソフト
(顧客管理)
顧客情報の管理やメッセージの自動送信ができる 顧客への適切なアプローチができ、集客や売上の向上につながる
労務管理ソフト 雇用契約や年末調整をクラウド上でやり取りできる ペーパーレス化になり紙のコスト削減につながる

たとえば、会計ソフトを導入し書類の転記作業を自動化することにより、従業員の業務が削減され、従業員の労働時間の短縮につながります。売上や営業利益を伸ばすだけでなく、業務効率化をすることでひとつの業務にかかる時間が少なくなり、労働生産性の向上につながります。

ITツールを導入して業務効率化を行う場合、自社の経営課題を理解した上でITツールを選ぶことが重要になります。どのようなITツールを導入したらいいのかがわからない人は、IT導入支援事業者への無料診断や「みらデジ経営チェック」を利用して自社の経営状況を再確認してからITツールを選定しましょう。

なお、当サイトを運営する株式会社SoLaboもIT導入支援事業者であり、ITツールの導入支援やIT導入補助金の申請サポートを実施しています。IT導入補助金の申請について相談したい人や、いくら補助金が受け取れるのか、労働生産性の向上につながるITツールについて相談したい人は、無料診断よりお問い合わせください。

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交付申請の際に労働生産性を向上させる計画を立てる

交付申請の申請情報入力の際に、労働生産性を向上させる計画を立てます。労働生産性を向上させる計画を立てる必要がある枠は、通常枠とセキュリティ対策推進枠の2枠であり、インボイス枠に申請する場合は不要です。

【交付申請で入力する労働生産性の計画】

該当する枠 内容
通常枠(※1)
  • 過去1年分の実績値
  • 毎年後(3年間)の計画値(※2)
    「1年後に労働生産性を3%以上向上させる」
    「3年の事業計画期間に労働生産性を年平均成長率3%以上向上させる」
セキュリティ対策推進枠
  • 過去1年分の実績値
  • 3年後の計画値(※2)
    「労働生産性を年平均成長率1%以上向上させる」
※1通常枠の労働生産性の計画数値は、IT導入支援事業者が入力する
※2年平均成長率の数値は入力した営業利益や人件費をもとに自動入力される

参考:「通常枠」と「セキュリティ対策推進枠」の各公募要領|IT導入補助金2024公式サイト

たとえば、通常枠に申請する場合は、2023年4月〜2024年3月までの労働生産性の過去の実績値から、翌年の労働生産性が3%以上向上するように計画数値を設定します。通常枠は3年に掛けて1年ごとに計画数値を設定し、セキュリティ対策推進枠は3年後の計画数値を設定
します。

また、交付申請時に提出する労働生産性の計画は、IT導入補助金事務局に審査されます。実現可能な計画値を入力する必要があるため、IT導入支援事業者と相談しながら労働生産性を向上させる計画を設定しましょう。

労働生産性の計画は、交付申請の際には実現の可能性を審査され、1年後や3年後にある報告の際には達成できているか実績値を確認されます。労働生産性の計画は審査項目のひとつであり、審査を通過できなければ補助金を受け取ることができません。

なお、交付申請で不採択となる原因について知りたい人は「IT導入補助金で不採択になる理由を特定して改善する方法を解説」を参考にしてみてください。

労働生産性の計画が未達成でも補助金は受け取れる

事業実施効果報告の際に労働生産性向上の計画が未達成になっていたとしても、採択された申請者は補助金を受け取ることができます。労働生産性向上の計画は、達成できなかった場合でも交付が取り消されることや、補助金の返還を求められることはありません。

たとえば、通常枠に申請した場合は、労働生産性が1年後に3%以上を超えていなければいけませんが、1年後の効果報告時に労働生産性が2%だったとしても補助金の返還は求められません。労働生産性の計画は、必ず報告はしなければいけませんが、達成の有無に関わらず補助金を受け取ることができます。

ただし、IT導入補助金を利用する人は、計画した労働生産性の目標を達成できるように事業に取り組まなければいけません。また、労働生産性の計画は未達成の場合でも補助金の返還はありませんが、IT導入補助金の規定に背いた場合や、他の計画が達成できなかった場合は補助金の返還を求められる可能性もあることを留意しましょう。

なお、労働生産性の計画目標では基本的に補助金の返還を求められることはありませんが、通常枠で補助金額を150万円以上申請する人は、申請時に計画する「賃上げ目標」への注意が必要です。賃上げ目標は未達成になると補助金の返還が求められる場合があるため、通常枠で150万円以上申請する人は「賃上げ目標が未達だとIT導入補助金がもらえない?申請枠ごとの扱いも解説」を参考にしてみてください。

この記事のまとめ

労働生産性とは、1人の従業員が1時間に生み出す付加価値額のことです。IT導入補助金は、労働生産性の向上が目的のひとつであり、業務効率化につながるITツールが補助対象となっています。

通常枠とセキュリティ対策推進枠では、交付申請時に労働生産性の計画目標を立てる必要があります。労働生産性の目標が未達成になったとしても、補助金の返還は求められませんが、交付申請時に計画した内容の実現性がないと判断された場合は、審査で不採択になる可能性があることを覚えておきましょう。

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